整備新幹線

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整備新幹線(せいびしんかんせん)とは、全国新幹線鉄道整備法昭和45年法律第71号)第7条に基づき、日本政府が1973年11月13日に整備計画を決定した以下の5線の新幹線のことである。

このうち、北陸新幹線の高崎駅 - 長野駅間117km(長野新幹線)と、東北新幹線の盛岡駅 - 新青森駅間179km、九州新幹線・鹿児島ルート博多駅 - 鹿児島中央駅間257kmが開業している。

また、北陸新幹線の長野駅 - 金沢駅間は2014年度、北海道新幹線の新青森駅 - 新函館駅間は2015年度に開業予定である。

目次

[編集] 呼称について

整備新幹線という言葉が上記5線の総称として用いられるようになったのは、1972年ごろからといわれている。当時は、他に「整備計画線」「整備5線」「整備5新幹線」などとも呼ばれていた。

この当時の状況を見ると、東海道新幹線山陽新幹線の2線が国鉄の手によりすでに開業しており(ただし山陽新幹線は、1972年3月15日の時点で新大阪駅 - 岡山駅間のみ開業、岡山駅 - 博多駅間は工事中)、東北新幹線(東京都 - 盛岡市)、上越新幹線成田新幹線の3線も、全国新幹線鉄道整備法に基づき国が基本計画決定→整備計画決定→工事実施計画認可の手続きを終え、着工または着工準備の段階に入っていた。さらに、3線に続いて着工する予定の新幹線として、北海道新幹線(青森市 - 札幌市)、東北新幹線(盛岡市 - 青森市)、北陸新幹線、九州新幹線(福岡市 - 鹿児島市)、九州新幹線(福岡市 - 長崎市)の5線の基本計画が定められ、翌1973年には5線の整備計画が決定されている。

すなわち、1972年の時点では「営業中の2線」(東海道・山陽新幹線)、「工事中の3線」(東北・上越・成田新幹線)、「整備計画を決定しようとしていた5線」(北海道・東北・北陸新幹線、および九州新幹線鹿児島・長崎ルート)という区分が発生していたことから、「整備計画を決定しようとしていた5線」は、「営業中の2線」、「工事中の3線」と区別する意味で、整備新幹線などと呼ばれるようになったものと思われる。また、この5線は、1973年の整備計画決定直後にオイルショックの影響で着工が見合わせられ、1989年の北陸新幹線高崎駅 - 軽井沢駅間の着工まで「整備計画決定のまま計画が中断した状態」が長く続いたことも、整備新幹線の名称を定着させた要因となっている。

なお整備新幹線と呼ばれる5線も、5線に先行して着工した3線も、前述の通り全国新幹線鉄道整備法に基づき国が計画した新幹線であり、3線が整備新幹線と呼ばれていない理由として「国鉄が独自に整備計画を定めたため」とするのは誤りである。一方、全国新幹線鉄道整備法が制定される前に開業または着工した東海道新幹線と山陽新幹線の2線は、東海道本線山陽本線の輸送力増強を図るため、国鉄が別線線増方式で計画・建設したものであり、「国鉄が独自に計画を定めた新幹線」といえる(ただし全国新幹線鉄道整備法の附則では、2線とも同法に基づく新幹線鉄道と見なしている)。

また全国新幹線鉄道整備法は、1991年の改正で「暫定整備計画」という新たな建設スキームを規定し、整備計画が決定している新幹線鉄道の建設線について、一部またはすべての区間を新幹線鉄道直通線(いわゆる「ミニ新幹線」)、または新幹線鉄道規格新線(いわゆる「スーパー特急」)として暫定的に整備するための手続きを追加した。ただし、ミニ新幹線として整備された山形新幹線秋田新幹線は、鉄道事業法に基づき軌間変更の手続きが行われたため、整備新幹線の区分には入らない。

[編集] 路線建設の計画および着工の推移

以下は整備計画決定から現在までの、路線の計画および着工の推移を時系列で列記する。

[編集] 注記

政権与党による着工区間の決定は、着工に向けた条件の1つにすぎず、着工が確約されたことを必ずしも示すものではない。国の所管官庁、整備新幹線および並行在来線の沿線都道府県、沿線市町村、さらにJRとの間で諸調整や意見の対立が見られることがある。

例を挙げると長崎ルート(西九州ルート)に関しては、「並行在来線沿線自治体すべての同意」の条件を満たせなかったため、建設工事には着手できなかった。その後、佐賀県・長崎県・JR九州による、いわゆる「三者合意」により「並行在来線沿線自治体すべての同意」が必要ではなくなったため着工が認可された。

[編集] 運輸省案と3線5区間の着工

1988年運輸省(当時)が、東北・北陸・九州(鹿児島ルート)の3線について、建設費を削減しつつスピードアップを図るため、ミニ新幹線やスーパー特急方式を組み合わせた、いわゆる「運輸省案」を発表。

着工区間の沿線自治体や政治家からは、この案を「ウナギ(フル規格)を注文したらアナゴドジョウ(ミニ新幹線やスーパー特急方式)が出てきた」と揶揄されるほど不評であったが、この機会を逃すと次回の着工がいつになるか不透明であったことから、やむなくこれを受け入れ、同年、政府・与党申し合わせにより着工順位が決定された。

  • 1.北陸新幹線 高崎 - 長野間(高崎 - 軽井沢間フル規格、軽井沢 - 長野間はミニ新幹線。ただし、長野オリンピックの開催が決定した場合、フル規格への変更も考慮)→1997年フル規格で開業。
  • 1.北陸新幹線 高岡 - 金沢間(スーパー特急方式)→1992年8月、石動 - 金沢間着工。
  • 2.東北新幹線 盛岡 - 青森間(沼宮内(現・いわて沼宮内) - 八戸間フル規格、前後の区間はミニ新幹線)→盛岡 - 八戸間は2002年、八戸 - 青森間は2010年にフル規格で開業。
  • 3.九州新幹線(鹿児島ルート) 八代 - 西鹿児島(現・鹿児島中央)間(スーパー特急方式)→起点を新八代に変更の上、2004年フル規格で開業。
  • 4.北陸新幹線 糸魚川 - 魚津間(スーパー特急方式)→1993年10月、糸魚川 - 新黒部間着工。新黒部 - 魚津間は在来線への取り付け線のため着工に至らず。

しかし新幹線の建設財源が限られていたことから、優先順位1位でフル規格区間であった高崎 - 軽井沢間のみ翌1989年に着工。その他の区間は、既存新幹線譲渡収入(旧スキームの項を参照)が新幹線建設の特定財源となる1991年以降の着工となった。

1991年、長野オリンピックの開催が決定したことから、軽井沢 - 長野間がフル規格に変更された。一方、同順位だった高岡 - 金沢間は、富山県内の沿線自治体が並行在来線となる北陸本線石動 - 高岡間の経営分離に反対したことから、新高岡 - 金沢間の基本ルートを変更、着工区間は石動 - 金沢間に短縮された。

1994年、5年毎に行うとされた計画見直しで新規着工の機運が高まるが、財源が壁となり、ミニ新幹線で建設するとしていた東北新幹線の盛岡 - 沼宮内間をフル規格に変更する(その代わり八戸 - 青森間は取り下げ)にとどまった。

[編集] 新スキームによる3線3区間の着工

1996年、新規着工の財源にJR本州3社の固定資産税軽減特例(1/2)(新スキームの項参照)を活用する方針が示され、新規着工区間の選定が活発化する。

同年12月25日、政府与党合意により、候補となる3線3区間を選定。政府・与党整備新幹線検討委員会による採算性の検討などを行い、1998年1月21日、着工および着工区間の優先順位が決定した。これらの区間は同年3月に着工している。

  • 1.東北新幹線 八戸 - 新青森間(フル規格)→2010年開業
  • 1.九州新幹線(鹿児島ルート) 船小屋(九州新幹線全通に合わせて筑後船小屋に改称) - 新八代間(スーパー特急方式。同時に着工済みの八代 - 西鹿児島間の起点を新八代に変更)→2011年フル規格で開業
  • 2.北陸新幹線 長野 - 上越間(フル規格)

[編集] 自自公連立政権成立と2線3区間の新規着工

1999年自自連立自自公連立による計画見直し案で、既着工区間のフル規格化と新規着工の方針が出され、2000年には、運輸省(当時)が翌2001年度予算の概算要求で、北陸・上越 - 糸魚川間と九州・博多 - 船小屋間の新規着工を要求した。

同年の政府・与党申し合わせで、新黒部 - 富山間を加えた2線3区間の新規着工が正式に決定した。

  • 北陸新幹線 上越 - 糸魚川間および新黒部 - 富山間(フル規格。同時に着工済みの糸魚川 - 新黒部間もフル規格に変更)
  • 九州新幹線(鹿児島ルート) 博多 - 船小屋間(フル規格。同時に着工済みの船小屋 - 西鹿児島間もフル規格に変更)→2011年開業

[編集] 九州新幹線部分開業と3区間の新規着工

2004年3月13日、九州新幹線・新八代 - 鹿児島中央間が部分開業。開業に前後して新規着工に向けた見直し作業が行われ、2004年6月10日、与党整備新幹線建設促進プロジェクトチームの合意により3区間(福井駅周辺区間の整備を含めると4区間)の新規着工区間が決定した。

  • 北海道新幹線 新青森 - 新函館間(フル規格)→2015年度末の完成を目指す。
  • 北陸新幹線 富山 - 石動間および金沢 - 白山車両基地間(フル規格。同時に着工済みの石動 - 金沢間もフル規格に変更)→2014年度末の完成を目指す。
  • 北陸新幹線 福井駅 →2005年6月4日着工、2009年2月19日完成(新幹線開業までは暫定的にえちぜん鉄道が使用することになっていたが、2011年3月現在えちぜん鉄道乗り入れ工事は行われていない)。
  • 九州新幹線長崎ルート(西九州ルート) 武雄温泉 - 諫早間(スーパー特急方式)

2005年、北海道新幹線と北陸新幹線の新規区間が着工された。長崎(西九州)ルートについては、並行在来線となる長崎本線肥前山口 - 諫早間の沿線自治体(佐賀県江北町鹿島市)が経営分離に反対していたため、2005年以降国の公共事業費として毎年10億円が計上されていたが着工できず、予算は消化できないという状況が続いていた。その後、2007年12月に推進派3者(佐賀県・長崎県・JR九州)による、いわゆる「三者合意」による「上下分離方式」により、JR九州が並行在来線区間を新幹線開業後20年間運行するという形で決着が図られ、2008年3月に着工認可が下り、翌4月に着工された。

[編集] 未着工区間

2011年2月現在の未着工区間は以下の通りである。

  • 北海道新幹線 新函館 - 札幌間 212km
  • 北陸新幹線 金沢 - 大阪間 254km(福井駅部分を除く、キロ程は小浜経由)
    • 敦賀以西はルート未公表であり、整備計画通り小浜を経由するルート、米原で東海道新幹線に接続するルート、湖西線沿いに京都に向かう(もしくは湖西線に乗り入れ)ルートが検討されている(北陸新幹線参照)。
  • 九州新幹線長崎ルート(西九州ルート) 鹿児島ルートとの分岐点(新鳥栖) - 武雄温泉間、諫早 - 長崎間 72km

[編集] これまでの動き

2007年5月末、政府与党の整備新幹線プロジェクトチームの初会合が開かれ、沿線知事・副知事に対するヒアリングが行われた。未着工区間に対しては以下のような要望があった。

  • 北海道新幹線 全区間着工(北海道)
  • 北陸新幹線 金沢 - 敦賀間の着工(富山県、石川県、福井県)
  • 九州新幹線長崎ルート(西九州ルート) 佐世保線肥前山口 - 武雄温泉間の複線化(佐賀県)

2008年12月、政府・与党のワーキンググループで以下の区間について2009年12月までに着工を認可することで合意した。

  • 北海道新幹線 札幌 - 長万部
    • 整備方式は要検討(フル規格orスーパー特急方式)
  • 北陸新幹線 白山車両基地 - 福井間、敦賀駅部
  • 九州新幹線長崎ルート(西九州ルート) 長崎駅部

しかし、2009年9月の政権交代に伴い、2011年2月現在でも全ての区間において着工は行われていない。

[編集] 財源問題

東北・上越新幹線は、国鉄の自己資金や財政投融資等の借入金によって建設され、結果的に国鉄債務増大の一因となったことへの反省から、整備新幹線は原則として、返済の必要がない無償資金による公共事業方式で建設され、営業を担当するJRからは、開業後の受益に応じた線路貸付料を受け取る形とした。

公共事業方式で建設することになったものの、公共事業費の増額には財務省(旧大蔵省)の抵抗が大きく、新規着工には新たな財源探しが付き物となる。

[編集] 旧スキーム

1989年、北陸新幹線・高崎 - 軽井沢間着工の際に決められた。

  • JR 50%
    • 整備新幹線の線路貸付料
    • 既設新幹線(東海道・山陽・東北・上越)のリース料から新幹線保有機構の旧国鉄債務を返済した余剰分
  • 国(公共事業費等) 35%
    • 第一種工事(線路その他の主体等の鉄道施設に係る工事)40%
    • 第二種工事(駅その他の地域の便益に密接に関連する鉄道施設に係る工事)25%
  • 地方 15%
    • 第一種工事 10%
    • 第二種工事 25%

地方負担分は原則として都道府県の負担となるが、90%は地方債の起債が可能。また10%は沿線市町村に負担させることができる(新スキームでも同様)。

1990年、既存新幹線のJR3社への売却を翌年に控え、譲渡収入のうち資産再評価に伴う上乗せ額1.1兆円が整備新幹線の特定財源とされ、毎年724億円が国およびJR(既存新幹線リース料余剰分に代わるもの)の財源となった。

なお北陸新幹線(高崎 - 長野)については、開業を長野オリンピック開幕に間に合わせるため、例外として有償資金である財政投融資(2775億円)が投入された。現在、開業済み3区間の線路貸付料で返済中である。

[編集] 新スキーム

1996年、3線3区間の新規着工に伴い、国・地方・JRの負担割合の見直しを行った。

  • JR 受益の範囲を限度とした貸付料など
  • 国 JR負担分を除く2/3
    • 公共事業費
    • 既存新幹線譲渡収入(旧スキームでJRの負担とされていたものも含む)
  • 地方 JR負担分を除く1/3
    • うち90%は地方債の起債が認められ、償還の際には元利償還金の標準財政規模に占める割合に応じて元利合計の50%から70%に対して地方交付税措置を行う(JR本州3社の固定資産税軽減特例(1/2)終了に伴う地方交付税減額分を配分)。したがって地方の実質負担は約12%から18%となる。

2004年末の政府・与党申し合わせで、既存新幹線の譲渡収入の中から2013年度以降の分を前倒しする形で活用することが決まった。

また、着工予定区間である北陸新幹線(富山 - 金沢)や北海道新幹線(新青森 - 新函館)の収支改善効果試算の過程で、他社区間に乗り入れることになるJR東日本の収益増加額(いわゆる「根元受益」)が巨額(北陸390億円/年、北海道220億円/年)となることが明らかになり、この分についても負担を求める方針も盛り込まれたが、当のJR東日本は難色を示している。

[編集] 整備新幹線建設費の推移

整備新幹線建設費の推移(単位億円)[1]
1989年 63

1990年 211

1991年 373

1992年 1296

1993年 1922

1994年 1942

1995年 2548

1996年 1725

1997年 1482

1998年 1899

1999年 2379

2000年 2753

2001年 2916

2002年 2380

2003年 2072

2004年 2207

2005年 2253

2006年 2509

2007年 2687

2008年 3178

2009年 3666

2010年 2510

[編集] 並行在来線問題

新幹線路線の並行在来線は、JRから経営分離され、第三セクター鉄道に転換または廃止されている(JRの経営のまま残った区間もある)。これは、高額な新幹線設備と特急の走らなくなった地方閑散線区の両方を所有することは、経営的に不可能であるとJRが判断したことによる措置である。今後開業する整備新幹線の並行在来線についても、同様の措置とする予定である。在来線での旅客輸送は減少しても、沿線の利用者にとって重要な幹線であるため、新たにできた鉄道会社の経営をどのように支えるかは課題である。現時点で新幹線開業より廃線となった路線は、信越本線横川駅 - 軽井沢駅間のみである。

なお、既存路線(整備新幹線以外の新幹線路線)の並行在来線は、経営分離される予定はない。

[編集] JRによって廃止された区間

なお、鉄道事業法上はいずれも譲渡(譲受)ではなく、JR側が鉄道事業の廃止手続きを行ったうえで、経営を引き継ぐ第三セクター側が新たに鉄道事業の許可を受けている。従ってJRの乗車券類は廃止の時点で無効となり、定期乗車券等は第三セクターのものを改めて購入しなければならない。

[編集] 地方格差助長問題

新幹線の建設促進の理由として、地方格差の是正と地域振興が主張されるが、地方の衰退を促進する効果が多いと指摘する専門家もいる。[誰?]

その理由として、以下のようなことを挙げている。

  • 北陸新幹線長野新幹線)の開業で発展した長野県佐久市に対して、新幹線ルートから外れた小諸市は衰退している[2]
  • ストロー効果により、地方格差の是正どころか都心部への一極集中の促進効果が強い。但し、これについては反論も存在する[2]
  • 並行在来線の分離問題により、収益の低い路線を地方に押し付け財政悪化につながる事[2]や、地方交通ネットワークが破壊される。

[編集] 設計、運行速度

建設費用の問題や、速達性の需要程度の関係により、整備新幹線区間の多くは、運行最高速度が260km/hとして設計・整備され、その通りに運行されまたは運行予定である。また、長野新幹線の30‰、九州新幹線の35‰(筑紫トンネルほか)勾配や線形など、新規路線にもかかわらず、従来よりもきつい制限が掛かる事も多い。

[編集] 関連項目

[編集] 脚注

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  1. ^ 蓼沼慶正、森田泰智、堀川淳「整備新幹線の財源について」、『鉄道ピクトリアル』第850号、2011年7月、pp.64 - 65。
  2. ^ a b c 鯉江康正「開発投資型新幹線による地域振興策の検討 - 糸魚川地域を例として -」 (PDF)、6.新幹線整備の影響(正の効果と負の効果)参照、長岡大学

[編集] 外部リンク

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