へき開

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劈開(へきかい、: cleavage)とは、結晶や岩石の割れ方がある特定方向へ割れやすいという性質をもつ。これをへき開という。鉱物学結晶学、岩石学用語である。宝石の加工や、工学の分野で重要な性質の1つ。

概要[編集]

岩石を構成する造岩鉱物結晶面では、原子間の結合力の弱くこの面に沿って割れやすい。へき開によってできた結晶面をへき開面という。この性質は、物の硬さを表す硬度以外に、物の衝撃による脆さを表す脆性靱性)とも関係する。

造岩鉱物結晶では雲母方解石蛍石などは、結晶面どうしの結びつきがほとんどなく完全なへき開が見られるが、石英の結晶である水晶柘榴石では反対に結晶面どうしの結びつきが強く、へき開を起こす前に応力で破断してしまうためへき開がみられない。ダイヤモンドは「完全」なへき開があり、正八面体の面に対して平行に割れる。この性質がダイヤモンドの加工をある程度容易にしている。

輝石と角閃石はよく似ており、ともに2方向にへき開面をもつが、輝石ではへき開面がほぼ直角に交わるという違いがあり、このことが鑑定に利用される[1]

金属では、結晶であっても一般に塑性が大きく、に至っては厚さ約0.0001ミリメートルにまで延ばすことができる(この性質を展延性という)ほどである。そのためへき開がみられない。

微細結晶が緻密に集まった構造の岩石は、視覚的に判別できるほど大きい結晶面由来の構造がないためにへき開はない。一般にこのような構造の岩石は靱性が大きく加工中の衝撃やへき開で壊れにくいため、精密な細工を施すことができる。代表的な翡翠では、構成するヒスイ輝石は石英より硬さが劣るが、精密な加工を施せて耐久性もあるため様々に利用される。

裂開[編集]

岩石や結晶の種類が同じであっても産地の違いによりへき開とは異なる明瞭な方向で割れ面が見られることがある。このような性質をへき開と区別して裂開 (れっかい、: divulsion)という[1]

へき開の種類[編集]

鉱物のへき開は、大まかに「完全」、「明瞭」、「不明瞭」、「なし」に分類される(もっと細かく分ける場合もある)。へき開が完全に近いほど、その鉱物は簡単に割れることになる。

へき開: 完全[編集]

方解石: 方解石は非常に割れやすく、どんなに細かく割っても平行四辺形のきれいな形になる。
黒雲母: 雲母は極めて薄くはがれやすく、指でへき開に沿ってどこまでも剥がしていくことができる。
方鉛鉱: 方鉛鉱は直角に四角く欠けていくことが特徴で、へき開によってすぐそれと分かる。
蛍石: 蛍石はダイヤモンドと同じく八面体の面にそってへき開があり、きれいな八面体になる。

へき開: 明瞭[編集]

藍晶石(カイヤナイト)

へき開: 不明瞭[編集]

緑柱石(ベリル)
電気石(トルマリン)

へき開: なし[編集]

自然金: 金はへき開をもたない代表的な鉱物(元素鉱物)で、割れることなく非常に薄くのばすことができる。
柘榴石(ガーネット) - ただし裂開をもつ
石英(水晶)

宝石加工におけるへき開[編集]

石英(水晶) - へき開が無いため複雑な形を取ることができる

へき開性を持つと言うことは「その方向に割れやすい性質がある」ことを意味し、宝石加工においてこの性質は、加工のしやすさと形の制限に大きくかかわってくる。モース硬度10のダイヤモンドがカット可能である要因はこの性質があるためであり、この性質を利用してカットを行っていく。反面、この性質に沿わない形にカットすることは(この性質を利用してのカットは)出来ない。またへき開を無視した形状を採用した場合、研磨時、もしくは日常の負荷で簡単に割れる可能性がある。そのため、この性質をもつ鉱物はカットの形も制限される。逆に、石英のようにへき開が無いものは、この性質を利用したカットが行えない反面複雑な形(たとえば彫像)であってもへき開を気にする必要が無い。

所有者にとってもどの宝石がへき開性を持つかを知ることは重要である。容易なへき開性を持つ宝石であったならば、所持や保管に対しては価値を損ねてしまわないよう注意を要する。

出典[編集]

  1. ^ a b 堀、p85。

参考文献[編集]

関連項目[編集]