新幹線N700系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

JR東海/JR西日本N700系新幹線電車
半径2500mの曲線を走行するN700系(0番台)(2007年9月27日、新横浜駅 - 小田原駅間にて撮影)
半径2500mの曲線を走行するN700系(0番台)
(2007年9月27日、新横浜駅 - 小田原駅間にて撮影)
編成 16両(14M2T、Z・N編成)
8両(全電動車、S編成)
起動加速度 2.6 km/h/s
営業最高速度 270 km/h(東海道区間)
300 km/h(山陽区間)
編成定員 Z・N編成 - 計1,323名(200名)
S編成 - 計546名(24名)
()内はグリーン車
最大寸法
(長・幅・高)
25,000*1 ×3,360 ×3,600*2mm
*1先頭車は27,350mm
*2先頭車の大部分は3,500mm
編成質量 700t(Z・N編成)
軌間 1,435 mm
電気方式 交流25,000V 60Hz
主電動機 かご形三相誘導電動機
TMT9,TMT10(Z編成)
WMT207,WMT208(N編成)
WMT207,WMT208,WMT209(S編成)
編成出力 305kW×56 = 17,080kW (Z・N編成)
305kW×32 = 9,760kW (S編成)
制御装置 IGBT-VVVFインバータ制御
駆動装置 TD平行カルダン駆動方式
台車 円筒ゴムばね併用軸箱支持方式 (車体傾斜装置搭載、Z・N編成)
軸梁支持方式(S編成)
ブレーキ方式 回生併用電気指令式空気ブレーキ
(応荷重装置付き)
保安装置 ATC-1ATC-NS
KS-ATC(S編成のみ)
製造メーカー 日立製作所日本車輌製造川崎重工業近畿車輛
備考
第51回(2008年
ブルーリボン賞受賞車両

新幹線N700系電車(しんかんせんN700けいでんしゃ)は、東海道・山陽新幹線の第五世代の車両、および九州新幹線の第二世代の車両である。

300系500系を置き換える次期主力車種として、2007年7月1日ダイヤ改正から営業運転を開始した。同年10月1日には財団法人日本産業デザイン振興会の2007年度グッドデザイン賞金賞(商品デザイン部門)、2008年には鉄道友の会ブルーリボン賞を受賞した。

目次

[編集] 概要

700系を土台に、さらなる高速性と快適性・環境性能向上の両立を目指し、東海旅客鉄道(JR東海)・西日本旅客鉄道(JR西日本)によって共同開発された。

[編集] 名称

開発当初は「700N」と称し「N700系」は通称だったが、2004年5月28日に「N700系」が正式な形式称号に決定した、と発表された。数字の前に表記される「N」はnewnextなどの意味を込めた、と説明されている。

各車両の形式番号は700系ではグリーン車が710番台、普通車が720番台であるのに対し、本系列はグリーン車が770番台、普通車が780番台となり、九州新幹線直通用のみのグリーン・普通合造車は760番台(766形)となっている[1]。また編成記号はJR東海所有車が「Z」、JR西日本所属車は16両編成が「N」、九州新幹線直通用の8両編成が「S」で、車両番号はZ編成が0番台、N編成が3000番台、S編成が7000番台に区分されている。

[編集] 沿革

[編集] 開発

日本国有鉄道(国鉄)の分割・民営化以降、新幹線でもサービスの向上が図られ、JR西日本は最高速度300km/hで運行できる500系を開発した。しかし、東海道区間では線形が悪く、最高速度は270km/hに抑えられることから過剰な性能であったことと、製造費用が1編成(16両)で約46億円かかること、その当時の主力車両だった300系と車両ごとの定員が異なるため運用の共通化に支障をきたしたことから、500系は9編成(144両)が落成した時点で製造終了となった。

その後、JR西日本は汎用性を重視してJR東海と共同開発した700系を導入した。同系列は山陽区間での最高速度こそ285km/hにとどまったが、最高速度220km/hの0系と230km/hの100系の置き換え用として多くの編成が製造され、新幹線の高速化に大きな成果を挙げた。

しかしJR西日本は航空路線との競合から500系と同等の最高速度300km/hの高速性能を、JR東海は品川駅開業とそれに伴う東海道新幹線の列車本数増加やデジタルATC (ATC-NS) の導入に伴い、より高い加減速性能を持つ新車両を求めるようになった。その両社の要求を具現化するべく共同開発されたのが本系列である。

500系と700系では東海道新幹線で最高速度270km/hを出せる区間は全体の約3分の1程度であった。本系列では車体傾斜システムの搭載(S編成については後述)により、これまで255km/hの制限がかかっていた半径2,500mの曲線区間(60か所)でも270km/hで走行できるようになり、東海道新幹線の約3分の2以上の区間で270km/hで走行できるようになった。

車体傾斜システムの導入と加減速性能の向上により、東京駅 - 新大阪駅間では従来の500系・700系の「のぞみ」と比べて運行時間は最大5分短縮され、最速列車の所要時間は2時間25分(2007年7月1日ダイヤ改正時の「のぞみ1・163・52号」)となった。

新幹線では停車駅が1駅増えるごとに所要時間はおよそ5分間延びるといわれているが、ダイヤ改正から本系列で運転されている「のぞみ100号」の場合、停車駅に新横浜駅が追加されたにもかかわらず、所要時間は4分短縮された(2時間30分→2時間26分)。本系列の高加速度・車体傾斜システム・新ATCといった最新技術のもたらした大きな成果といえる。

2005年3月4日に日本車輌製造日立製作所川崎重工業により先行試作車(Z0編成)が完成。同月10日未明に浜松駅 - 静岡駅間で初めて本線を走行し、7月16日には三島駅 - 浜松駅間での日中走行も実施した。同月24日には初めて東京駅 - 新大阪駅間を走行し、29日には山陽新幹線に乗り入れて博多まで走行、そして9月7日には速度向上試験で320km/hを記録した。この先行試作車による2年間の実験走行を経て、量産車(Z1編成以降とN編成)を投入することとなった。

2006年12月7日、日本車輌製造豊川製作所で量産車となる構体が報道関係者に公開された。この構体は「Z1編成」のもので、翌2007年3月より搬入が開始された。これにより、100系以来続いていた「量産先行試作車の*0編成→*1編成への改番・量産化改造および営業運転への導入」という東海道・山陽新幹線での慣例を破ることとなった。なお、Z0編成はそれまで各種技術試験を行ってきた300系の量産先行試作車「J1」編成が廃車されたのと、車掌室やコンセントの位置、喫煙ルームの設置箇所や数量が量産車と異なり営業運転に支障をきたすため量産化改造は見送られ、J1編成の後継となる試験車として運用されることになった。ただし、完全な試験専用編成ではなく、都合により営業運転に運用されることも考慮されている。その際、該当列車は完全禁煙の扱いとなる。

同年5月23日には報道関係者約300人向けの試乗会が実施された。使用されたのはZ2編成で、同年7月1日の営業運転開始までにJR東海が準備する5本の編成のうちの一つだった。東京駅 - 博多駅間を約5時間半で走行し、途中名古屋駅京都駅・新大阪駅・岡山駅広島駅に停車した。東京駅を11時46分に出発し、掛川駅通過直前に「只今車体傾斜を行っています」という車内アナウンスが流れ、名古屋駅到着まで幾度か同様の放送が流れたが、ほとんどの添乗者が車体の傾きを体感しなかった。同乗したJR東海の担当者は、カーブに入る手前の緩和曲線を含めて線形を読み、走り込みを続ける中で傾けるタイミングを調節したと語った。その後、同年6月16日・17日・24日に公募による一般向けの試乗会も開催された。

営業運転開始後の2007年8月21日 - 9月11日までの間、JR西日本所有のN1編成が10両に短縮され、新下関駅 - 新山口駅間を試験走行した。具体的には1, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 16(16両編成時の号車番号)号車が連結され、外周幌の取り外しのよる乗り心地の変化などがテストされた。9月12日以降は16両に戻されて通常運行に使用されている[2]

[編集] 営業運転開始

2007年7月1日のダイヤ改正までに6編成96両(Z編成5本〈Z1 - Z5〉〉・N編成1本〈N1〉)が落成して営業運転を開始した。この時点では品川駅 - 博多駅間下り1本・東京駅 - 博多駅間2.5往復(下り2本・上り3本)・東京駅 - 新大阪駅間1往復に充当された[3]

営業開始当日、JR東海では品川駅(「のぞみ99号」6:00発)・新大阪駅(「のぞみ100号」6:00発)・名古屋駅(「のぞみ100号」6:50発)、JR西日本では博多駅(「のぞみ26号」12:28発)・広島駅(「のぞみ26号」13:30発)・岡山駅(「のぞみ26号」14:06発)でそれぞれ出発式を行い、列車の出発を見送った。また東京駅(「のぞみ1号」6:00発)では花束の贈呈と発進時の警笛吹鳴のみだった。なお、新大阪発の営業初列車となる「のぞみ100号」のグリーン券は発売開始後即完売となる人気ぶりだった。

[編集] 構造・性能

N700系先頭車ノーズ(2007年7月22日、東京駅)
N700系のロゴ(2006年7月23日撮影、JR東海浜松工場)
N700系の全周ホロ(2007年5月21日、新大阪駅)
N700系の台車カバー(2006年7月23日、JR東海浜松工場)
N700系のパンタグラフ(2006年7月23日、JR東海浜松工場)
N700系のLED式側面行先表示装置の表示内容(2007年7月7日、「のぞみ52号」博多駅)
N700系と500系との比較

ここでは東海道・山陽新幹線用の16両編成(Z編成・N編成)について述べる。

前述の要求に基づき、まず「従来の300系や700系との各号車別定員の共通化を図る」ことを前提に開発が開始された。

[編集] 外観

先頭部は700系のエアロストリーム型を遺伝的アルゴリズムにより改良した「エアロ・ダブルウィング」という形状で、長さ10.7mである。先頭形状の長さを抑えつつ、微気圧波形状のピークを分けることで最大値を抑え、騒音の抑制と先頭車の定員確保に一役買っている。車体塗装は700系16両編成と同じではあるが、先頭部分のラインが斜めに切り込まれる部分の角度が、若干薄くなっている。また700系とは異なる独自のロゴタイプを車体側面に掲げている。

なお、本系列では700系にあったようなJR東海・JR西日本それぞれの所属車両の外観での差異[4]はほとんどなく、わずかに車両番号の書体とその横に貼り付けられたJRロゴの色と編成番号表示の違いのみで、車両を一目見ただけでは所属会社を見分けにくい。

また、新たに開発した高性能のセミアクティブ制振制御装置を全車両に設置することで振動を極力抑えるとともに、車両間に今回ジャバラ社と開発した「全周幌」を新幹線の営業車両として初めて採用[5]し、車両の連結面間を伸縮性のゴム素材でほぼ完全に覆ってしまうことで車体側面の空気抵抗と車両内外の騒音の軽減を達成し、結果的に省エネルギーにも寄与することとなった。

これに類似したものとして国鉄時代にモハ20系(151系)キハ81系で採用された「外幌」があったが、当時の「こだま」の最高運転速度であった110km/h程度では効果を発揮せず、メンテナンス難の理由で早期に撤去された。

700系では、先頭車両進行方向側の台車にのみ空気抵抗軽減用のカバーがついていたが、本系列からは、中間車をふくめすべての台車に台車カバーが取り付けられた。先行試作車(Z0編成)では、試験の途中でカバーの形状が変更されており、変更後のものが量産車にも採用された。先頭車両の台車カバーも、700系のそれより空気の流れを考慮した3次元的な造形となっている。

は両先頭車の運転室側にある乗務員用と客用のみプラグドア、その他はすべて通常の引き戸である。これは騒音対策と製作・保守費用低減の両立のほか、先頭形状の都合にもよるものである。またその引き戸の構造も、たとえば0系から700系、800系(500系は全車プラグドアのため例外)に至るまでは外周にふちとビス留めがついていたが、本系列は平滑化のためにふちがなくなり、またビス留めも戸袋側のみで済んでいる。

パンタグラフ0系以来の基礎中の基礎ともいえる部分の設計から抜本的に見直すことで小型・軽量化が図られた。基本的にはシングルアーム形であるが、従来の700系等に見られるタイプより下枠(関節部分より下側)のアームが極端に短くなり、その下枠部分も流線型のカバーで完全に覆われた新開発のパンタグラフを採用している。。これによって従来のシングルアームパンタグラフよりも風切り音の軽減と、架線への追随性の一層の向上を果たしている。パンタグラフカバーと遮音板の形状は700系とほぼ同一の物を採用している。また試作車両には800系U-001編成と同様にカメラセンサ・投光器で構成される架線の検測装置が設置され、車体傾斜時の架線との接触状況などの確認が行われた後に取り外された。

また、JR東海の営業用新幹線車両では初めてフルカラーLED行先表示器HIDランプによる標識灯が採用された[6]。行先表示器は全車両に設置され[7]、表示内容は列車名・行先・指定席自由席の種別を日本語と英語で交互に表示し、日本語で列車名・行先と停車駅をスクロール表示する。座席区分表示器も700系までの液晶からLEDに変更され、「指定席」は緑色、「自由席」は白色表示となっている[8]

細かい外観のポイントとして、Z0編成では客用ドア横の号車番号表記と禁煙ピクトグラムが横に並んでいたのに対し、量産車では縦並びとされた(300系は、登場当初は縦並びであった)。また、500系まで乗務員用扉横の握り棒は金属の手すりを埋め込む構造だったが、700系からは走行中の空気抵抗を低減するため、カバーを設置し走行中は自動的にせり上がる構造となった。本系列も同様であるが、700系では5km/hでカバーされるが、本系列では70km/hとなっている。これはホームを出線するまで、最後尾車両の乗務員が手すりを握って安全確認をできるようにするためである(700系の5km/hでは早すぎる)。

[編集] 標識灯

前照灯尾灯は300系以前と同様、遠方では同じ場所の電球のように見えてもフィラメントの前照灯とLEDの尾灯は分離されている構造である。従来の車両では前照灯と尾灯が横並びになればそのほとんどは内側が前照灯、外側が尾灯で、縦並びになれば500系を除いて上側が前照灯、下側が尾灯という配置が一般的だった。本系列では前照灯は左右それぞれ2基が横並びになり、丸い前照灯の周りを覆い尽くす格好で発光ダイオードの尾灯が粒子状で配置される過去に前例のない構造となった。

[編集] 車両性能

起動加速度は新幹線車両として最高の、通勤形電車並みの2.6km/h/s[9]で、およそ3分で270km/hまで加速する動力性能を持つ。営業運転での最高速度は500系と同じ300km/hとされた。これを達成するために主電動機の出力を向上(275kW〈700系〉→305kW)し、電動車 (M) と付随車 (T)の構成(MT比)も変更(12:4〈700系〉→14:2)した。これにより編成出力は17,080kWとなり、700系と比べて約30%向上した。

ブレーキはMT比の見直しにより、300系や700系で使用されていたT車の渦電流ブレーキが廃止され、常用ブレーキでは14両のM車の回生ブレーキで制動力を得るようにした。ATCの老朽置き換えに伴い設置されたデジタルATC (ATC-NS) 車上装置が搭載され、制動距離と閉塞間隔の最適化が行われる。なお先行試作車(Z0編成)では、落成前の計画では700系に引き続いて渦電流ブレーキが採用される予定だったが、重量増を避ける意味合いもあり、取りやめになった。

N700系用の空気ばねのカットモデル

また、従来は255km/hに減速する必要のあった東海道区間の半径2,500mの曲線を最高速度のまま走行できるようにするため、新幹線車両で初めて空気バネによる車体傾斜装置(最大傾斜角1度)を採用し、さらに700系では一部の車両のみに搭載されていたセミアクティブサスペンションを性能向上(700系:4モード選択切替制御→本系列:無段階制御)の上、全車両に搭載することで乗り心地の改善を図っている。

車体傾斜機能は大半が半径4000m以上のカーブである山陽区間では使用しないが、完全に機能を停止するのではなく車体を水平に保つ制御(0度制御または水平制御)に活用し、乗り心地を向上させている。なお、本系列をベースとする九州新幹線乗り入れ車両は東海道区間への乗り入れを考慮していないため、同機能は搭載されないことになっている[10]

走行時のエネルギー消費も曲線での余分な加減速を不要とすることなどで、東海道区間で700系と比較して1割低減することを当初の目標としていたが、先行試作車による走行試験の結果、270km/h走行時の利用客1人当たりの消費エネルギーが13.23kWh[11]となり、19%削減(改善)という当初の目標値を上回る省エネ効果が得られたことが確認された。全周ホロなどの空力改善の積み重ねもこれに寄与している。なお、山陽区間では9%の削減に成功した[12]

台車は300系以来の実績があるボルスタレス台車である。しかし、N編成も700系までとは異なり、Z編成と同じ円筒ゴムばね併用の軸箱支持方式を採用した。これにより500系から700系3000・7000番台と3代にわたって続いた軸梁支持方式台車は本系列でひとまず終わることになった[13]

駆動方式は、JR東海所有の700系C19編成以降のグリーン車で実績があるTD平行カルダン駆動方式が本格採用された。[14]従来は高速運転時の耐久性の点から、WN平行カルダン駆動方式が採用されてきたが、TDカルダンに用いられるたわみ板の耐久性が向上したことから、保守が容易で騒音の少ない本方式が採用されることになった。

[編集] インテリア

[編集] 空間と窓

車体傾斜装置の採用で全幅は700系に比べて20mm狭くなったが、強度を確保しながら車体壁を薄くするなどした結果、同系列と同等の車内空間を確保している。反面、軽量化しつつ十分な強度を確保するため、面積は700系の約60%に縮小された(普通車で天地520mm×幅500mm、窓框〈かまち〉高さ780mm)。通路側の座席(特に普通車のC席)から外の景色を見ることは難しい。

普通車の窓には特殊なポリカーボネート樹脂を採用している。従来の複層ガラスの表面に特殊ポリカーボネート樹脂製シートを貼り合わせたコンポジットタイプと比較して、飛び石などに強く、耐久性に優れ軽量であるとともに、部材使用量を約半分に抑え、単位面積当たりの質量を約3割軽量化することに成功した。また、車体側の窓開口部にガラスが入り込むような形状とすることで車体とガラス表面との段差を極力小さくするようにしている[15]

[編集] 座席

300系以降の座席は編成重量軽量化のため座席クッションのスプリングを廃止しポリウレタンを重ねる構造だったが、座り心地の点で評判が芳しくないため、本系列では金属製のSばねを加えた複合ばね構造に改良された。

普通車座席の背もたれは高機能な新型のポリエステルクッションである。従来のウレタンに比べて同じ体積で約20%軽く、透湿性にも優れ蒸れにくい。通勤電車用の座席に比べ着座時のフィット感に配慮されている。弾力性が長持ちするとともに耐久性に優れるほか、ポリエステル素材のため完全循環型システムでリサイクルできる。

このほかの素材ではクラレグループ製のマジックテープと「セプトン コンパウンド」も使われている。マジックテープは従来からのヘッドレストカバー・座席表皮端末固定用に加え、座席表皮の浮き止めやクッションパッドにも新たに採用された。また、スイミングゴーグルのバンド部やとび縄の縄部分にも使われている「セプトン コンパウンド」は座席の肘掛に採用された。これまでのポリカーボネート製より肘掛が柔らかくなったことで触り心地を向上し、硬いものが接触した時に発生する不快音の低減を実現した。

普通車は座席幅を700系から10mm拡大して440mmとし[16]、グリーン席には新たに開発された「シンクロナイズド・コンフォートシート」が採用された。これはリクライニングすると座面後部が沈む構造で、座り心地が改善されており日本航空国内線のクラスJに近いものといえ、具体的には、ヘッドレストとレッグレストが装備されていない以外はほぼ同等の仕様となっている。このほかLEDを採用し輝度を高めた読書灯(後述)や足元を暖める機能(レッグウォーマー)も新たに導入された。

テーブルはA4サイズのノートパソコンが置けるサイズに拡大され、量産車ではグリーン車の全座席と普通車の窓側(A・E席)・最前部・最後部の座席にはコンセントが設けられた。その結果、1編成の定員(1,323人)の約6割に当たる個数が用意されたことになる。

座席番号表示と、テーブル背面の車内設備案内などの文字やピクトグラムは、従来のものより大きくなり、見やすくなっている。

100系以降700系までは所有会社によって座席の色や形状などの仕様が異なっていたが、本系列ではすべて統一されている。

[編集] 車内設備

フルカラー・2段表示が可能な車内案内表示器(模擬表示例・JR東海浜松工場にて)

2009年春のダイヤ改正から無線LANによるインターネットサービスが利用できるようになった[17]。ただし当面は東京 - 新大阪間での利用となる。

トイレはすべて洋式に統一されるとともに、11号車に新幹線車両では初めてオストメイト対応トイレが設置された。また一部のトイレにはおむつ交換台、11号車の多目的室にはベビーチェアも設置されている。

車内は全席禁煙とし、強制排煙装置やJR東海の小牧研究施設が開発した光触媒脱臭装置を備えた喫煙ルームを3・7・10・15号車のデッキ部分に計6か所設けている。喫煙コーナーに近い座席では喫煙を希望する乗客の希望を優先して指定席券が発行される。駅自動放送でも本系列で運転される列車は全席禁煙である旨と喫煙ルームが何号車に設置されているかがアナウンスされる。

車内チャイムは在来車と同様、Z編成は『AMBITIOUS JAPAN!』、N編成は『いい日旅立ち・西へ』を使用している。

号車・座席番号・テーブル裏の車内設備案内表示などの文字フォントは従来より級数が上げられ、見やすくなっている。とくに号車番号表記のフォントは大幅に級数が上げられた。先行試作車(Z0編成)でも700系までの従来車より大型であったが、量産車ではさらに大型化された。

車内案内表示器は新幹線では初めてフルカラー・2段表示が可能になり、新聞社から配信されるニュース広告や「のぞみ」、「ひかり」で駅を通過する際の「ただいま●●駅を通過。」などの従来からのものに加えて、駅停車時のドア開閉方向なども表示されるようになっている。実際の表示に使用されている色は、白、橙色、黄緑、水色、赤の5色。但し、企業等のCMでは、深青や薄紫色など、フルカラーを存分に生かした表示がなされる。

車内照明には松下電工(現・パナソニック電工)製や東芝ライテック製のLED照明器具も採用された。このLED照明器具は白熱灯に比べ消費電力が少なく振動に強い[18][19]

1編成あたりの納入台数

  • 松下電工製
    • グリーン車への通路部にフットライト26台
    • 運転席にスポットライト12台と補助ライト2台
  • 東芝ライテック製
    • グリーン車に読書灯200台と側補助灯100台
    • 喫煙ルームなどに直線補助灯45台と円筒スポット灯43台

運転室及び車掌室には乗務員連絡用のPHS端末が搭載されており、車掌が客室内にいても乗務員間の連絡ができる。また、このPHS端末から直接車内放送を行うこともできる。

[編集] セキュリティ対策

鉄道車両では初めて、すべての乗降口と運転室出入口に防犯カメラを設置し、乗務員室のモニター上で監視できるシステムが備えられた。これは乗降口に備え付けられている非常用ドアコックがいたずらで操作され、その安全確認のためしばしば遅延をきたしていることや、電話室や喫煙ルームなど個室部分の増加とともにそれらの空間を悪用される恐れがあるため、防犯カメラによる抑止効果を図るためである。

さらにテロ痴漢迷惑行為防止の面からも効果が期待されているが、2005年のロンドン同時爆破事件などの経験から防犯カメラにテロ抑止効果はあまりないとする意見がある。また、その運用や記録の保存体制についても公表されておらず、プライバシーの侵害を懸念する意見もある。これについてJR東海会長の葛西敬之は営業運転の開始前に「(監視カメラ作動中の断りがあり、隠し撮りとはならないため)合法であり、問題はない」と述べている。

一方、ドアコックのいたずら対策として走行中にドアコックの蓋を自動的に施錠して開けられないようにすることとし、今後新造するN700系は製造時に対応、すでに就役したN700系と既存の700系は2009年度末までに順次全般検査入場時に改修を行う。

[編集] 運用

[編集] 2009年3月14日改正

種別 列車名 運転区間 備考
のぞみ 1・3・4・7・8・11・13 - 15・18・19・22・
23・26・27・30 - 32・34・35・38 - 40・
42・43・48・49・52・53・56・58号
東京駅 - 博多駅
95 - 98号 名古屋駅 - 博多駅
99号 品川駅 - 博多駅
101・103・105・107 - 115・117 - 126・
128・130 - 132・136・138・140号
東京駅 - 広島駅
102・133号 東京駅 - 姫路駅
104・106・127・135号 東京駅 - 岡山駅
200・202・204・205・207・211・212・
214・225・227・228・235・241・244・
247・248・252・254・267・269・392・
407号
東京駅 - 新大阪駅 392号は臨時列車で主に火 - 金,日曜日に運転
407号は臨時列車で主に火 - 金曜日に運転
228・235号は7月1日以降N700系で運転
211・212・247・254号は8月7日以降N700系で運転
ひかり 490・491号 名古屋駅 - 広島駅
493号 新横浜駅 - 広島駅
500・533号 東京駅 - 名古屋駅
529号 東京駅 - 新大阪駅 臨時列車で主に日曜日の運転
4月29日以降N700系で運転
こだま 706号 浜松駅 - 東京駅
809号 東京駅 - 三島駅

[編集] 運用の変遷

東広島駅にてN700系「のぞみ」の通過待ちをする0系「こだま」

2008年3月15日のダイヤ改正では、定期列車としては初めて「ひかり」2本(393号・433号)に充当されるなど、上下合計で43本の「のぞみ」・「ひかり」が本系列で運転されるようになった。また小倉駅 - 博多駅間の「こだま」2往復(751号・754号・759号・772号)にも間合い運用として充当されるようになった。

さらに同年5月27日からは「のぞみ」での運用が2本(102号・127号)、7月1日より2本(120号・139号)、7月28日より2本(87号・122号)、7月29日より2本(62号・129号)、8月19日より1本(25号)、8月20日より1本(2号)、10月1日より1本(77号)、10月2日より3本(21号・56号・68号)、10月15日より1本(41号)、10月16日より1本(18号)、11月21日より4本(106号・117号・140号・155号)、11月28日より2本(107号・144号)、12月26日より2本(109号・148号)、2009年1月2日より2本(67号・96号)、2月5日より2本(69号・98号)、2月23日より2本(136号・153号)追加された。

また、2008年10月1日より「ひかり」での運用が1本(400号)が新たに追加。また、300系の代走として、「こだま」627号と「こだま」680号に2008年6月から2009年3月の一部の日に充当された。

さらに、2009年3月14日のダイヤ改正では、上下合計88本の「のぞみ」「ひかり」「こだま」がN700系で運転される。

過密ダイヤの影響で、これまで高速化による所要時間短縮の恩恵は早朝・深夜の列車にしか得られていなかったが、この改正で全日においてN700系専用のダイヤが組まれ、若干ではあるもののデータイムにもその恩恵がもたらされることとなった。本系列による東京駅 - 博多駅間直通「のぞみ」は、日中でも東京駅 - 新大阪駅間を4駅停車しながら従来の3駅停車「のぞみ」の一部と同等の2時間33分で結び、日中「のぞみ」の標準到達時間を延ばすことなく品川駅と新横浜駅の両駅に全列車を停車させることができた[20]

2009年度末までに東京駅 - 博多駅間運転の定期「のぞみ」すべてを含む70本以上、2011年度末までにすべての東海道・山陽直通の「のぞみ」が本系列で運転される予定である[21][22]。これにより、共通運用していた500系は編成を16両から8両に短縮して「こだま」に、700系は順次「ひかり」・「こだま」にそれぞれ転用され、300系100系を淘汰することになる。

[編集] 今後の動向

[編集] 東海道・山陽新幹線用

山陽新幹線区間を走行するN700系Z28編成(岡山駅 - 相生駅、2009年4月8日)

2006年5月26日のJR東海・JR西日本両社の発表では、投入計画は以下の通りとされた。

  • 2007年度 : 23編成(東海15・西日本8)
  • 2008年度 : 17編成(東海16・西日本1)
  • 2009年度 : 14編成(東海11・西日本3)
  • 計 : 54編成(東海42・西日本12)

費用はJR東海が約2千億円、JR西日本が約600億円であり、2009年度には東海道・山陽新幹線直通のすべての「のぞみ」を本系列に置き換える計画だった。その後、営業運転開始後の好調と増備によるさらなる地球環境への貢献を図るため、従来の計画を前倒しするとともに2009年度以降にも追加投入され、合計で1,500両以上が製造されることとなった。これにより、2011年度末には定期列車の「のぞみ」がすべて本系列で運行される予定である。[23]

  • 2007年度 : 24編成(東海16 (+1) ・西日本8)
  • 2008年度 : 17編成(東海16・西日本1 = 増減なし)
  • 2009年度 : 21編成(東海16 (+5) ・西日本5 (+2))
  • 2010年度 : 18編成(東海16・西日本2)
  • 2011年度 : 16編成(東海のみ) 
  • 計 : 96編成(東海80・西日本16〈半カッコ内は当初計画からの増加〉)

追加投入の費用はJR東海が約1,800億円、JR西日本が約200億円で、総額はJR東海が約3,800億円、JR西日本が約800億円となる。

[編集] 山陽・九州新幹線(鹿児島ルート)直通用

N700系7000番台(岡山駅 - 相生駅、2009年4月8日)

2011年春の九州新幹線鹿児島ルートの全線開業時に運行開始予定の山陽新幹線・九州新幹線直通列車「さくら[24]に充当するため、本系列をベースにした新形車両をJR西日本とJR九州で共同で開発しており、8両編成でJR西日本が19編成、JR九州が10編成の合計29編成(232両)を製造する予定である[25]。これは、従来の山陽新幹線用の車両では博多駅 - 新鳥栖駅間と新八代駅以南の急勾配区間(最大35‰)を走行できないためで、新形車両では全車両電動車となる。なお、一部報道[26]によれば「ひかりレールスター」に充当されている700系7000番台は、九州新幹線全線開業後は山陽新幹線の「こだま」に転用される予定とされている。

2008年10月には、JR西日本製造の量産先行車両としてN700系7000番台となる1編成8両が博多総合車両所に搬入された[27]

最高速度は0番台・3000番台同様に300km/hで、九州新幹線内は260km/hとなる予定だが、九州新幹線内の速度引き上げも検討されている[28]。また東海道区間へ乗入れないため車体傾斜装置は未搭載である。編成は、グリーン車(6号車の半室で定員24名)・普通車指定席(4 - 8号車で計282名)・自由席(1 - 3号車で計240名)からなり、車内はいずれも木目調のデザインが用いられて落ち着きのある内装となっている[28]。座席はグリーン車と普通車指定席は通路を挟んで左右各2列、自由席は2列・3列の配置である[28]。7号車は、車椅子対応座席を備えており便洗設備も広めの設計である[28]。3・7号車には喫煙ルームを備える[28]。5号車には女性専用トイレとパウダールームを備える[28]

編成記号は「S」とされた[28]。2008年10月24日に博多駅 - 新山口駅間で公式試運転が実施され、11月以降は山陽新幹線内での走行試験が実施されている[28]。その後は姫路駅 - 博多駅間の往復が主であったが、2009年5月17日に新大阪駅に入線した[29]

深夜に搬送されるN700系車両(2007年10月24日、浜松市西区内にて撮影)

[編集] その他

  • 2008年4月現在、日本通運CMで右の写真に見られるような本系列の搬送シーンが放映されている。

[編集] 脚注

[ヘルプ]
  1. ^ 車両番号はグリーン車が「777-30」、普通車が「785-3505」、グリーン・普通合造車が「766-7001」など。
  2. ^ N700系N1編成/10両編成試運転
  3. ^ 平成19年春ダイヤ改正について : JR西日本ニュース 2006年12月22日
  4. ^ 独自ロゴの有無や車両・編成番号の書体の違い・ジャッキアップ用穴の有無など。本系列ではN編成の車両番号・編成番号表記の書体もZ編成に合わせている。
  5. ^ 試作電車や試験車両での採用例は過去に1000形952・953形などがある。
  6. ^ 在来線車両では313系2次増備車で先に導入されている。
  7. ^ 700系までの車両は東京方先頭車に行先表示器は設置されていなかった。
  8. ^ 行先表示器の指定席/自由席表示の色も同じである。
  9. ^ 最高起動加速度は500系が1.92km/h/s、700系が2.0km/h/sである。
  10. ^ ただし、ATCや列車無線は鳥飼車両基地への回送のため、東海道区間用のものも搭載している。
  11. ^ 700系が270km/h走行時14.7kWh、100系の220km/h走行時が13.9kWh。
  12. ^ のぞみN700系デビュー JR岡山駅で出発式 最新技術と省エネ装備 - 岡山日日新聞、2007年7月2日
  13. ^ 九州新幹線用の8両編成(JR西日本=7000番台・JR九州=未定)は、既に800系を基準としたJR九州の検修設備の関係や、車体傾斜機能を省略した事から軸梁支持方式が再び採用されている。
  14. ^ JR西日本所有の700系はグリーン車を含めすべてWN平行カルダン駆動方式であったが、本系列はJR東海所有車とすべて共通である。
  15. ^ 『鉄道ファン2005年8月号』 交友社、2005年、p.87。
  16. ^ 肘掛部分を除いた幅。ただし3人掛け中央のB席は従来車両と同じ460mmである。
  17. ^ N700系でインターネット接続サービス開始!(無線LAN) - JR東海ニュースリリース
  18. ^ 次世代新幹線車両・N700系(量産車)に、車両用LED照明器具を納入 : 松下電工2007年7月4日付ニュースリリース
  19. ^ 「N700系新幹線」にLED照明を納入~読書灯・側補助灯などが次世代新幹線に大規模採用~ : 東芝ライテック2007年7月20日付プレスリリース
  20. ^ ただし、上りの30号・34号は2時間36分運転である。
  21. ^ 平成20年3月ダイヤ改正について : JR東海ニュースリリース 2007年12月20日付
  22. ^ 平成20年春ダイヤ改正について : JR西日本ニュース 2007年12月20日付
  23. ^ N700系の投入計画について : JR西日本ニュース 2007年9月26日付け
  24. ^ 新幹線の列車名決定! : JR九州公式サイト
  25. ^ 山陽新幹線と九州新幹線の相互直通運転の実施について : JR西日本ニュース 2007年10月17日付。
  26. ^ ひかりレールスター廃止へ 九州新幹線全線開業に合わせ : 産経新聞2008年8月14日
  27. ^ 月刊「鉄道ファン」鉄道ニュース(2008年10月4日付)。
  28. ^ a b c d e f g h「JR西日本 N700系7000番台(山陽・九州新幹線直通用車両量産先行車)」、『鉄道ダイヤ情報』、交通新聞社、2008年12月。
  29. ^ N700系7000番台S1編成,試運転で新大阪へ(railf.jp)

[編集] 外部リンク

ウィキメディア・コモンズ