月経

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月経(げっけい、: menstruation)とは、成熟した人間の女性および高等霊長類のメスの子宮から周期的に起こる、生理的出血である[1]

正式な医学用語は「月経」であるが、生理(せいり)と婉曲表現されることが多い。

また俗に「メンス」(英:menstruation、menses のカタカナ表記の省略形)、「アンネ」(生理用品のメーカー名より)、「お弁当箱」(ナプキンが梱包されている形から)、「お客さん」(ナプキンを座布団に見立てて)、「つきのもの」「つきやく」「お月様」{月経の周期がの満ち欠け周期(29.5日)に近いことから}、「アレ」「めぐり」「女の子の日」「女盛りの日」「アノ日」等といった隠語で言われることも多い。

概要[編集]

子宮壁の最内層は、子宮内膜と呼ばれる特徴的な粘膜層で、卵巣が分泌するホルモンの影響を特に強く受ける部位である。ヒトの女性では月経周期に伴って(哺乳類一般ではメスの性周期に伴って)周期的な変化をすることが知られる。この月経周期とは、月経開始日を1日目として、次の月経が開始する前日までの日数をいう。月経は、思春期に始まり(初潮)、個人差はあるが、閉経時期までの間におよそ28日周期で起こり、通常3〜7日間続く(正常月経周期:25〜38日)[1]

排卵直前の卵巣

月経周期には卵抱期と黄体期があり、卵抱期には卵巣内で垂体前葉分泌する卵胞刺激ホルモン (FSH) の影響で卵胞が成長し、子宮内膜が厚くなる。同時に分泌を促されたエストロゲン中濃度が高まると下垂体前葉から黄体刺激ホルモンが分泌され、排卵が起こり黄体が形成される[1]

この黄体が形成される時期からは黄体期と呼ばれる。黄体は平均14日間活動を維持する。しかし排卵した卵子が受精しなかった場合、やがてエストロゲンなどの分泌が低下し、子宮内膜が脱落する[1]。そして血液とともに子宮口、を経由して体外に排出されるのが月経である。そのため妊娠すると、出産の数か月後まで月経は停止する。

一般的に、月経と同時かその数日前から不快な症状を感じる女性が多い(月経前緊張症候群、生理痛)。

  • 排卵性月経
  • 無排卵性月経

月経前症候群[編集]

症状
月経前症候群(PMS)とは月経の3〜10日前に身体、精神症状が出現し、月経開始とともにその症状が減退、消失するものである。身体症状としては乳房痛、乳房緊満感、腹部膨満感、頭痛(特に片頭痛)、四肢の浮腫、腹痛などが知られている。精神症状としては、イライラや抑うつ状態、不安感、易興奮性などが知られている。
治療
治療としては、適度な運動、水分塩分の制限などがあげられる。これらで改善がなければ、抑うつに対してはパキシルルボックスといったSSRI、不安が強い場合はコンスタンなどの抗不安薬、浮腫が強い場合はフルイトランやアルダクトンAといった利尿薬を用いる。
月経困難症も伴う場合は痛みに対してNSAIDsを用いるほか、低用量ピルなども用いる(器質性月経困難症ならば原疾患の治療)。比較的軽症な場合は漢方薬も用いられる。

初潮[編集]

概要
生まれて初めての月経を初潮(しょちょう menarche)、または初経(しょけい)と言う。古くは「初花(はつはな)」とも言われた。
年齢
初潮の数ヶ月前から透明又は色の帯下の増加が見られるようになった後、初潮が発生する。初潮の平均年齢は12.24±0.93歳[2]で、大部分は年齢で10歳から15歳の間、陰毛が発育し始めてから一定後(Tannerの分類で2-3度)、身長の伸びが低くなり始めた頃に発生することが多い[3]
9歳未満は思春期早発症[3]。10歳未満は早発月経と言われ、低身長の原因になる恐れがあり、医師による診断を受けたほうが良いという。16歳以上は遅発月経と言われ、いつまでも発来がないままだと無月経になる恐れがあり、これも医師による診断を受けたほうが良いという[4]
妊娠
「初潮=子供が産める体」になったという風に受け取られがちだが、始まっても1-2年間は周期は不規則で排卵が無い(無排卵性月経)場合が多く[3]、妊娠の可能性が低い。排卵すると、10歳以下でも妊娠するケースもあり、最年少出産記録で知られるリナ・メディナは5歳7ヶ月21日で出産した(詳細は本人の項を参照)。
成長
初経の1年以上前・初経の1年前後・初経の1年後以降で体型が異なる[5]乳房は途中で初経を挟む約4年間で発達する[6]径は白人の場合思春期前は8cm以下であるが、初経発来時には11cmに拡大する[3]

閉経[編集]

閉経時期(更年期)を迎えると、女性の体はホルモン分泌が変わり、月経は不規則になり、やがて停止する。多くの場合、50歳前後で閉経する(日本人女性の平均閉経年齢は約50歳である)。それより早く45歳以前に閉経する場合を早発閉経、55歳以上の場合を晩発閉経と呼ぶ。動詞で「上がる」とも称する。

閉経をはさむ前後5年ほどの時期を「更年期」と呼ぶ。月経停止以外に、色々な自覚症状をおぼえる女性もいる(更年期症状)。

長期間にわたり喫煙を続けると閉経が早くなるという報告がある。

処置[編集]

月経期間中は、子宮からを経て体外に経血が排出される。女性はこの出血を自分でコントロールできないため、なんの処置もしないでいると、下着や衣服を汚してしまい支障がでる。そのため、排出される経血を吸収するために、ナプキンタンポンのような生理用品を使用する。ナプキンなどをより快適に使用するために生理用ショーツを着用したりもする。月経の処置、ナプキンの使用方法などは小学校の性教育の中でも触れられる(保健体育の授業のみ男女別学となるのもこの頃から)。

ナプキンは綿を吸収体とした厚型のものがかつては主流であったが、現在は薄型で吸収力の高いポリマーを使用したものが利便性から普及している。使用済みの生理用品は、トイレでは便器には流さず備え付けのサニタリーボックスに廃棄する(流すと下水配管を支障する)。

繰り返し使えるものとしては布ナプキンがあり、ナプキンが普及する前は、ぬか袋なども使用されていた。その他、海外では月経カップも古くから市販されているようだが、日本国内においては現在(2011年10月)インターネット上でしか見かけない。

タンポンについては1970年代、毒素性ショック症候群(トキシックショック症候群)によりアメリカで死亡事故が相次いだ。これは十分に消毒されなかったタンポンを長時間挿入していたことにより膣内で黄色ブドウ球菌が繁殖したものによる。現在でもタンポンの使用説明書に長時間の使用をしないように記述がある。

月経異常[編集]

  • 月経不順(=月経周期 menstrual cycle の異常)
    • 月経が始まった頃は、月経周期は安定せず、数か月起こらなかったりすることもよくある。
    • 月経周期の異常
      • 頻発月経/経早/月経先期:月経周期が異常に短縮する(24日以下)
      • 稀発月経/経遅/月経後期:月経周期が異常に長くなる(39日以上)
      • 不正周期月経/経乱:月経周期が不定期なもの(毎回の変動が7日以上)
    • 月経持続期間の異常
      • 過短月経(too short menstruation):出血期間が異常に短縮する(2日以下)
      • 過長月経(too long menstruation):出血期間が異常に長くなる(8日以上)
    • 月経量の異常
      • 過少月経(hypomenorrhea):20ml未満
      • 過多月経(hypermenorrhea/menorrhagia):140ml以上
  • 無排卵月経
    • 一見すると定期反復的な出血が見られるが、周期内に排卵を伴わないもの。基礎体温を測ると一相性になる。厳密な意味での月経とはいえず、特に短期間に繰り返す頻発月経だったり不正周期のランダムな出血だったり、あるいは月経とも呼べない程の過少月経だったりする場合は、不正出血の一種として扱うことも多い。
  • 無月経amenorrhoea
    • 原発性無月経
    • 二次性無月経または続発性無月経
      • 初潮後ある程度月経を経験した女性の月経が3か月以上なくなること。妊娠した場合には当然ながら続発性無月経となる。また無理なダイエット拒食症、過度のスポーツなどでやせすぎた場合にしばしば起こりうる。
  • 月経発来異常
    • 早発月経(premature mensuruation):10歳の誕生日より前に初経を迎える
    • 遅発月経(delayed menstruation):16歳の誕生日より後に初経を迎える
  • 月経困難症(生理痛 dysmenorrhea
    • 月経期間中、痙攣のような腹痛を感じたり、腰が砕けそうな痛みを感じたり、足が痺れたり、身体が麻痺したり、下痢・悪心があったり、日常生活に支障をきたすような不調が起こること。若い女性に多い。妊娠経験後、痙攣性の腹痛を感じなくなる場合も少なくない。
  • 月経前症候群・PMS(premenstrual syndrome)
    • 多くの女性は月経前数日、様々な不快を感じる(個人差はある)。腰痛・腹痛・頭痛・むくみ・悪心・食欲不振・乳房の緊張など。また精神的に不安定になって、落ち込んだり怒りっぽくなったりすることも多い。黄体ホルモンの影響によると考えられる。

社会的捉え方[編集]

生理休暇
日本の労働基準法では、「生理日の就業がいちじるしく困難な女子は生理休暇が取得できる」と定められている。しかし、「勤務が困難かどうか」については医師による診断書の提出のような厳格な証明は不要とされている(1948年5月5日 基発682号)。また、休暇の間の賃金の有無等については規定されておらず、使用者と労働者の間の契約(就業規則など)に委ねられている。
なお、近代以降において、生理休暇を法制化したのは日本が最初である[7]。これに対し、「女性に対する過保護であり、男女平等に反する」という批判を受けている。そのため、「男性差別である」として、あるいは「労働効率を低下させる」として廃止が主張されている[要出典]
タブー
近代以前の世界では、月経は穢れであるとして忌避されていた国や地域が多い。日本でもインドや中国の文化的影響により、かつては月経中の女性は宮参りなどの神事に参加することができなかった(たとえば『落窪物語』巻二、『堤中納言物語』「花桜折る中将」)。現在もごく少数の社寺で女性の神事の参加を禁止している所がある。大相撲の土俵が女人禁制であるのも、相撲が元は神前で行うものだった名残である。→女人禁制を参照のこと。
祝い事
かつての日本では、初潮を迎えた女性に対して赤飯を炊いて祝う家庭もあったが、現在ではそのようなことをする家庭は少なくなって来ている。
広告
生理用品のCMでは、経血は青色や緑色の着色水で表現される。透明では分かりにくいのはもちろん、赤だと生々しいからである。またテレビCMについても夕飯時といったゴールデンタイムには放映が禁止されるといった規制もある。

脚注[編集]

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  1. ^ a b c d 生化学辞典第2版、p.427 【月経周期】
  2. ^ たなか成長クリニック・思春期
  3. ^ a b c d 思春期の発現・大山建司
  4. ^ 三宅婦人科内科医院“思春期”
  5. ^ バストと初経のヒミツの関係
  6. ^ ワコール探検隊|「少女」から「おとな」へ約4年間で変化する成長期のバスト
  7. ^ 古代律令制の休暇には女官のために淋假が設けられていたので、近代以前には生理休暇は存在していた。生理休暇の導入経緯については、田口亜紗『生理休暇の誕生』(青弓社)を参照。

参考文献[編集]

関連書[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]