エストロゲン

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E2

エストロゲン: Estrogen, : Oestrogen, : Estrogene)は、ステロイドホルモンの一種。一般に卵胞ホルモン、または女性ホルモンとも呼ばれる。

エストロゲン(: Estrogen)の語源は、ギリシャ語の“estrus(発情)”と、接尾語の“-gen(生じる)”から成り立っており、エストロゲンの分泌がピークになると発情すると言われたことに由来する。

種類[編集]

一般に以下の3種類が知られている。

生成[編集]

卵巣顆粒膜細胞、外卵胞膜細胞、胎盤副腎皮質精巣間質細胞で作られる。乳児期早期(1-3ヶ月)の女性思春期並に分泌量が多く、小卵胞が出没するが、2歳から思春期を迎えるまでは分泌量が減少する。2歳から思春期を迎えるまでの分泌量は女性で0.6pg/ml、男性で0.08pg/mlと女性の方が高くこれが女性の思春期初来が男性より早い原因の一つとなっている[1]。思春期に卵巣が発達し始めると共に分泌がプロゲステロンも増加し始め、第二次性徴を促進させる。更年期以降は分泌が減少する。女性の尿には、大量のエストロゲンが含まれるため、下水処理水も多量のエストロゲンを含むことになり、環境ホルモンの環境への排出が問題になったことがある[2]

男性作用[編集]

男性の場合はテストステロンを元にエストロゲンが作られて分泌される。その量は更年期の女性と同程度とされる。思春期にテストステロンが増えるのにつれエストロゲン濃度も増加し、エストロゲンの方が相対的にホルモンバランスにより女性化乳房が起こったりすることがある。後にテストステロンが増えてくると女性化乳房は1-2年で消失する[1]

エストロゲンはコレステロールから合成されるステロイドホルモンの一種で、プロゲステロンコルチゾールアルドステロンテストステロン等と同じカスケード反応系列中にある。

分解[編集]

エストロゲンの分解は他のステロイドホルモン同様、主に肝臓で行われる。グルクロン酸抱合を受け、胆汁排泄または尿中排泄される。尿中に含まれるのはエストロゲンではなく、分解産物であるプレグナンジオールであり、この濃度による妊娠診断が行われている。肝臓障害によりエストロゲン分解能力が低下すると、慢性的エストロゲン濃度の上昇を引き起こし、男性では乳腺肥大(女性化乳房)、女性では性周期の乱れなどが生じる。経口摂取されたエストロゲンのほとんどは、で吸収されて門脈から肝臓に入って分解されてしまう。経口的にエストロゲンを摂取するには、分解されにくいエストロゲン誘導体を摂取する必要がある。

植物性卵胞ホルモン様物質[編集]

植物の中には、エストロゲンと似ている生理作用を持つ物質(植物エストロゲン)もある。大豆などに含まれるイソフラボンが代表であり、弱いエストロゲン作用から更年期障害2型糖尿病の改善に効果があるといわれている。厚生労働省に調査を依頼され、食品安全委員会サプリメント添加物としてのイソフラボンの過剰な摂取に注意を呼びかけている。食品安全委員会は「現在までに入手可能なヒト試験に基づく知見では、大豆イソフラボンの摂取が女性における乳がん発症の増加に直接関連しているとの報告はない[3]」と報告している。プエラリアPueraria mirifica)の根茎に含まれるミロエステロールデオキシミロエステロールは、イソフラボンより作用が強く、豊胸用などのサプリメントとして販売されているが、それだけに副作用の懸念も指摘されている。

生理作用[編集]

エストロゲンはステロイドホルモンの一種であり、その受容体エストロゲン受容体:ER)は細胞内にある。エストロゲン-受容体複合体は内へ移動し、特定の遺伝子転写を活性化する。エストロゲンの受容体は全身の細胞に存在し、その働きは多岐にわたっており、その解明にはまだ時間がかかりそうである。一般的に知られているのは、乳腺細胞の増殖促進、卵巣排卵制御、脂質代謝制御、インスリン作用、血液凝固作用、中枢神経(意識)女性化、皮膚薄化、LDLの減少とVLDLHDLの増加による動脈硬化抑制などである。

また、思春期における身長の伸びはエストロゲンの分泌が促進されることで起こっている、同時にエストロゲンは骨端線を閉鎖させる作用もある。その結果女性の場合、思春期における身長の伸びは男性より早いが、骨端線の閉鎖も男性より早いため結果的に成人男性より平均身長が低くなる。一方男性でエストロゲンが作用しない場合は高身長になりやすい[1]家畜においては受胎を阻止するために、交配後2-48時間以内にエストロゲンを注射することが効果的であることが知られている。

近年の研究では心臓の保護効果も発見されており、心筋梗塞などの心疾患を防ぐ効果があると考えられている。ただし、ホルモン補充療法は近年の大規模臨床試験において副作用が指摘され、動脈硬化や骨粗鬆症に対しては他の治療法が推奨されている。

脚注[編集]

  1. ^ a b c 大山健司,山梨大学看護学会誌,3,(2004),3.
  2. ^ 東京都環境局. “内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)対策”. 2011年3月9日閲覧。
  3. ^ 食品安全委員会 (2006年5月). “大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方”. pp. 35. 2011年3月9日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]