動力集中方式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
機関車牽引の客車列車の例
準動力集中方式の列車の例(TGV Duplex)。先頭車は運転席と動力部分しかない。

動力集中方式(どうりょくしゅうちゅうほうしき)とは、列車が1両ないし2両程度の動力車車両内部に客室荷物室等が全くない、または半分程度かそれ以下の機関車)によって牽引(または推進)される方式のことである。日本では貨物列車を除いて数を大幅に減らしているが、世界中の多くの鉄道を走る列車のうち、貨物列車はほぼ全てこの方式で、旅客列車もこの方式によるものが多い。

動力集中方式を採用している旅客列車の例として、日本のブルートレインやフランスのTGVなどがあげられる。

フランスのTGVやドイツICE 1イギリスHSTなどでは両端の動力車の間に付随客車を配置した固定編成が採用されており、この方式については準動力集中方式とも呼称される[1][2]

対をなす形態は動力分散方式である。

長所と短所[編集]

動力分散方式に比して述べる。

長所[編集]

短所[編集]

  • 列車重量軸重)が動力分散方式より大きい。
    • 動力車(機関車)が極端に重く、客車が逆に軽くなる。また、機関車の重量ゆえに、地盤の軟弱な地域での高速走行では振動の問題が発生するほか、橋梁も許容荷重を大きくとる必要がある。
  • 原理的に全体の牽引力が許容軸重と機関車の動軸数で制約されるため、起動加速度が動力分散方式より悪くなり、特に上り勾配(上り坂)では動力分散方式に比べて速度を出しにくい。動力分散方式#長所も参照。
  • (動力分散方式の中でも電車に限定して比較した場合)回生ブレーキを有効に用いることができない。
    • 電気機関車の場合、機関車には回生ブレーキが搭載されている場合が多いが、多くの客車・貨車には搭載されていない。そのため、編成全体では空気ブレーキ主体で停止するので、エネルギーの無駄が多く、ブレーキシューの消耗などの問題も出る。日本の場合は、曲線(カーブ)や下り勾配(下り坂)、高速通過困難な分岐器などが多く、ブレーキ操作を多く必要とするため、なお一層不利である。
  • 日本式のワンマン運転が困難である。
  • 終着駅スイッチバックで折り返す際、機関車の交換や機回しが必要。

プッシュプル方式[編集]

オーストリア連邦鉄道のプッシュプル列車
アメリカ合衆国シカゴメトラのプッシュプル列車
大井川鐵道のペンデルツーク式のプッシュプル列車
DD51形によるプッシュプル列車

動力車を両端に組成するか、運転席を設けた制御車と動力車を組み合わせる方式。両端に運転席を配することで短所の一つとされる「折り返し運転を行う際の、機関車の交換・機回し」が解消される形となる。

本来のプッシュプルとは後者の形式を指すが、後に高出力といずれの方向にも安定して高速走行を行うという目的で両端に動力車を連結した前者の形式が考案された。ドイツ語圏では後者の方式による列車を左右に行き来する様子から振り子に喩え、「ペンデルツーク」 (Pendelzug) と称する(曲線の通過速度を高める目的で車体を傾斜させる「振り子式車両」とは意味が異なる)。英語では前者のうち特に、先頭の動力車のみ動作する方式をトップ・アンド・テイル (en:Top and tail) と呼ぶ。

前者は、主に欧州高速列車TGVICE 1ETR500インターシティー125など)が採用している。列車の両端を動力車にして客車を挟み込むようにしており、10両であれば実際に乗客を扱えるのは8両分だけであるため、動力分散型よりも旅客定員は少ない。

後者は、欧州および米国各地の都市圏普通列車を中心に採用されている。動力車を遠隔操作するという点では動力分散方式に近い形を採るが、制御できる機関車は限定される。一般には動力車の協調運転と同じである。力学的に不安定で高速運転には向かないが、スウェーデンX2000ドイツICE 2イギリスインターシティー225など最高速度200 km/h で運行している例がある。ただしこれについては、ヨーロッパの車両は連結面に緩衝器(バッファー)を装備していることや、急曲線や急勾配が無い線形が有利なことなど、日本に比して安定性が確保しやすいという条件の差もある。日本や、日本と同じ自動連結器を採用する米国では、連結両数は多くはなく、最高速度も低い[4]

日本では後者の方式が大井川鐵道井川線の全列車、釧網本線富良野線で観光用トロッコ列車「ノロッコ号」や京都市嵐山にある嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車などに見られる。

またJR東日本215系電車JR貨物M250系電車は動力分散方式であるが、前後に2両ずつの動力車を集中配置しており前者の方式に類似した点もある。

プッシュプル方式では動力車の客車寄りの半分程度またはそれ以下の部分を機器搭載スペースとせず客室や荷物室等を設けている場合もあり、その例には韓国の「セマウル号」 (DHC) 、往年の西ドイツTEE用車両であった西ドイツ国鉄VT11.5型気動車が挙げられる。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 石井幸孝ほか 『幻の国鉄車両』 JTBパブリッシング〈キャンブックス〉、2007年、150-153頁。ISBN 978-4-533-06906-2
  2. ^ 渡邉朝紀「ICE列車ファミリー」、『電気学会誌』第117巻第5号、電気学会1997年、 289-292頁。
  3. ^ 鉄道ピクトリアル』785号 P.10 - 12。
  4. ^ JR東日本尾久車両センター - 上野駅間の推進回送には長編成の列車が多いが、その運転速度は最高でも45 km/h に抑えられている。