経口避妊薬

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ピルの一例

経口避妊薬(けいこうひにんやく)は、主に避妊に用いられる女性ホルモン剤である。日本では一般的にピル[1]と呼ばれる。

概要[編集]

女性の生殖機能を司る卵胞ホルモン黄体ホルモンの2つが含まれ、これにより排卵を抑制する。避妊の機序は、

  1. 排卵の抑制
  2. 子宮頚管粘液の性状の変化(精子の子宮内侵入を抑制)
  3. 子宮内膜の変化(受精卵の着床抑制)

である。正しく服用した場合、妊娠の確率は避妊手術や子宮内避妊器具 (IUD) 装着と同じレベルの避妊効果が期待できる。パール指数(パールインデックス)は経口避妊薬で0.3%、避妊手術で0.1%–0.5%、薬剤添加IUDで0.1%–0.6%である[2]

避妊以外にも、生理周期の変更や月経困難症(生理に伴う重い症状や大量の月経血)の緩和、子宮内膜症の治療などに使われる。かつては高用量ピル・中用量ピルが用いられていたが、副作用のリスクの低減を目的として低用量ピル、超低用量ピルなどが開発され、海外では主流となっている。日本では以前から治療目的の中用量ピルが認可されており、1998年に避妊目的の低用量ピルが認可され、2010年に月経困難症の治療薬として超低用量ピルが認可された。避妊用としては低用量ピルが主流になっている。黄体ホルモンのみを含むピルはミニピルと呼ばれ、授乳中など卵胞ホルモンが禁忌である場合に処方されるが、日本では未認可。

副作用[編集]

副作用がありうるので、医師の指導のもとに服用することが望ましい。副作用としては、体重の増加(肥満)、偏頭痛吐き気嘔吐、イライラ、性欲減退、むくみ膣炎などがあげられる。このほか稀な例ではあるが、肝機能障害血栓症、長期服用による発癌性などの可能性が指摘されている。子宮筋腫糖尿病を悪化させる可能性があるとも言われている[3]

発癌性に関しては、国際がん研究機関によるIARC発がん性リスク一覧で、「経口避妊薬の常用」に関して「Group1 ヒトに対する発癌性が認められる」と評価されている。

また、喫煙を伴うと心臓・循環器系への副作用が高まるため、ピルを服用するなら喫煙をしないことが望ましい。

副効用[編集]

副効用は、副作用と同様に個人差が大きく、誰にでも現れるものとは限らない。しかし、以下の副効用を目的としてピルを処方されることも多い。

一般に多く期待されるのは、生理周期の安定、生理痛の軽減、経血量の減少など、月経に関する副効用である。また、子宮内膜症の予防・病巣進行の停止、子宮体がん、卵巣がんのリスク軽減なども期待できる。

抗アンドロゲン(男性ホルモン)作用を利用したニキビ治療[4]毛が薄くなる[5]副効用もあるとされる。

脚注[編集]

  1. ^ 「ピル」は錠剤一般を示す言葉であり、英語でも"the pill"と固有名詞で表現される場合は経口避妊薬(the contraceptive pill)を指す。
  2. ^ Hatcher R. A. et al. (2004). Contraceptive Technology: Eighteenth Revised Edition. New York: Ardent Media.
  3. ^ ただし、子宮筋腫や糖尿病への影響が確認されたのは現在ではほとんど用いられない旧来の高用量ピルであり、避妊用の低用量ピルではほぼ無影響とされる。
  4. ^ 小規模な無作為試験では、ピルの使用によってニキビが有意に軽減することが報告されている。
  5. ^ 「脱毛」も上記ガイドラインに起こりうる副作用の一つとして臨床結果が示されている。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]