無線アクセス

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無線アクセス(むせんアクセス)は信号を伝えるケーブルの代わりに無線電波)を使うデータ通信サービスの総称。無線アクセスシステム。GHz帯を使うものが多い。

日本国内においては、無線LANとは異なり、無線局免許に基づく基地局からの、比較的高出力の空中線電力により、主に屋外等の比較的広い範囲をカバーするものである。制度的には無線LANの屋外等への利用開放(4.9 - 5.0GHz帯)に関係する物もある。

パソコンPDA等のインターネット接続に利用されるものが多く、一部は、ブロードバンドインターネット接続が可能なものも出始めている (BWA:Broadband Wireless Access)。

Fixed Wireless Access[編集]

FWAは、固定無線アクセス(こていむせんアクセス)または加入者系無線アクセスシステム(かにゅうしゃけいむせん - )とも言う。基地局・端末等はそれぞれ1箇所に固定して利用される。移動には工事・調整等を要する場合がある。以前はWLL(Wireless Local Loop)と呼ばれることの方が多かったが、ITU-Rによる勧告化後はFWAの名称が一般に使われるようになった。

ブロードバンドの新規契約は2006年(平成18年)現在FTTHが主流であり、FWAの加入者数は2003年(平成15年)6月末の32,399契約をピークとして、急速に減っている。FWAアクセスが最も使われているのは、2006年(平成18年)6月末の時点で、北海道である。

光ケーブルケーブルテレビ等の有線系ブロードバンドインターネット接続の固定回線の足回り(ラストワンマイル)として利用することもある(FTTxなど)。

比較的安価に利用できるブロードバンド回線として普及しているADSLは通信速度が非対称であるため、端末からネットワーク方向(上り)への通信速度が遅くなるが、FWAは双方向とも同等の通信速度が確保できる。 また、道路や河川を渡さなければならないとか、自然保護等の関係から有線系の回線が確保できないような場合でも、比較的容易に通信回線を確保することができるほか、事故や災害により通信線が切断されるなどの問題が少ないという特徴がある。

ネットワーク構成としては、ポイントツーポイントで帯域を占有するものと、ポイントツーマルチポイントで帯域を共用するものとがある。

日本での営業サービス[編集]

PHS FWA[編集]

PHS FWAは、指向性アンテナ基地局端末双方に用いPHS無線インターフェースで固定回線を設定するものである。見通し距離で5kmまで設定可能である。1.9GHz帯無線アクセスとも呼ばれる。

一部の中進国発展途上国電話回線が導入されていない地域の固定電話の代替、日本の需要の少ないもしくは強・積による電線の障害の多い地域のアナログ固定電話・N-ISDNの取替え用などとして用いられている。かつてYOZANが提供していたボイススポットフォンもこれに近い。

Nomadic Wireless Access[編集]

NWAは、端末等は1箇所に固定されず移動できるが、自動ハンドオーバーが行われないため、通信するためには静止状態になる必要がある。IEEE 802.16-2004 (WiMAX) などが代表例。

FWAや光ケーブル基地局間を接続するものと、NWAと同じ通信規格でメッシュ状に中継を行うものとがある。

主なサービス

Mobile Wireless Access[編集]

MWAは、端末等は移動しながら通信でき、基地局間でハンドオーバー処理が行われる。

無線WAN[編集]

無線WAN (WWAN:Wireless Wide Area Network) は、音声移動体通信携帯電話PHS)から発展したものである。サービスの面的展開を重視し、通信速度の低下を許容する場合の基地局あたりのサービスエリアが大きいものが多い。

無線MAN[編集]

無線MAN (WMAN : Wireless Metropolitan Area Network) は、IPに特化した移動体向け高速無線パケット通信である。最高通信速度・周波数帯域利用効率重視で、基地局あたりのサービスエリアが小さいものが多い。

IEEE 802.16/IEEE 802.20シリーズが代表的なものである。一部にはIEEE 802.11シリーズの技術改良したものも開発・実験などされている。

各通信規格の比較[編集]

  • 最高通信速度の欄は、上段はセル当たりの通信スループットの(平均値 - )最高値、下段カッコ内はユーザスループット。スループットは静止状態か移動状態かによって、および基地局からの距離に比例して、変動する場合がある。またスループットおよび通信距離は見通しあり (LoS: Line of Sight) か見通しなし (nLoS:non LoS) かによって変動する場合がある。
  • 最長通信距離は、環境の良い地点間で通信速度低下を許容する場合の値
  • opt. = optional

通信距離 (30 - 100km)[編集]

通信距離 (30 - 100km)
規格名 帯域幅
(MHz)
最高
通信
速度
(Mbps)
最長
通信
距離
(km)
複信
方式
多元接続
方式
変調方式 特徴 用途
下り 上り 下り 上り
WiMAX (IEEE 802.16d) 1.25 48 FDD TDD OFDMA OFDM適応変調 64QAM - QPSK インテルが開発 (Worldwide Interoperability for Microwave Access) 指向性アンテナ 固定ワイヤレス・ネットワーク
20 74.81
28 134.4
CDMA450EV-DO Rev.A 1.25 3.1 ( - 3.1) 1.8 ( - 1.8) 50 FDD 下りTDMA
上りCDMA
64QAM - π/4 DQPSK 8PSK - BPSK CDMA2000の技術を450MHz帯で使い、2GHz帯の25倍のセルエリアとなっている。 NMT450の置き換え。東欧インドアフリカ

通信距離 (3 - 30km)[編集]

通信距離 (3 - 30km)
規格名 帯域幅
(MHz)
最高
通信
速度
(Mbps)
最長
通信
距離
(km)
複信
方式
多元接続
方式
変調方式 特徴 用途
下り 上り 下り 上り
PDC (ARIB RCR STD-27) .05 ( .025インタリーブ) .042/3 (1x/.0096 - 3x/.0288) 10 FDD TDMA π/4 DQPSK 日本第2世代携帯電話
GPRS .4 ( .2インタリーブ) .270833/8 (1x/.0214 - 8x/.1712) 10 FDD TDMA GMSK GSMの拡張 (General Packet Radio Services) 第2.5世代携帯電話
EDGE EGPRS .8125/8 (1x/.0592 - 8x/.4736) 3π/8PSK GMSK EDGE (Enhanced Data Rates for GSM Evolution) 拡張GPRS 第3世代携帯電話。2007年1月時点全世界196サービス
EDGE Evolution Enhanced EDGE 1.0833/8 (1x/.0816 - π/4 16QAM 3π/8PSK GMSK EDGE拡張規格。誤り検出訂正ターボ符号。2アンテナ2受信機2搬送波エリクソン開発中2008年出荷予定 2009年サービス予定
16x/1.3056) 8x/.6528)
EDGE Evolution Evolved EDGE 1.75/8 (1x/.1184 - π/4 32QAM - GMSK EDGE拡張規格。変調速度1.2倍。
16x/1.8944) 8x/.9472)
CDMA2000 1x 1.25 ? ( .1536 .3072) 10 FDD SCDMA π/4 DQPSK π/4 QPSK BPSK 電力制御で一定通信速度を確保 米国・日本 (au) の第3世代携帯電話
CDMA2000 1x EV-DO Rel.0 2.4 ( .6 - ) .1536 下りTDMA
上りCDMA
16QAM 8PSK π/4 DQPSK タイムスロット優先割り当て。電力一定、適応変調・符号化。ハイブリッドARQ。RAKE受信とソフトハンドオーバーなし。音声とは別帯域。
CDMA2000 1x EV-DO Rev.A 3.1 1.8 64QAM - π/4 DQPSK 8PSK - BPSK 米国・日本 (au) の第3.5世代携帯電話
CDMA2000 1x EV-DO Rev.B 4.9
5 14.7 5.4
20 73.5 27
W-CDMA 5 2 ( .384) 2 ( .064 - .384) 10 FDD CDMA QPSK BPSK 電力制御で一定通信速度を確保 欧州・日本の第3世代携帯電話
HSPA HSDPA 14.4 (1.8 - ) 3 CDMA /TDM 16QAM π/4 DQPSK タイムスロット優先割り当て。電力一定、適応変調・符号化。ハイブリッドARQ。音声と帯域共用可。 欧州・日本の第3.5世代携帯電話
HSPA HSUPA 5.76 ? 8PSK - BPSK
Rel 7 HSPA+ 28 (14 - ) 11.5 ? CDMA /TDM MIMO
Rel 8 HSPA+ 42 (14 - ) 64QAM-
TD-CDMA HSDPA 5 5.2 .848 3.8 TDD TDMA & CDMA 16QAM QPSK QPSK 音声はVoIP
10 11 1.7
22.1 2.64 ? ? ?
TD-SCDMA 1.25 2.4 (? - ) ? (? - ) 11.3 SCDMA 16QAM - QPSK 8PSK - QPSK
TD-SCDMA (MC) 5 5.8 ( .768 - ) ? (? - ) 10? MC(10)
16QAM - QPSK
MC
8PSK - QPSK
アダプティブアレイ。米Navini NetworksのMulti-carrier Synchronous Beamforming
LTE 2×2 MIMO 20 173 58 ? FDD TDD 下りOFDMA上りSC-FDMA MIMO ? 16QAM 第3.9世代携帯電話
LTE 4×4 MIMO 326 86 64QAM
i-BURST (IEEE 802.20) 5 24.402 (3x / 1,061) 7.959 (3x / .346) 12.75 TDD TDMA MIMO(3) MC(8)
24QAM - BPSK
MC
8PSK - BPSK
アダプティブアレイ (12) 。米アレイコム京セラが主導 60 - 70km/hで同等のモビリティ。サービス地域 : オーストラリア南アフリカ共和国
Flash-OFDM (IEEE 802.20) 1.25 3 (1 - 1.5) .9 ( .3 - .5) 5 FDD OFDMA 適応変調 アダプティブアレイ。米フラリオンが開発 320km/h以下でのモビリティ
PHS FWA (ARIB RCR STD-28) .288 .384/8 (1x/.032 - 16x/.5) 5 (opt. - 15) TDD (5ms) TDMA SDMA π/4 DQPSK 指向性アンテナ(opt. ハイパワーアンプ) 1.9GHz帯無線アクセス
XGP
(ITU-R M.1801)
.9 4/8 (1x/.5 - 4x/2) 7 TDD (5ms) OFDMA TDMA SDMA MIMO 適応変調 256QAM - BPSK アダプティブアレイ、上下対称TDD、自律分散制御 日本のBWA(無線ブロードバンド技術)常時接続型システム
9 40/8 (1x/.5 - 36x/20)
18 80/8 (1x/.5 - 72x/40)

通信距離 (0.1 - 3km)[編集]

通信距離 (0.1 - 3km)
規格名 帯域幅
(MHz)
最高
通信
速度
(Mbps)
最長
通信
距離
(km)
複信
方式
多元接続
方式
変調方式 特徴 用途
下り 上り
特定小電力無線 (ARIB STD-T67) .0125 .0048 .2 単信FDD FDMA 2値FSK 免許不要局 テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備
PHS (ARIB RCR STD-28) .288 .384/8 (1x/.032 - 16x/.5) .1 TDD (5ms) TDMA π/4 DQPSK デジタルコードレス電話用帯域併用、SDMA サービス地域 : 日本台湾タイベトナム中国 携帯型トランシーバー、デジタルコードレス電話、IPセントレックス
.5 (opt. - 5) (opt. アダプティブアレイ)、 SDMA 1900MHz帯加入者系無線アクセス通信用帯域併用
高度化PHS (ARIB RCR STD-28) 1.536/8 (1x/.128 - 16x/2) .2 適応変調 256QAM - BPSK デジタルコードレス電話用帯域併用、SDMA サービス地域 : 日本 (W-OAM) 携帯型トランシーバー、デジタルコードレス電話 (規格上のみ)
1 (opt. - 7) (opt. マクロ基地局)、 アダプティブアレイ、SDMA 1900MHz帯加入者系無線アクセス通信用帯域併用
.884 5.12/8 (1x/.5 - 16x/8) 広帯域化PHS(規格上のみ)
DECT 1.782 1.152/24 (1x/.032 - 12x/.384) .1 TDD TDMA GMSK 第3世代移動通信システム・欧州のデジタルコードレス電話
WiBro ? 3 1 ? ? ? サービス地域 : 韓国。60km/h以下でのモビリティ
Mobile WiMAX (IEEE 802.16e) (ITU-R M.1801) 5 15 1.5 FDD TDD (5ms) SOFDMA / OFDMA 適応変調 QPSK 16/64 QAM 上下非対称TDD、Wave2(MIMOIPv6、5段階QoSMBS サービス地域 : 日本(Wave2以上限定)予定。120km/h以下でのモビリティ
10 32
20 75
MBFDD (4x4 MIMO) (IEEE 802.20) 5 66 9.8 1 FDD MIMO 適応変調 QPSK 8PSK 16/64 QAM
20 260 36

通信距離 ( - 0.1km)[編集]

通信距離 ( - 0.1km)
規格名 帯域幅
(MHz)
最高
通信
速度
(Mbps)
最長
通信
距離
(km)
複信
方式
多元接続
方式
変調方式 特徴 用途
下り 上り
IEEE 802.11 20 1 .1 CSMA/CA DS-CDMA DSSS、DBPSK 指向性アンテナで更なる長距離通信が可能なものも存在する 無線LAN
2 ? DSSS、DQPSK
IEEE 802.11b 11 ? 適応変調CCK、DQPSK
IEEE 802.11a 54 .05 CSMA/CA 52搬送波OFDM OFDM 適応変調 64QAM 日本国内では屋内の利用に限り免許不要
IEEE 802.11g .08 指向性アンテナで更なる長距離通信が可能なものも存在する
IEEE 802.11j .05
IEEE 802.11n 104 .08 CSMA/CA MIMO 108搬送波OFDM 更なる高速化も検討されている
40 300
UWB 7500 50 - 480 .02 CSMA/CA MB-OFDM / CSMA/CA DS-CDMA 消費電力200mW以下。広帯域を他の無線局の妨害とならない出力で共用する。 Wireless USB
Bluetooth 1.1 78 .7232 .0576 .01 TDMA DS-CDMA 2値FSK(1次) 省電力 携帯端末同士の無線接続
Bluetooth 2.0+EDR 2.1 .0576 π/4 QPSK、8DPSK
Bluetooth 3.0 42
ZigBee 5 .25 .069 CSMA/CA DS-CDMA O-QPSK 間欠動作による省電力化 ワイヤレス・センサ・ネットワーク

周波数帯域の分類 (日本)[編集]

2.4GHz以上の周波数帯域利用状況(日本)
周波数
(GHz)
無線局免許 用途 競合 特徴 日本におけるサービス
2.3 - 2.4 固定無線
2.4 - 2.5 不要 無線LAN (IEEE 802.11 n.b.g)
無線PAN (Bluetooth)
電子レンジ
アマチュア無線
ISMバンドであり、屋外の広帯域無線アクセスとする場合、他用途との干渉など問題が多いとされる。 広域無線アクセス
スピードネット(終了)・eoメガエア
2.5 - 2.69 IMT-2000 移動体向け衛星放送 BWA向けに割当がなされ、モバイルWiMAXUQコミュニケーションズ)、AXGP (Wireless City Planning) に割当られている。
3.3 - 3.8 移動体向け無線アクセス 放送伝送用システム
3.8 - 4.9 固定無線
通信衛星
4.9 - 5.0 固定無線(2007年まで)
5.03 - 5.091 移動体向け無線アクセス
(2007年まで使用可能)
衛星による航空機着陸支援
5.15 - 5.25 不要 無線LAN
(IEEE 802.11 n.a)
屋内用の国際統一バンド
5.25 - 5.35 気象レーダー DFS/TPCを条件に屋内・屋外で利用可能
5.47 - 5.725 DFS/TPCが必須の屋内・屋外用の国際統一バンド
5.25 - 5.85 移動体向け無線アクセス 固定無線
22 準ミリ波帯無線アクセス 固定無線
通信衛星
離島・山間部などの光ケーブル敷設がコストに見合わない地域の情報化の推進のために使用される。また、集合住宅での各戸への配信にも使用されている。
23 一部のケーブルテレビ・インターネット接続
26 Bフレッツ
36 ミリ波帯無線アクセス
38
40

関連項目[編集]

外部リンク[編集]