媚薬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

媚薬(びやく)とは狭義には催淫剤と呼ばれ勃起不全の治療に使われる薬を言う。広義には性欲を高める薬、恋愛感情を起こさせる惚れ薬、肉体的な性機能の改善を目的とした精力剤強壮剤も含まれる。

目次

[編集] 概説

媚薬とは主に性的興奮を高める作用を持つ薬の総称であるが、その歴史は古く精力の付く薬や食品の総称ともとらえることができる。また、フィクションの分野では魔法の薬のように人間の精神に作用し、恋愛感情を自在に操る薬も媚薬と呼ばれる。多くの場合こうした薬の作用は個人差が大きく、薬効の認識によっても差異がある(プラセボ効果参照)。基本的には精神を自在に操作することのできるほどの薬効成分は実用化されておらず、惚れ薬は架空の薬品と認識されている。

歴史的には大変古いが食用となる野菜や果物、獣肉等の産地、知識が偏っていた前近代においては、刺激性物質の入っている食材が媚薬とされることがすくなからずあり、タマネギなど現代では一般的な食材も過去には媚薬扱いされていた。これは嗜好品の一般化した近年とは異なり、当時の人々が刺激性物質や化学物質に全く晒されていなかったために薬効が顕在化しやすかったのではないかという説がある。また前述のプラセボ効果により、珍しい果実や食材に媚薬効果があるというふれこみで輸入・販売されることがあった。

[編集] 主な分類

  • 催淫剤
性欲を亢進させる薬。主に男性の精力減退の治療に用いられ勃起を促す作用を持つ。フィクションの世界では女性向けの薬が用いられることもしばしばである。
  • 勃起機能改善薬
ヨヒンビンストリキニーネなど性器の充血を昂進させる作用を持つ薬。市販薬ではバイアグラが著名である。
  • 刺激性物質
経口摂取、または注射により尿内に残留し尿路から性器を刺激する。多量に摂ると毒になる物質にこの作用が見られることがある。
  • 性ホルモン剤
アンドロゲンエストロゲンなどのステロイドホルモン製剤の一部に性器の発達を促す作用があり、性欲増進に効果があるとされる。
  • 民間の伝承薬
漢方薬生薬といった、口伝経験則によって効能や有効成分が認められている薬、または感応呪術による性器食。

[編集] 主な媚薬とされるもの

  • 植物、動物由来の食品・調味料
  • 散薬、塗布薬など
  • サテュリオン:ペトロニウス著『サテュリコン』で紹介された媚薬。催淫剤の総称だがいくつかの植物がこれにあたると後世紹介されており、正体は不明。
  • 魔女軟膏:様々な生薬を練り込んだ軟膏。魔女がサバトの饗宴で用い、オルガスムスを簡単に得られるとされた。多くはキリスト教普及以前の民間伝承薬であったとされている。魔女狩り以降の伝承では暗黒面が強調され、精液、愛液、コウモリの血や女性の経血、蛇なども材料とされた。
  • カンタリスカンタリデスハンミョウという虫の粉末。ヨーロッパのものはアオハンミョウである。東西を問わず生薬として用いられヨーロッパでは媚薬効果があるとされた。
  • 漢方薬:鹿角鹿の角)、鹿茸(鹿のふくろづの)、附子トリカブトの一種)、地黄(アカヤジオウ)、麋角トナカイの角)などを調合。
  • アヘンヒキガエルの粘液:江戸時代の日本で売られていた長命丸という媚薬の主成分。
  • 朝鮮人参:万能薬として珍重された。
  • 麻薬:アッパー系と呼ばれる興奮作用のあるものが性欲昂進に効果があるとされる。
  • その他
  • 麝香龍涎香:香りに媚薬効果があるとして珍重された香。
  • イモリの黒焼き:江戸時代から伝わる媚薬。古代ローマやインドでもトカゲは媚薬・強精薬の材料となった。

[編集] 媚薬を扱った作品

[編集] 小説

[編集] 漫画

[編集] 音楽

[編集] 参考書籍

立木鷹志著、青弓社刊『媚薬の博物誌』ISBN 478723062X

[編集] 関連