モーターグライダー

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DG-808B
自力発航型格納式モーターグライダーが離陸するところ

モーターグライダーとは動力を持ったグライダー(滑空機)である。モグラとよく略される。これに対してエンジンなしのグライダーをピュアグライダーと呼ぶことがある。動力源としてはレシプロエンジンが広く用いられ、一部にヴェンケルエンジン電気モーターが使用され、プロペラを回転させる。ジェットエンジンを備えたものもある。


概要[編集]

アレキサンダー・シュライハーASH 26 E
自力発航型格納式モーターグライダーがプロペラを出しているところ。後ろにいるのは先端に格納式のプロペラを備えた自力発航型Stemme S10

通常のグライダーは、動力を持った飛行機自動車ウインチに曳航されて離陸し高度を獲得するが、曳航が終わると、上昇気流を探しその中に入れなければ数分で飛行が終わってしまう(もちろんそれを見つけ続けられるならグライダーは何時間でも飛んでいられる)。そして上昇気流を見つけられない危険がある以上、ベースの滑空場から遠出もできない。つまりピュアグライダーでは高度が低くなってしまったら、畑などに場外着陸せざるを得ない。当然ながら、場外着陸できる条件は限られている。さらに離陸するのに前述のように他に人手がかかってしまうし、地上では機体を移動するとき他の何かにしてもらわなければならない。

そこでモーターグライダーが誕生した。モーターグライダーは自身が動力源を持つために大半の機体が自力で離陸出来、人手が少なくても離陸できる。滑空を行い高度が下がってきたらプロペラで再び上昇出来る。よって燃料がつきるまでいくらでも飛んでいられる利点を持つ。

モーターグライダーの種類[編集]

プロペラは通常の軽飛行機のように機首にあるものや格納式のものがある。格納式のものはコックピットの後方の胴体部分にエンジン、プロペラが格納出来る様になっている。格納したときの性能や操作性は、ピュアグライダーとほとんど変わらないので、練習や滑空を楽しむにはうってつけである。格納式のモーターグライダーは記録を目的とした距離飛行にも用いられ、プロペラを格納した状態で飛行し場外着陸のおそれがある場合に動力を用いて上昇し、場外着陸を避ける。動力を使った場合には当然グライダーとしての距離飛行の記録は認められない。

飛行機型[編集]

Grob G109B
代表的なTMG

別名TMG(Touring Motor Gliders)と呼ばれるもの。外見が軽飛行機のようなグライダーで自力で発航する。名前のとおり、空をツーリングつまり飛行を楽しむためのもの。2人乗りが主で、プロペラが先端にあり通常のプロペラ機のように離陸できる。また上空でエンジンを停止した際、通常のプロペラ機より滑空性能を高めたもの。滑空比は20から30程度で、最近のピュアグライダー(滑空比30から70程度)より悪い。理由は格納できないプロペラと大きな固定脚等が空気抵抗になる為である。全幅は11から18m程と、セスナ「スカイホーク」等の小型機等の1から1.5倍ほど長く、標準的なグライダー(15から18m)と同程度である。また車輪は固定脚がほとんどで、ピュアグライダーや格納式モーターグライダーと違い、左右に車輪がついているためタキシングも通常の飛行機と同じように行える。TMGは、80から100馬力程度のエンジンを積み、巡航速度は時速85から110kt(150kmから200km)程度である。しかし通常のガソリンエンジンが使えるものがほとんどで、50から100l程の燃料をつめる。航続距離は600kmから1500km程である。TMGの中には機体後方に曳航装置をつけられ、グライダーの飛行機曳航ができるものもある。ただしエンジンパワーがより強力でなければならないので値段も高くなる。TMGが競技に使われることは前述のグライダーを曳航するため以外には滅多にない。

格納式プロペラ型[編集]

シュライハー ASH 26 E 用のパワープラント。
左上から反時計回りに、プロペラハブ、ベルトガイド付きのマストラジエターバンケルロータリーエンジンマフラーカバー。

上記のTMGは、滑空機としての性格が薄れてしまったが、それを求めている人のピュアグライダー人気は根強い。そこでピュアグライダーの機体を元に小型のエンジンとプロペラ(可変ピッチではない)を格納できるように搭載(格納中の飛行はまったくピュアグライダーと変わらない)したのがこのタイプである。格納場所は座席後方の主翼付け根あたりの機体上部が主である。格納状態の時は、エンジンベイの扉は、ちょうどランディングギアの扉と同じように胴体と段差や隙間がないように閉じられており、動力飛行に移るときは、エンジン展開操作をし、自動的に展開するのを待ちそれをミラーなどで確認したのちスターターボタンを押す。エンジンはプロペラを支える支柱(マスト)の上方についているものと、胴体内部の根元についていて、ベルト等で駆動するものがある。最近の機体では騒音と空気抵抗減少の為胴体内部についているものが多い。格納式プロペラ型には自力で発航できる自力発航型(セルフランチ)と、あくまで予備動力として利用するサステナーと呼ばれるものの2タイプある。メーカーは同じタイプのグライダーに、エンジンなし、サステナー、セルフランチと三つ取り揃えている場合も多い。

自力発航型[編集]

自力発航型高性能オープンクラス機シェンプ・ヒルトニンバス4Mがエンジンを使い再上昇しているところ

他に頼らなくても離陸できる格納式モーターグライダー。セルフランチとも呼ばれる。上空ではピュアグライダーとして飛行でき、当然エンジンを上空で再始動し上昇できる。地上から安全な上昇力を保って離陸しなければならないので、後述のサステナー機と比べ十分な推力を得る強力なエンジンを積む必要があるため高価で、バッテリースターターモーターを搭載するため若干重量も重い。またTMGと違い、ピュアグライダーと同じく車輪が中央にしかないので地上では翼端と胴体に人をつけての取り回し、発航が必要である。しかし一部の機体には、ハンドル操作可能な車輪と翼端に小さな車輪がついており、機体に誰もつかなくてもエンジンの出力調整だけで発航までできるものもある。

サステナー[編集]

地上での取り回しと離陸までは通常のピュアグライダーと同じで、高度が下がってきたときのみ、プロペラを展開し高度を得るもの。ターボとも呼ばれる。自力発航型よりも安価である為人気が出ている。多くは自力発航空型と違いエンジンの始動は、スターターモーターではなくプロペラに当たる風を利用して始動する。またエンジン出力を調整するスロットルもない。プロペラは二枚のものと、格納時に重ね合わせるように中央で折りたためる3枚以上のプロペラを持ったものがある。

法律上のモーターグライダーの定義[編集]

日本の航空法におけるモーターグライダーの定義は以下のようになっている。

  • 乗員は二名以下であること。
  • 最大離陸重量は850kg以下であること。
  • 重量÷(全幅)2が3kg/m2を超えないこと。