夏の夜の夢

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夏の夜の夢』(なつのよのゆめ、原題:A Midsummer Night's Dream)は、ウィリアム・シェイクスピアによって1590年代中頃に書かれた喜劇形式の戯曲。全5幕からなり、アテネ近郊の森に脚を踏み入れた貴族や職人、森に住む妖精たちが登場する。幾度か映画化もされている。他にも後世に作られた同名の作品が複数ある。1950年代までの古い日本語翻訳では真夏の夜の夢(まなつのよのゆめ)と訳されることが多い(日本語訳タイトルの節を参照)。メンデルスゾーンの同名の序曲および劇付随音楽(「結婚行進曲」で知られる)はこの戯曲に基づく(夏の夜の夢 (メンデルスゾーン) を参照)。ベンジャミン・ブリテンによる同名のオペラ作品も存在する(夏の夜の夢 (ブリテン))。またヘンリー・パーセルの劇付随音楽「妖精の女王」もこの戯曲に基づいている。

目次

[編集] 概要

アセンズ(アテネ)の街と近郊の森が舞台となる。2組の貴族の男女:ハーミア、ライサンダー、ヘレナ、ディミートリアス、織工のボトム、妖精の王オーベロン、女王タイターニアパックが主な登場人物である(登場人物参照)。人間の男女は結婚に関する問題を抱えて森に入り、妖精の王たちは養子を巡るけんかによって仲が悪くなる。しかし、オーベロンの画策やパックの勘違いや活躍によって最終的には円満な結末を迎える。


注意以降の記述で物語に関する核心部分が明かされています。


アセンズ公シーシアス(テセウス)とアマゾン国のヒッポリタとの結婚式が間近に迫っており、その御前から舞台は始まる。貴族の若者ハーミアとライサンダーは恋仲であるが、ハーミアの父イージアスはディミートリアスという若者とハーミアを結婚させようとする。ハーミアは聞き入れないため、イージアスは「父の言いつけに背く娘は死刑とする」という古い法律に則って、シーシアスに娘ハーミアを死刑にすることを願い出る。シーシアスは悩むものの、自らの結婚式までの4日を猶予としてハーミアへ与え、ディミートリアスと結婚するか死刑かを選ばせる。ライサンダーとハーミアは夜に抜け出して森で会うことにする。ハーミアはこのことを友人ヘレナに打ち明ける。ディミートリアスを愛しているヘレナは二人の後を追う。ハーミアを思うディミートリアスもまた森に行くと考えたからだ。

シーシアスとヒッポリタの結婚式で芝居をするために、6人の職人が一人の家に集まっている。役割を決め、練習のために次の夜、森で集まることにする。かくして、10人の人間が、夏至の夜に妖精の集う森へ出かけていくことになる。

オーベロンとタイターニアの喧嘩:中央左がタイターニア、中央右がオーベロン。タイターニアがかばうようにしているのがとりかえ子。周りには森の妖精が描かれている。
オーベロンとタイターニアの喧嘩:中央左がタイターニア、中央右がオーベロン。タイターニアがかばうようにしているのがとりかえ子。周りには森の妖精が描かれている。

森では妖精王オーベロンと女王タイターニアが「とりかえ子」を巡って喧嘩をし、仲違いしていた。機嫌を損ねたオーベロンはパックを使って、タイターニアのまぶたに花の汁から作った媚薬をぬらせることにする。この媚薬はオーベロンの魔力によって作られた強力なもので、目を覚まして最初に見たものに恋してしまう作用がある。パックが森で眠っていたライサンダーたちにもこの媚薬を塗ってしまうことで、ライサンダーとディミートリアスがヘレナを愛するようになり、4人の関係があべこべになってしまう。また、パックは森に来ていた職人のボトムの頭をロバに変えてしまう。目を覚ましたタイターニアはこの奇妙な者に惚れてしまう。

とりかえ子の問題が解決するとオーベロンはタイターニアが気の毒になり、ボトムの頭からロバの頭をとりさり、タイターニアにかかった魔法を解いて二人は和解する。また、ライサンダーにかかった魔法も解かれ、ハーミアとの関係も元通りになる。一方、ディミートリアスはヘレナに求愛し、ハーミアの父イージアスに頼んで娘の死刑を取りやめるよう説得することにする。これで2組の男女、妖精の王と女王は円満な関係に落ち着き、6人の職人たちもシーシアスとヒッポリタの結婚式で無事に劇を行うことになった。

[編集] 物語の背景

ヨーロッパでは夏至、妖精の力が強まり、祝祭が催されるという言い伝えがある。劇中でも小妖精のパックや妖精王オーベロンなどが登場する。特にトリックスター的な働きをするパックは人々に強い印象を与え、いたずら好きな小妖精のイメージとして根付いている。Puck はもとはプーカ Puka などとして知られていた妖精のことである。

『真夏の夜の夢』の執筆時期と最初の上演がいつだったのか正確な日付は不明であるが、1594年から1596年の間であったと考えられている。1596年2月のトーマス・バークレイ卿とエリザベス・キャレイの結婚式で上演するために書かれたとする説もある。『真夏の夜の夢』の構想の元となった作品は不明であるが、個々の登場人物や出来事は、ギリシャ神話古代ローマの詩人オウィディウスによる『変身物語』、アウグスティヌスの『黄金のロバ』といった古典的な文学から流用されている。

[編集] 日本語訳タイトル

初期の翻訳では、原題の midsummer nightを直訳して「真夏の夜」 の語が用いられた(坪内逍遥三神勲など)。しかし原題が指すのは6月下旬の夏至 midsummer day の夜のことであり(en:Midsummer参照)、日本でいう「真夏」つまり夏のさかりの夜ではない。そのため、現在では日本の読者に誤解を招くとして、『夏の夜の夢』と訳するのが一般的である(福田恆存小田島雄志松岡和子ら)。

[編集] 登場人物

[編集] 貴族

  • ハーミア Hermia:ライサンダーの恋人、イージアスの娘。
  • ライサンダー Lysander:ハーミアの恋人。イージアスに嫌われている。
  • ディミートリアス Demetrius:イージアスが決めたハーミアの許嫁。ハーミアに思いを寄せる。
  • ヘレナ Helena:ハーミアの友人。ディミートリアスに思いを寄せる。
  • イージアス Egeus:ハーミアの父。
  • シーシアス Theseus:アセンズの公爵。ギリシャ神話ではテセウスとして知られる。
  • ヒッポリタ Hippolyta:アマゾン国の女王。ギリシャ神話に登場する。

[編集] 職人

  • ボトム Nick Bottom:織工。ロバの頭をかぶせられる。
  • クインス Peter Quince:大工。
  • フルート Francis Flute:オルガンのふいご修理屋。
  • スターヴリング Robin Starveling:仕立て屋。
  • スナウト Tom Snout:鋳掛け屋。
  • スナッグ Snug:指物師。

[編集] 妖精

  • パック PuckRobin Goodfellow とも呼ばれる、いたずら好きの妖精。オーベロンの命令で媚薬を塗ったりするが、早とちりや勘違いから行った行為は登場人物たちを混乱させることになる。トリックスターの典型例としてしばしば引き合いに出される。また一般的に考えられている小さな妖精のイメージは彼に由来する。
  • オーベロン Oberon:オベロンとも。妖精の王。花の汁から媚薬を作ったり、パックを使い画策を練る。タイターニアの夫。
  • タイターニア Titania:タイタニア、ティターニアなど。オーベロンの妻、妖精の女王。とりかえ子を手元に置こうとしてオーベロンと喧嘩をする。
  • その他の妖精たち:豆の花 Peaseblossom, 蜘蛛の巣 Cobweb, 蛾の羽根 Moth, 芥子の種 Mustardseed。頭がロバになってしまったボトムの世話などをする。

[編集] 映画化

他の多くのシェイクスピア作品と同じく、何度も映画化されている。主だったものを以下に記す。

  • 1996年版:ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで演出家のエイドリアン・ノーブルが手がけた舞台を本人が映画化。アレックス・ジェニングス、リンゼイ・ダンカン、デスモンド・パリット、バリー・リンチなど出演。日本公開は1998年。

[編集] 宝塚歌劇

1992年月組公演。タイトル『PUCK』、小池修一郎潤色・演出。舞台音楽を松任谷由実が担当して話題になった。1942年にも雪組が『眞夏の夜の夢』のタイトルで上演している。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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