ジュール熱

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電気こんろ
ニクロム線に通電した際に生じるジュール熱を調理に利用する

ジュール熱(ジュールねつ、: Joule heat)は、(抵抗がある)導体に電流を流したときに生じる発熱であるジュール効果によって発生するエネルギー[1]

ジュールの法則[編集]

電気抵抗 R [Ω] の物体に、 I [A] の定常電流t 間流したときに発生する熱量、すなわちジュール熱の量 Q [J] は、

Q=RI^2t\,

となる。ジュール熱の量は、抵抗 R と電流 I の二乗の積に比例する。これはイギリス物理学者ジェームズ・プレスコット・ジュール実験によって発見した物理法則で、ジュールの法則と呼ばれる。

上の式はオームの法則を用いることによって次式のように変形することができる。

Q=VIt=RI^2t= \frac{V^2}{R}t\,

(V:電圧)

ジュール熱の利用[編集]

ジュール熱の大きさは、抵抗に流す電流によって変化させることができる。 制御が容易であるため、古くから暖房調理器具などに利用されている。

ジュール熱による損失[編集]

電動機発電機変圧器といった、おおむね大きな電力を扱う装置やこれらを繋ぐ配線類も超伝導技術でも使わない限り導体中の抵抗によって無用なジュール熱が生じてしまう。また、照明器具を含む家庭電気製品事務用の電気を扱う機器類のすべてもまた、無用なジュール熱によってエネルギーを無駄に消費してしまう。配線はできるだけ短くしながら流れる電流に応じてワイヤの太さを適切なものを選ぶことでジュール熱の発生は最小限に抑えることができる[2] 。また、生じた熱も適切に放熱することが求められる。

ジュール損[編集]

変圧器のような電気コイルを用いた電気部品では、コイルを構成する銅線にジュール熱が生じるだけでなく、コアと呼ばれる鉄芯などにもジュール熱が生じてしまい、エネルギーの損失となる。 変圧器やコア付きコイルなどでは、などをコアに用いて磁束の集中と部品サイズの縮小を図っているが、交流電流が流れることでコア内の磁束が生成と消滅を繰り返し、この過程でコア内に渦電流が生じてしまう。この渦電流が流れることでジュール熱によるエネルギーの損失が生じ、この損失が「ジュール損」や「渦電流損」と呼ばれる。低周波数での交流電流ではジュール損はそれほど大きくないため、絶縁された薄いケイ素鋼を磁束に沿って多数積層したコアを用いることで、コア内に生じる渦電流を分断し最小化することでジュール損を少なくする手法が一般的に採用されている。高周波数の交流電流ではジュール損が顕著となるため、比抵抗が高いソフト・フェライトをコアに用いることで、コア内に渦電流が生じないようにされる事が一般的である[3]

出典・脚注[編集]

  1. ^ 『IEEE電気・電子用語辞典』 丸善株式会社、1989年
  2. ^ 大電流が流れる電線では、発生した熱が過大であると被覆や導体が溶けて事故の元になる。このため、電線の仕様には許容電流が定められている。
  3. ^ 谷腰欣司著、『フェライトの本』、日刊工業新聞社、2011年2月25日初版1刷発行、ISBN 9784526066238

参考文献[編集]

  • 加地正義『標準 電気基礎(上)』オーム社、1994年。

関連項目[編集]