サプリメント

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サプリメントとは、アメリカ合衆国での食品の区分の一つであるダイエタリー・サプリメントdietary supplement)の訳語で、狭義には、不足しがちなビタミンミネラルアミノ酸などの栄養補給を補助することや、ハーブなどの成分による薬効の発揮が目的である食品である。ほかにも生薬酵素ダイエット食品など様々な種類のサプリメントがある。広義には、人体に与えられる物質という意味で食品以外にも用いられる。栄養補助食品(えいようほじょしょくひん)、健康補助食品(けんこうほじょしょくひん)とも呼ばれる。略称はサプリである。2013年12月アメリカの研究者らによってビタミンやミネラルなどのサプリメントは健康効果がないばかりか、むしろ健康がある可能性が高いと結論付けられた[1]

概要[編集]

5大栄養素とは糖質炭水化物)、脂質タンパク質、ビタミン、ミネラルを指し、前3者を3大栄養素、後2者を微量栄養素と呼ぶ。多くのビタミンが作用するためにはミネラルが必要であり、3大栄養素が作用するためには微量栄養素が必要である。こうした栄養素の中では、必須ビタミン必須ミネラル必須脂肪酸が不足しやすいと考えられる。元来、狭義のサプリメントは生体に不足した栄養素を補充する目的で用いられていた。

1990年頃から、国民の健康意識の高まりやテレビ番組での紹介によりサプリメントへの認識は広まり、また医療費高騰の対策として国政として予防医学を進めて法整備や規制緩和が行われ、また一般の人に健康維持の意識を高めてもらう目的で推進されていることもあり、日本でも一大市場となっている。

効果および危険性[編集]

2013年12月にはアメリカジョンズ・ホプキンス大学の教授をはじめとする医師らが医学誌アナルズ・オブ・インターナル・メディシン誌上にビタミンやミネラルなどのサプリメントは健康効果がなく、十分な栄養を取っている人にはむしろ害になる可能性があるという研究結果を発表した。論文によれば心臓血管疾患、心筋梗塞ガン認知症、言語記憶、そのいずれに対してもビタミン、ミネラルなどのサプリメントは効果はなく、さらには過去の研究から、ベータカロチン肺がんリスクをむしろ高める可能性や、ビタミンEや高容量のビタミンAの摂取が死亡率を高める可能性などを示唆、安易な摂取は避けるべきと警告した。教授らは唯一ビタミンDに関してはさらなる調査が必要としながらも、長年続いたサプリメントの健康効果に関する議論は終わったと結論付けた。グループの一人で医師のミラーは、CBSニュースに対し「健康になりたいのなら、効果のないサプリメントの浪費はやめ、果物野菜豆類ナッツ類、低脂肪の乳製品などの食品を食べて運動すべきだ」と語った[1][2]

またそれ以前からもサプリメントの効果は疑問視されており、アメリカ政府健康食品の安全性を検査していないことも問題視され、2013年秋には、フィラデルフィア小児病院が、安全性や効果を証明できないとして院内の薬局での健康食品やサプリメントの販売を全面禁止し、リスクを説明してもなお摂取を希望する患者の親には病院側の免責を認める証書への署名を義務付けしている[1][2]

アメリカでは1988年末から1989年6月にかけて昭和電工が製造した必須アミノ酸である「L-トリプトファン」を含む健康食品を摂取した人の血中に好酸球が異常に増加して筋肉痛発疹を伴う症例(EMS)が大規模に発生する事件が発生しており、アメリカ食品医薬品局(FDAのサイトによると、被害は1,500件以上、死者38名とされた[3]トリプトファン事件)。

アメリカ[編集]

アメリカでは医療保険制度が日本とは異なり、病気になると日本と比べて高額な医療費が必要となるため、日頃からの健康の維持に大きく関心が割かれ、薬よりも安いものも多いサプリメントが幅広く普及している。また、「健康の自由運動」(Health freedom movement)という、食品の効能の表示の自由や、サプリメントの使用の自由を健康のために求める運動が活発である。1910年代にビタミンが発見され、その後サプリメントとして消費されるようになった。しかし、上述の2013年の研究者らの論文により効果がないばかりか害がある可能性が立証されこうした風潮に警鐘を鳴らした[1]

連邦食品・医薬品・化粧品法[編集]

1938年、連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)が制定され、ラベル表示の誇大表現が取り締まられるようになった[4]

1950年代に、アメリカ食品医薬品局(FDA)が強硬姿勢をとるようになったため、サプリメント産業はNHF(全国健康連盟、National Health Federation)を組織しロビー活動を開始する[4]

1962年、FDAはサプリメントの表示ラベルに欠乏症でない場合には必要ないと表示するよう提案をしたが、NHFから4万通の抗議の手紙が届く[4]

1966年、FDAは1962年と同様の提案をもう少し弱めた表現で求めたが、今度は200万通以上の抗議の手紙が届いた[4]

1976年、食品・医薬品と化粧品条例が改正され、サプリメントを医薬品に分類することが禁止された。

1980年代には、ロック・フェスティバルレイヴスマートドリンクSmart drink)と呼ばれるビタミンやアミノ酸などが配合されたドリンクがアルコール飲料の代わりに飲まれたが、FDAはスマート(頭がよくなるという意味)という言葉を使用しないよう警告した[5]。また、この頃に生活習慣病と食事の関係がわかって食生活指針が策定され、こうした背景が今度は食品の効能表示を増やしていく。

栄養表示教育法[編集]

1990年、栄養表示教育法(NLEA:Nutrition Labeling and Education Act)が策定され、食品やサプリメントと病気予防の関連について申請し科学的根拠があると認定されたものについては、申請者でなくても効能を表示できるようになった。

また、同じ1990年には『頭のよくなる薬-スマート・ドラッグ』[6](原題 Smart drugs & nutrients)が出版され、スマートドラッグがマスコミで話題になりFDAの監視が強くなる[7]

1992年、NLEAに伴ってFDAのサプリメントのラベル表示の規制が進められようとしていたこの時期に、栄養療法を行っていたジョナサン・V・ライトのタホマ・クリニックに武装したFDA職員が押し入ったことが「ニューヨーク・タイムズ」に掲載された[8]。FDAはそこで使われている製品の安全性を懸念していたと弁解したが、サプリメントが医薬品として規制されるかもしれないという世論ができて反対活動が起こった[8]。同年、『頭のよくなる薬』のジョン・モーゲンサーラーは『Stop the FDA:save your health freedom』を出版して健康の自由を訴えた。オリン・ハッチ上院議員は健康の自由法(Health Freedom Act)の法案を提出したが、却下された。

1993年、FDAは「頭がよくなるということで承認された薬や食品はないので、このようなものが販売されないように動いている」ことを発表する[9]。NHF主導によって抗議活動が行われ、FDAに何十万通もの抗議の手紙が送られ、健康の自由をめぐって抗議活動が続いた[10]

栄養補助食品健康教育法[編集]

1994年、アメリカの連邦政府は「栄養補助食品健康教育法」(ディーシェイ、DSHEA:Dietary Supplement Health and Education Act)を可決し、サプリメントを「ビタミン、ミネラル、ハーブアミノ酸のいずれかを含み、通常の食事を補うことを目的とするあらゆる製品(タバコを除く)」と定義し、サプリメントにわかりやすいラベル表示を義務付けた。

サプリメントは、食品医薬品とは異なるカテゴリーにある。FDAの定義ではサプリメントは医薬品など治験により効果を実証されたものとは異なっているため、病気を治療するという主張はできない。しかし、DSHEAでは科学的根拠がなくてもなんらかの証拠があれば効能を表示できることになっており、医薬品ほどに厳しい品質基準を維持する義務もないため、製品の品質のばらつきも許容されている。このため効果を連想できるような表現が用いられる。DSHEAでチラシやパンフレットをラベルとみなすことを禁じ、FDAは製品の文面を製品ラベルとみなすように規定されている。パンフレットや書籍その他の広告は連邦取引委員会(FTC) が監視しているため、広告に関しては製品ラベルより規制が緩い。

また、DSHEAでは製品を発売する前に医薬品の治験のようにその成分の安全性を確認する必要はない。FDAは自ら定めた基準に基づき安全性に問題があると見られる製品について市場追放命令を出すことができる。FDAは商品製造工場や販売メーカーへの抜き打ち検査や消費者からのクレームの処理を行っている。詳細にわたって管理を行うとともに、基準に達していない場合や許可時と異なった配合などを行った場合には、製品の販売停止・業務停止を執行できる権限をもつ。故に、アメリカの栄養補助食品は日本国内で生産される製品に比べると、公的機関による「監視・検査」確率は非常に高い。それに対し、日本国内で製造される栄養補助食品は、事故が発生しない限り、製造・販売中止になる確率は極めて低い。FDAはこれら指導を行った内容についてインターネット上などで詳細な報告を行っており、消費者もそれらを容易に確認することができ、それら資料を購入前の判断の一つとして利用することが可能である。

アメリカ国立衛生研究所のODS(Office of Dietary Supplements)がDSHEAによって設置され、サプリメントのデータベースの公開や、査読制度のある雑誌の研究を基に有効性のあるサプリメントに絞って報告書「Annual Bibliography of Significant Advances in Dietary Supplement Research」[11]を作成している。

1997年、世界中のビタミンの価格に関与しているビタミン業界による価格カルテルが発覚した、刑事罰による罰金が全米史上最高の10億ドルとなった[12]

2004年11月、これまで効能表示の根拠の基準はなかったが、その基準が発表された。

適正製造基準[編集]

2007年6月、不純物や有害物質の混入を防ぎラベルどおりの内容物を含むという適正製造基準CGMP:Current Good Manufacturing Practice)[13]のラベル表示が義務付けられることが決定する。従業員規模によって猶予期間は2008〜2010年までとなる。

日本[編集]

1996年、日本ではアメリカの外圧により、市場開放問題苦情処理体制[14]でサプリメントが販売できるように規制緩和が決定された。

日本では狭義のサプリメントは健康食品と俗称され、法的には食品の区分に入れられているが、その位置づけをどうするのかという議論が続いている。

EU[編集]

EUでは、フードサプリメントfood supplement)の制度があり製品の品質に基準がある。このため区分としては日本での医薬部外品に近い。フードサプリメントでは錠剤やカプセルなど医薬品に近い形態の、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブなどが対象になっている。

国によって異なるが、在来の伝統約である西洋ハーブ(生薬)はハーバルメディスンとして医薬品の区分が用意されている国も多い。ハーバルメディスンは治験の承認の負担が軽い。

種類[編集]

  • 製法からの分類
    • 化学合成サプリメント
    • 天然素材を利用し化学合成したサプリメント
    以上2つは、基本的に成分表に書いてあるビタミンやミネラルのみが含まれる。
    • 天然の成分を抽出したサプリメント - 目的とする成分だけでなく成分が自然に存在する配合であったり、フラボノイドなどが含まれるため、好ましいとする意見もある。
  • 法的な分類
日本では、狭義のサプリメントは法的食品に分類される。
  • 特定保健用食品(トクホ) - 厚生労働省から認可を得ることで特定の保健用途における効能を表示することが可能である。ただし錠剤や粉末状のものは認可されない現状にあることからここに分類されるサプリメントは今のところ無い。
  • 栄養機能食品 - 12種類のビタミンと5種類のミネラルのいずれかが一定量含まれ、その栄養素の機能を厚生労働省に届出や申請なしに表示できる食品であり、2001年4月に創設された保健機能食品制度により規定される保健機能食品である。
  • 一般食品 - 上述以外の食品を指し、効果・効能を書くと薬事法違反となる。
  • 広義のサプリメント
広義のサプリメントは、人体が摂取する化学物質全般に対し用いられる。
  • 老化促進サプリメント - タバコによる有害物質の摂取は、体内の活性酸素を増加させ老化を促進することから、「老化促進サプリメント」と呼ばれる[15]

代表的なサプリメント[編集]


参考文献[編集]

  • マリオン・ネスル 『フード・ポリティクス-肥満社会と食品産業』 三宅真季子・鈴木眞理子訳、新曜社、2005年。ISBN 978-4788509313。原著 food politics, 2002(第4部 サプリメントの規制緩和)

脚注[編集]

  1. ^ a b c d livedoorニュース BLOGOS「サプリメントは効果なし」米医学誌がバッサリ 2013年12月20日 12:49
  2. ^ a b Annals of Internal Medicine 2013.12.17
  3. ^ Wikipediaトリプトファン事件
  4. ^ a b c d マリオン・ネスル 『フード・ポリティクス-肥満社会と食品産業』 三宅真季子・鈴木眞理子訳、新曜社、2005年。ISBN 978-4788509313。284-287頁
  5. ^ B・ポッター、S・オルファーリ 『ブレイン・ブースター-頭をよくする薬、ビタミン、栄養素、ハーブ』 オークラ出版、1999年10月。ISBN 978-4872785203。131-133、176-177頁。原著:brain boosters 1993
  6. ^ ウォード ディーン、ジョン モーゲンサーラー 『頭のよくなる薬-スマート・ドラッグ』 第三書館、1994年5月ISBN 978-4807494071。原著 Smart drugs & nutrients 1990
  7. ^ B・ポッター、S・オルファーリ 『ブレイン・ブースター-頭をよくする薬、ビタミン、栄養素、ハーブ』 オークラ出版、1999年10月。ISBN 978-4872785203。196頁。原著 brain boosters 1993
  8. ^ a b B・ポッター、S・オルファーリ 『ブレイン・ブースター-頭をよくする薬、ビタミン、栄養素、ハーブ』 オークラ出版、1999年10月。ISBN 978-4872785203。193-194頁。原著 brain boosters 1993
    マリオン・ネスル 『フード・ポリティクス-肥満社会と食品産業』 三宅真季子・鈴木眞理子訳、新曜社、2005年。ISBN 978-4788509313。303-305頁
  9. ^ Using 'Smart' Drugs and Drinks May Not Be Smart(April 1993)(英語)(FDA)
  10. ^ マリオン・ネスル 『フード・ポリティクス-肥満社会と食品産業』 三宅真季子・鈴木眞理子訳、新曜社、2005年。ISBN 978-4788509313。311-313頁
  11. ^ Annual Bibliographies of Significant Advances in Dietary Supplement Research(ODS - Office of Dietary Supplements)
  12. ^ Tearing Down The Facade of 'Vitamins Inc.' (he New York Times, October 10, 1999)
  13. ^ FDA Issues Dietary Supplements Final Rule(英語)(FDA)
  14. ^ 基準・認証制度等に係る市場開放問題についての対応(平成8年3月26日)(市場開放問題苦情処理体制)
  15. ^ [1]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]