TRONプロジェクト
TRONプロジェクト(トロンプロジェクト、
論プロジェクト)は、近未来の高度にコンピューター化された社会において協調動作する分散コンピューティング環境の実現を目指す目的で、1984年に東京大学の坂村健によって提唱された、コンピュータ・アーキテクチャを再構築するプロジェクトである。
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概要 [編集]
TRONプロジェクトは社団法人トロン協会によって運営されていた(2010年1月15日付けで解散)。現在はT-Engineフォーラムが引き継いでいる。コンピュータソフトに関連する日本の電機メーカーなどが参加している[1]。オペレーティングシステム (OS) 等の、完成した仕様については一般に無償で公開されており、仕様の使用についてはライセンスフィーを要求されず、実装・商品化は誰でも自由に行うことができる。仕様書の著作権者は同フォーラムあるいは坂村健となっている。
「TRON」は、「The Real-time Operating system Nucleus」の略。TRONプロジェクトがリアルタイム性を重視したOSを採用していることによる。TRONプロジェクト発足当時の坂村の未来予想図については著書『電脳都市』に詳しいが、本書にて、ディズニーの映画「トロン」に大きなインスピレーションを受けた(がネーミング的には無関係である)と記している。
現代社会では、日常生活のあらゆる部分にコンピュータが入り込み、何らかの形で人間と関わりを持っている。これらのコンピュータをそれぞれの機器別にバラバラに扱うのではなく、ある程度標準的な仕様を設けてうまく連携させようというのがTRONの理念である。
応用製品としては、携帯電話や自動券売機、自動車エンジンの燃料噴射システムなどの組込型コンピューターの基本ソフトの一種として普及した。
サブプロジェクト [編集]
TRONプロジェクトは互いに連携するサブプロジェクトによって構成されている。
- MTRON - TRONプロジェクトの目標とする分散コンピューティング環境。
- ITRON - 組み込みシステム向けのリアルタイムOS。携帯電話をはじめデジタル家電分野で広く使用されている。
- μITRON仕様 - ITRONをより実装しやすく単純化した規格。
- BTRON - Business TRONの略。パーソナルコンピューター向けのOS。小学校の教育用パソコンへの導入が決まりかけていたが、1989年の日米貿易摩擦によって米国から非関税障壁(スーパー301条)の候補に挙げられ、実現しなかった(但し、のちに学校用パソコンへの導入をスーパー301条から撤廃させるためやめたことにより非関税障壁には当たらないとして、候補から外されている)。
- CTRON - 通信機器用リアルタイムOS。過去にNTTの電話交換機等に採用されていた。
- JTRON - μITRON上のタスクとJava VMのインターフェースを定めた規格。
- eTRON - セキュリティ規格を定めたもの、ICカード、非接触認証などの規格。
- T-Engine - リアルタイムシステム向けの標準開発プラットフォーム。T-Kernel、標準ミドルウェア、ハードウェアの規格を含む。
- TRONCHIP - 汎用CPUの規格。過去に富士通、三菱、日立などのメーカーがTRONCHIP規格にもとづいたCPUを販売していた。
- TRONヒューマン・マシンインタフェースガイドライン - 従来の機械スイッチ類を含めた、コンピュータと人間の間のインタフェースデザインに関する指針も制定している。
シンボル [編集]
「TRON」は漢字で「
論」と表記する。無論これは当て字だが、「
」は「斗」の異字で「柄杓」や「十升」の字義がある。TRONコードを除くほとんどの文字セットには収録されていないこの文字をTRONプロジェクト全体のシンボルとして位置付けている。中央の「十」の部分がTRONの頭文字「t」を模している意味もある。
また、坂村健はこうした文字が収録されておらず、収録自体が困難であるUnicodeをはじめとする他の文字セットをうまくいくはずの無いものとして批判している[2]。もっとも、この文字は追加面を使い始めたUnicode 3.1から収録されており[3]、「収録自体が困難」という文言からもここで想定されているのは基本多言語面しか存在しなかった時代のUnicodeであると思われる。なお、この「
」という文字は『大漢和辞典』(大修館書店)に収録されており、TRONコードにおいてはGT書体枠と大漢和枠の2か所に存在する。
TRONキーボード [編集]
TRONプロジェクトでは、コンピュータ用として新しくデザインし直されたキーボードも製作した。放射状の配列を採用した「TRONキーボード」と、ノートPC等での使用を考慮し、矩形内に配列した「μTRONキーボード」がある。
プロジェクトの当初の時期に設計・試作(一部製品化)されたキーボードは、英字系がDvorak配列ベース、日本語系がプロジェクトでの調査にもとづく独自配列(物理形状としてはM式等に類似、日本語入力方式はシフトによりひとつのキーに割り当てられた複数のかなを切り替えるという点は親指シフトに類似している)というものであった。
掌に合わせた物理形状であることから、掌の大きさに合わせないと使い辛くなることが予想でき、それに対応するためS・M・Lの複数サイズを最終的には用意することとしていた[4]が、沖による試作品やTK1などでMサイズ以外のものは作られなかった(後述する現在製造市販されているμTRONキーボードは、左右セパレート型にすることである程度のポジションの違いに対応している)。
「μTRONキーボード」として現在生産・市販されているものは、QWERTYとJISかな配列になっており、TRON本来の配列は添付の厚紙製トレーナーと、ドライバソフトウェアによるサポートとなっている。「TRON配列モード」に切り替えるとUSBから一瞬論理的に切り離され、USBプロダクト IDが変化して再接続する。
参考文献 [編集]
- 坂村健 『電脳都市:SFと未来コンピュータ』 冬樹社、1985年5月。NCID BN0063510X。OCLC 15403647。
- 坂村健 『電脳都市』 岩波書店、1987年11月、新版。ISBN 4-00005699-9。NCID BN01702825。OCLC 39385803。
- 坂村健 『TRONからの発想』 岩波書店、1987年2月。ISBN 4000057316。NCID BN00799570。OCLC 47402842。
- 坂村健 『TRONを創る』 共立出版、1987年6月。ISBN 4320023668。NCID BN01084963。OCLC 43168952。
- 『TRON概論』 共立出版、1988年6月、坂村健・編。ISBN 4320024095。NCID BN02303734。OCLC 673697015。
- 坂村健 『TRONで変わるコンピュータ』 日本実業出版社、1988年12月、新版。ISBN 4534014333。NCID BN0308394X。OCLC 674167563。
- 坂村健 『情報文明の日本モデル—TRONが拓く次世代IT戦略』 PHP研究所、2001年10月。ISBN 4569618499。NCID BA53930401。OCLC 51897663。
- 坂村健 『ユビキタス、TRONに出会う』 NTT出版、2004年10月。ISBN 4757101368。NCID BA6919982X。OCLC 169989595。
- 吉田典之 『トロンが拓くユビキタスの世界』 電波新聞社、2004年9月。ISBN 4-88554-764-4。NCID BA68837942。OCLC 56765446。
脚注 [編集]
| この節には、一部のコンピュータや閲覧ソフトで表示できない文字(CJK統合漢字拡張B)が含まれています。 |
- ^ T-Engineフォーラム 会員リスト
- ^ TRON's stamp (in Japanese)
- ^ Unihan data for U+23091「𣂑」。
- ^ 『TRONを創る』p. 171
関連項目 [編集]
- 超漢字
- Tフォント - GT書体と互換性を持つフォント。
- 東京大学大学院情報学環・学際情報学府 - Tフォントの開発。
外部リンク [編集]
- T-Engineフォーラム
- ユビキタスIDセンター
- ユビキタスネットワーキング研究所
- TOPPERSプロジェクト
- NHKスペシャル「日本の群像 再起への20年」
- TRON文字収録センター - GT書体やTフォントのダウンロードが可能。
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