九州新幹線

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新幹線800系と八代海
鹿児島ルートと長崎ルート
  • 嬉野温泉駅と新大村駅は仮称
  • 博多南駅は九州新幹線の駅としては使用されない

九州新幹線(きゅうしゅうしんかんせん)は、整備新幹線計画の一つであり、九州旅客鉄道(JR九州)の高速鉄道路線及びその列車(新幹線)である。鹿児島ルート(博多 - 鹿児島中央間)と長崎ルート(西九州ルート、博多 - 新鳥栖 - 長崎間)がある。

鉄道建設・運輸施設整備支援機構(旧日本鉄道建設公団)が建設し、九州旅客鉄道がこれを借り受けて運営している。未開業・未着工区間についても今のところ同方式が予定されている。

目次

[編集] 鹿児島ルート

[編集] 概要

九州新幹線鹿児島ルートは、博多 - 鹿児島中央間を結ぶ整備新幹線計画であり、2004年3月13日に新八代 - 鹿児島中央間が部分開業している。新幹線区間の新八代 - 鹿児島中央間を最速34分で結び、在来線特急時代に3時間50分かかっていた博多 - 西鹿児島(現在の鹿児島中央)間を最速2時間12分で結んでいる。部分開業であるため、新八代駅新幹線ホームで在来線エル特急リレーつばめ」号と接続し、同一ホームでの対面接続が行われている。車両は部分開業時点で800系のみが運行されている。

部分開業した区間のうち、約7割がトンネル区間であり、山陽新幹線と同様にトンネルの多い新幹線である。また、高低差の激しい地区を走る為に新幹線としては急勾配区間が多く、その勾配に対応出来る車両として800系が開発・製造された。

開業後、新幹線が地下を走る鹿児島市武岡地区等では、予想外の振動騒音が発生して住民から苦情が続出した。これに対処するため、JR九州では該当区間で減速運転を行いながら薩摩田上トンネル内の路盤改良などの工事に着手し、解決を図っている。これらの問題は、マスコミ等で報道された。

ちなみに新全国総合開発計画(新全総、1969年)をもとに策定された新幹線整備計画では、1979年に開業をする予定であった[1]

[編集] 全線開業へ向けての動向

山陽新幹線との直通車両(量産先行車・N700系7000番台)

博多 - 新八代間は既に建設着工されており、当初2013年春の全線開業を計画していたが、予算配分と工事の進捗率が予定より早く進んでいるため前倒しされ、2011年3月の開業が予定されている(後述する直通列車名称の発表時に明言された)。全線開業時には、博多で山陽新幹線と繋がり、博多 - 鹿児島中央間が最速約1時間20分で結ばれることになる。

山陽新幹線との相互乗り入れについては具体的に、

  • 山陽新幹線の既存車両では、急勾配の多い九州新幹線内を走ることができない。また九州新幹線の既存車両では、速度面や車両数が劣るため山陽新幹線内での運行が不利である。
  • 自動列車制御装置 (ATC) の信号方式が山陽新幹線はアナログ、九州新幹線はデジタルと異なる。
  • 運行上の体制の整備

等技術面やサービス面などで様々な課題があり、JR九州とJR東海JR西日本との間で交渉が続いていたが、2007年10月にJR西日本とJR九州の間で、2011年春の全線開業に合わせ、新大阪 - 鹿児島中央間で直通運転を実施することで合意した。新大阪 - 熊本間を約3時間20分、新大阪 - 鹿児島中央間を約4時間で結ぶとされ、今後具体的な協議を本格化させることされた[2][3]

その後具体的な協議が進み、全線開業時の運行車両については、2007年5月にJR九州が、N700系をベースにして上記課題に対応した相互乗り入れ可能な車両をJR西日本と共同で開発すると発表、2008年9月末にJR西日本製作の量産先行車(N700系7000番台)1本8両が落成した。1編成8両で、デザインは白藍色のボディに、濃藍色と金色の側面ラインが入る。ロゴマークについては量産先行車では「WEST JAPAN」と「KYUSHU」の文字を用いたものを暫定的に用いているが、営業運用にあたっては別の物を用いる予定である。営業最高速度は九州新幹線区間で260km/h、山陽新幹線区間で300km/hの予定である[4]

なお、東京(東海道新幹線)-鹿児島中央(九州新幹線)間の直通乗り入れについては、

  • 所要時間の面で航空機に対抗することが困難
  • 収益の向上が見込めない
  • 東海道新幹線の輸送力逼迫のためJR東海区間では16両編成以外の列車の運行ができない

ことなどを理由に見送られた。

新八代 - 鹿児島中央間開業時に並行在来線である鹿児島本線のうち八代 - 川内間が肥薩おれんじ鉄道線として経営分離されたが、博多 - 新八代 - 八代間については並行在来線の経営分離はされず、これまで通りJR九州が運営することになっている。

2011年開業予定の博多 - 新八代間のレール敷設工事が2007年10月31日に、福岡県大牟田市内で開始された。工事は、同区間を8工区に分けて実施される。31日に着手された区間は大牟田市岩本から熊本県玉名市下津留までの約18kmの区間である[5]

[編集] 路線データ(既開業区間)

2004年新八代鹿児島中央間で部分開業した九州新幹線
  • 路線距離(実キロ):新八代 - 鹿児島中央間 126.8km(営業キロは137.6km)
  • 軌間:1435mm
  • 複線区間:全線複線
  • 電化区間:全線電化(交流25,000V・60Hz)
  • 最高速度:260km/h
  • 保安装置:デジタルATC(KS-ATC)
    • 東北新幹線上越新幹線で採用されているデジタルATC(DS-ATC)とは若干異なり、東海道新幹線で採用されている(ATC-NS)と同規格。
  • 車両基地川内新幹線車両センター(暫定車庫と一部に車両の定期検修も行う)
    • ※博多延伸時には熊本市富合町(熊本 - 新八代間)にも車両基地が設置される。
  • 保線基地:出水
  • 運転指令所:博多総合指令センター
    • 山陽新幹線との直通運転開始時は、東京に移管する予定[要出典]
  • 構造種別延長割合 路盤 12%、橋梁 7%、高架橋 12%、トンネル 69%[6]


[編集] 運行形態

新水俣駅停車中の800系「つばめ」

[編集] 列車名

[編集] 「つばめ」

つばめ」は、現行営業区間である新八代 - 鹿児島中央間で運転されている列車。上下共毎時2本が運行され、通過駅のある速達タイプと各駅停車タイプがそれぞれ毎時1本運行される(朝夕は各駅停車タイプのみで毎時2本運転)。東北・上越・長野新幹線同様、速達タイプと各駅停車タイプで同一の愛称が用いられている。

速達タイプ(1号 - 23号)は新八代 - 鹿児島中央間ノンストップの1往復(1号・18号)を除き川内のみ停車。接続する「リレーつばめ」も鹿児島本線区間では停車駅の少ない速達タイプとなる。各駅停車タイプ(31号 - )も「リレーつばめ」との接続が基本だが、早朝・深夜運転の100号台は接続する「リレーつばめ」が熊本発着、同じく早朝・深夜運転の200号台は「リレーつばめ」と接続をしない区間運転列車である。新八代駅での「リレーつばめ」との接続は同一ホームでの対面乗り換えとなる(接続時間3分)。

博多 - 新八代間開業時には博多 - 熊本間で毎時4本[7]、熊本 - 鹿児島中央間で毎時2本のダイヤ設定との計画を発表しており、それに合わせて博多駅の新幹線ホームの増設工事が進められている。1面2線の島式ホームで、うち1線は九州新幹線内折り返し列車専用とし、もう1線側を利用する同駅始終着の山陽新幹線列車との対面接続を考慮するとされる[8]

「つばめ」の愛称は、一般公募で列車名を募った際の第5位の得票数であった[9][10][11]。最多得票を集めたのは「はやと」であったが、スピード感があり[9][12]、また南から北上して春を告げる鳥[9][11][12]というイメージから、また戦前から長年使われてきた伝統ある列車名であること[9]から採用された。

[編集] 「さくら」

さくら」は、博多 - 新八代間開業時に新大阪 - 鹿児島中央間で運転される予定の山陽新幹線・九州新幹線直通列車。愛称は公募により決定し、2009年2月26日発表された[13][14][15]。「さくら」の愛称は応募総数168,951通のうち最多となる7,927通を獲得した愛称であり、新車両のコンセプトである「日本の美しさ」に合致することからも選ばれた。

運行本数・停車駅など運行形態の詳細は未定であるが、直通列車の本数については、JR九州の石原進社長は「1時間に1本程度は走らせたい」としている。

[編集] 車両

800系電車
「つばめ」で使用されている車両。ベースは700系新幹線だが、マイナーチェンジされている。内装やデザインがジャパネスク調であり全車両が動力車であるのも特徴。現在は6両固定編成となっている。なお、全線開業後は8両編成に増結も検討されているが、現在の同系は博多 - 鹿児島中央間折り返し列車限定運用とJR九州が表明している事から、利用状況に合わせて現状のままとされる可能性もある。
N700系電車7000番台
「さくら」に使用される予定の車両。N700系新幹線をベースにしたJR九州とJR西日本との共同開発による8両編成で、JR西日本が19編成、JR九州が10編成の合計29編成(232両)が製造される予定。全車普通車の800系やひかりレールスターと異なり半室分のグリーン車が用意される。普通車はひかりレールスター同様、指定席が2列+2列、自由席(3両)が2列+3列の座席配置。2008年10月に量産先行車両(JR西日本所有)が登場している。

[編集] 案内

電光掲示板では、リレーつばめ区間も含めて一本の列車であるかのように案内される

九州新幹線で運行されるつばめ号の始発駅と終着駅で流される車内自動アナウンスは、新幹線初の四ヶ国語放送(日本語英語韓国語中国語の順に放送)となっている。

全駅で使用されている発車メロディ「風は南から」と、車内で使用されている車内メロディは、株式会社音楽館向谷実が作曲している。これとは別に開業時のセレモニーにてイメージソングが作られ、それはTHE ALFEE坂崎幸之助が担当し、一度だけ披露された(後に坂崎自身のラジオ番組でもオンエアされた)[要出典]

なお2004年の開業時より、駅の電光掲示板や車内放送では、リレーつばめ号新八代行きを「鹿児島中央行」、新幹線つばめ号新八代行きを「博多行」とアナウンスする。これは、博多 - 鹿児島中央間を一体的に運用し、スムーズに行けることをアピールするためと考えられる。ただし、新八代駅入線時においては誤乗防止のため「新八代」、あるいは折り返しの行き先表示である「鹿児島中央(つばめ)」・「博多(あるいは小倉 リレーつばめ)」を表示して入線する。

[編集] 担当乗務員区所

[編集] 利用状況

九州新幹線利用者数
年度 利用者数
2004 3,228,790
2005 3,368,220
2006 3,345,225
2007 3,440,125

開業1年目で開業前予測(約250万人)[16]を上回る約323万人を輸送した[17]、。これは新幹線開業前の鹿児島本線(八代 - 西鹿児島)の利用者約140万人の2.3倍である。開業ブーム後の2年目も1年目を上回る約336万人を輸送[17]、3年目こそは天候不順などで前年をわずかに下回ったものの、4年目は過去最高の利用率を記録し、なおも好調を維持している。特に鹿児島県内から博多までの利用者が多い。また、川内、出水から鹿児島中央までの短距離利用が目立つ。これは在来線との比較もさる事ながら、高速道路南九州西回り自動車道の建設が無料区間を含め順次進んでいるが、山地に囲まれた沿線の道路事情が芳しくない事もあって、新幹線利用による速達効果が大きい事が最大の要因と見られる。朝夕は通勤通学客も多くあり新幹線定期券の利用も順調な伸びを示している。

逆に熊本県側の新水俣駅の利用者は伸び悩んでいるが、これは同駅から熊本方面への新幹線の利用区間がすぐ隣接の新八代駅までとなっており、県都・熊本市や九州の中心地・福岡市に出るには現状では乗り換えを必要とする事や、同駅の立地が水俣市の中心地から外れている事など、新幹線の速達効果が出にくい事が大きな要因とされ、周辺住民にとっては全線開業で初めてその効果が出るものとされている。

[編集] 沿革

[編集] 駅一覧

  • 接続路線はその駅で接続している路線(正式路線名)のみ記載する。運転系統などについては各駅の記事を参照。
  • 距離は新八代駅からの実キロ。
九州新幹線における駅一覧表
駅名 距離(km) つばめ 接続路線 所在地
山陽新幹線 広島岡山新大阪方面直通予定
建設中の区間(2011年開業予定)
博多駅 130.0   山陽新幹線・博多南線鹿児島本線
地下鉄空港線
福岡県
福岡市博多区
新鳥栖駅
(新設)
103.7   長崎本線 佐賀県鳥栖市
久留米駅 98.0   鹿児島本線・久大本線 福岡県 久留米市
筑後船小屋駅
船小屋駅を移設・改称)
82.1   鹿児島本線 筑後市
新大牟田駅
(新設)
70.3     大牟田市
新玉名駅
(新設)
53.7     熊本県 玉名市
熊本駅 31.8   鹿児島本線・豊肥本線
熊本市電幹線田崎線熊本駅前駅
熊本市
営業中の区間
新八代駅 0.0 鹿児島本線 熊本県 八代市
新水俣駅 42.8 肥薩おれんじ鉄道線 水俣市
出水駅 58.8 肥薩おれんじ鉄道線 鹿児島県 出水市
川内駅 91.5 鹿児島本線
肥薩おれんじ鉄道線
薩摩川内市
鹿児島中央駅 126.8 鹿児島本線・指宿枕崎線
鹿児島市電第二期線唐湊線鹿児島中央駅前駅
鹿児島市
凡例
●:全列車が停車
◎:ノンストップ列車以外停車
△:各駅停車列車のみ停車

[編集] キャッチフレーズ

  • つばめ、翔ぶ 2004年3月 - 2005年2月
    季節ごとに、「つばめ、」「翔ぶ」の間に、春・夏・秋・冬の言葉が入っていた。
  • つばめで、それッ! 2005年3月 - 2006年2月
  • あした、つばめと 2006年3月 - 2006年12月
  • 鹿児島スイッチ福岡スイッチ 2007年1月 - 2009年1月
  • つばめ。旅する新幹線。 2009年2月 -

[編集] 部分開業の理由

博多(山陽新幹線)からの延長ではなく、新八代 - 鹿児島中央間が先にフル規格新幹線で建設・部分開業した理由として以下のことが挙げられる。

  • 建設する土地の確保が容易だった。反面、博多 - 熊本間では市街地に新線を引き込むための土地を確保することが困難な箇所が多かったため。
  • 鹿児島本線の新八代 - 鹿児島間は大半が単線であったり、線路が海岸線に沿って作られており複線化も困難なほどに線形が劣悪で、高速運転化には抜本的な改良が必要であった。一方、博多 - 八代間は線形が良く、787系による最高130km/h運転の効果を十分に発揮出来るため、速度向上の緊急度が低かった。
  • 鹿児島本線で需要の高い博多 - 熊本間に先に新幹線を作れば、採算性に疑問のある熊本以南の建設が行なわれるかどうか分からないと判断された[18]。これについて元JR九州社長の石井幸孝は著書「九州特急物語」(JTBパブリッシング)で「そして何よりも鹿児島地区の新幹線建設への情熱は絶大で、もし博多側から着工になれば八代で建設が足踏みしてしまうのではないかという危機感が大きく、南側からの建設に対する働きかけが強かったのである」と述べている。
  • 新八代以南をスーパー特急規格で建設しても、大した建設コスト削減にはならない(特にトンネル区間の多い新幹線では顕著となる)上に、新幹線車両による直通運転の効果を出せなくなる。

[編集] 長崎ルート(西九州ルート)

[編集] 概要

九州新幹線長崎ルート(西九州ルート)は、博多から鹿児島ルートの新鳥栖で分岐して長崎へ至る整備新幹線計画である。「九州新幹線」と呼ばれている鹿児島ルートと区別するために単に「長崎新幹線」とも呼ばれることがある。

計画自体は1978年(昭和53年)に当時放射能漏れ事故を起こした原子力船「むつ」の修理を行う港が見つからず同船が「漂流」していた際に同じく当時経営難に陥っていた佐世保重工業の救済ともからめて修理を佐世保港で受け入れる代わりに佐世保市経由の長崎新幹線を建設する、という当時の自由民主党幹部との「念書」が存在する、と地元では公然と語られてきた(もっとも、確認はされていない)。

計画時から「長崎ルート」と呼ばれてきたが、2005年(平成17年)10月に佐賀県・長崎県は独自に「西九州ルート」へと名称を変更した。これは「長崎ルート」表記だと長崎県がことさら強調されるため、同じく影響を受ける佐賀県民に配慮する形で名付けられたものである。JR九州も自主的にこれに対応し、「長崎ルート」の名称は併記される形となった。政府・与党・法令上の名称は引き続き「長崎ルート」の呼称を用いている。

  • 佐賀県内のマスコミでも対応が分かれており、例えばテレビではNHK佐賀放送局は「長崎ルート」をそのまま使用しているのに対し、地元唯一の民放テレビ局であるサガテレビは「西九州ルート」を使用する。また、地元紙の佐賀新聞社は「長崎ルート」、ブロック紙の西日本新聞は「西九州ルート」と分かれている。
  • 同様の事例は全線開通前の長崎自動車道でも生じており、長崎県内区間は「長崎自動車道」、佐賀県内区間は「九州横断自動車道」と呼んでいた(九州横断自動車道は長崎自動車道の高速自動車国道としての路線名でもある)。

[編集] 計画についての曲折

沿線となる長崎県民及び佐賀県民の中にも建設について賛否両論ある中で、第一期工事としての武雄温泉駅 - 諫早駅間については2005年度以降毎年10億円の予算が下りていたものの、着工認可のための大前提となる「並行在来線の経営分離への沿線地方公共団体の同意取付[19]」に関して、並行在来線沿線の江北町鹿島市が2005年(平成17年)8月に同意を正式に拒否した(当初はこの1市1町に加えて太良町も同意拒否に加わっていた)。そのため、着工は実現していなかった。ただし江北町の場合は町長の田中源一は現在も反対姿勢を貫いているが町議会は2006年(平成18年)3月に経営分離に同意する旨の決議を行っており、いわゆる「ねじれ」の状態にある。ちなみに、かつては佐賀県側で経営分離の対象となる全ての自治体(1市3町)が反対姿勢を示していたが、白石町が2005年(平成17年)12月、太良町が2006年(平成18年)2月に同意した。

その後、第一期工事区間については、2007年(平成19年)12月17日に建設を推進する長崎県・佐賀県・JR九州による「三者合意」(並行在来線を上下分離方式によりJR九州が運行を継続するので経営分離とはならず、分離についての沿線市町の同意は不要になるという解釈に基づくもの)が行われた。これを受けて、2008年(平成20年)3月26日に国土交通省は鉄道建設・運輸施設整備支援機構に対し工事実施計画を認可した[20](詳細は後述)。

また、第二期工事として考えられているのは諫早駅 - 長崎駅間約21kmであり、長崎県では第一期工事の着工の目途がつき次第、国に対して早期着工を要望していく、としている。但し、現状では約1,100億円とされるこの区間の建設費の財源がないため着工の目処は全く立っていない。

ただし、佐賀県は新鳥栖駅 - 佐賀駅 - 武雄温泉駅間の着工は求めない、としている。これは佐賀平野が軟弱地盤であり難工事が予想され、佐賀県の建設費の実質負担額が約750億円と非常に大きいため、と説明されている。(これが江北町議会の同意決議につながった、と見る向きが多い。当初の計画では新線は江北町内は肥前山口駅の北方を通過するだけで駅は設置されない予定だったためである。JR九州は、新幹線開業後は長崎方面の列車のうち2本に1本は引き続き肥前山口駅に停車し、佐世保方面の列車はこれまで通り全列車が停車する、としている)。

ちなみに長崎県内にある佐世保線の沿線住民は、直接佐世保市内に新幹線が通らないことや(以前の計画では、前述の通り佐世保市の早岐駅を経由するルートであったが、時間短縮のために現在のルートに変更された)、もし長崎ルートが開業しても佐世保への特急の運行本数は以前と変わらないことからあまり関心がない。この状況に対し、フリーゲージトレインを博多から直通させる(標準軌:博多 - 新鳥栖)ことで佐世保線沿線にもメリットを与える案があり、佐世保市の経済界等から推進論が浮上してきている。

毎日新聞社西部本社が2005年(平成17年)12月5日の朝刊紙面で公表した毎日新聞社世論フォーラム九州・山口8県男女1000人電話アンケート調査の結果によれば、九州新幹線長崎ルートの建設を不必要と考える県民の割合は、佐賀県で59%、長崎県で53%、福岡県で48%となっている。また長崎市長選当日である2007年(平成19年)4月22日に、長崎市内の投票所近辺で毎日新聞社によりアンケートが実施された。この結果、建設が必要と考える人が39%、不要と考える人が44%であった[21]

[編集] 運行計画

ここでは、2007年(平成19年)4月の時点でJR九州が発表している運行計画を掲載する。[22][23]

  • 博多駅 - 新鳥栖駅 - 武雄温泉駅 - (長崎ルート経由) - 長崎駅:32往復(フリーゲージトレインでの運転。新鳥栖 - 博多間は鹿児島ルートに乗り入れ。)
  • 博多駅 - 鳥栖駅 - 武雄温泉駅 - (佐世保線経由) - 佐世保駅:16往復(在来線特急列車での運転。これまで通り全線在来線経由。)
    • 新鳥栖駅 - 武雄温泉駅間・諫早駅 - 長崎駅間は現在の長崎本線・佐世保線の線路を一部改良・複線化(肥前山口駅 - 武雄温泉駅間)の上使用する。
    • 博多駅 - 新鳥栖駅間(鹿児島ルート)、武雄温泉駅 - 諫早駅間(軌間1067mm、但し施設は将来のフル規格に対応できるように建設)は新線を使用。
    • 長崎駅、佐世保駅発着列車は別々に運行され、現在特急「かもめ」・「みどり」が行っている併結運転は行われない。
    • 以上の列車とは別に、肥前鹿島駅発着の在来線特急列車を5往復程度運行する。なお、佐賀県の発表によると肥前鹿島から博多までの直通となり、現在の電車ではなく気動車による運行となる、とされている。また、設定時間帯は肥前鹿島駅の特急利用客の多い朝夕中心となる。

なお、博多から先のJR西日本山陽新幹線区間への乗り入れについては、JR西日本社長の山崎正夫が定例記者会見の席上で、ダイヤ編成上他より遅い車両を走らせるのは難しいことや線路保守費の増大などへの懸念からフリーゲージトレインによる乗り入れに難色を示す発言を行う[24]など、実現の可能性は流動的となっている。

[編集] 並行在来線をめぐる経緯

佐賀・長崎両県が当初示していた並行在来線の運行計画としては、以下の様なものであった。

  • いわゆる「上下分離方式」を採用し、線路・路盤・駅設備等の維持・管理は両県が責任を持って行う(第三種鉄道事業者)。
  • 実際に鉄道の運営を行う第二種鉄道事業者は以下の通りとする。
    • 肥前山口 - 肥前鹿島間:JR九州
    • 肥前鹿島 - 諫早間:両県が中心となって設立する第三セクター鉄道
      • 電化設備は使用せず、ディーゼルカーによる運行とする。交流電車は高価であること、また最低でも2両編成となるため効率が悪いため、としている(肥薩おれんじ鉄道とは異なり、この区間を走行する貨物列車は既にないため、電化設備を残す必要はない、としている)。
      • 肥前山口駅ではJR九州の列車との乗り換えが便利なように「対面乗り換え」とする。また、JR佐賀駅までの直通列車を走らせるようJR九州と協議する。
      • 新駅の設置も考慮する。運賃水準は現在のJR九州並みとする。
      • 運営費は松浦鉄道と同じ水準とする。

佐賀・長崎両県は、以上の計画が実施され、普通列車の乗客数が現在と同じ水準であると仮定した場合、第三セクター鉄道の収支はほぼトントンに収まる、と主張していた。この計画について、前述の運転計画とあわせた利便性の大幅な低下と、将来の並行在来線区間の(利用低迷による)廃線の可能性に懸念を示した鹿島市・江北町が肥前鹿島 - 諫早間の経営分離計画に同意せず、2005年度(平成17年度)以降長崎ルート(西九州ルート)の事業予算が毎年計上されながら工事着手が行えない状況が続いていた。同意していない2自治体は「JR長崎本線存続期成会」を結成し、並行在来線の第三セクター鉄道化に反対すると同時に、第一期工事の時間短縮効果が余り見込めない・費用対効果が悪い、といった主張を行っていた[25]。また、両自治体は長崎本線の輸送改善は新幹線建設ではなく既存区間の複線化で対応できると期成会において主張していたが、両県(特に長崎県)は時間短縮効果がほとんどない、複線化費用に対する国の補助金額が少なく現在の国の補助予算規模では肥前山口 - 諫早間の複線化に60年近くかかる、補助金以外の費用はJR九州ならびに佐賀・長崎両県の負担となり特にJR九州に負担の意思がない、等の理由を示し否定的見解を示し続けた。もちろん、この見解には将来の長崎新幹線の全線フル規格化を目論んでいる長崎県の意思が色濃く反映されている。

新幹線計画を推進したい佐賀・長崎両県は両市町との協議を継続しつつ、並行して新幹線の工事着手が可能となる方法を模索していたが、2007年(平成19年)12月17日、佐賀・長崎両県とJR九州の話し合いにより「並行在来線を引き続きJR九州が運行する方向」で合意した[26]。合意内容は、

  1. JR九州による並行在来線の運行は新幹線開業後の20年間とし、21年目以降の扱いについてはその時点で再び三者で協議する(JR九州社長の石原進は21年目以降の扱いは「当社の他の路線と同じ」との見解を示している)。
  2. 鉄道設備はJR九州が集中的に整備した上で佐賀・長崎両県へ14億円にて有償売却し、並行在来線に指定された肥前山口 - 諫早間を「上下分離方式」で運営する。

というものであった。この合意内容について、佐賀県知事の古川康は記者会見で「これは経営分離ではない、JRがそのまま続けるということにほかならない」「今回の案、合意で、鹿島市と江北町の(経営分離に対する)同意は必要なくなった」という趣旨の発言を行った[27]。また、当初は肥前山口 - 諫早間の地上設備はJR九州から無償譲渡される予定を14億円での有償譲渡に変更しているが、これについて佐賀・長崎両県は、第三セクター鉄道設立時に想定していた車両購入費等の開業時の初期費用約16.4億円よりは少ない、と説明した。

一方でこの案については(経営分離への不同意を貫く)鹿島市・江北町長を疎外した推進派三者による恣意的な合意であり「実質的に経営分離ではないのか」との疑問の声が生じており[28]、江北町長等も「経営分離にあたる」として直ちに異議を唱えたが[29]、2008年(平成20年)1月23日に開催された政府・与党のワーキンググループ会合において、国土交通省はこの案は「経営分離にはあたらない」との見解を示した[30]。同省内で新幹線の採算性などについての精査が終わり、2008年(平成20年)3月26日に工事着工が認可された。佐賀・長崎両県は2007年度内に着工認可が下りることを前提に2007年度補正予算案並びに2008年度本予算案に建設費を計上した。

認可内容によれば、建設キロは45.7Km、そのうち約半分の23Kmがトンネルとなる。工期はおよそ10年、当初は用地買収費、トンネルや橋の建設費として1,840億円を認めた。レールや電気設備分は工事の進捗状況をみて認可される。総事業費は2,600億円(当初計画より100億円削減)とされている[31]。2008年(平成20年)3月に認可されたことにより、2007年度に計上されていた工事費10億円を2008年度に繰り越して執行することになり、2008年度に計上された10億円と合わせて20億円の国の予算が投入される予定。

これに対し、2008年(平成20年)2月24日に投開票された江北町長選挙では、新幹線着工反対を訴えた現職の田中源一が新幹線容認派で新人の元県職員を破って5選を果たし、「選挙結果が(町民による)最大の意思表示」として町として改めて新幹線の着工に反対を表明しつつ、「着工が決まれば現実的に受け止めなければならない」と現実的対応も示唆した[32][33]。2008年(平成20年)3月には佐賀県議会において民主・社民系会派等の共同提案により長崎新幹線の建設賛否を問う県民投票を実施する条例案が提出されたが、最大会派の自民党・公明党ならびに保守系会派の反対多数で否決された[34]。田中はその後のシンポジウムの席上で「本格着工までの1年程度は(新幹線建設への)反対を続ける」と明言している[35]

一方、鹿島市長の桑原允彦はJR長崎本線経営分離反対運動を終息させるとした[36]。そのため、2009年(平成21年)1月現在、関係する自治体の首長で公式に長崎新幹線建設反対の立場を取っているのは江北町長の田中ただ一人となっている。

佐賀・長崎両県は、在来線維持のために両県が負担することとなる設備購入費を14億円、開業後20年間の維持管理費を46億円と見積もっているが、この計60億円を、長崎県が40億円、佐賀県が20億円負担することで2008年(平成20年)4月25日に合意した。この負担割合について長崎県の金子原二郎知事は、「佐賀県の理解と協力がなければ、新幹線は実現しなかった。長崎の誠意を具体化した」と述べている[37]

2008年(平成20年)3月の工事認可を受け、同年4月28日には佐賀県嬉野市において起工式が行われ、武雄温泉 - 諫早間の建設工事が開始された。2008年度は主に測量が行われる。

一方、長崎県内の旧小長井町(現在は諫早市に合併)などではJR九州の運営となることで普通列車の運行本数増加と新駅設置という長崎県が将来の第三セクター鉄道転換の際に表明していた約束が実行されないのでは、という懸念を示す動きが出ている[38]

[編集] 沿革

[編集] 設置予定駅

九州新幹線長崎ルートにおける駅一覧表
駅名 距離(km) 接続路線 所在地
新鳥栖駅
(仮称)
0.0 九州新幹線(鹿児島ルート)・長崎本線 佐賀県 鳥栖市
佐賀駅   長崎本線・唐津線 佐賀市
肥前山口駅   長崎本線・佐世保線 江北町
武雄温泉駅   佐世保線 武雄市
嬉野温泉駅
(仮称)
    嬉野市
新大村駅
(仮称)
    長崎県 大村市
諫早駅   長崎本線・大村線
島原鉄道線
諫早市
長崎駅   長崎本線
長崎電気軌道
長崎市

[編集] 橋・トンネル等の構造物

[編集] 関連項目

[編集] 参考資料

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[編集] 脚注

  1. ^ http://www.nishnet.ne.jp/~andou/zensou/kansen.htm
  2. ^ 山陽新幹線と九州新幹線との相互直通運転の実施について 西日本旅客鉄道 2007年10月17日
  3. ^ 新幹線、新大阪 - 鹿児島を直通運転 2011年4時間で asahi.com 2007年10月13日
  4. ^ 山陽・九州新幹線直通用車両のデザインなどについて 西日本旅客鉄道 2008年2月27日
  5. ^ 交通新聞抜粋版2007年11月5日配信号
  6. ^ 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」2008年2月号(Vol.800)p.145「日本の高速鉄道 - その軌跡と今後の展望 -」高津 俊司、土井 充
  7. ^ 九州新幹線 博多 - 熊本「15分に1本」JR九州社長 運行計画初の表明 - 西日本新聞2007年9月7日
  8. ^ 「ニュー博多駅」 工事現場初公開 JR九州西日本新聞朝刊:2007年10月11日
  9. ^ a b c d 春を告げるイメージ 九州新幹線は「つばめ」 - 西日本新聞 2003年3月21日朝刊
  10. ^ 交通新聞 2003年3月25日
  11. ^ a b 読売新聞 2003年3月21日朝刊12版 38面
  12. ^ a b 毎日新聞 2003年3月21日朝刊12版 27面
  13. ^ 九州・山陽新幹線 相互乗り入れ合意 大阪から4時間 鹿児島直通1時間1・2本 西日本新聞 2007年10月18日
  14. ^ "新幹線の列車名決定!!". JR九州. 2009-02-26 閲覧。
  15. ^ 山陽新幹線・九州新幹線直通列車の列車名決定について 西日本旅客鉄道 2009年2月26日
  16. ^ 新幹線新青森駅開業を契機とした青森県全体の観光振興に関する調査研究報告書(2006年12月) 1-7. 九州新幹線 (pdf) 社団法人 中小企業診断協会青森県支部
  17. ^ a b 鹿児島県の財政 P4「九州新幹線開業効果・本格焼酎ブーム」参照
  18. ^ 角一典「九州新幹線鹿児島ルート建設と随伴的諸問題」(pdf)
  19. ^ 「整備新幹線の取扱について」平成16年12月16日 政府・与党申合せに基づく事項
  20. ^ 長崎新幹線の着工決定-国交相認可 2018年開業目指す佐賀新聞 2008年3月27日
  21. ^ 『新幹線は必要か』(毎日新聞長崎版・コラム:2007年6月25日付)
  22. ^ 九州新幹線西九州ルートなぜとなに(佐賀県公式サイト内)
  23. ^ 九州新幹線西九州ルート(長崎ルート)(長崎県公式サイト内)
  24. ^ 新幹線、山陽と長崎「直通困難」 会見でJR西社長 asahi.com 2008年11月28日
  25. ^ JR長崎本線存続期成会 長崎本線の経営分離対象区間沿線の佐賀県鹿島市・江北町による期成会。2008年6月8日をもって同会のHPは閉鎖されたほか、2009年3月に鹿島市長の桑原允彦は同会を解散させると表明した。
  26. ^ 長崎新幹線着工へ-在来線、JRが運行 - 佐賀新聞 2007年12月18日
  27. ^ 平成19年12月17日知事臨時記者会見(佐賀県公式サイト)での記者との質疑応答より
  28. ^ 九州新幹線:長崎ルート問題 合意案に疑問、民主が意見書 毎日新聞 2007年12月20日
  29. ^ 三者合意の経営分離判断-政府、大串議員に答弁書 - 佐賀新聞 2007年12月29日
  30. ^ 年度内着工認可を確認-財源確保策も論議 - 佐賀新聞 2008年1月24日
  31. ^ 但し、関係者によれば資材費高騰等により総事業費は300億円程度増加する可能性があるという。整備新幹線812億円-15%増 異例の追加要求明記 佐賀新聞 2008年8月28日
  32. ^ 知事「話し合い進める」-江北町長、着工見直しに期待 - 佐賀新聞 2008年2月26日
  33. ^ 本格着工後は現実対応-江北町長、柔軟姿勢示す - 佐賀新聞 2008年3月14日
  34. ^ 県民投票条例案 否決-市民グループ「反対運動続ける」 - 佐賀新聞 2008年3月13日
  35. ^ 「県民投票で判断を」 新幹線西九州ルート着工 江北町長ら 佐賀市で議論 - 西日本新聞 2008年3月30日
  36. ^ 反対運動の終息宣言- 新幹線着工認可で鹿島市長 - 佐賀新聞 2008年3月28日
  37. ^ 新幹線負担合意 在来線維持 長崎40億、佐賀20億円 長崎知事「誠意を具体化」 - 西日本新聞 2008年4月26日
  38. ^ 振興策を地元協議会が県に要望 本県側在来線区間 - 長崎新聞 2008年9月9日

[編集] 外部リンク

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