輪軸 (鉄道車両)
輪軸(りんじく)とは、車輪と車軸を組み立てたものを指す言葉である。この記事では、鉄道車両において使用される輪軸について説明する。
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構造[編集]
鉄道車両では、輪軸は台車内に収められか、車体と直接連結されて、車両を支える。ボギー台車を2台装着する日本国内での一般的な電車では、1車両当たりの輪軸本数は4本となり、連接台車を装着する車両では、1車両当たりの輪軸本数は最少2本となる。
鉄道以外の多くの車両では左右の両輪が独立に回転するが、鉄道車両の車輪は大重量がかかり高速で運転されることから強度の点で大抵車軸に固定されて、両輪が一体となって回転する。ただし、少数であるがタルゴのように急曲線を通過する車両や、超低床の路面電車(広島電鉄5100形電車など)などでは左右が独立という例外もある。
道路を走行する車両は左右輪が車軸に固定されると、曲線の走行が非常に困難になるが、鉄道車両では、車輪の踏面(レールと接する面)を円錐形にすることにより、自然とカーブに沿って曲がるようにされている。またレールの内側に入り込むように、車輪の外周にフランジが設けられる。
車輪[編集]
車輪は、車両を支えて、レール上を移動する役割を持っている。鉄製であることが特徴で、長所としては、ゴムタイヤと比較して、より重たい車重を支えることができる点、鉄製レールとの組み合わせにより回転抵抗が小さいなどが挙げられる。短所としては、レールと車輪がお互い鉄製であるため摩擦係数が小さく、滑りやすく空転を起こしやすい点などがある。このため急な坂を走行することができない。日本国内では箱根登山鉄道の勾配80‰が最大となっている[1]。
車輪の種類[編集]
タイヤ付車輪[編集]
一体車輪におけるリム部がタイヤと呼ばれる別体となっている車輪。タイヤは輪心に焼ばめされて取り付けられる。長く走行することにより車輪が摩耗したとき、タイヤだけを取り換えることができる長所がある。一方、焼きばめ部分が弛緩、損傷する可能性の欠点がある。
弾性車輪[編集]
タイヤとホイールの間にゴムを入れた構造を持つ車輪で、騒音低減が主目的である[2]。明治期の鉄道初期時代のマッチ箱客車の車輪にはホイールとタイヤの間に樫材を入れて騒音低減をはかっていた。しかし経年変化による樫材の劣化によりタイヤに緩みが出るため、このような構造を持つ車輪は一旦は使用されなくなった[3]。
その後、防音の効果が非常に大きいのみならず、防振の面からもPCCカーを中心とする路面電車で賞揚され、1950年代以降に日本でも和製PCC車と呼ばれるPCCカーの技術を取り入れた車両を中心に、一部の路面電車で導入された。
日本の一般向け鉄道車両では名古屋市交通局 [4] で採用されたほか、1980年代中盤に広島電鉄がドイツ流のゴムブッシュ圧入式弾性車輪を使用する70形(GT-8)をドルトムント市から輸入している [5]。
1998年に、ドイツ高速鉄道ICEにて、弾性車輪を採用した車両が走行中に車輪が破断して、多数の死者を出す事故を起こした。事故の直接的な原因は弾性車輪のタイヤが疲労破壊によるものであった。これ以降、ICEでは弾性車輪の採用を取り止めて一体車輪を採用している。詳細はICE#エシェデ鉄道事故を参照のこと。
一体圧延車輪[編集]
車輪全体が一体の鍛造で作られた車輪。現在日本国内で使用されている車輪のほとんどが、この一体圧延車輪となっている。以下に板部形状による分類を示す。
- A形
- B形
- C形
- A形波打
- B形波打
また、車輪の振動による騒音を防ぐために、減衰を付与するためリングをリム内周部に装着した防音車輪なども一部の車両で使用されている[6]。
車輪踏面[編集]
鉄道車両用車輪のレールと接触する部分を踏面と呼ぶ。踏面は円錐形のような形をしており、カーブにおいて輪軸の舵を取る効果を有する。カーブにさしかかると外周側に輪軸が向かい、車輪の径がより大きな部分がレールに乗る。内周側では逆に、車輪の径がより小さな部分がレールに乗る。このことで外周側がより大きな距離を進むことになり、カーブを曲がることになる。この動作は、輪軸を単独でレール上を転がしたときでも起こり、自己操舵機能という。したがって、フランジは極端に急なカーブなど場合のみ働く。しかし、この自己操舵機能は直線路において左右に繰り返し運動を引き起こす原因にもなる。この点についての詳細は蛇行動を参照。
踏面形状の種類[編集]
踏面の形状は鉄道車両の用途、国、地域、鉄道事業者などによって様々である。踏面形状はいくつかの直線、曲線が組み合わされた形をしているので一概には言えないが、主に以下の種類がある。
- 円錐踏面:レールと接する主な部分が直線(円錐)となる形状。国内では、20分の1の傾斜の円錐形状が広く使用されてきた。
- 円弧踏面:レールと接する主な部分が円弧となっている形状。
蛇行動の防止や曲線通過性能の確保を考慮されて、踏面形状が規定される。
車軸[編集]
車軸は、左右一組の車輪を繋ぐ軸で、左右の車輪を同時に回転させる。車輪とは圧入により組み立てられるのが一般的である。超低床LRVなどでは、左右の車輪を繋ぐような車軸を配した独立車輪と呼ばれる形式を採用している[7]。
車軸の種類[編集]
ここでは、中実か中空か、または、動力伝達の有無で分別する。
中実車軸[編集]
車軸の材料が中まで詰まった車軸。棒状の一般的な車軸で、下記の中空車軸と対比するときにこのように呼ばれる。
中空車軸[編集]
車軸の中心を端から端まで穴を開けた構造の車軸。長い円筒のような形状となる。主な目的は軽量化で、日本の新幹線車両など高速車両で採用されている。機械加工による中ぐりで穴を開ける場合は中ぐり車軸とも呼ばれる。
動軸[編集]
車両の主電動機の動力をレールへ伝える輪軸に使われる車軸。電車の歯車箱や気動車の減速機用の歯車用の座を備えるのが特徴。
従軸[編集]
動力伝達に使われない付随車用の車軸。ブレーキディスクが車軸に取り付く場合は、ディスク用の座を備える。
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歯車箱付の動軸。205系電車用
輪軸製造メーカー[編集]
脚注[編集]
- ^ 図解・鉄道の科学』 p.26
- ^ 宮本昌幸 『鉄道の車輪とレール』3.輪軸 弾性車輪、明星大学宮本研究室、(参照2010-09-23)
- ^ 久保田博:日本の鉄道車輌史、グランプリ出版、p19、2001.
- ^ 1950年代の路面電車(1800形など)での採用以来、東山線と名城線・名港線でSAB型と呼ばれるスウェーデンで開発された弾性車輪を2004年製造車両まで採用し続けた。もっとも、この名古屋市交通局も鶴舞線と桜通線、上飯田線では車両の大型化などの理由から、東山線でもN1000形ではメンテナンス性の理由から、それぞれ一体圧延車輪を採用している。
- ^ なお、広島電鉄は車輪のバックゲージ修正など車両保守作業における必要に迫られて、70形導入時にゴムブッシュ圧入機を自社工場で独自に製作(ブッシュそのものはドイツ製を輸入した)、日本では確立されていなかったこのドイツ流の弾性車輪の運用法を試行錯誤の末に確立しており、70形導入以後に設計された自社発注車でこの弾性車輪を標準採用している。[要出典]
- ^ 宮本昌幸『図解・電車のメカニズム』p61
- ^ 川辺謙一『図解・新世代鉄道の技術』p188
- ^ 輪軸製品情報、新日鐵住金
参考文献[編集]
書籍[編集]
- 久保田博『日本の鉄道車輌史』グランプリ出版、2001年3月21日 初版発行、ISBN 978-4876872206
- 野元浩 『電車基礎講座』 交通新聞社、2013年、初版。ISBN 978-4-330-28012-7。
- 宮本昌幸 『図解・鉄道の科学』 講談社、2006年、初版(日本語)。ISBN 4-06-257520-5。
- 宮本昌幸 『図解・電車のメカニズム』 講談社、2009年、初版(日本語)。ISBN 978-4-06-257660-4。
- 川辺謙一 『図解・新世代鉄道の技術』 講談社、2009年、初版(日本語)。ISBN 978-4-06-257649-9。
- 『鉄道輪軸』 高速車両用輪軸研究委員会、丸善プラネット、2008年、初版。ISBN 978-4-86345-004-2。