ランフラットタイヤ

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ランフラットタイヤ(Run flat tire)とは、パンクして空気が抜けた後でもそのまま100km程度の距離を走ることができるタイヤのこと。2001年トヨタ・ソアラにオプションで設定された。その後、BMWの新車、レクサス日産・GT-Rに装備されるなど少しずつではあるが普及が進められている。BMWでは2003年の5シリーズより、Mモデルを除く全車にランフラットタイヤを標準装備化した。米国のみ2012年モデルからは通常タイヤとランフラットタイヤの併売に切り替えている。初期、第二世代のランフラットタイヤから第三世代に進化しており、ユーザーから不満の多かった乗り心地についても改善されつつある。

また、新交通システムの車両にも装備しているものがある。

利点[編集]

通常のタイヤではパンク直後に操縦性能が急激に悪化し、ドライバーが車を制御出来なくなり事故に至る可能性が有る。仮に停車できたとしても、後続車にとっては予測不可能な急停車になり、後続車に追突される可能性がある。ランフラットタイヤでは、パンク後も暫くは走行が継続できるため、事故に遭遇するリスクを回避できる。特に、交通量の激しい道路や高速道路のほか、諸外国では治安の悪い地域や、軍用車両では戦闘中やNBC環境下など、危険な状態や場所で自動車を停止させ、タイヤ交換やパンク修理をすることを回避できる。

サイドウォールが大きく損傷したランフラットタイヤ。この状態でも短距離であれば自走可能。

ランフラットタイヤでもタイヤバースト(破裂)やショルダー部(サイドウォール)やホイールリム変形を伴う大きな損傷など、ランフラットタイヤ自体が機能しなくなる損傷は稀である。よって、パンク修理剤が効かない広範囲なパンクに対してもランフラットタイヤの効果は絶大である。

また、スペアタイヤの搭載が不要になり、トランクスペースの拡大、デザイン自由度の向上、車両の軽量化(スペアタイヤを積まないことによる軽量化分>ランフラットタイヤ化によるタイヤ質量増加分)による燃費の向上(ランフラットタイヤ自体はノーマルタイヤに比較して重くなり回転慣性マスも増加するため加減速時のタイヤ慣性マス加減速分のエネルギーは多く必要でありその分燃費は悪化する)、それによるCO2削減などといったメリットがある。さらに、自動車が廃車にされると、走行距離が伸びずタイヤローテーションを行わない車両の場合、ほとんどのスペアタイヤは未使用にもかかわらずそのまま廃棄され、大きな環境問題となるため、この問題も解消できる。

JAFの年間パンク件数は30万件(2014年)を超え増加傾向にある。パンク件数軽減のためにランフラットタイヤの効果が市場でも認められつつあり、今後のさらなる普及が見込める。

欠点[編集]

第二世代のランフラットタイヤ(2001年~)は、まだ開発途上の製品のため、ノーマルタイヤに比較して下記の点が劣っている。

  • 乗り心地や段差通過時のショック。
  • 重量増によるバネ下重量の増加。燃費効率(CO2)への影響。
  • 製品数、流通量が少なく納期の遅れや価格が高い。
  • スタッドレスタイヤの設定限定され、サイズによっては、国内向け製品の入手が不可能なため、諸外国向けの輸入品となる。
  • タイヤ交換時にランフラットタイヤに対応したタイヤチェンジャーの普及率が低い。

第三世代のランフラットタイヤ(2010年~)は、欠点に対する改善が見られる。 また、BMWが標準装備化(2003年)を実施し、市場の普及率も向上していることが挙げられる。

  • 乗り心地の改善。(ノーマル100に対して105の固さ)
  • エンジンのダウンサイジング、多段AT化による燃費向上は、従来のノーマルタイヤモデルに比べても燃費向上。
  • ランフラットの普及率向上による販売価格の低下、専用タイヤチェンジャーの普及率が向上。

ノーマルタイヤ変更時のデメリット[編集]

ランフラットタイヤは、ノーマルタイヤに比較して価格が高く、タイヤ交換費用を抑えるためノーマルタイヤに変更する方がいる。

  • パンク修理剤ではランフラットタイヤと同等の効果は得られない。あくまで軽度の修理用である。
  • パンク時に路上停車するリスクが発生し、衝突事故や人身事故のリスクが増す。
  • ランフラットタイヤ用に設定されたサスペンションにより、ノーマルタイヤ変更後にふらつき・タイヤのよれなどの不具合が発生するケースがある。


主な種類[編集]

サイドウォール強化タイプ
現在のランフラットタイヤはほとんどがこのタイプである。タイヤのショルダー部(サイドウォール)の剛性を強化したタイプで、ショルダー部強化タイヤとも呼ばれる。気体が抜けた後はこの部分でタイヤの形状を維持し支える。弾性不足による乗り心地の低下、重量車の荷重には耐えられないことが難点。ブリヂストンを中心としたメーカーで開発された。
中子(なかご)タイプ
タイヤ内部に構造(中子)を持たせたタイプで、気体が抜けた後はこの構造でタイヤの形状を維持し支える。中子のぶん、重量とコストがかさむのが難点。ミシュラングッドイヤーダンロップピレリなどのメーカーで開発されたが、一部の車種や新交通システムの車両が採用する程度でほとんど普及していない。ランフラットタイヤではないが、NASCARの高速サーキット用に、タイヤの内部にもう一つタイヤが組み込んだタイヤ(Goodyear Lifeguard Inner Liner Safety Spare)が使用されている。

ランフラットタイヤを示す記号[編集]

タイヤメーカーによって、ランフラットタイヤを示す記号が異なっている。ここでは、ランフラットタイヤとして定着しつつある、サイドウォール強化タイプの記号を示しておく。

システム[編集]

ランフラットタイヤではパンクしても運転者は感知できない。このためタイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS)と組み合わせ、パンクして空気圧が低下すると警告灯が点灯するシステムを搭載した自動車で使用することができる。このシステムを搭載していない自動車でもランフラットタイヤは装着できるが、基本的に協定でセット利用が定められている。

他のパンク対策技術[編集]

  • セルフシールタイヤ - タイヤ内面に塗布されたシーラント(密封剤)が、小規模なパンクを自動的に塞ぐタイヤ。コンチネンタルが実用化。ブリヂストンも「マクシール」の名で商品展開させていた。
  • ムースタイヤ - タイヤの内部にムース(スポンジ状のゴム)を組み込んだタイヤ。パンクしてもムースが支えとなってそのまま走り続けることができる。悪路を走るラリーオフロードレースで使用されているが、一般走行用としては実用化されていない。工事現場や農作業等で使う手押し車(一輪車・ネコ)では、ノーパンクタイヤと言う名称ではじめから装着されていたり、交換用タイヤとしての販売もされている。

関連項目[編集]