路面電車

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ウィーン市電は、世界最大級の現存する路面電車網のうちの1つである。

路面電車(ろめんでんしゃ)とは、主に道路上に敷設された軌道併用軌道)を用いる「路面鉄道」(: Tram、Tramway、Streetcar、: Straßenbahn)を走行する電車である。類似のものとしてゴムタイヤトラムがある。

概要[編集]

路面鉄道とは主に都市内およびその近郊の道路上に敷設された鉄道で、比較的短距離の旅客移動手段として利用される。路上や歩道から車両に乗降する、駅(電停・停車場)間隔が短い、各駅停車、などの特徴があり、道路が広く自動車の交通量が比較的少ない都市に適した交通機関である。

普通鉄道と異なり路線は道路上に敷設され、軌道敷内通行可の区間では自動車も路盤を走行できる。専用軌道(日本の軌道法では新設軌道と呼称)を有する路線もあるほか、市街地では一部地下や高架で道路との分離を図った路線もある。

世界では約50か国の約400都市に存在し、ドイツロシアウクライナで特に発達している。日本以外の多くの国の路線では終端ループ線が用いられ、片ドア単端式車両で運行している。20世紀末以降は路面から乗降できることが再評価され、欧州を中心に整備が進む動きがある。また欧州では公共交通として都市中心部の歩行者空間に乗り入れる形態も多い。

日本の多くの都市でも採用されていたが、自動車の普及、都市人口の増加に伴い道路交通の渋滞の原因となりうる路面電車の多くが廃止され地下鉄に代わっている。しかし、最近では道路からの乗降が便利な路面電車が見直され、超低床型の近代的な車両と共に新設が検討されている都市も多くある。現在でも日本に約20ヶ所の路面電車の路線が存在している(「日本の路面電車一覧」を参照)。

語源[編集]

英語の「Tram」は低地ドイツ語の「Traam」に由来し[1]車軸を意味する。イギリスではブレコン・アンド・アバガヴァニー運河会社(The Brecknock and Abergavenny Canal)1798年10月17日の定款に「Tramroad」の言葉が初めて現れる。このトラムロードは鉄製のL字形軌条のことであり、「Tramway」とは鉱山鉄道や軽便鉄道を指した[2]。トラムウェイの語は1826年に初めて使用された。「tram-car」(トラムカー)の語は1873年から使用された[3]。現在欧州各国では「Tram」が使われることが多い。

ドイツ語Straßenbahnは、道路上の鉄道を意味するが、始めは馬車鉄道: Pferdebahn)を指していた。

北アメリカでの「Streetcar」の語はドイツ語から移されたもので1840年から使用されている[3]。しかし、電化が進むにつれ、「Trolley」や「Trolleycar」と呼ばれることも多くなった。この「トロリー」は「Troller」(転がる)に由来し、架空電車線から電力を取得する際に、集電装置先端の滑車が架線に沿って転がるため、このように呼ばれるようになった[4]

歴史[編集]

1890年代のイタリアにて、蒸気機関を動力とする路面鉄道
世界初の路面電車であるグロース・リヒターフェルデ路面軌道

路面鉄道は元々は都市内の馬車鉄道として生まれ、1840年代に欧米各地に広がっていった。

その後、動力を馬以外にする試みが行われ、蒸気機関などもあったが、電気動力がもっとも普及した。これは1879年ドイツの電機会社、シーメンスベルリン博覧会デモンストレーション走行させたのがはじまりで、電気は3本目のレールから供給されていた。1881年にはベルリン郊外のLichterfeldeで試験運行が開始され、1883年に定期運行が始まっている。

1881年には、同じくシーメンス社が、パリの電気博覧会で架空電車線方式を試み、1884年に登場したフランクフルトの路面電車で採用され、その後ヨーロッパ各地に広がっていった。

アメリカ合衆国では、電気軌道(路面電車)は1886年アラバマ州モントゴメリー[5]ペンシルベニア州スクラントン[6]に敷設されたのを皮切りに、各都市で普及してゆく。特に同国では、専用軌道化や運転速度の向上などシステムを高度化し都市と都市を結ぶインターアーバンにも発展し、1920年代に全盛期を迎えた。

しかし、同時にその頃、自家用車の普及に伴い、多くの都市で路面電車廃止の流れも始まった。1970年代初頭には、路面電車や郊外電車(インターアーバン)は全盛期の4割が廃止され、残存していた6割もゆっくりだがマンネリ化が進み、「世界最大の路面電車保有国」の地位をソビエト連邦(ロシア)に譲っている。

欧州の一部でも第二次世界大戦後までにこの流れでロンドンパリなどの都市で廃止された[7]。一方で、旧ソ連と東欧諸国、そして西ドイツでは、第二次世界大戦後も路面電車を活用した。

西ドイツでは、車の普及により、路面電車を導入していた都市の半数では廃止されたが、重要な都市内交通手段として位置づけ、連接電車の投入や運賃の収受に信用乗車方式を導入するなど、輸送力増強と生産性向上に努めた都市も多い。路線網の再構成も盛んに行われた。

また、郊外への路線延長を図る一方で、渋滞に影響されずに高速で走り、定時性を確保するため、専用軌道を確保し、都心部においてはさらに地下化を推進した。この方式はシュタットバーンと呼ばれている。 このシュタットバーンは新交通システムの開発で行き詰まっていたアメリカ合衆国に影響をあたえ、1970年代に入り、連邦交通省都市大量輸送局によってライトレール (LRT)という言葉が定義される。

フランスでは、1980年代後半より、上記の「シュタットバーン」や「ライトレール」化の流れではなく、路面電車に対する新たな取り組みが始まり、後に欧州大陸諸国にも広まった。日本では路面電車の次世代化などと呼ばれる。

架線を利用することなく蓄電池を積載した車両の開発・実用化が進められている[8]

近代型の路面電車[編集]

ヨーロッパ[編集]

フランスでは、1970年代に都市域の道路混雑や石油危機問題などへの対処として、それまでほとんど衰退していた路面電車を用いて公共交通を復活させる取り組みが始まった。政府によって1975年、路面電車の新規開業を8都市(ボルドーグルノーブルニースルーアンストラスブールトゥールーズナンシーツーロン)で目指すことが策定された。国内交通基本法も1982年に成立した。

そしてナント市が上記8都市に先立って1985年に新規開業し(車両はフランスのアルストム社開発のTFS-1型)、続くグルノーブル市の1987年の開業では70%低床電車TFS-2型)が用いられた。これらの実績により路面電車が費用対効果等の点で小型のゴムタイヤ式地下鉄VALリール市で1984年に開業)などよりも優れていることが認識された。これらの事例が「トラム革命」の始まりと見る考えもある。(「フランスの鉄道#路面電車」も参照)。

車両面では、欧州の高床式プラットホームの少ない状況に対応するために、1980年代後半より路面電車の低床車両化フランスドイツ等の国から本格的に始まり、バリアフリー化が促進された。 ドイツでは第二次世界大戦後も比較的多くの路面電車路線を維持していたが、DUEWAG(デュワグ)社製低床型車両の利用が1990年以降よりカッセルフライブルクなどで始まった(「超低床電車#歴史」も参照)。

他の欧州各国でも1990年前後より超低床型の車両の本格的な開発・導入、および新規路線の開業が進んだ。フランスなどではゴムタイヤトラムを導入する都市も見られる(ナンシー等)。

日本(次世代型路面電車 / LRT)[編集]

日本では、1980年に鉄道技術協会が開発した新型の路面電車を軽快電車と名付けたが、一般には車両更新程度の認識しか広まらなかった。1990年代以降は、欧州における超低床車の普及により、路面電車の次世代化やアメリカのライトレールの動向に注目する動きがあった。そのため日本では次世代型路面電車を特に「ライトレール(LRT)」と呼ぶことが多い(後節の「#次世代型路面電車」も参照)。

1997年、ドイツの台車と電気部品を輸入し組み立てられた熊本市交通局9700形電車導入以降、超低床車両を特徴とする路面電車の次世代化が進んだ。富山市の例に見られるように、欧米型のコンパクトシティ指向の街づくりと一体となった交通システムとして、路面電車の次世代化が一般に認識されつつあるといえる。

京都市では、2010年に一旦消滅させた構想(次世代型路面電車構想)を2012年に復活させた。宇都宮市では2012年に実施された市長選で次世代路面電車(ライトレール)建設を掲げる佐藤栄一が当選して今後、佐藤市政のもとで建設が進むと期待されるなど、推進策を取る自治体も少なくない。

各国の近代型路面電車[編集]

ヨーロッパ[編集]

日本(次世代型路面電車 / LRT)[編集]

超低床車両については日本各地で導入されており、今後も多くの導入計画がある。

熊本市交通局
1997年に一部導入された9700形電車が日本で始めての次世代型路面電車とされる。
鹿児島市交通局
2002年に一部導入された1000形電車は日本初の純国産超低床電車である。
富山ライトレール
JR西日本富山港線を路面電車化[9]第三セクターが経営を引き継いだ。2006年4月29日開業(富山ライトレールとして開業時に一部区間が経路変更となった)。開業にあたり車両を全て次世代型路面電車に入れ替え、富山市の都市計画にも組み込まれるなどしていることから、日本における次世代型路面電車第一号とみなす考えもある。使用されている車両は2車体連節低床式路面電車で、愛称は「ポートラム」。
阪堺電気軌道
2013年8月に一部導入した、日本で最も新しい次世代型路面電車。1001形電車、愛称「堺トラム」。

日本の路面電車[編集]

初期の路面電車を復元した函館市企業局交通部30形

日本においては、路面電車は軌道法の管轄下にあり、鉄道事業法に基づく一般の鉄道とは明確に区別されている。なお、同じく日本の道路交通法では、「レールにより運転する車」と定義している。また都市計画法に定める都市施設においても、路面電車は都市計画道路のうちの「特殊街路」に分類される。

経営形態としては、地方自治体による地方公営企業交通局)、一般の私鉄と同じ純民間企業、第三セクター鉄道によるものがある。が運営する「市電」が多数を占めるため、運営形態によらず路面電車は「市電」と呼ばれることが多い。

歴史的には1895年(明治28年)に京都市で開通した京都電気鉄道(後、京都市電)をはじめに、大正から昭和初期にかけて大都市圏を中心に数多くの軌道が整備された。その中には、京王線阪神本線などのように、都市間高速軌道(インターアーバン)として建設され、現在の高速鉄道路線の前身となったものもある。

最盛期の1932年(昭和7年)には65都市82事業者、総路線長1479kmとなり、戦前から戦後には、都市の重要な交通手段として機能していた。しかし、1960年代の高度成長時代にモータリゼーションが進む中で、路面電車は渋滞の元凶だとされ、1970年代末にかけて各地で廃止された。昭和37年3月の参議院予算委員会で「できるだけ路面電車はなくしていきたい。しまいには皆無にいたしたい」とする当時の運輸大臣である斎藤昇の答弁も残っている。自動車技術の発展によりバスが大型化され、路面電車の定員と遜色がなくなったこと、ディーゼルエンジンの進歩や車両の信頼性向上により運行コストがさらに低くなっていったことも路面電車廃止の要因であるといえよう。一部の大都市(政令指定都市)では地下鉄に取って替わられ、また、大都市を含む多くの都市ではバスが代替となった。2011年(平成23年)現在日本で路面電車が走っているところは20箇所以下と少なく、東北地方では皆無となっている。それでも隣国の大韓民国においては全廃(1968年)、中華人民共和国においては長春大連(この2都市は満州国時代に建設)・香港(鞍山は廃止、武漢は高架電車)の3都市にしかないことからすれば、アジア諸国の中ではかなり多い方である。

一方で、20世紀末以降、環境負荷の軽減、バリアフリー及び交通渋滞緩和の観点から世界各地で路線の復活および好評を博している事実に触発され、日本でも再評価の動きが高まった。1982年(昭和57年)、豊橋鉄道東田本線・井原 - 運動公園前間が新規開業し、1998年(平成10年)には豊橋駅前停留所移設で路線延長が行われた。2006年(平成18年)には新幹線工事に伴う富山駅高架化工事に伴い、JR西日本の富山港線を市内の基幹交通機関として再整備した富山ライトレールが開業した。また、2009年(平成21年)には富山市内線丸ノ内駅から大手モールを経由して西町駅へ向かう単線区間940mが延伸開業し、路面電車復権を象徴する出来事として注目を集めた[10]。また、松山市ではJR松山駅の高架化工事に付帯する周辺市街地の再開発事業の一環として、現在路面電車が敷設されている駅東側から高架下を通り駅西側へと700m延伸する計画があるなど、大規模な再開発事業に合わせて軌道の新設や延伸を計画している自治体もある。他にも岡山市広島市などで、廃止路線復活や、新規路線の建設といった計画があるが、橋の改修や道路幅の不足によって実現していない。

ちなみに、省エネルギー効果の高いVVVF制御は、現在の日本の電気鉄道で電車の制御方式として広く採用されているが、国内で初めて実用化したものは熊本市交通局の路面電車である。現在では路面電車も最新の車両技術(機構・デザイン)を採用する例が見られる。

なお、1960年代の札幌市電では非電化区間も存在していたため、路面気動車もごく少数ながら製作されていた。

路面電車の日[編集]

1995年(平成7年)に広島市で開かれた第2回路面電車サミットにより、6月10日を路面電車の日に制定した。これは6=ろ(面)、10=英語でテン(車)という語呂合わせによる。路面電車の日には路面電車の利点をPRするためのキャンペーンやイベントが行われる。

「チンチン電車」という通称[編集]

これには2つの説があり、1つは、通行人への警報のために、運転士が足で床下の鐘フートゴングを鳴らす音から来ており、もう1つは、車掌運転士にあるいは運転士が車掌に合図を送るために鳴らしていた(ベル)の音に由来する。鐘の音は以下のような意味で使用されていた。

  • 走行中電車が停留場に近づいたとき「チン」と1回鳴らせば「降客があるため停車せよ」または「停車する」
  • 「チンチン」と2回鳴らせば「降客がないので通過しても良いか」または「良い」
  • さらに停車中に「チンチン」と2回鳴らした場合は「乗降がすんだので発車しても良いか」または「良い」
  • 「チンチンチンチン」と3回以上の連打は「直ちに停車せよ」または「停車する(非常停車)」

現在でも都電荒川線阪堺電気軌道の全車両で発車時に聞くことができる。ただし現在は全列車が[11]ワンマン運転のため、上記で述べた車掌・運転士同士の連絡には用いられず、乗客に対する発車合図という位置付けである[12]。また、函館市企業局交通部で夏季に限って運行されている箱館ハイカラ號の他、土佐電気鉄道の「維新号」でもこの鐘が信鈴として使用されていた。

戦後は、改造によりベルを連続音の電鈴やブザーに交換した車両や、ブザーのみで新製された車両が現れたが、吹鳴回数や伝達内容はベル時代のそれを踏襲している。現在も広島電鉄では、車体の長い連節車はツーマンで運行されるため、車掌と運転士の合図にブザーが使われている。2回続けて鳴らす発車合図という点では変わらないが、ブザーのため「ギッ、ギッ」という音である。

なお、路面電車以外では名古屋鉄道(ただし300系以降の車両は2打式ブザーに変更)や京阪電気鉄道阪急電鉄阪神電気鉄道近畿日本鉄道南海電気鉄道京都市営地下鉄烏丸線大阪市営地下鉄筑豊電気鉄道等でも、ワンマン運転路線を除きベル2連打による合図を残している。過去には叡山電鉄などでも行っていた。特に路面電車発祥の会社が多い関西の路線に多い。関東でも、京成電鉄が発車時にブザー2回、停車駅が近づいた時にブザー1回と、路面電車式の合図を行っている。

次世代型路面電車[編集]

フランスを主な端緒とし最近では近代化した路面電車が登場している。日本ではこれを特に「次世代型路面電車」または「ライトレールLRT)」と呼ぶことが多い。

日本では路面電車システムの「次世代性」が議論され下記のような特徴を指しているが、明確に定まったものではない。国土交通省ではこれをLRT (Light Rail Transit/次世代型路面電車システム)としている[13]

  • 都市計画・地域計画での位置付けなど政策的な裏づけ
  • 専用軌道センターリザベーション等による定時性の確保、および運行速度向上など速達性(ただし都心部では利便性向上のために併用軌道も可)
  • 既存交通との連携
  • 運賃収受制度の改良(プリペイドカード、信用乗車方式の導入など)
  • 乗降の容易化(電車の超低床化、軌道・電停の改良など)
  • 快適性、静粛性、信頼性

日本で「次世代型路面電車」を「ライトレール(LRT)」と呼ぶ理由[編集]

「次世代型路面電車」と「ライトレール(LRT)」は、本来別概念の輸送機関である。

ライトレール(軽量軌道交通システム)の概念はアメリカで誕生し、その定義に基づけば、「大部分を専用軌道とし、1両ないし数両編成の列車が走行する、誰にも利便性が高く低コストで輸送能力の高い都市鉄道システム」となり、路面電車とは別概念の輸送機関となっている。

欧州の非英語圏国(ドイツ、フランス等)においても「ライトレール」という英語名は通常用いられない。また、路面電車に関しても、通常「次世代型」かどうかを特に区別されず、単にトラム(もしくはシュトラーセンバーン等の相当語)と呼ばれる。

しかし日本では、「次世代型路面電車」の普及推進目的のためには、「路面電車」との違いの強調が必要であり、この「路面電車」を含む表現のままで用いることは採用に有利に働かないとして、「ライトレール(LRT)」という言葉を借用したほうが関係者の意識を変えるために効果的であるとすることがある[14]

導入支援[編集]

日本の国土交通省では、「LRT(次世代型路面電車システム)」として、「低床式車両の活用や軌道電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する次世代の軌道系交通システム」と説明している。ストラスブール市やドイツフライブルク市の車両の写真を掲載し、導入支援を行っている[15]

路面電車関連用語[編集]

軌道運送高度化事業
日本の地域公共交通の活性化及び再生法の中で、超低床電車の導入およびLRTへの改良または新設を想定した整備事業の呼び名。
センターリザベーション
センターリザベーション・センターポール 写真は鹿児島市電市役所前電停
リザベーションとは、併用軌道の種別で、一般自動車が通常時軌道内に進入できない様、道路と軌道敷の境界部を視覚的、物理的に区切って線路を敷設した準専用軌道を指し、センターリザベーションはそれが道路の中央に敷設されている場合の呼称。軌道のみならずそれに乗り降りする駅施設(停留所)も道路の中央にあるため、利用時に道路の横断を免れないという欠点を持つが、日本の路面電車の大半が道路中央に軌道があって敷内進入禁止となっているのでこの形式である。一般車両は通行できないが、災害や事故など緊急車両は走行可能であることが専用軌道との決定的な違いである。
サイドリザベーション
サイドリザベーションは準専用軌道を道路の端に寄せて敷設し、歩道から直接軌道交通に乗降可能となるようしている場合の呼称。歩行者に絶対的な安全を保障する敷設法として欧米ではかなりポピュラーな敷設方式であるが[要出典]、反面、路側に停車したい車両が制限を受けるためタクシーや貨物車両の多い繁華街では敬遠されがちである。日本でもそのようになっている区間はあったものの、敷設法としては普及していなかった。近年徐々に需要が認められて採用される例が増えている。軌道が複線の場合、上下線をまとめて道路の片側に寄せるシングルサイドリザベーション(熊本・鹿児島の駅前等)と、上下線を道路の左右に振り分けて敷設するダブル(デュアル)サイドリザベーションの二種類がある。
センターポール
センターリザベーションの路線において、上下線の軌道間に架線柱を立てる方式。道路脇の電柱や建物から架線を吊る方式(サイドポール(側柱)方式)に比べ景観が良くなる。鉄道線で採用の事例もある。かつて電柱が多くなかった時代は、その必要性から一般的だったが、道路脇の電柱が増えるに従いセンターポールはみられなくなっていた。しかし景観を重視したまちづくりが全国的に広がりを見せるにつれ、主要街路の電線・電柱とともに架線を吊るすワイヤー等の構造物が道路上空に張り巡らされていることが嫌われるようになり、すっきりした都市空間をとりもどす目的に合致したセンターポールの採用が徐々に増えている。日本国内では、鹿児島市電および岡山電気軌道において、センターリザベーション区間の大部分がセンターポール化されている。
サイドポール
サイドポールは日本の既存路面電車の大多数が採用してきた架線柱設置方式。主に道路両側の路側または歩車道境界線付近に架線柱を立てるかまたは建造物を利用し、街路を横断するワイヤーや鉄骨等による跨道構造物を設置、そこから軌道上空に架線を懸下する場合が大半である。ほかに、センターリザベーションの場合に軌道と道路の境界に架線柱を立てる方式もある。また、単線区間のシングルポールは全てサイドポールに含まれる。空中のワイヤーや構造物、また路側の柱状構造物の数が増えるため、街路の景観を圧迫する要因とみなされることが多く、時として路面電車の主たる欠点の一つとして導入や存続を否定する主因とされることもある。
たわみ構造軌道
路面が、交通荷重によるせん断力には抵抗するが、曲げ力には抵抗せずたわむ構造を指し、併用軌道の場合は砕石道床を有するもの(表面が板石舗装かアスファルト舗装かは問わない)が該当する[16]。砕石道床には一般の鉄道と同様に枕木を介してレールが敷設される。併用軌道において古くから採用されてきた構造。軌道敷内の自動車通行が増加すると荷重による軌道狂いなどの破壊が早く進行し、保線作業回数を増やして対応することが必要となる。
剛質構造軌道
路面が、交通荷重による曲げ力に対して強い抵抗力を有する構造を指し、併用軌道の場合は砕石道床がなく強固なコンクリート道床を有するものが該当する[16]。併用軌道上の自動車通行による軌道破壊の増加に対応して開発されたもので、路盤上に砕石道床は構築せずコンクリート舗装板を直接敷設し、レールは舗装板上に直接又はコンクリート枕木を介して二重弾性締結により取り付けられる[16]。その上にアスファルトなどによる舗装が施される。レール上の車両荷重はコンクリート舗装板により安定して分散されるため、レール自体の重軌条化の必要はない[16]。この構造の採用後も、自動車の重量増などにより軌道破壊が進行する例も生じ、剛質構造の中でもさらに連接ブロック構造などの改良が進められた。
パッセンジャーフロー
車両の扉を乗車専用と降車専用に分け、乗客がその間を移動する途中で運賃を支払う方式。最盛期の札幌市電では、2両編成の後部車両から乗車、運賃を支払ったあと前部車両から降りるようになっていた。
地表集電方式
地表集電方式。ボルドーのトラムには架線がなく、線路中央の第三軌条から集電している。
"APS (Alimentation par le Sol) "の名称でアルストム社の子会社が開発した集電システムで、短いセグメントに区切った第三軌条を敷設し、電車が通過中のセグメントにだけ電気を通す方式。架線が不要なことから障害が少なくなる上に見栄えが良いという利点があり、フランスのボルドーで実用化された。
地中溝集電方式
コンデュイット (conduit) 方式とも。線路の間に給電線を埋設し、車体下部から伸びた集電靴で集電を行う。ロンドンやニューヨークなど各地で用いられたが、1963年のワシントンD.C.を最後に姿を消した。
高速電車
路面電車に対し、路面電車ではない通常の電車(鉄道)を区別する際に使われる言葉。
都市高速鉄道
街路交差点での交通信号で停止せざるを得ない「路面電車」に対して、交通信号で停止しないように計画・設計された鉄道をいう。英語のrapid transitの訳語であり、「都市施設」のひとつとして都市計画法第11条第1項に規定されている。

脚注[編集]

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  1. ^ Merriam-Webster's Collegiate Dictionary 2013年1月4日検索・閲覧
  2. ^ 鉄道ギネスブック 日本語版 p.8(1998年、イカロス出版)
  3. ^ a b Online Etymology Dictionary 2013年1月5日検索・閲覧
  4. ^ Middleton, William D. (1967). The Time of the Trolley, p. 60. Milwaukee: Kalmbach Publishing. ISBN 0-89024-013-2.
  5. ^ Charles J. Van Depoele Soylent Communications.
  6. ^ Marker Details: First Electric Cars. Pennsylvania Department of Community and Economic Development.
  7. ^ パリの路面電車は、2006年12月16日に再開業したが、その区間は戦前のものと全く異なり、関連性はない。
  8. ^ 次世代路面電車は「架線レス」 電池車両が商用段階に
  9. ^ 路面電車化支援のお願い」、富山ライトレール株式会社
  10. ^ 2011年(平成23年)現在、3つの異なる事業者が路面電車を運営している都道府県は、富山県(富山地方鉄道、富山ライトレール、万葉線)が唯一である。
  11. ^ 6152号が現役だった頃には、東京都電車条例で上記ルールが定められており、実際に使用していた。
  12. ^ 鉄道ピクトリアル614号「特集・東京都電」より。
  13. ^ LRTの導入支援:LRT(次世代型路面電車システム)とは(国土交通省)
  14. ^ 「路面電車新時代―LRTへの軌跡」服部重敬(編著)、山海堂、2006
  15. ^ LRT(次世代型路面電車システム)の導入支援」、国土交通省
  16. ^ a b c d 西村幸格 「路面電車の軌道構造」(『鉄道ジャーナル』1980年10月号(NO.164)pp.50-51掲載)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

次世代型路面電車[編集]