Long Term Evolution

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Long Term Evolution(LTE、ロング・ターム・エボリューション)は新たな携帯電話の通信規格である。2010年頃から世界中でのサービス開始が見込まれており、標準化団体である3GPPにて3GPP Release.8として標準化の作業が進められており、LTEの仕様は2009年3月にRelease.8内で凍結された[1]。現在普及しているW-CDMAやCDMA2000といった第3世代携帯電話(3G)と将来登場する第4世代携帯電話(4G)との間の技術であるため、第3.9世代携帯電話(3.9G)とも呼ばれる。

3GPP上ではE-UTRA (Evolved Universal Terrestrial Radio Access)/E-UTRAN (Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)とも表記されており、NTTドコモSuper 3Gと呼んでいる。

目次

[編集] 概要

下りはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access 直交周波数分割多元接続)、上りはSC-FDMA (Single Carrier Frequency Division Multiple Access シングルキャリア周波数分割多元接続)を採用し、ピークデータレートが下り方向100Mbps以上、上り方向50Mbps以上(いずれも20MHz幅において)の通信速度を要求条件として仕様策定が進められている。 パケット通信のみをサポートし、音声の通信はVoIPでサポートされる。 3Gと同じ周波数帯域を使用し、帯域幅は1.4, 3, 5, 10, 15, 20MHzを選択して使用できる。 伝送遅延、待ち受けからの通信状態への遅延(接続遅延)を以前の通信規格に比較して低減するような技術が盛り込まれている。 「Long Term Evolution」の名称通り、3Gを「長期的進化・発展」させることで、スムーズに4Gに移行出来るようにする、いわば橋渡し(中継ぎ)的な役割を期待されている。

[編集] 経緯と市場

現在の日本で普及期にある3Gは、先に日本国内だけでW-CDMACDMA2000という2つの異なる方式が先行し、特許使用料も高かったために世界市場への普及が遅れた。こういった反省から、世界中で使える高速通信可能で低遅延な携帯電話を低価格の特許で実現すべく、3GPPでLTEの標準化が携帯電話通信事業者と機器メーカーの主導で進められている。3Gでの周波数帯内で将来4Gで採用される予定の先進の通信技術を取り込み、現在使われているW-CDMA、CDMA2000、HSPA、EV-DOといった通信規格との後方互換性には配慮していない。

携帯機器用の高速無線通信サービスとしては、韓国では既に始まり2009年には日本や米国でも立ち上がる予定であるモバイルWiMAX(IEEE 802.16e)があり、これはLTEと非常に似た要素技術に基づくために、2010年でのLTEのサービス立ち上がり予定時期には、無線基地局の共通化や関連部品の量産効果といった恩恵が受けられるのではないかと期待されている)[2]

[編集] 使用技術

周波数帯域幅
1.4, 3, 5, 10, 15, 20MHzから選択(最大20MHz)
データ変調方式
QPSK、16QAM、64QAMのいずれか(上り方向では64QAMはオプション)
多重化方式
OFDMA(下り)/SC-FDMA(上り)
上りでは単一搬送波を使うSC-FDMAの採用により、電力消費量の削減を考慮した。
全二重化モード
FDDまたはTDD
経路多重化
(基地局アンテナ×端末アンテナ)1×2, 2×2, 4×2, 4×4 MIMO

[編集] 各国・地域の状況

[編集] 日本

NTTドコモ
2006年7月から8月にかけて装置開発に向けたメーカーを募集し[3]、2007年7月より実証実験を開始している[4]。2008年2月~3月には、神奈川県横須賀市での屋外実証実験にて250Mbpsのパケット信号伝送に成功[5]。ユビキタス特区制度を利用し、富士通と共同で北海道札幌市市街地で1.5GHz帯の電波を利用したフィールド実証実験を行い[6][7]、4×4 Pre-coding MIMOを適用し、帯域幅10MHzにおいて下り最大120Mbpsの伝送を実現した[8]
ほかにも、低消費電力のMIMO信号分離用LSIを試作するなど、ハード面での研究開発も行っている[9][10]
2010年秋頃から上り又は下りの片側の5MHzの帯域を使用した商用サービスの開始を目指している。
ソフトバンクモバイル
2008年1月から2月にかけて日本エリクソンと共同で屋内実験を行った[11]。2009年初めより華為技術の実験装置を用い、茨城県水戸市で実験を行うと発表した[12]。また、ユビキタス特区制度を利用し、2009年度中に福岡県北九州市八幡東区でも実証実験を行う予定(1.5GHz帯の電波を利用する)[6]
2010年の段階ではHSPA Evolutionのサービスを開始して、LTEはその先で対応する予定である[2]
KDDI沖縄セルラー電話(各auブランド
2008年11月7日、第3.9世代の通信方式にLTEを導入することを明らかにし[13]、2008年12月3日に正式にリリースを行った[14]。ちなみに同社は当初、同社が推進する『Ultra 3G』の構想の一環として第3.9世代の通信方式にUMBを導入する予定だった。
LTEは2012年頃に商用化の見通し(2009年現在、新800MHz帯および1.5GHz帯の電波を検討中)。なお、2009年~2010年には「CDMA 1X WIN」の最上位サービスにあたる1x EV-DO Rev.Bのサービスを検討していたが、LTEの導入を決定したため、Rev.Bの導入を解消した[15]。その代わりにLTEを導入するまでの間、1x EV-DO Multicarrier Rev.A新800MHz帯および2GHz帯の電波を利用する)が「CDMA 1X WIN」の最上位サービスとして2010年~2011年頃に導入される見込みである[16]
イー・モバイル
2008年10月6日に東京都港区での屋外実証実験に向け実験試験局免許を申請した(1.5GHz帯の電波を利用する)[17]。2011年前半の導入を目指している。


[編集] 今後の方向性

現在、日本ではNTTドコモとソフトバンクモバイル、イーモバイルがW-CDMA、KDDI/沖縄セルラー電話(各auブランド)がCDMA2000(→CDMA2000 1x)を採用しており、端末にはすべてSIMロックがかけられている。仮に、すべての端末をSIMフリー化したとしても、au端末は他のキャリアでは使えないことになり、SIMフリーの意味合いは薄れる。次世代の携帯電話規格がLTEで統一されるとなると、SIMフリー化も進めやすくなると考えられ、携帯電話端末と事業者間の縛りも無くすことが可能となる。

また、NTTドコモも、過去のPDCや、FOMA初期におけるW-CDMA標準仕様の非準拠という反省を踏まえ、世界市場と協調して規格の制定・導入を行うと表明している。

当初は周波数の帯域の狭さから最大3社に免許が与えられ、落選する事業者がでる見込みだったが、2009年1月に総務省は1.5/1.7GHz帯を使うことで最大4事業者に割り当てる方針を示した[18]。このうち、1.5GHz帯は、10MHz幅2ブロックと2014年まで東名阪地区に限り利用できない7.5MHz幅(同帯域は、デジタルMCAが東名阪バンドとして利用しているため。2014年3月末を以てデジタルMCAの免許が失効予定であり、それ以降順次利用可能となる)の帯域を含んだ15MHz幅の1ブロック、1.7GHz帯の10MHz幅1ブロックの4つで申請を受け付けることになった。

2009年5月7日に免許申請が締め切られ、4社が申請し、KDDI/沖縄セルラー電話が1.5GHz帯(希望帯域幅は非公表)でLTE向け、ソフトバンクモバイルが1.5GHz帯で10MHz帯域幅を利用しHSPA+・HSPA Evolution・LTE向け、イー・モバイルが1.7GHz帯・帯域幅が10MHzでHSPA+・HSPA Evolution・LTE向け、エヌ・ティ・ティ・ドコモが周波数帯・帯域幅とも非公表だがLTE向けとして申請を出した事が明らかになった。

2009年6月10日に免許の交付予定が明らかになり、KDDI/沖縄セルラー連合とソフトバンクモバイルが、何れも1.5GHz帯10MHz幅、ドコモが1.5GHz帯15MHz幅、イー・モバイルが1.7GHz帯10MHz幅をそれぞれ割り当てることが明らかになった。

なお、ドコモは1.5GHz帯FOMAサービスエリア用に使われている2GHz帯のオーバーレイによりLTEを展開する予定で、KDDI/沖縄セルラーは新800MHz帯/1.5GHz帯のオーバーレイにより、LTEを展開予定(WINで利用されている2GHz帯を、3.9G方式採用後の活用方法については未定)。ソフトバンクモバイルは、LTEは既存のSoftBank 3Gで利用している2GHz帯を転用し、2Gの周波数帯を返納して再獲得予定の1.5GHz帯はHSPA+DC-HSDPAで利用する。イー・モバイルは、すでに利用している1.7GHz帯と新規獲得予定の帯域とを連続する形で、2009年夏に開始されることが決まっているHSPA+に加え、DC-HSDPAとLTEによる利用をそれぞれ計画している。

[編集] 米国

米国携帯電話事業首位のベライゾン・ワイヤレスが親会社である英ボーダフォンと共に2008年後半からLTE用基地局設備の試験運用を開始し、早ければ2010年から商用サービスを始める。日本のKDDIならびに沖縄セルラー電話、韓国SKテレコム中国中国電信同様のcdma2000陣営(中国電信のCDMA2000は、もとは、UMTSに移行した中国聯通から譲受したもの)からの参加となっており、既に700MHz帯の使用権を取得している。AT&Tモビリティは今後の数年間、LTEとHSPA Evolutionのいずれで行くか決めかねている[2]

[編集] 欧州

欧州はまさに3Gが普及し始めた段階にあり、LTEの導入よりも、今あるGSMと新たな3G、将来のHSPA Evolutionという流れに横からLTEという選択肢が加わったのを、今後、米日やアジアといった他地域でのLTEの普及を見ながら、検討していくところである[2]

[編集] インド・アフリカ

インドやアフリカといった新興国市場は、従来の携帯電話事業者の進出が余り進んでおらず、存在するサービスもこなれた技術のGSMが主流となっている。大手携帯電話事業者は新興国市場より先に先進国市場での自社技術の普及を目指すため、こういった新興国市場は比較的規模の小さなベンチャー企業が、無線通信技術としてはLTEに先行するWiMAX技術を使うことで、新たな市場の開拓を目指すと今後の活動を表明している。ベンチャー企業が新興国市場に向かう理由の1つは、先進国市場では既に混み合った無線周波数帯の利用権取得に多額の投資が求められることある。こういった新興国市場ではGSMと同等コストでのサービス提供が求められる[2]

[編集] 新たな無線端末と今後の展開

LTEは高速通信だけでなく接続遅延が短く、携帯電話機だけでなくノートパソコンのような携帯情報端末からの利用も想定して開発されている。LTEの登場後は、モバイルWiMAXや次世代PHSといった通信規格と通信サービスでの競争がはじまり、日本では仮想移動体通信事業者(MVNO)という新たなサ-ビス型企業を生み出すことになる。電話網とインターネット接続の境界がますますなくなってゆく。

将来的に4Gの携帯電話通信が開始される時に、使用電波帯域が3.9G(LTE)と4G(IMT-Advancedなど)で異なっても、LTEが多くの点で共通した技術を使用していれば4Gへの移行が簡単に行なえると期待されている。LTEでは3Gに比べて、単に使用周波数の帯域を広げることで高速通信を実現するだけでなく、フェムトセルの活用やマルチユーザーMIMOといったさらに電波を有効活用して高速接続を実現する工夫が検討されている[2]

また、現在3GPPではLTEの発展規格であるLTE-Advanced[19]en:LTE Advanced)の標準化を開始しており、将来的には4G規格の一つとなる可能性がある。

[編集] 脚注

  1. ^ LTE Freeze Completed 3GPP
  2. ^ a b c d e f 竹居智久、蓮田宏樹著 『ケータイが迎える種の爆発』 日経エレクトロニクス 2008年9月8日号
  3. ^ Super 3Gの装置開発に向けたメーカ募集を開始 NTTドコモ 2006年7月7日
  4. ^ Super 3Gの実証実験を開始 NTTドコモ 2007年7月13日
  5. ^ Super 3Gの屋外実証実験にて実用化に向けた250Mbpsのパケット信号伝送に成功 NTTドコモ 2008年3月26日
  6. ^ a b 「ユビキタス特区」の創設について 総務省 2008年1月25日
  7. ^ ユビキタス特区における実験試験局の免許 北海道総合通信局 2008年10月16日
  8. ^ 札幌市ユビキタス特区でのLTEフィールド実証実験を実施 富士通 2009年3月16日
  9. ^ MIMO信号分離の低消費電力化高性能LSI試作に成功 -Super 3Gシステムに向けた取り組み-
  10. ^ 100Mbpsの伝送速度を実現するMIMO用低消費電力化復調・復号LSIの試作に成功 NTTドコモ 2008年12月17日
  11. ^ LTEシステムの屋内実験に成功 ソフトバンクモバイル 2008年2月14日
  12. ^ LTEの商用化に向けた実証実験用装置ベンダーを選定 ソフトバンクモバイル 2008年11月7日
  13. ^ KDDI、次世代通信技術でLTE導入へ ケータイWatch 2008年11月7日
  14. ^ 3.9世代移動通信システムへのLTE採用について KDDI 2008年12月3日
  15. ^ 2009年3月期第3四半期決算 質疑応答 KDDI 2009年1月23日
  16. ^ 「KDDI、マルチキャリア化によりEV-DO Rev.Aを高速化――LTE導入までの競争力を確保」 - ITmedia2009年4月23日
  17. ^ 次世代移動通信システム LTEの屋外実証実験に向け実験試験局免許を申請 イー・モバイル 2008年10月6日
  18. ^ 3.9世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針案等に対する意見募集 総務省 2009年1月23日
  19. ^ LTE-Advanced 3GPP

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク