強姦

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強姦(ごうかん、英:Rape)とは、性的暴力のこと。個人(主に女性男性同士の場合は男性)の性的自由を攻撃し、貞操を侵害する行為。「強かん」「レイプ」とも。強姦を犯す人は、強姦を繰り返したり刑務所で服役後も再度同じ犯罪を犯す者が多い。また、様々な言葉に置き換えられて表記されていながら実質的にはこの概念を指していることがあるので、まず表記上の注意点に触れてから解説する。

目次

[編集] 概説

被害者となった人物に対し多大な肉体的・精神的苦痛をもたらすものであるだけでなく、感染症に感染したり、女性が被害者であった場合には自身が望まない妊娠をさせられたり、そのケアの結果として生殖能力を失ってしまうこともある。また、懐妊した子の父性の混乱をもたらす、家庭生活の平和が破壊されるなど深刻な被害が発生する危険性が強いため、多くの文化圏においては宗教的な貞操観念などとも結びつくことによって、性犯罪の中で最も重い犯罪(強姦罪)として国家権力による処罰の対象とされている。

強姦の被害者は医療機関ですみやかに受診し、外傷や性感染症およびその他の感染症のチェックを受ける必要がある。告訴するなら医師の証言は重要となる。妊娠の心配がある場合はモーニングアフターピルの服用についても相談する。不幸にも妊娠してしまった場合には母体保護法14条1項第2号により妊娠中絶が認められている。被害者が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を経験する場合も多く、産婦人科での内診も被害に遭ったことが原因でフラッシュバックを起こして、内診が出来ない人もいる。

警察の性犯罪相談窓口や救援団体などに相談すれば、女性の職員による具体的なアドバイスを得ることができる(#外部リンク参照)。

[編集] 件数

平成15年度の日本では年2,472件の強姦が発生しており、昭和39年に8,900件を記録したのを最後に激減し[1]平成以降数値はほぼ横ばい状態である[2]。人口10万人あたりの発生件数は1.2で、アメリカ合衆国37.0[3]、韓国11.0、ニュージーランド7.46、台湾4.08である[4]。2007年の調査では未成年者による強姦事件は、韓国での人口10万人あたりの10代の強姦犯は米国の2倍・日本の10倍となっており、50.7%が輪姦事件となっている。また、3人に1人が再犯を犯している。平和な社会でも起訴率が27.3%と低いことが事件を引き起こすと指摘されている[5]

[編集] 表記

日本の報道などでは、次の理由により「強かん」と表記されることもある。

  • 「姦」の漢字が常用漢字ではないため、あまり見慣れない
  • 「姦」の漢字が女性差別的であるとして、使用を避けるべきという主張がフェミニストなどからなされることがある[要出典]

(漢字の熟語の一部をかなで表記する「まぜがき」に対する批判は、識者の間に根強くある)

以上の理由に加え、被害者やその親族等に対する配慮からも、新聞・ニュースなどの報道上では「強姦」「強かん」という語はほとんど使われることはなく、代わりに「婦女暴行」、さらに略して「暴行」と置き換えられることが多いが[6]単なる「暴行」では刑法第208条の「暴行罪」と混同し、比較的刑の軽い犯罪行為という誤った解釈がなされることがあるため、注意が必要である。「乱暴」というさらに弱めた表現も見られる。最も刑法第208条の暴行罪による事件が報じられるケースなどほとんどないため、新聞などで「女性へ暴行」「~による集団暴行」のような見出しがあれば、強姦罪(または強制わいせつ罪)のことと考えても差し支えない。ただし、「強姦」と「暴行」では、語感に相当な開きがあり、「暴行」では被疑者の悪性を希薄化することにもつながり、最近では「強姦」と表記するメディアも増えてきた[要出典]

また週刊誌小説などでは凌辱陵辱)や英語のレイプrape)という表現が用いられることもある。

なお、「強姦」という語が本来もつ意味は「双方の合意なしに行われる姦通(配偶者以外のものと行う性行為)」である(対義語は「双方の合意の上で行われる姦通」を意味する「和姦」)が、現在は広く相手の合意なしに行われる性行為一般を指す場合がほとんどである(夫婦間であっても強姦罪は成立する)。

[編集] 人類の歴史における強姦

詳細は「強姦の歴史」を参照

『ブルガリアの致命女達』 - オスマン帝国の兵士による、ブルガリア人女性に対する強姦を描いた絵画(1877年作)。背景に描かれたイコノスタス・床に転がった振り香炉・破壊された燭台から、ここがブルガリア正教会聖堂の中であり、聖堂に逃げていた女性がレイプされるシーンである事が分かる。敵国に攻め込まれた市民が最後に聖堂に立て篭もる事は大陸ではよく行われたが、侵略軍が規律の薄いものだった場合、現地の宗教心も踏みにじり、宗教施設でまでこのような残虐行為を行う事も珍しく無かった。なおこの絵画の作者コンスタンチン・マコフスキー(Konstantin Makovsky)はロシアの移動派の一人である。

性的暴力は、少数民族奴隷先住民難民貧困層また大規模災害などによって生まれた社会的弱者に対して行われたり、刑務所収容所内、そして戦時下においてしばしば行われてきた。内乱や戦時下では大規模な集団レイプもしばしば発生する(戦時性暴力)。また、非戦時下においても、権力者による性の専横、例として西欧領主初夜権などがある。

古来、征服された民族の女性の運命は過酷であった。最も有名なのはモンゴル帝国の創始者チンギス・ハーンとその係累・後裔であろう。モンゴル帝国による降伏勧告を受け入れず抵抗の後征服された都市はことごとく破壊・略奪・殺戮され、女性も戦利品として王侯・軍隊などの権力者以下にあてがわれた。また、これに先立つ遊牧騎馬民族王朝のは、北宋を滅ぼした際(靖康の変)、北宋の皇族女性全てと、多くの貴族女性を捕え、これを金皇族・貴族の妾や娼婦にした。

世界各地の男性のY染色体を調べた結果、かつてのモンゴル帝国の版図に高率で共通の染色体が検出されたという話さえある(ブライアン・サイクス著『アダムの呪い』参照)(ただこれに関しては、金・モンゴル帝国以前からシルクロード一帯で勃興・滅亡を繰り返していたと言われる遊牧騎馬民族の西進がもたらした影響を割り引く必要がある)。

近代現代も、戦時下において各国軍隊による敵国女性へのレイプが少なからず発生した。第一次世界大戦以降ではアメリカ、ソ連、ドイツによる大規模な強姦があったとされる。終戦後は、被占領地域において、戦勝国、特にソ連軍による日本人女性やドイツ人女性へのレイプが多発したという。ソ連の場合、兵士のフラストレーション解消のために、意図的に兵士の占領地での強姦を事実上放置した。ドイツの場合国土にソ連軍が侵入し、都市においては四分の一の女性がこの被害にあったとされる[7]。ソ連軍は当時から女性軍が編成されていたが、こちらも規律は皆無であり[要出典]満蒙開拓移民の日本人少年などが多数被害に遭ったとされるが定かではない(メイル・レイプ)。また、日本では戦後一貫して、在日米軍に所属する将兵による強姦事件が問題となり続けている。特に沖縄県では1972年本土復帰以降、明るみに出ているだけで120件以上。今なお基地問題で揺れる住民との間に深刻な影を落としている。1995年の沖縄米兵少女暴行事件は大きく取り上げられた。これらは、上述のソ連軍のような組織的なものでないしにろ、被害者に与える苦痛において何ら変わるところが無く、罪が軽いというわけではない。

ベトナム戦争中、アメリカ軍兵士によるベトナム人女性の強姦、買春も多発し、混血児も多数存在している。また韓国軍兵士による、現地ベトナム人女性へのレイプや買春で生まれた子供が、現在10万人以上存在している。1998年に当時の大統領金大中ハンギョレ新聞の報道を受けてこれらのベトナム戦争に於ける韓国軍の残虐行為に対する謝罪の意を訪韓中のベトナム首脳に表し、また補償の開始を命じたが、非公式な謝罪であるため韓国政府としての謝罪と受け取られているとは言い難い。また反共の野党ハンナラ党の反対もあって現在も補償は全く進んでいない為、両国間で問題になっている(韓越混血児問題)。このためベトナムにおける反韓感情は根強い。

1990年イラク軍によるクウェート侵攻後にクウェート国際空港に到着した航空機の乗員に対して強姦が行われたことや(ブリティッシュエアウェイズ149便乗員拉致事件)、1991年から2001年まで及んだ一連のユーゴスラビア紛争では、異民族や、同じ民族でも政治的に敵対する立場にあった女性への強姦が横行したこと、1994年ルワンダではフツ族の武装勢力によるツチ族女性や虐殺への加担を拒んだ女性への強姦など、戦時下レイプの例は歴史上現在に至るまで枚挙に暇がない。

2009年現在の南アフリカ共和国では男性の27.6%が女性をレイプした経験があるとする調査結果を南アフリカ共和国の医学研究評議会(MRC)によって明らかにされている[8]。なお、調査は全国9州のうちクワズールー・ナタール東ケープの東部2州で行われたものである[8]


また、前述したとおり大規模災害の発生にともない治安が一時的に悪化し、被災民、避難民の中の弱者が性的暴力を受ける被害も発生している。被災による精神的ダメージに加え、性的暴力による精神的な障害を受けることになり、さらには災害時のため、被害を訴えることが困難だったり、訴えても、事件立証のためにさらなる苦痛を被害者が負うことになる。

[編集] 社会学的見方と生物学的見方

[編集] 社会学的見方

強姦する側の半数以上が若い年齢層であるという統計もある[9]し、強姦する側が貧民層であるというのは、ある種の差別的な幻想である。確かに社会的地位の低さによって満足な性生活がおくれない、あるいは失う物が少ないなどの理由で犯行に及ぶ場合もないわけではない。これは性犯罪に限らず多くの逸脱行為に共通する統計的な傾向であり、特に貧困と強姦を結びつける根拠としては説得力に欠ける。しかし、富裕層の強姦事件も決して少なくなく、社会的地位と強姦についての因果関係に結論は出ていない。

強姦は一般に見知らぬ他人が加害者であるイメージがあるが、統計的には強姦は恋人や友人などごく身近な者によって引き起こされている。

主にフェミニズムでは、男性による女性に対する性的な支配が、男性社会を維持する仕組みとして使われてきた側面があるとする社会学的見方が主張されている。

  • スーザン・ブラウンミラーは、強姦は、社会的に抑圧された男性が、その弱さを糊塗するため、女性を支配することによって力を誇示して満足感を得ようとする「権力作用」であり、男女間の力関係を支配・征服により確認する行為であるとしている。

レイプが男性の性欲に強く依存することに基づいて、抗アンドロゲンを投薬、あるいは注射により、性犯罪者の更生を図る試みも、アメリカなど一部の国で行われている。しかし、これはまた別の人権論争を巻き起こしている。

一般には「強姦を行う者は単に性的欲求が強すぎる人間である」とする解釈が行われるが、心理学的には実際に強姦を行うものの目的は性的欲求の解放ではなく、強姦時に相手の女性を支配する満足感を得ることにあるとされている。強姦の常習者の多くが幼児期に母親などの女性から折檻などの形で肉体的暴行を頻繁に受けたものであることが多い。

20世紀以降、北欧などの民主主義的国々において性犯罪者に対し、強制断種が合法的に実施されたが、これはフェミニスト達の解釈による政治的運動が法的に反映された結果であり[10]、強姦という犯罪を根拠のないイデオロギー的枠組みで解釈した事例である。

強姦に対しては、科学的かつ価値中立的な対処が必要であるとされる。

[編集] 生物学的見方

双方の同意を待たずに行われる性行動自体は、人間特有の行動ではなく、類人猿や鳥、魚などにも少なからず見られるが、それをさして強姦であるとするかは、研究者のなかでも同意はとれていない。

行動生態学的にはレイプについて二つの仮説がある。強い仮説は、強姦(レイプ)は繁殖行動の典型であるとするものであり、適応的だとするもの[11][12]、弱い仮説は、繁殖行動で在ることは間違いないが、副産物的なものであり、強姦行動がことさら正の自然選択によって進化したとは言えない、つまり適応で説明するのはjust-so-storyであるというものである。

をする動物の多くは手を歩行以外の目的で自由に使うことはできず、雌にその気が無ければ雄が強制的に交尾をすることは不可能であるからこの説は妥当ではない[要出典]、と言う者がいる。

  • 前肢を比較的自由に使いこなせる肉食動物(雑食を含む)の多く場合では、雌にも強い攻撃能力があり、雄が雌の反撃の危険性を覚悟で強いることは、費用対効果として疑問視されるからこの説は妥当ではない[要出典]、という人がいる。
  • 多くの動物には発情期があり、この期間以外受精を行うことが出来ないからこの説は妥当ではない[要出典]、と言う者がいる。

また、比較行動学からの類推などから[要出典]も否定する人がいる。

従って現在では、これらの理由から「レイプは生物学的自然に基づく繁殖戦略であり、そのために男性の性衝動がある」という主張は受け入れられていない現状にある[要出典]、とする人がいる。 -->

[編集] 強姦(日本)

[編集] 日本の法律

法律上の扱いの詳細は 強姦罪 を参照のこと。

現在の日本の国内法においては、直接的な性交(陰茎の膣挿入)を伴う性的暴力に限られる(射精の有無は不問)。その為、被害者が女性の場合にのみ成立(現在は、被害者が男性の場合は、いかなる性暴力であれ法的には強姦には分類されていない)。

[編集] 日本における強姦の意識の変化

現在においても、法廷において被害者が加害者につけいる隙をつくったか否かを詮索されたり、異性との交友関係、性体験の有無について詮索される傾向があるといわれる。これは、潔癖な女性の性的自由は尊重されるが、そうでない女性については性的自由の侵害を認定しないのと同義である。個人の性的自由は、その私的生活に左右されるものであってはならないとする法曹関係者が増加する傾向もみられるともいわれるが、夫婦は互いに性交を求める権利を有しかつこれに応じる義務があるという観念(性交要求権)も裁判官に根強く残っていると解する向きもあり、強姦が性的自由の侵害であると一般に理解・認識されるまでには、まだ時間がかかるものともいわれている。また、近年、国連規約人権委員会や女子差別撤廃委員会(女子差別撤廃条約に基づく)などの国際機関において、日本における法と法の運用の不備を指摘されている。

この一方、夫婦間における性的な強要が容認されない社会意識が醸成されつつある。

[編集] 出版物及び映像における表現

実際の強姦の状況は、その当事者・目撃者などしか知りえない場合が多い。このため映像作品や書籍などの「レイプシーン」において、実情とかけ離れた表現がとられることがある。

一般にTV放送等では、商業上、あるいは放送倫理などの理由で表現を抑制される。

また、同じく商業上の理由で、逆に実情とはかけ離れた扇情的な表現が用いられることも多い。この場合、被害者が叫ぶ、途中で快感を得るというような描写がなされる。実際には、突然の強姦で暴力を伴う場合、強い恐怖を感じ、声も出せない、身動きもできないことが少なくないとされる。


[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

個人サイト

[編集] 脚注・出典

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  1. ^ 日本刑事政策研究会 (2005年). "性犯罪の現状と対策". 2008年9月22日 閲覧。
  2. ^ 警視庁資料より
  3. ^ About USA. "アメリカ合衆国におけるレイプ 婦女暴行". 2008年9月22日 閲覧。
  4. ^ 勝手に映画ネチズン (1998年10月11日). "レイプに関する告発の行方". 2008年9月22日 閲覧。
  5. ^ 朝鮮日報 (2007年4月17日). "10代の性犯罪:韓国の強姦犯は米国の2倍・日本の10倍". 2008年9月22日 閲覧。
  6. ^ これは被害者の女性が興味本位に注目されることを防ぐ配慮であるが、逆にこのことが犯罪の重大さを希釈してしまう表現であることは否めない。同様のジレンマに未成年への強制わいせつを「いたずら」とおき代える例が挙げられる[要出典]
  7. ^ 望まれない妊娠の人工妊娠中絶が事実上容認され、これを契機にドイツでは人工妊娠中絶が事実上合法化された。
  8. ^ a b 南ア男性の4人に1人がレイプ経験者!?研究機関調査 産経新聞 2009.06.19
  9. ^ 『ウーマンズ・ボディ』1992
  10. ^ デンマークの「全国女性会議」は1920年代に男性の性犯罪者から女性を守るために性犯罪者に対する去勢手術を合法化する必要があると運動を展開した。
  11. ^ ランディー・ソーンヒルは、シリアゲムシのレイプ行動からヒントを得て、人間のレイプ行動の研究を行った。
  12. ^ オランウータンの項の「繁殖」の節を参照。
ウィキメディア・コモンズ