トロリーバス

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カナダバンクーバーの次世代トロリーバス。写真は、試験走行中のもの。
ハンガリーデブレツェン市の低床トロリーバス
ポーランドグディニャ市を走る旧式のトロリーバス。バス上部の2本の棹のような物がトロリーポール。
北朝鮮平壌駅前のターミナルを走るトロリーバス

トロリーバス (trolley bus) とは、道路上に張られた架線から取った電気を動力として走るバス。略してトロバスとも呼ばれる。

外観操縦法もバスに近いが、日本法令上は軌条電車(むきじょうでんしゃ)とされ鉄道として扱われている。かつては無軌道電車(むきどうでんしゃ)と呼ばれていたが、「無軌道」には「常軌を逸した」という意味もあり悪い印象を与えるとして「無軌条電車」に改められた。

目次

[編集] 特徴

路面電車と違い、軌道が必要ないため建設費用やメンテナンス費用が削減され、ある程度の障害物も避けることができる。また、エンジン動力としないため、排気ガスや騒音がなく、環境に与える影響が小さい。長所も多いトロリーバスだが、電力供給のため変電所架線といった地上設備が必要であり、特に架線は沿線の美観を損ねる。また、トロリーポールが届かない場所や架線のない道路へは行くことができず、一般のバスのような自由度はないといった欠点もある。路面電車のように、3両以上を連結しての走行もできないため、一運行あたりの輸送量にも限界がある。全体として広い道路で環境重視の少量輸送に向く。路面電車と同様、走行路線上はほかの車より優先されるため、交通量の多い道路や幅の狭い道路では渋滞を招く。そのため日本では性能の良いディーゼルエンジンを持った大型バスの出現と共に消えていった。

ただし、日本以外の国では排気ガスや騒音対策に有効とされ、多くの都市でトロリーバスが運行されている。トロリーバスの欠点である「架線のない道路へは行くことができない」という点は、ディーゼル発電機を用いたハイブリッド型蓄電池併用型の車両を採用することにより、かなりの距離を架線なしで運行できるようになっており、中華人民共和国北京市のトロリーバスのように、王府井の繁華街の景観対策や長安街の横断対策(建国記念日である国慶節の際、節目の年には長安街で大規模な軍事パレードがあるため、障害となる架線を張れない)に役立っている。

また、無電区間の走行や停電対策のため、補助エンジンを持つものもある。この場合のエンジンは発電用ではなく、変速機を介し、駆動用として用いられる。かつての都営トロリーバスにも、電化された踏切を渡るためだけに補助エンジンを持つものがあった。

[編集] 他の類似交通機関との比較

[編集] 路面電車との比較

[編集] 長所
  • 軌道が必要ないため、建設費やメンテナンス費用が安い。
  • 軌道が必要ないため、ある程度障害物を避けることができる。
  • タイヤで走行するため、沿線への振動や騒音が少ない。
  • 路面電車に比べ急カーブを通過でき、急勾配の斜面も登ることができる。
  • 鉄車輪に比べ路面との摩擦が大きいため、高加減速が可能である。
[編集] 短所
  • 鉄車輪に比べ転がり抵抗が大きく、単位輸送毎の消費電力が多い。
  • 鉄車輪に比べタイヤの磨耗が多いため、頻繁に交換が必要。
  • パンタグラフではなくトロリーポールを使用するため、走行中に架線から外れる可能性がある。
  • 日本においては、その場での折り返しができないためにループ線用の土地を新たに確保しなければならないことや、終端前後で一方向の循環経路とする場合、上下線で停留場の位置が大きく離れることが欠点といわれた。

[編集] 内燃機関バスとの比較

[編集] 長所
  • 電動機で走行するため、排気ガスを出さない。
  • 電動機は内燃機関に比べて(バルブクリアランス、噴射ポンプ、噴射ノズルなど)整備、調整箇所、部品点数が少なく、維持費が低いうえ、長寿命。
  • ディーゼルなどの燃料に比べ、電気代の方が安く、動力費を低減できる。
  • ディーゼルエンジンに比べ、騒音や振動が少ない。そのため、防振材等も削減できる。
  • 電動機はトランスミッションクラッチが不要で、動力の断続にまつわる衝動がない。
  • 補助エンジン搭載車を除き、燃料補給や大量のエンジンオイルなども不要。
  • インホイールモーターを車輪に組み込むことにより超低床化が可能である。
[編集] 短所
  • 簡単に路線(経路)の変更ができない。
  • 変電施設や架線の設置と維持管理に費用がかかるほか、経路の延伸も敷設費用や時間が大幅にかかる。
  • 架線から離れる距離に制限がある。当然ながら架線のないところでは走行できない(架線を張れない部分をある程度の距離、蓄電池や補助エンジンで走行できるものもある)。
  • 架線が沿線の景観を損ねる。

[編集] 構造

トロリーバスの後部。リトリーバーが設けられている(セルビアGSPベオグラードの車両)。

道路上の架線から棹状の集電装置トロリーポール)を用いて集電して電動機を回し、動力とする。このトロリーポールが付いているので「トロリーバス」と呼ばれる。トロリーポール先端部の架線と接触する部分は、ごく初期においては路面電車と同様な滑車(トロリーホイール(Trolley wheel))が用いられたが、トロリーバスは道路状況によっては架線の直下を大きく外れて走る必要があるため滑車では架線への追従性が不十分であり、U字断面で自由に回転できるスライダー(摺り板)式が開発され、普及した。

タイヤは普通の自動車と同じゴムタイヤである。外観も屋根上のトロリーポール以外は普通のバスとほぼ同じだが、動力源は電車に近い。普通の電車と違って線路アースさせる事が出来ないため、2本のトロリーポールをそれぞれ並行する架線に当てている。

トロリーポールの剛性と架線の剛性の問題から、カーブを曲がる時などに速度を出しすぎたり、急カーブを切ろうとすると、しばしトロリーポールが架線から外れてしまうことがあり、その場合は一旦車両を停止させ、運転士が車両の後ろに回り、トロリーポールのケーブルを引っぱって、架線にトロリーポールを引っ掛け直す必要がある。架線を外れたポールが吊線(スパン ワイヤー)を切断することを防止するために、離線時のポールの上昇を防止するキャッチャーやぜんまいばねの働きで引きひもを巻き取り、ポールを下降させるリトリーバー(レトリーバー)が車体後部に設けられている。また離線をしなかった場合でも、車線を間違えた場合や、わずかなトロリーポールの揺れ等で、行くべき方向と異なる側の架線に繋がってしまった場合も、手動でトロリーポールを下ろして正規の架線に繋ぎ戻す必要がある。

なお、部分的に架線を取り付けることのできない区間(鉄道の電化区間の踏切など)を走行するとき、前述の理由で離線した時に安全で交通の妨げにならない場所まで車両を移動するとき、道路工事や災害などで本来の路線の道路が通行止めになったときに一時的に路線外の道路を使用して迂回するときなどのために、補助エンジンバッテリーを搭載している車両が主流になっている。また、かつては車両の絶縁が不十分であったことから、しばしば漏電を起こして乗客や運転士感電することがあった。

[編集] 日本のトロリーバス

[編集] 法規上の扱い

日本の法規では1947年以降無軌条電車という鉄道に分類され、軌道法または鉄道事業法が適用される。無軌条電車運転規則のほか、市街地などの一般公道を走行する場合は、路面電車と同様道路交通法に則って運行される。運転士は大型二種免許に加え、動力車操縦者運転免許(無軌条電車運転免許)も取得しなければならない。大型二種運転免許を保持している者に対しては、無軌条電車運転免許の技能試験以外の試験が免除される(かつては試験すべてが免除されたが、2009年の省令改正により技能試験は免除対象外となった)。なお2001年に開業したバス車両を利用した案内軌条式鉄道である名古屋ガイドウェイバスも、「電車」ではないが法規上はこれに分類される。

[編集] 歴史・現況

1882年、ドイツのベルリンの世界初のトロリーバスである"エレクトロモート"
ループ線で折り返すイングランドレディングの2階建てトロリーバス(1966年撮影)
マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード・スクエア付近の新しいMBTAトロリーバス
セルビア、GSPベオグラードのトロリーバス

1882年4月29日に、ドイツヴェルナー・フォン・ジーメンスベルリンで540mの区間で"Elektromote"の試験運行を行ったのが初めとされる。開放式馬車をそのまま用いた形態となっていた。この実験は同年6月13日まで続けられた。この実験の後、ヨーロッパ各地で実験が行われ、アメリカにも伝わった。1900年代初めにはフランスなど各国で実用化された。このときは路面電車に準じた車体スタイルであった[1]

日本においては、1928年阪神急行電鉄(現、阪急電鉄)花屋敷駅(現在は雲雀丘駅と統合されて雲雀丘花屋敷駅)と新花屋敷(現在の川西市満願寺町あたり)の間1.3kmを結ぶ区間で運行を開始した日本無軌道電車が初とされる。当時この付近では温泉が湧いており、それを開発した温泉宿・遊園地へのアクセス路線として、当時のバスでは登坂不可能な急勾配を越えるためのものだった。しかし営業は思わしくなく、開業わずか4年で廃線となった。

都市交通機関として初めて開業したのは、1932年の京都市電気局(後、京都市交通局)である。その後しばらくこの路線が日本唯一のトロリーバス路線となったが、戦後になっていくつかの大都市にトロリーバス路線が開業した。その背景には、当時の内燃機関バスは大型化には対応していたが、依然として出力性能が低く、頻繁な整備が必要なうえ、騒音や振動にも改善の必用がある状況であったことから、電車の技術を応用して車体の大型化に対応できるトロリーバスに期待が集まった事と、路面電車に比べて建設費が1/3ですむ事などがあったとされる。

しかし架線下においてしか走れないため、道路交通量の増加とともに走行に困難をきたすようになり、また性能の良いエンジンを持った大型のバスの開発が進んだこと、さらに、トロリーバスを導入していた都市の多くが路面電車を経営していたが、路面電車の廃止によって、トロリーバスのためだけに変電所などの設備を維持する経費などの問題もあって、順次廃止されていった。都市トロリーバスで最後に廃止されたのは、横浜市交通局のもので1972年のことである。なお横浜市のそれは開業も1959年で、これもまた都市交通においては日本最後のものであった。なお、横浜のものは最後まで黒字運営であったが、他都市の路線や、横浜市電が全廃され、車両部品の調達や施設関係の維持及び費用に困難を来たす事が予測された為、廃止となった。

現在、日本国内では都市交通としてのトロリーバスは存在せず、山岳地帯の立山黒部アルペンルートにおける立山黒部貫光立山トンネルトロリーバス室堂駅大観峰駅)と関西電力関電トンネルトロリーバス黒部ダム駅扇沢駅)の2路線(いずれも鉄道事業法適用の鉄道)が残るだけである。前者については元々普通のディーゼルバスが運行されていたが、全区間がトンネルであるため換気が大変なことと、周辺が国立公園内であることによる自然環境への配慮から、排ガスを出さないトロリーバスに置き換えられたものであり、後者は長大トンネルにおける排気ガスの問題から採用されたものである。

しかし、旧東側諸国では21世紀初頭でも多く運行されている他、環境への配慮や交通政策の一環として、都市交通としてのトロリーバスを維持もしくは拡大している例が数多くある。日本の場合は上述の理由により廃止され、地下鉄やバスに替わっているが、バスの排気ガスについては、厳しい排出ガス規制やハイブリッドバスへの移行により、以前に比べ排気ガス汚染はかなり抑えられている。またハイブリッドバスでは騒音もかなり低減されている。

[編集] 世界のトロリーバス技術の最新動向

世界的なLRTブームに連動して、より安価なトロリーバスにも注目が集まり、技術開発が進んでいる。まず、バス・LRTとともに低床化が進んでおり、イリスバスのCristarisなどのようにインホイールモーターを用いたフルフラットノンステップ車が出現している。

また、景観上の問題その他で架線の張れない区間がある場合はデュアルモード車を利用する必要がある。バッテリー技術が向上したため、バッテリー走行でも以前と比較して長距離を走れるようになった(ローマのトロリーバスは、終端のテルミニ駅付近の往復3kmに架線が張られておらず、バッテリーで走行する)。また、ニュージーランドボストンで例があるように、ディーゼル発電機を搭載してハイブリッド仕様にすることも可能で、主にフランスで使われているイリスバス製のCristarisは、ディーゼル発電機を搭載したデュアルモード車である。一時期、イタリア磁力ピックアップ方式による路面給電式のトロリーバス (Stream) が試験運転されていたが、こちらは成績が芳しくなく、本格採用には至っていない。

もう一つの技術革新は、ハンドル操作が不要のガイドウェイ技術の導入である。ドイツで一時期運行されていたローラー式に代わって、21世紀初頭には非接触のガイドウェイ式トロリーバスが試作されている。代表的なものは、光学式と磁力式である。光学式は地面にペイントされた白線をカメラで読み取って操舵するものである。磁力式は地面に埋め込んだ磁石を頼りに操舵するものである。前者はイリスバスのCIVISなど、後者はオランダPhileasで採用されている。CIVIS・Phileasともに電気駆動のハイブリッドバスとして設計されており、トロリー集電の他、電気式ディーゼルバスとして走行することも可能である。なお、CIVISは当初は非接触式ガイドのトロリーバスとして開発されたが、実際は電気式ディーゼルバス仕様でしか採用されていない(ルーアンラスベガス)。フランスのナンシーのLRTはボンバルディア・トランスポーテーションが開発した“TVR”というシステムのゴムタイヤトラムであり、一部区間は線路がなくトロリーバスとして走っている。ただし、LRTモードとトロリーバスモードの切り替えトラブルが頻発したため、TVRはナンシーとカーンの2か所のみの採用に留まっている。ガイドレールのカーブ区間では脱輪する事故が相次ぐぐためスピードを上げることができないというウィークポイントも指摘されている。

トロリーバスは、大気汚染地球温暖化対策に有効なハイブリッドバスの普及によって活躍の場が狭められる一方で、21世紀初頭ではデュアルモードのトロリーバス技術が発達している。ハイブリッドバスの技術開発はトロリーバスにも相当な恩恵を与えており、トロリーバスとデュアルモードバスがお互いに刺激しあって技術発展が進んでいると言えよう。

[編集] 日本のトロリーバス保有都市

[編集] 現存路線

[編集] かつてトロリーバスが存在した街

[編集] 未成線

[編集] 日本国外でトロリーバスが存在する主な都市

[編集] アジア

[編集] 中華人民共和国

なお、中国ではトロリーバスのことを「無軌電車」または単に「電車」という。

[編集] 北朝鮮

[編集] モンゴル国

[編集] ネパール

[編集] ロシア

ロシア国内ではこの他の多くの都市でもトロリーバスが運行されている。

[編集] アメリカ大陸

[編集] カナダ

[編集] アメリカ合衆国

シアトル市内にて、ポールが離線して立ち往生した連接車を捉えたもの。シアトルは米大陸最大級のトロリーバス網を持つ

アメリカ国内には観光地を中心にトロリーバス又はトロリーと称するバスが多く運行されているが、これらはレトロ調の車体を使用したディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンの通常のバスである。

[編集] メキシコ

[編集] ブラジル

[編集] チリ

[編集] オセアニア

[編集] ニュージーランド

[編集] ヨーロッパ

[編集] オランダ

  • アーネム - ディーゼルバスとトロリーバスの機構を併せ持つ「デュオバス」が導入されている

[編集] フランス

[編集] イタリア

[編集] イギリス

かつては国中でトロリーバスが見られたが、全滅してしまっている。イギリスのトロリーバスは2階建て仕様車が多いのが特徴であり、ロンドン市内にも2階建てトロリーバスが見られた。

[編集] ドイツ

[編集] ギリシャ

[編集] ノルウェー

[編集] オーストリア

[編集] スイス

スイス国内ではこの他の都市でもトロリーバスが運行されている。

[編集] スペイン

[編集] ベラルーシ

[編集] ウクライナ

[編集] エストニア

[編集] リトアニア

[編集] ラトビア

[編集] チェコ

など

[編集] スロヴァキア

[編集] ハンガリー

[編集] セルビア

[編集] ボスニア・ヘルツェゴビナ

[編集] ブルガリア

[編集] 主なトロリーバスの製造メーカー

  • 大阪車輌工業(日本) - 日本唯一のトロリーバス製造メーカー。立山黒部貫光8000形無軌条電車関西電力300形無軌条電車を製造した。
  • イリスバス(Irisbus、フランス) - ルノーフィアット・イベコのバス部門が合流したバス製造会社。現在はフィアット資本。トロリーバスはホイルインモーターとディーゼルハイブリッドが特徴のCristarisと、光学式ガイドのCIVISを製造。
  • ネオプラン(Neoplan、ドイツ) - ドイツの老舗メーカー。ドイツやスイスへの納入実績が多い。
  • ヘス(Hess、スイス) - Light Tramという3連接の大型トロリーバスを開発した。
  • ソラリス(Solaris、ポーランド) - 東欧改革で誕生した新興のバス製造会社。トロリーバスは、トロリーノ (Trolino) ブランドで製造。ローマへの納入実績がある。

[編集] 脚注

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  1. ^ West Yorkshire BBC
  2. ^ 崙書房『ちばの鉄道一世紀』より

[編集] 関連作品

  • こちら葛飾区亀有公園前派出所 - 第114巻に、東京都内をトロリーバスが運行していた時代を描いた「トロバス物語の巻」を収録。テレビアニメ版でも「トロバス物語」が放送された。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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