JR西日本283系電車

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JR西日本283系電車
JR西日本283系電車
JR西日本283系電車
編成 基本編成:6両 (2M4T)
付属編成:3両 (1M2T)
営業最高速度 130(曲線通過+30km/h)km/h
設計最高速度 130(曲線通過+35km/h)km/h
編成定員 310人(普)+32人(グ)=342人
全長 21,300 mm(クロ282,283)[1]
20,850 mm(クハ282, 283)[1]
20,800 mm(モハ283, サハ283)[1]
全幅 2,850 mm
全高 3,390 mm
車体材質 普通鋼
編成質量 218.5 t
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V
編成出力 1,760kW (2M4T)
880kW (1M2T)
主電動機 かご形三相誘導電動機WMT104 (220kW) [1]
歯車比 5.57[1]
駆動装置 WNドライブ
制御装置 PWMIGBT-VVVFインバータ
WPC8 (1C1M 静止形インバータ一体型)
台車 円筒案内式制御振子ボルスタレス台車(ヨーダンパ付
WDT57・WTR241
制動方式 電力回生併用電気指令式空気ブレーキ抑速付)
保安装置 ATS-P, ATS-SW
製造メーカー 川崎重工業近畿車輛日立製作所
オーシャンアローのシンボルマーク

283系電車(283けいでんしゃ)は、西日本旅客鉄道(JR西日本)の直流特急形車両である。

概要[編集]

京都大阪から南紀方面への特急くろしお」「スーパーくろしお」には381系が使用されていたが、高速道路の整備が進められ、その対抗上、質の高いサービスの提供とさらなるスピードアップなどにより競争力の増強のため、観光列車にふさわしい車両として設計され、川崎重工業近畿車輛日立製作所で製造された。

オーシャンアロー (Ocean Arrow) の車両愛称があり、当時は「海と太陽が大好きな列車」のキャッチフレーズがあった。

構造[編集]

南紀地方は、関西でも有数のリゾートエリアで観光資源も多くあるため、「リゾート」と「スピード感」を反映させ、JR西日本の車両のグランドコンセプトである「明るく、静かで快適な車両」を基本コンセプトに、以下のデザインコンセプトも取れ入れられた。

  1. わくわくするような車両とすること
  2. 洗練されたおしゃれな、品のあるリゾートとすること
  3. 「スピード感」を感じさせる形状として表現すること

車体[編集]

本系列は振り子式車両で、曲線通過時の振子角度5度を考慮して車体高および車体幅が若干縮小され、丸みを帯びた形状となっている。基本的に普通鋼を使用しているが、腐食を考慮して、屋根と床板にはステンレスが使用されている。また、車体および機器は耐寒・耐雪構造となっている。

基本編成の新宮向き先頭車両と付属編成のうち1本(A931編成)の京都向き先頭車両は非貫通のパノラマ型グリーン車で、そのほかの先頭車両については貫通型となっており、幌は収納式としている。

最高速度は130km/hで、曲線通過速度については登場時は本則+35km/hを目標としていたが、2008年時点では最大で本則+30km/hである。紀勢本線(きのくに線)の半径400mのカーブが連続する区間を100km/hで走行することが可能である。130km/h運転は東海道本線JR京都線)外側線と紀勢本線の一部区間で実施されている。

種別(列車名)・行先表示器は221系以来の標準である、種別(列車名)は幕式、行先はLED式となっている。車体塗装は、南紀の海の色をイメージしたオーシャングリーンと、砂浜を連想させるビーチホワイトで[2]、側面にはイルカをイメージしたシンボルマークがある。

681系と同じ旋律ミュージックホーンが引き続き採用された。

主要機器[編集]

振り子車両による車両の低重心化、左右の重量均等化および床下機器艤装スペースの関係から、電動車両に車両制御装置 [3]と補助電源装置、隣接する付随車に空気圧縮機を搭載するM+Tユニットを構成している)[4]

車両制御装置 (WPC8)は223系1000番台をベースとしており、主回路部はIGBT素子による3レベルPWMインバータ1基で1基の電動機を制御する、いわゆる 1C1M 構成の VVVF インバータを4基搭載する。これに対し補助電源部は130kVA(交流440V)、10kW(直流100V)容量を有している。主回路部と同じくIGBT素子を用いた3レベル PWM インバータを使用し、補助電源部が故障した際には主回路用インバータを CVCF 制御することで補助電源バックアップとしている。

一部の付随車両には、往復単動式空気圧縮機 (WMH3093-WTC2000D) を搭載しているが、すべての付随車両に空気圧縮機と除湿装置が搭載できるように考慮されている。

集電装置にはJR西日本の在来線電車では初めてシングルアーム式パンタグラフ (WPS28) が採用された。

台車[編集]

WTR241
(クハ283-501)

台車は振子機能を搭載しており、電動車両はWDT57を、付随車両はWTR241を装着している。乗り心地の改善を図るために、381系電車に倣って振り子式車両として設計されているが、制御式自然振り子機構により曲線形状や曲線通過速度に応じた振子機能の制御が行われているため、乗り心地は381系より改善されている。コロよりも転がり抵抗が半分程度となるベアリングをガイドに使用し、動作をスムーズに行えるようにしている。

軸ばね支持は、円筒積層ゴムとコイルばねの併用、基礎ブレーキは、WDT57がユニットブレーキ、WTR241が1軸あたり2枚のディスクブレーキとした[5]。保守の容易化の観点から、けん引装置は1本リンク方式を採用している[5]。乗り心地改善のため、ヨーダンパおよびアンチローリング装置を備えている[5]

車内[編集]

展望ラウンジ
グリーン車車内

座席2列あたり窓1枚のレイアウトを採用している。各車両の両端にはLED式の車内案内表示装置が設置されている。

普通車は座席配列は2列+2列でシートピッチは970mmとなっている。回転式リクライニングシートを装備し、座席モケットはパープル系統とブルー系統の2種類がある。

基本編成の3号車には、太平洋の景色が見渡せるよう、座席が西側向きに固定されたフリースペースの展望ラウンジが設置されており、海側には1人掛けの座席が4席、山側には2人掛けのソファーが2つ設置されている。このため、3号車の4号車寄りには乗降用ドアがない。

グリーン車座席配列は1列+2列とし、シートピッチは1,160mmで681系・281系と同等である。普通車と同じく回転式リクライニングシートを装備する。ブラウン系統でまとめられており、を装備する。肘掛部分にはテーブルが収納されており、引き出して使用することが可能である。床の絨毯には「OCEAN ARROW」と記された模様がある。

製造当初は、グリーン車中間に喫煙席と禁煙席を分離する仕切りがあり、乗務員室側を喫煙席、デッキ側を禁煙席として使用する予定であったが、苦情があったため、グリーン車は全席禁煙とした[6]。これにより1998年10月から12月にかけて仕切りは撤去された[7][8]。仕切りがあった時期は喫煙席と禁煙席の座席配列が1列+2列と2列+1列で異なっており、この名残で仕切り撤去後も車両中央部分で座席の配列が左右入れ替わっているが、振り子車両であることから車体のバランスを均等にする目的でこのような配列を採用している。

編成・形式[編集]

モハ283形
普通席を備える中間電動車。車両制御装置、集電装置(新宮寄り)などを搭載する。
0番台 (M)
乗降扉が2か所設置されている。定員72名。
200番台 (M2)
車販準備室が設置されている。定員68名。
300番台 (M3)
ラウンジが設置されている。定員64名。
クロ283形 (Tsc)
グリーン席を備える奇数向き(新大阪・京都向き)非貫通型制御付随車。運転台、便所・洗面所、自動販売機が設置されている。定員32名。
クロ282形 (Tsc')
グリーン席を備える偶数向き(新宮向き)の非貫通型制御付随車。運転台、便所・洗面所、公衆電話が設置されている。定員32名。
クハ283形 (Tc5)
普通席を備える奇数向き(新大阪・京都向き)の貫通型制御付随車。運転台、便所・洗面所・自動販売機が設置されている。定員60名。
クハ282形
普通席を備える偶数向き(新宮向き)の貫通型制御付随車。電動空気圧縮機などを搭載する。
500番台 (Tc'5)
運転台、便所・洗面所・公衆電話が設置されている。定員60名。
700番台 (Tc'7)
運転台、便所・洗面所・公衆電話・多目的室・車椅子対応設備が設置されている。定員50名。
サハ283形
普通席を備える中間付随車。空気圧縮機などを搭載する。
0番台 (T)
便所・洗面所・荷物スペースが設置されている。定員68名。
200番台 (T2)
便所・洗面所・車掌室・業務用室・公衆電話・多目的室・車椅子対応設備が設置されている。定員46名。
← 新宮
新大阪・京都 →
基本編成 クロ282
-0
サハ283
-0
モハ283
-300
サハ283
-200
モハ283
-0
クハ283
-500
付属編成 クハ282
-700
モハ283
-200
クロ283
-0
クハ282
-500
モハ283
-0
クハ283
-500

車両配置と運用線区[編集]

9両編成での運転時の様子(前3両が付属編成)

2012年4月1日現在、基本編成である6両編成2本(計12両)と、付属編成の3両編成2本(計6両)の計18両が吹田総合車両所日根野支所に所属している[9]

1996年7月31日に特急「スーパーくろしお(オーシャンアロー)」として営業運転を開始し、1997年3月8日のダイヤ改正から「オーシャンアロー」として、京都駅・新大阪駅 - 新宮駅間で運用された。通常は基本編成の6両で、多客期にはこれに付属編成を1本連結した9両編成での運転となっている。また検査時などまれに付属編成を2本連結した6両編成で運転する場合がある。また、各線のダイヤ乱れの影響により、急遽「くろしお」「スーパーくろしお」として本系列が運用される場合があり、「オーシャンアロー」に381系を充当し運用する場合があった。

2012年3月17日のダイヤ改正で「くろしお」、「スーパーくろしお」、「オーシャンアロー」はすべて「くろしお」に統一され、同日より「くろしお」として運用されている[10]。9両編成で運転する場合、貫通型先頭車同士が向き合うが幌の連結はしていない。従って6号車と7号車の通り抜けはできない。

脚注[編集]

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  1. ^ a b c d e 鉄道ファン』1996年11月号、交友社、1996年、p.66。
  2. ^ 『JR西日本会社案内1996』西日本旅客鉄道、1996年。
  3. ^ 主回路用インバータ(VVVF 制御装置)と補助電源用インバータ (SIV) を一体化したもの
  4. ^ 鉄道ファン』1996年11月号、交友社、1996年、p.64。
  5. ^ a b c 鉄道ファン』1996年11月号、交友社、1996年、p.65。
  6. ^ 「紀勢線の新型特急"喫煙特等席" 一転、禁煙にします」- 読売新聞 1996年6月25日
  7. ^ 撤去日時は、クロ283-1が1998年10月6日、クロ282-1が1998年12月9日、クロ282-2が1998年11月7日。
  8. ^ ジェー・アール・アール編『JR電車編成表 2010冬』交通新聞社、2009年、p.153。ISBN 978-4-330-11609-9
  9. ^ ジェー・アール・アール編『JR電車編成表 2012夏』交通新聞社、2012年。ISBN 978-4-330-28612-9
  10. ^ 平成24年 春ダイヤ改正について (PDF) - 西日本旅客鉄道和歌山支社プレスリリース 2011年12月16日(リンク切れ)

参考文献[編集]

  • 西日本旅客鉄道鉄道本部車両部 「283系特急形直流電車」『鉄道ファン』1996年11月号、交友社、pp.59 - 66。

外部リンク[編集]