全地形対応車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
アメリカ陸軍のATV

全地形対応車(ぜんちけいたいおうしゃ、All Terrain Vehicle 略:ATVVéhicule Tout-Terrain 略:VTT)とは、不整地を含む様々な地形を進むことのできる原動機付きの車両である。米国規格協会(ANSI)の定義によると、全幅50インチ以下、重量600ポンド以下で、低圧タイヤを装着し、跨座式シートと棒形ハンドルで操縦される車両とされている[1]。日本ではバギーとも称されている。

概要[編集]

全地形対応車は、3輪または4輪のタイヤで走行し、乗車定員が1名ないし2名の乗り物である。オートバイの技術を流用した車体構成となっていて、ハンドルやシートをはじめとする乗車装置がオートバイと同様の構造であることから、乗車姿勢もオートバイに類似している。かつては3輪の車種[2]が主流だったが、転倒事故が続出してアメリカで訴訟問題に発展したことから、しだいに4輪ATVのみの生産となった。2輪のオートバイとは異なり、アクセルは親指で押すレバー式が多い。変速操作にはペダル式やハンドレバー式のほか、無段変速機を搭載したものがある。

全地形対応車には大きく分けてスポーツ型とユーティリティ型に分けられる。スポーツ型は、主にモトクロスラリーレイドなどの競技に用いられる車種として発展したもので、パリ・ダカール・ラリーなどの国際競技への登録および出場が可能な車種もある。ほとんどが後2輪を駆動し、ディファレンシャルを持たない。レジャー用に排気量50ccのエンジンを搭載した車種も増えていて、台湾や中国でも生産されている。ユーティリティ型は農林業で荷役や巡視用途として広く利用されていて、牧場で家畜を追う際に用いられたりレジャーに用いられたりすることもある。4輪駆動の車種もあるほか、より積載能力の高い6輪の物[3]や水陸両用の特殊な構造のものなどがある。軍用としてオートバイの代わりに採用している国もある。

私有地などの限定された敷地内では運転免許や年齢制限などの運転資格は要求されず、アメリカでは一定の条件を満たせば16歳以下の子供でも公有地を運転することが許可される州もある[4]。しかし、日本のATVを体験操縦できる施設[5]や競技組織[6]においては年齢制限を設けている。またメーカーによっては車種ごとに対象年齢を指定している場合もある[7]

日本の法規における扱い[編集]

日本国内では法規の関係から、下記のように道路運送車両法に基づく保安基準を満たした一部の車両のみ公道を走行することができる。

50cc超[編集]

50ccを超える排気量の3輪ATVは、自動二輪車の保安基準を満たすことで側車付自動二輪の一種であるトライクとして登録できる場合がある。4輪ATVは軽自動車または普通自動車として扱われ[8]、保安基準も同等のものが適用されるが、このうち衝突安全性の基準や排出ガスの基準は厳しく、現在はこれらを満たした製品は製造または輸入されていない。

50cc以下[編集]

50cc以下の排気量のATVは道路運送車両法上の原動機付自転車におけるミニカーとしての要件を満たしていれば、ミニカーとして登録でき公道走行が可能となる。道路交通法におけるミニカーの扱いでは、普通自動車免許もしくは中型自動車免許、大型自動車免許で運転でき、自動二輪、原付免許では運転できない。ヘルメットの着用と二段階右折は義務づけられておらず、法定最高速度は60km/hである。また、初心者が運転する際には初心者マークが必要となる。一方、自動車とは異なり、乗車定員は1名で、高速道路の走行はできない。車検や車庫証明書は必要なく、自賠責保険も原付と同じ扱いとなり、任意保険はファミリーバイク特約が利用できる。ただし「公道走行可能」と謳われている製品の一部には、保安基準を満たしていない車両や安全性に問題がある車両、早々に不具合が発生する車両など様々なトラブル発生要因を抱えた車両が少なくないことが、国民生活センターの商品テストで判明している[9]

主なメーカー[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ ANSI/SVIA 1-1990
  2. ^ ホンダはATC(All Terrain Cycles)と通称
  3. ^ 2011 Polaris Sportsman Big Boss 6x6 800 ATV : Overview”. POLARIS INDUSTRIES INC.. 2011年6月24日閲覧。
  4. ^ Oregon Parks and Recreation Department: ATVs ATV Permits” (英語). Oregon Parks and Recreation Department. 2011年7月25日閲覧。 “Operator requirements (applies only to public OHV riding areas)”
  5. ^ 那須バギーパーク - 施設によって異なる(おおよそ6歳以上)。
  6. ^ [1] - 日本ATV協会では「8歳以上」と年齢制限をかけている。
  7. ^ ヤマハ発動機・ATV(四輪バギー)Q&AYFM50R(2007年モデル・国内販売終了)
  8. ^ 特殊自動車として該当する分類がなく、「その他の車両」の分類として認める告示などは国土交通省から発布されておらず、小型特殊自動車大型特殊自動車として登録することはできない。
  9. ^ 4輪バギーの安全性に問題「公道走行可能」と販売 47NEWS 2009年4月23日
  10. ^ Standard Motor Corporation”. Standard Motor Corporation. 2011年7月25日閲覧。
  11. ^ HOTA INDUSTRIAL MFG”. HOTA INDUSTRIAL MFG. 2013年8月11日閲覧。
  12. ^ ACCESS MOTOR”. ACCESS MOTOR. 2014年3月9日閲覧。
  13. ^ CEC”. CEC. 2014年3月9日閲覧。
  14. ^ Gibbs Sports Amphibians”. GIBBS SPORTS AMPHIBIANS INC. 2013年1月9日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]