小田急50000形電車

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小田急50000形電車
Vault Super Express
新宿駅を出発して箱根に向かう50000形VSE車
新宿駅を出発して箱根に向かう50000形VSE車
編成 10両連接車
起動加速度 2.0km/h/s[1]
営業最高速度 110km/h
設計最高速度 130km/h[1]
減速度 4.0km/h/s[1](常用最大)
4.5km/h/s[1](非常)
編成定員 358名[1]
編成長 146.8m[1]
最大寸法
(長・幅・高)
18,200mm×2,800mm×3,975mm(先頭車)[2]
13,800mm×2,800mm×4,100mm(集電装置付中間車)[2]
13,800mm×2,800mm×3,915mm(集電装置無し中間車)[2]
編成質量 260.2t[1]
軌間 1,067mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
モーター出力 135kW端子電圧375V[1]
主電動機 三菱電機 MB-5110-A
全密閉自己通風式かご形三相誘導電動機[2]
歯車比 79:19=4.16[1]
制御装置 東芝 SVF-073A0[2]
純電気ブレーキ対応、定速運転・抑速制動機能付IGBT素子2レベルVVVFインバータ制御
駆動装置 WN駆動方式[1]
台車 日本車輛製造 ND-735(連接電動台車)[2]
日本車輛製造 ND-735T(連接付随台車)[2]
日本車輛製造 ND-736T(先頭付随台車)[2]
ブレーキ方式 回生制動併用電気指令式電磁直通制動[1]
保安装置 OM-ATS, D-ATS-P
製造メーカー 日本車輌製造
Wikipedia blueribbon W.PNG
第49回(2006年
ブルーリボン賞受賞車両

小田急50000形電車(おだきゅう50000がたでんしゃ)は、2005年以降に小田急電鉄(小田急)が運用している[3]特急形車両ロマンスカー)である。

小田急のフラッグシップモデルとして位置づけられ[4]箱根方面への特急ロマンスカーに使用されていた10000形(HiSE車)の置き換え[5]とともに、箱根の魅力向上と活性化[6]、さらには小田急ロマンスカーブランドの復権[7]を目的として登場した。デザインや設計を全面的に見直し[5]、最新技術などを取り入れる[8]とともに、過去に小田急で試験を行なっていながら採用されていなかった技術も採用され[9]、旅客設備についても最高のものを目指した[10]。客室内の様式から "Vault Super Express" (略して「VSE」)という愛称が設定され[11]、2005年には照明学会より「照明普及賞優秀施設賞」を[12]、同年度には日本産業デザイン振興会より「グッドデザイン賞」を[13]、2006年には鉄道友の会より「ブルーリボン賞」を[11]、2006年度に香港デザインセンターより「アジアデザイン大賞」を[13]、2007年にはドイツ・ハノーファー工業デザイン協会より "iF product design award 2007" を受賞した[14]

本項では以下必要に応じて、特定の編成を表記する際には新宿寄り先頭車両の車両番号と両数を組み合わせて「50002×10」のように表記する。また、初代3000形は「SE車」、3100形は「NSE車」、7000形は「LSE車」、10000形は「HiSE車」、20000形は「RSE車」、30000形は「EXE車」、本形式50000形は「VSE車」、箱根登山鉄道箱根湯本駅へ乗り入れる特急列車については「箱根特急」、小田原方面に向かって右側を「山側」・左側を「海側」と表記する。

目次

[編集] 登場の経緯

小田急では、1996年以降に特急車両としてEXE車を導入していたが、EXE車ではそれまでの小田急ロマンスカーの特徴であった前面展望席連接構造も導入しなかった[15]。ところが、箱根特急の2003年の直通利用者数は300万人程度と[16]、1987年の550万人という数値と比較すると45%も落ち込んでいた[16]。箱根を訪れる観光客も1991年をピークとして減少傾向ではあったものの、観光客全体の減少率は15%弱程度であり[16]、観光客の減少以上に箱根特急の利用者数は減少していた[16]。この理由として、EXE車には「小田急ロマンスカーのイメージ」とされた展望席が存在しなかったことも挙げられた[16]

一方で、前面展望席のある特急車であるHiSE車は更新を検討する時期となっていた[5]が、HiSE車は高床構造であることからバリアフリー対応が困難とみられた[5]。このため、HiSE車の更新は行なわずに箱根特急に特化した新形特急車両で置き換える方向性が決定した[5]。新形特急車両では「前面展望席を設置すること」と「連接式を採用すること」を条件として、岡部憲明にデザインや設計を依頼した[5]。岡部にとっては鉄道車両のデザインは初めてとなる[5]

また、小田急では1960年代に数次にわたって車体傾斜制御の試験を行なっていた[9]が、車体傾斜そのものの効果は確認できたものの[17]、当時は曲線進入の検知の技術が未成熟であったため採用が見送られた経緯があった[18]。新形特急車両では、乗り心地と快適性の向上をねらって車体傾斜制御と台車操舵制御を採用することになった[9]

こうして、新たなフラッグシップモデルとして登場したのがVSE車である。

[編集] 車両概説

VSE車は10両連接の固定編成で、形式は先頭車が制御電動車、中間車は電動車で、形式はいずれもデハ50000形である。編成については、巻末の編成表を参照のこと。検査時には5号車と6号車の間で分割を行なう[19]。NSE車・LSE車・HiSE車は11両連接車であったが、左右対称のデザインとするために岡部は偶数両数にすることを希望し[20]、これが受け入れられたために10両連接車となった[20]

[編集] 車体

先頭車は車体長17,800mm[21]・全長は18,200mm[2]、中間車は車体長13,400mm[22]・全長13,800mm[2]で、車体幅は2,800mmである[2]軸重の制約条件をクリアしつつ車体長を延長するため[8]、車体は全てアルミニウム合金製とし[8]、展望室部分はシングルスキン構造[8]・それ以外の部分はダブルスキン構造とした[8]。扉や窓部分については、厚さ40mmのアルミニウム合金製厚板から削りだすことで、必要な車体剛性を確保した[8]。また、床下を覆うカバーとして、先頭部はボルト固定式・それ以外の箇所は掛け金錠式の台枠下部覆い(スカート)を設置した[8]

先頭部分の比較本形式(左)の先頭は、それまでの車両(右・HiSE車)と比較して曲線的なデザインとなっている 先頭部分の比較本形式(左)の先頭は、それまでの車両(右・HiSE車)と比較して曲線的なデザインとなっている
先頭部分の比較
本形式(左)の先頭は、それまでの車両(右・HiSE車)と比較して曲線的なデザインとなっている

先頭部の形状は運転室を2階に上げて最前部まで客室とした前面展望構造[22]で、3次元曲線で構成された流線形である。先頭部には格納式連結器を装備し[22]、その前部に標識灯装置を設置した[22]前照灯ディスチャージヘッドランプ (HID) を採用した[11]。前面のデザインは、キャラクター性を持たせないよう考慮された[23]

側面客用扉は各車両とも1箇所で、空気駆動式の片引き式プラグドアが採用された[24]。有効開口幅は先頭車である1号車・10号車は660m[10]、3号車・8号車については車椅子利用にも対応した900mm[25]、それ以外の車両については750mmとした[10]。通常は1号車・10号車の扉は旅客の乗降には使用しない[11]。各扉にはドアチャイムを設置する[24]とともに、視覚障害者向けに誘導用チャイムも設置した[24]。側面窓の配置については、窓枠の幅4,000mm[8]・高さ700mm[10]とし、これを連続させた。岡部は当初8,000mmスパンの窓幅を要求した[26]が、技術的に不可能であった[26]。3号車・8号車については窓高さが異なる。1号車・10号車の連結面側車端部には610mm幅の乗務員扉を配置した[10]。車両間の貫通路は700mm幅である[10]

塗装デザインはシルキーホワイトを基調にバーミリオン帯とグレーの細帯を入れたもので[27]、小田急では「バーミリオン・ストリーム」と称している[8]。小田急沿線の風景に調和する外観となることをねらったもの[8]だが、「オレンジバーミリオン・ホワイト・グレーの3色」という組み合わせは、結果的にSE車・NSE車・LSE車で使用されている3色と同系色となった[27]

[編集] 内装

室内は、住空間のように落ち着いた雰囲気で[1]、リビングルームのような明るいくつろぎ感のある移動空間となることを図った[1]

座席 座席 座席
座席
座席は5度外側を向いている
サルーン

座席回転式リクライニングシートを採用、HiSE車ではシートピッチが970mmだった[1]ものを、1・10号車の展望席では1,150mm[1]、1・10号車の一般客室では1,010mm[1]、中間車では1,050mm[1]に拡大した。また、リクライニングをさせると座面後部が沈み込む「アンクルチルトリクライニング機構」が採用された[1]。座席の表地は明るいオレンジ色を基調とし[1]、シートカバーもオレンジ色で "VSE" と刺繍が入ったものとした[25]。2人がけの中間部には肘掛は設置されていない[28]。座席背面はブルーグレーのモケットとし[28]、ハードメイプルの格納式テーブルを設置した[28]。8号車の一般客室には車椅子対応座席を設けた[29]。なお、座席は岡村製作所天龍工業の共同制作で[30]、座席表地は住江織物が開発したものを採用した[30]。展望室以外の座席については、窓側に5度の角度をつけて固定される構造とし[1]、通路側の座席に座った場合でも窓からの景色が楽しめるように配慮された[1]

3号車の客室は4人ボックスシートに大きなテーブルを設けたセミコンパートメントとし[8]、海側に2室・山側に1室配置した[29]。営業上は「サルーン」と呼称する[29]

展望室 車内
展望室
車内

列車両端の展望室については、LSE車・HiSE車では定員が14名であったものを16名に増加させた[10]。また、展望室の座席は団体利用時に対応し[31]、全てを通路側に向けて固定することが可能である[31]

天井高さは展望室および3号車と8号車を除いて2,550mmを確保し[8]、大きな円弧を描くボールト天井とした[11]。これが車両の愛称である "Vault Super Express" の由来である[13]。天井板は継ぎ目を極力少なくし[1]、電球色の蛍光灯による間接照明とした[1]。側壁は窓周りがプライウッド[28]、窓下はブルーグレイのモケット張りとした[28]。床には青系統のカーペットを敷きつめ、海側の座席(A席・B席)の下のみ波模様を入れたものとした[31]。一般客室の荷物棚下部と側面窓上には、電球色の発光ダイオード (LED) 式直接照明装置を設置した[13]。3号車と8号車では機器配置の関係で天井高さは2,210mmに抑えられており[22]、天井の意匠は飾り天井とした上でダウンライトを設置し、さらに天窓を設けた[21]。室内妻壁は木目調と白を使い分け[28]、通路上には車内案内表示用に22インチ液晶ディスプレイ(ただし3号車と8号車は15インチ)を設置した[7]。出入台部分は床を石張りとした上で木製の手すりを設置した[32]

カフェカウンター カフェカウンター カフェカウンター
カフェカウンター
喫煙コーナー
客室妻板の液晶ディスプレイ

3号車と8号車にはカフェカウンター・男女共用トイレ・男性用トイレ・女性用トイレ・化粧室・喫煙コーナーなどの車内サービス設備を集約して配置した[19]。VSE車では、かつて行なわれていた「走る喫茶室」と同様のシートサービスを行なうことになり[33]、カフェカウンターは車内販売のシートサービス拠点となる[34]。注文から提供までの迅速化のためHiSE車以来のオーダーエントリーシステムを採用した[22]。これはカフェカウンターに設置したオペレーションマシンと各車両を無線LANで接続し[22]、各車両で販売員が注文内容をハンディターミナル端末に入力して送信すると、カフェカウンターに注文内容が送られるものである[22]。男女共用トイレは車椅子にも対応し、オストメイトやベビーベッドも備えた「ゆったりトイレ」とした[35]ほか、洗面所のカーテンはシースルーカーテンとした[29]。VSE車では小田急ロマンスカーでは初めて客室内を全面禁煙とし[16]、3号車と8号車のカフェカウンターの斜向かいに喫煙コーナーを設置した[16]。また、3号車と8号車の出入台にはタッチパネル式表示装置を設けて、箱根の観光案内や前面展望映像などが表示できるようにした[7]。8号車の出入台には車椅子用の可動式ステップを設置した[13]

[編集] 主要機器

[編集] 乗務員室

運転席へのはしご

運転士が乗務する乗務員室(運転室)は、NSE車・LSE車・HiSE車と同様に2階に上げた構造で[22]、展望室の天井高さを確保するために運転席は中央に配置し[22]、小田急では初めて速度計などの計器類もモニタ画面に表示する「グラスコックピット方式」とした[4]。運転席正面にはTIOS(列車情報小田急型管理装置)画面とバックアップ用の2台の画面を配置し[22]、運転情報画面は右側に[22]、前方と後方を監視するカメラのモニタ画面を左側に設置した[22]。力行・制動を操作するマスター・コントローラーのハンドルは左側に設置した[22]。運転室への出入りは格納式の梯子を使用するが、梯子は自動的に展開・収納するものとした[22]。また、運転室の窓が全て固定化されたことから[11]、後部2箇所に非常用脱出口を設けた[22]車掌が乗務する乗務員室(車掌室)は、1号車と10号車の連結面寄りに設置した[4]

[編集] 電装品

主電動機については、走行音を抑えるために低出力モーターを多数使用する方式とした。採用された主電動機は出力135kWかご形三相誘導電動機[24]三菱電機製MB-5110-A形[2]で、各電動台車に2台ずつ装架した[11]。回転時の冷却ファン騒音抑制を図る目的で冷却方式を全密閉自己通風式[36]とした低騒音型主電動機で[24]、小田急での全密閉式主電動機の採用は初めてである[13]

制御装置東芝製のIGBT素子2レベルVVVFインバータ制御装置[22]であるSVF-073A0形を採用[2]、2・4・7・9号車に搭載した[11]。SE車からEXE車までの特急車両に引き続き東芝製の採用で、1台で4個の電動機の制御を行う方式(1C4M)である[11]。乗り心地向上を図ってジャーク制御を行なうようにした[11]。駆動装置はSE車からEXE車までの特急車両とは異なり通勤車と同一のWNドライブが採用された[11]。主電動機の回転数を低く抑えて機械音の低減を図るため、歯数比は79:19=4.16に設定した[24]

制動装置(ブレーキ)については、応荷重装置・電空演算機能付遅れ込め方式電気指令式電磁直通制動とした[11]。ブレーキ圧力はTIOSを通じて各車軸ごとに要求されるブレーキ力に応じた制御が行なわれる方式で[24]、全ての車軸に滑走防止弁を装備した[11]

[編集] 台車

電動連接台車 ND735

VSE車では、SE車からHiSE車まで継続して採用されていた連接構造を復活させた[11]。ただし、小田急側では「連接式をやめたつもりはなく、従ってVSE車で復活したわけでもない」としている[37]

台車は、電動連接台車がND-735[2]、付随連接台車がND-735T[2]、付随先頭台車がND-736Tで[2]、いずれも小田急においては初の採用となる日本車輌製造製の積層ゴム軸箱片支持式ボルスタレス台車である[38]。車輪径は先頭台車のみ展望室の天井高さを確保するため762mm[1]、連接台車は860mmである[9]。編成両端および中間(5号車と6号車の間)のみ付随台車で[19]、それ以外は電動台車である。

車体支持の位置を車両の重心に近い位置とするため[39]、VSE車では連接台車について空気ばねによる車体支持位置を通常より約1m高い位置とした[11]。この支持方式は、小田急では1961年にデユニ1000形の旧車体を活用して行なった[40]「空気ばね式自然振り子車」の試験時にも使用されていた方式である[41]。また、VSE車では台車操舵制御が採用された[9]。これは、台車ごと操舵制御を行なう仕組みで[42]、連接台車には車体傾斜制御用のアクチュエーターと台車操舵制御用のダンパを装備[9]、曲線走行時の横圧とキシリ音の軽減を図った[9]上で、走行安定性の向上をねらった[9]。先頭台車にはフルアクティブ制振用ダンパを装備することで蛇行動の大幅な抑制を図った[9]

[編集] 車体傾斜制御

小田急では前述の通り1961年に「空気ばね式自然振り子車」の試験を行なっていた[40]が、自然振り子式は振り遅れの問題があると判断された[41]。1962年にはデニ1101を使用した「油圧式強制振り子車」の試験が[43]、1970年にクハ1658を使用して「空気ばね式強制振り子車」の試験が行なわれ[43]、車体傾斜の有効性は確認できた[17]ものの、曲線進入検知や集電装置の変位、さらにフェイルセーフの問題があり[39]、これまで実用化はされていなかった[17]。しかし、これらの問題がその後の電子技術の発展等に伴い解決された[39]ことから、空気ばね式の車体傾斜制御がVSE車で採用された[9]。なお、採用に向けた事前確認として、2003年にはLSE車を使用して車体傾斜制御と高位置空気ばね台車、集電装置(パンタグラフ)の変位について検証が行なわれた[18][44]

VSE車では全ての台車に車体傾斜制御用のアクチュエーターを装備し[9]、連接台車は最大2度[45]、先頭台車は最大1.8度の傾斜を行なう[45]。この機構によって、曲線走行時の遠心力を示す左右定常加速度は、従来の車両では0.08GだったものがVSE車では0.046Gにまで減少された[45]。車体傾斜制御の地上位置検知は、車軸回転数から計算された走行距離を、軌道保守用に設置した地上設備より地上位置信号を受信して補正する[7]もので、クヤ31「テクノインスペクター」で使用しているシステムを採用した[7]。実際の車体傾斜については、曲線に進入した車両から順に傾斜制御される[45]が、1号車・2号車と9号車・10号車は同時に制御される[45]

小田急では「高位置空気ばねによる車体傾斜制御と連接台車の組み合わせは世界初」としている[13]

[編集] 空調装置

冷房装置については、3号車と8号車以外は2,550mmの天井高さを確保するため、23,000kcal/hの冷凍能力を有するセパレート式冷房装置のCU231形を採用した[7]。室内機を出入台屋根上(1号車と10号車は車掌室上)に搭載し[7]、室外機は各車両の床下に設置した[7]。室内機には出力7.5kWの電気ヒーターを2台内蔵している[7]ほか、空調装置内に加湿装置も設けられ、加湿用の水タンクが床下に設置された[7]

編成両端の展望室には、4,500kcal/hの冷凍能力を有するセパレート式冷房装置のCU232形を採用[7]、室内機を展望席に、室外機は床下に設置した[7]。室内機には出力4.0kWの電気ヒーターを1台内蔵している[7]

3号車と8号車では、セミ集中式冷房装置として4,300kcal/hの冷凍能力を有するCU195G形を各車両3台搭載した[7]。出力2.5kWの電気ヒーターを2台内蔵している[7]

換気装置は全車両に設置し、TIOSにより乗車率に応じた制御が行なわれるようにした[7]。また、3号車と8号車では喫煙コーナー専用の換気装置も設置した[7]

[編集] その他機器

展望室最前部と運転席の外側両脇には監視カメラを設け、運転室に設置した機器に表示させることで、運転視界の死角をカバーすることを図った[7]。展望室最前部のカメラ映像は、3号車と8号車のタッチパネル式表示装置の画面にも送信される[7]。なお、車内案内表示・タッチパネル式表示装置・カメラ映像は「TVOS」 ("Train Vision Odakyu System") により制御される[7]

集電装置(パンタグラフ)は、車体傾斜に対応して摺り板の長さをそれまでの500mmから750mmに拡大したシングルアーム型を採用[24]、3号車と8号車の屋根上に2基搭載した[19]。補助電源装置は出力210kVAのIGBT素子式の静止形インバータ (IGBT-SIV) を5号車と6号車に搭載した[46]電動空気圧縮機 (CP) については交流スクロール式のRC1500形を1号車・5号車・10号車に搭載した[46]

警笛については、通常の空気笛と2代目3000・4000形同様の電子笛のほか、SE車からRSE車まで設けられていた補助警報音の音色をリニューアルしたミュージックホーンが採用された[47][注釈 1]

[編集] 運用上の特徴

車内で注文した飲料(テーブル上右側)は専用のガラスカップで提供される

VSE車では、「箱根観光特急」として明確な差別化を図るため[6]、車両運用は箱根特急に特化したものとした[6]

また、サービス面においても他の特急ロマンスカーとは異なるものとした[6]。通常の特急ロマンスカーではワゴンによる車内販売である[6]が、VSE車を使用する箱根特急では、かつて行なわれていた「走る喫茶室」と同様のシートサービスを行ない[33]、飲料はVSE専用のガラスカップによって提供される[34]

乗務員についても、VSE車専任の運転士と車掌は社内で実施される筆記試験と面接試験に合格した者が選抜され[48]、外部講師によりホスピタリィマインド教育を受けた上でVSE車に乗務する[48]。また、制服についてもVSE車専用のものを用意した[16]

[編集] 沿革

第1編成(50001×10)は2004年11月23日に小田急線に入線した[49]が、このときは車体全体が保護シールで覆われた状態で甲種輸送されていた[50]。2005年2月6日には第2編成(50002×10)が入線した[49]。入線後の試運転は、定期運用では入線しない江ノ島線[51]多摩線[52]でも行なわれた。

2005年3月19日より運用を開始し、平日5往復・土休日6往復の固定運用に投入された[53]

『小田急時刻表 2009年ダイヤ改正号』では、運転日に関わらずVSE車が使用される列車は、

  • 平日:「スーパーはこね13号」[54]→「はこね14号」[55]→「はこね27号」[54]→「はこね28号」[55]→「はこね41号」[54]→「はこね42号」[55]
  • 土休日:「スーパーはこね13号」[56]→「はこね14号」[57]→「スーパーはこね27号」[56]→「スーパーはこね28号」[57]→「はこね41号」[56]→「はこね42号」[57]

である。

また、VSE車による運用となっているが「運転日により列車の車型が変わることがある」と注釈が入っている列車は、

  • 平日:「はこね17号」[54]→「はこね18号」[55]→「はこね31号」[54]→「はこね32号」[55]
  • 土休日:「スーパーはこね9号」[56]→「はこね10号」[57]→「はこね23号」[56]→「スーパーはこね24号」[57]→「はこね37号」[56]→「はこね38号」[57]

である。

2005年3月19日に行なわれた出発式 2006年9月10日に行なわれたブルーリボン賞受賞記念式典
2005年3月19日に行なわれた出発式
2006年9月10日に行なわれたブルーリボン賞受賞記念式典

2006年には鉄道友の会より、第49回ブルーリボン賞を授与された[11]。2007年1月1日には「ニューイヤーエクスプレス」に運用され、営業運行では初めて江ノ島線にも入線した[58]。2007年3月18日から特急ロマンスカーは車内全面禁煙とすることとなり、喫煙コーナーは使用停止となり[59]、その後はパンフレットスペースとして使用されている[19]。また、2008年3月には3号車に自動体外式除細動器 (AED) が設置された[46]

2010年1月中旬より、LSE車とHiSE車は部品の一部に不具合が見つかったことを理由として[60]全面的に運用から離脱していた。その最中の同年1月20日には本来LSE車・HiSE車で運行される「ホームウェイ75号」に使用された[61]が、これは営業運行では初の多摩線入線となった。同年9月には50002×10が日本車輌でD-ATS-P設置改造が行なわれ[62]、2011年1月には50001×10も日本車輌で同様の改造が行なわれた[63]

[編集] 編成表

凡例 
Mc …制御電動車、M …電動車、CON…制御装置、SIV…補助電源装置、CP…電動空気圧縮機、PT…集電装置
乗 …乗務員室、展 …展望席、個…サルーン、喫…カフェカウンター、煙…喫煙コーナー、WC…トイレ化粧室
 
新宿
号車 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
形式 デハ50000 デハ50000 デハ50000 デハ50000 デハ50000 デハ50000 デハ50000 デハ50000 デハ50000 デハ50000
区分 50900
(M10c)
50800
(M9)
50700
(M8)
50600
(M7)
50500
(M6)
50400
(M5)
50300
(M4)
50200
(M3)
50100
(M2)
50000
(M1c)
車両番号 50901
50902
50801
50802
50701
50702
50601
50602
50501
50502
50401
50402
50301
50302
50201
50202
50101
50102
50001
50002
搭載機器 CP CON PT CON SIV,CP SIV CON PT CON CP
自重 29.7t 24.7t 25.7t 25.7t 24.5t 24.3t 25.5t 25.6t 24.6t 29.9t
車内設備 乗、展   個、喫、煙、WC         喫、煙、WC   乗、展
定員 48 40 12 40 40 40 40 10 40 48

[編集] 脚注

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[編集] 注釈

  1. ^ 回路は電子笛と共用で(『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.190)、警笛と別装置ではない。

[編集] 出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 『鉄道ジャーナル』通巻464号 p.38
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.318
  3. ^ 『鉄道ジャーナル』通巻464号 p.36
  4. ^ a b c 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.52
  5. ^ a b c d e f g 『鉄道ジャーナル』通巻464号 p.34
  6. ^ a b c d e 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.29
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[編集] 参考文献

[編集] 書籍

[編集] 雑誌記事

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  • 鶴通孝・山﨑友也「列車追跡シリーズ548 何度でも乗ってみたい特急ロマンスカー わくわくの85分」、『鉄道ジャーナル』第464号、鉄道ジャーナル社、2005年6月、 25-35頁。
  • 寺西知幸「沿線に住んで20年 江ノ島線の変化を振り返る」、『鉄道ピクトリアル』第829号、電気車研究会、2010年1月、 158-164頁。
  • 中山嘉彦「小田急車両 -音と色-」、『鉄道ピクトリアル』第829号、電気車研究会、2010年1月、 189-191頁。
  • 「VSE&MSEの車内を見る」、『鉄道ピクトリアル』第829号、電気車研究会、2010年1月、 238-239頁。
  • 「Railway Topics 『小田急LSE・HiSEが運用から外れる』」、『鉄道ジャーナル』第522号、鉄道ジャーナル社、2010年4月、 147頁。
  • 「SPECIAL INTERVIEW 建築デザイナー 岡部憲明氏」、『鉄道のテクノロジー』第12号、三栄書房、2011年10月、 26-31頁、 ISBN 9784779613494
  • 「VSEの車体傾斜システム」、『鉄道のテクノロジー』第12号、三栄書房、2011年10月、 32-39頁、 ISBN 9784779613494
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