射精

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
射精器官の図

射精(しゃせい)とは、オス生殖器から精子を含む精液を放出すること。魚類や両生類など水棲動物の射精は「放精」と呼ばれる。以下は、ヒトの射精について述べる。

目次

人間男性の射精 [編集]

通常は性的な刺激に対する反射として尿道から精液が放出される。ただし、睡眠中に自然に起きることもあり、そのような場合は「夢精」と呼ばれて区別される。前立腺のマッサージによって起こったり、稀ではあるが前立腺の疾患が原因で引き起こされることもある。射精が起きるほとんどすべての場合、陰茎勃起している。また、射精の際に、オーガズムを経験することがある。その男性にとって初めての射精を「精通」(しばしば第二性徴期に起こる)という。また、性行為の際に射精が異常に速やかに起こることを「早漏」、その反対を「遅漏」という。

過程 [編集]

ヒトのイジャキュレーション

射精の過程は大きく分けて二つの段階からなり、精液が尿道前立腺部に集められる過程(エミッション: emission)と、精液が尿道を経由して外尿道口から放出される過程(イジャキュレーション: ejaculation)とに分けられる。通常、「射精」と呼んでいるのは後者を指す。

  1. 前段階
    性的な興奮が高まると、まず、尿道球腺液が分泌され、あらかじめ酸性に傾いている男性尿道内を中和する(興奮の安定期が持続した場合にも分泌される)。精巣(睾丸)が少しずつ陰茎の根本の方にせり上がる。そして陰嚢が小さく引き締まり、精巣は外から見て分からない程になる。
    この段階では性的刺激を中断したり、陰嚢を引き戻したりすれば、射精へは至らない。俗に、この段階で射精を我慢することを、「寸止め」と言ったりする。
  2. 移動の段階
    さらに性的な興奮が高まると、精巣上体(副睾丸)尾部に蓄えられていた精子は少量の分泌液とともに精管の蠕動運動によって精管末端部にある精管膨大部まで順次運ばれ、精子はここで射精の瞬間まで待機する。ついには性的な興奮が頂点に達する(オーガズム)と脊髄の中にある射精中枢が反応し、射精反射が発生する。脳が関与できない反射のため、この段階に入ると意思の力で射精を抑えるのは困難である。
    膀胱括約筋が固く収縮するとともに前立腺液が尿道前立腺部に排出され、精管膨大部に蓄えられていた精子も射精管を通って尿道前立腺部に押し出される。この過程がエミッションである。このとき膀胱の出口は固く閉じられているので精液が膀胱に逆流することはない。一方、尿道括約筋も固く収縮しているので精液は行き場を失い前立腺内で内圧が非常に高まる。これがいわゆる射精直前の感覚である。
  3. 放出の段階
    第二段階(イジャキュレーション)は尿道括約筋が弛緩することから始まり、前立腺内に充満した精液の内圧によって一気に押し出され、尿道の球海綿体筋などの働きによって陰茎先端の外尿道口から勢いよく放出される。同時に精嚢の平滑筋も収縮を繰り返し、精液の約7割を占める精嚢液が少し遅れて律動的に放出される。そのとき肛門括約筋もまた収縮を繰り返す。
    この射精の律動は、1秒内外の間隔で数回にわたって連続して発生する。回数が進むに連れて次第に間隔が開いていき射精の勢いも減少し、急速に勃起が解けていく。

射精の回数 [編集]

ひとたび射精すると、次回の勃起および射精までは、時間的間隔を置かなくてはならないことがある。射精の繰り返し能力には幅があり、通常は1 - 2時間に1回位とされるが、2回以上、希有な例では3 - 4回に達することもあり、米国のキンゼイ博士の記録によれば、1度のセックスで射精回数が6 - 8回に及んだものもあった。[1]

射精の勢いと射精液の量 [編集]

射精液の液量は平均3.5ミリリットル、ティースプーン程度だが個人差も大きく、約0.2 - 6.6ミリリットルと幅がある。数滴しか出ない場合や逆にこれを超える例もあり、長期間射精しなかった場合13ミリリットルに達することもある[2]。射精後、精嚢に精液が満たされるのに2 - 3日間かかるため、前回との射精間隔が2 - 3日未満だとその液量は少なくなる。

個人差はあるが、4日以上経つと精液は夢精として自然排出されるか、体内でたんぱく質として吸収されてしまう(当然、3日目まで蓄積された精子は、精液の量に反して活性が低い[3])。精液の出る勢いについては、立って真横に射精した場合、数十センチから1メートル近くにも及ぶ[4]。ただし、前回の射精からの間隔が短い場合には、陰茎から沁み出すようにして射精する例もある。

射精一度あたりの射精液が含む精子数もまた個人差が大きいが、通常1億~4億程である。また、1日に作られる精子の数は5000万~1億程である。この数に影響を与える因子は数多くあり、最後の射精からどのくらいの時間が経過したか、睾丸の置かれた温度環境、射精までに要した性的興奮の時間、年齢、テストステロンのレベル、個人差、精液の量などに依存する。無精子症や乏精子症などの疾患では精液中に精子が全く見られなかったり少ないために不妊症(男性不妊という)の原因となる。

脚注 [編集]

  1. ^ 参考文献の1、184頁(「男性の性器官」、2.性的能力〈射精の繰り返し〉)。
  2. ^ 参考文献の1、184頁(「男性の性器官」、2.性的能力〈射精〉)。
  3. ^ 精子の生存期間は温度など条件により約1 - 21日間である。→参考文献の1、184頁(「男性の性器官」、2.性的能力〈精子の産生〉)
  4. ^ 通常は17.5 - 25センチメートル、長期の禁欲後では90センチメートル以上に達することもある。→参考文献の1、184頁(「男性の性器官」、2.性的能力〈射精〉)。

参考文献 [編集]

  1. ダイヤグラム・グループ著/池上千寿子・根岸悦子訳 『マンズ・ボディー』 鎌倉書房、1980年。

関連項目 [編集]

射精に至る要因 [編集]

その他 [編集]