充電スタンド

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日産自動車グローバル本社に設置される充電スタンド

充電スタンド(じゅうでんスタンド)とは、電気自動車プラグインハイブリッド車、電気推進ターレットトラック、電動マイクロカー、電動二輪車セグウェイ等の乗り物の充電に用いる地上設置型の充電装置または充電施設である。充電ステーション、充電スポットと呼ばれることもある。

概要[編集]

充電スタンドの明確な定義は公的に定められていない。一般にガソリンスタンドと同様に公道に面した公共空間に民間や公的な事業者により設置され不特定多数が利用可能な接触式の充電サービスである。一般に急速充電器として知られているが急速充電に限定されず、広義には自宅等での自動車以外の充電設備等も含まれる[1]

設備が地上に出ていない地下誘電コイルや地下架線を使用する非接触式充電設備や自宅用など急速充電以外の方法は一般に充電スタンドには含まれず、送電線とプラグを使用した接触式のものの中でも特に急速充電方式のもののみ充電スタンドと呼んでいる場合が多い[2]

この項目では自動車用の充電設備について記述する。(参照 充電器

特徴[編集]

充電時間
工業用の三相200V給電による急速充電では20~30分と短時間で充電が終わるが高価で大掛かりな設備が必要である。
自宅等の単相200Vや100V給電による普通充電では、充電用に配慮された家庭用コンセントで行える。設備費用が安い反面充電には10~20時間程度(PHVの場合は1時間半〜3時間程度)掛かる。[3]
電力料金
電力の転売が認められていないため2011年末現在すべての充電スタンドにおいて電力は設置者負担となり設置者と利用者が異なる場合には利用者へ直接の電気料金の課金がされておらず、充電設備利用料や駐車場利用料に含めて徴収するケースが見られる。
EVの普及前の段階では、利用者がわずかなために集金システムを用意するよりも無料とした方が合理的なだけでなく、充電スタンドの設置主体がEV普及の促進や施設利用の増加を意図している場合が多く、普及しない間は試験的に設置されるものの多くが無料となる見込みである。ある程度、EVが普及しはじめると有料化への移行が考慮されるが、もしもその時に家庭での充電環境がEVで主流であれば、ガソリンに比べて安価な電力料金との対比にさらされて、有料となる価額の妥当性が問われるため、民間資本ならばEV立ち上がり期でのハイリスクな投資が報われるか不透明である。
利用者
日本では市場工場等で用いられるターレットトラック用の施設内充電スタンド数が個別の利用規模としては最大であるが、急速充電は用いていない。
自治体や自動車メーカーによる設置のほかコンビニエンスストアや大規模商業施設での設置が大半であるが全体に少数である。自治体設置の場合には自治体で利用する電気自動車の充電に用いられることも多い。
集合住宅でのEVへの充電は、個別に各戸ごとの配線を引き回して簡易な充電器を駐車場に備える代わりに、共同での急速充電装置の設置も考慮される。この場合は、会員制度のような形態を採用して集金システムを作らなければならないが、機器に高機能なものを採用して従量制にするか、機器には簡易なものを用い固定料金制にして利用者間の多少の損得は無視するかの判断が求められる。事業所での通勤用EVへも、同様の事が想定される。例えば今後、充電規格が分立した場合などは、自動車販売店自身が運営する特定車種向けのEV充電スタンドが現れると考えられ、会員制と同様の形態となると予想される。
規格
CHAdeMO(チャデモ):62.5kwまでの直流急速充電器の日本統一規格である。
J1772:米国SAEの110v/230vの交流充電コネクタ規格である。
対応車種
車種ごとに充電用のプラグ形状や電圧、電流、安全面での種々の工夫や制御信号といったものが異なると、充電スタンド側では複雑な対応が求められるので好ましくない。また仮に、特定国の国内だけで通じる規格が標準として規定された場合でも、海外からの輸入車や旅行といった事態ではどの程度、相互の対応ができるかは不透明である[4]。2012年現在も日本で行われているようにEVの車内に自ら充電用ケーブルを備え持ち運ぶことで、電流や電圧、制御機構の違いを吸収する方法は別にして、プラグ形状の違いだけは対応できるが、充電の度にそれを車内から取り出さなければならない不便さがある[1]

スマートグリッドとの関係[編集]

スマートグリッドの一環として充電スタンドを電力供給の調整に用いようとする試みがある。充電スタンドは、電気によって走行するあらゆる車輌類と共にスマートグリッドの末端に位置するため、石油類を基盤とするエネルギー社会から自然エネルギーや次世代エネルギーを基盤とする新産業への参入機会を伺う国際的な大企業や各国政府とその配下の団体を含めた多くの関係者にとって、規格の策定に加わることやインフラの独占が目指されている。

スマートグリッドでは家庭でのEV類への充電時間をコントロールするスマートメーター機能とも重なるアイデアに加えて、V2HとV2Gという2つの機能も想定されている。

HEMS
Home Energy Management System(家庭エネルギー管理システム)の略。家電の電力管理を行うためのシステムであるが管理対象を太陽光発電や電気自動車等にまで広げる構想がある。
V2H
"Vehicle to Home"(車輌から家へ)の略。太陽電池や燃料電池といった自家発電装置とEVを電気的に接続し、EVが家庭内に駐車している間は搭載バッテリーを戸別発電システムの一部として充電/放電という双方向の電力のやり取りを行うというものである。家庭内での直流給電とも関係する技術であるが普及が進むデジタル家電は交流電力利用のため実現には障害が大きい。電力の無駄を省きながら地域全体での消費と供給の平準化とそれによるコストダウンを目指す考えである。
V2G
"Vehicle to Grid"(車輌から配電網へ)の略。夜間や休日などで停車中のEVをスマートグリッドに接続することで、搭載バッテリーをスマートグリッド全体の蓄電設備として電力会社が利用するものである。V2Hと同様に電力の無駄を省きながら広域での消費と供給の平準化とそれによる電力会社側の発電や蓄電設備の設置負担軽減を目指す考えである。V2Gは電力会社の新たな収益源と期待されるアンシラリーサービス(ancillary survice、優先的品質確保供給保証サービス)[5]を実現するためのシステムとして機能する。
問題点
HEMS、V2H、V2Gのいずれもバッテリーから他の用途に電力供給を行う状況が不定期に発生するためEVの使用者が走行したい時に十分な電力がバッテリー内に充電されていなければ走行可能距離が不十分となりEV本来の利便性が大きく損なわれる。[1]
家庭用太陽光発電には余剰電力の固定価格買取制度が存在するためV2Hの自家発電電力のバッテリーへの充電部分は自家消費となり売電できず経済的損失につながる。損失補償を誰が負担するかが問題となる。
外部に電力供給を行う場合があるV2Gでは外部利用によるバッテリーの無償利用が発生するため設備利用負担をどう分担するかが問題となる。

普及状況[編集]

阪神高速中島PA(200V急速)
東名高速牧之原SA上り側にある、充電ポイント(200V急速)

2010年時点では小規模な設置や地域的な設置計画の発表にとどまり全国規模で設置状況が少数にとどまる。

急速充電や普通充電の違いから有料/無料、公共/会員制/個人、対応車種と充電コードの有無、さらには逆潮流などの高機能への対応など、多数を実際に設置して運用するには標準化の問題も含めて無数の選択肢から1つを選ぶ必要があり、今後は国際的にも多くの利害関係が絡みながら試験的な機器による多くのサービスが現れると予想されている。

2012年現在、市販されはじめたばかりの電気で走行する自動車や二輪車などの搭載バッテリーを充電するには、自宅や自らの事業所内で充電する手段が比較的多いが、それらの車輌(本稿ではそれらすべてを以後"EV"と記述する[6])の今後の普及とそれに伴う社会的な利便性の向上要求に対応するために、充電装置を備えた公共性のある設備の拡充が求められており、新たにコインパーキング、ショッピングモール、自動車ディーラー、コンビニエンスストアなどでの運用が一部で開始・拡充され、自動車ディーラー、ファミリーレストランチェーンなどでは、全国規模での拡充計画も進行(あるいは計画の発表が)されている。また、CHAdeMOを利用した課金化仮想実験も会員を対象に期間限定で開始された。これらの設備の中には、1回あたりの充電時間制限を設けているスタンドもある。

現在の充電スタンドは、無料・会員制無料・施設利用者無料、有料・会員制有料・施設利用者有料など、提供形態が様々ではあるが、2010年当時からの相違点として、200V普通充電のコンセントは新型への移行がほぼ終わり、旧型コンセントの設置場所はごく少数となった。

問題点[編集]

価格設定と採算性[編集]

充電スタンドでの充電事業は、電気事業法における事業規制や料金規制の対象外となっており[7]、電力量、時間、その他の方法等を用いて、充電事業者が自由に課金の仕組みや価格を設定することができる。ただし、メーターを取り付ける場合は計量法の規定に合格したものを設置する必要がある。

EVへの充電がガソリンスタンドでの給油と最も異なるのは、充電時間である。2012年現在の充電池の技術でも20-30分で全充電容量の80%まで急速充電が行えるが、2-3分で給油そのものは終了する液体燃料と比べれば、顧客の回転率が余りに低いために十分な利潤を生むにはEVを駐車できる充電スポットを多数備えなければならなくなる。また、1台当たり(現在は100-200Vが多いが)400-500Vで125A-400A、中国提案の規格では1000Aまでの電力供給が求められるため、1台分ですら特別な配電設備を備えなければならず、一層大きな初期投資が求められる。また、2012年現在の技術では急速充電は充電池の寿命を縮めるために、EVの車輌価格の半分ほども占める車載バッテリーの経済性まで考慮すれば、短時間での急速充電がどの程度受け入れられて普及するかは、今後の充電池技術の発展とも関係して未知数である[1]

配電網への過負荷[編集]

スマートグリッドの末端として電気自動車が大規模に利用された場合充放電による送電網への負荷が懸念される。2012年現在ではきわめて利用が小規模なため過負荷が発生する恐れはない。

米国のPacific gas & electric社がカリフォルニア州[8]の主要都市でEVの普及した状況下での充電需要を試算したところ、夕方6時をピークに住宅需要としては真夏の最も需要が高まる負荷を大きく上回った。こういった問題への対処としてスマートメーターやV2Gといったものに結びついている[1]

安全性の担保[編集]

キャパシタを用いた充電スタンドでは短時間に大電流を流すため感電死の危険が通常の充電設備より大幅に高い。

日本ではガソリンのセルフ給油が一般化しているが、ここまでに到る安全性確保の取り組みを充電スタンドで行おうとしても一朝一夕には行えず、新たな充電スタンドで高電圧・高電流を扱うにあたっての安全性の確保は、関連する法整備とともに強く求められる[1]

優先とされても守られない一例
(京都市東山区)

共用駐車場での充電[編集]

施設駐車場やコインパーキングなどでは、先着順で好きな場所を選べるため、限られた区画の充電スポット(主に200V普通充電)が、充電を必要としない車に駐車されてしまう場合が多く、せっかく用意された充電スポットが有効に活用されないことがある。これを避けるため、当初の先着順から電話予約制に移行したケース(USJエコ・ステーション)や、当初から専用としパイロンを置いて注意を促しているケース(イオンモールの一部)などがあるが、小規模なコインパーキングでは採算の問題から、予約制にも専用にも、また全区画への設置もできず、EV等の普及促進や、他パーキングからの差別化を狙って充電区画が設置されたものの、必要とするユーザーが使えないことが多い。

関連技術[編集]

車載バッテリー交換式EV
充電時間が長く掛かることから、EVの車載バッテリーをある程度標準化した上で、その大きなバッテリー全体を交換ステーションで充電済みのものと交換することで短時間でEVを満充電状態とするアイデアがある。この方式では、自らのバッテリーを特定して所有するには、それを預ける交換ステーションの地理的な制約を受けることになる。この制約を避ける為や、充電池が今後しばらくは高価であり続けると予想されることからも、車載バッテリーそのものは最初から購入せずに、搭載するバッテリーはリースのような貸し出し形式にして、EV購入者の初期投資額を抑えるという方式も考えられている[1]
非接触型充電スポット
通常の充電スタンドのようなケーブルが不要で、無線で充電を行う。設置された区画へ停車中に充電するものや、道路上を走行中に充電できるものなどが考えられている。特に前者は多くの自動車メーカーが研究開発を進めており、微妙な位置決めが不要な充電範囲にゆとりをもったものや、各種情報を充電と同時に相互伝達するものなどが考えられている。

脚注・出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g 『充電インフラを握れ』、日経エレクトロニクス2010年3月22日号
  2. ^ 廣田幸嗣著、『電気自動車の本』、日刊工業新聞社、2009年11月25日初版1刷発行、ISBN 9784526063572
  3. ^ 充電設備について EV・PHV情報プラットフォーム”. 2013年5月24日閲覧。
  4. ^ 各国ごとに家庭用コンセントの電圧や形状が異なるので、海外旅行時には電気製品の利用が不便であることが知られている。
  5. ^ 電力送電/受電における「アンシラリーサービス」とは、対価を取って電力の品質を特別に保証する事であり、この場合の品質とは電圧、位相、周波数、ノイズといった電力の精度に関するものだけでなく、停電や瞬停といった根本的な問題の回避も含まれている。発電所の事故や送電線の断線といった不測の事態でも、グリッド中に予備的な電力源が存在すれば、その近隣への特に優先度の高い施設へ電力供給を絶やさずに済む可能性がある。逆にグリッド中に逆潮流を起こす不確定要素が増えることで、上手に制御しないと電力の品質が低下すると危惧されている。
  6. ^ 本稿ではEVは、プラグインハイブリッド車 (Plag-in Hibrid Electric Vehicle, PHEV) と電気自動車 (Electric Vehicle, EV) に電動二輪車 (Electric Bicycle, EB) を加えたものとする。
  7. ^ 電気自動車に対する充電サービス事業の位置付けについて (PDF) - 資源エネルギー庁
  8. ^ 米国のカリフォルニア州では「Zero-emission vehicle規制」によって自動車販売に一定割合のEV等の車輌の販売が義務付けられているため、米国内でもEVの普及が最も進んでいる州である。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]