生活習慣病

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

生活習慣病(せいかつしゅうかんびょう、英:lifestyle related disease,仏:maladie de comportement,独:Zivilisationskrankheit)とは、糖尿病脂質異常症高血圧高尿酸血症など、生活習慣が発症原因に深く関与していると考えられている疾患の総称である。このような疾患と肥満を複合する状態を、医学的にメタボリックシンドロームと総称する。また、がん脳血管疾患心臓病の3大死因も生活習慣との関わりが強い。肥満はこれらの疾患になるリスクを上げる。

かつては加齢によって発病すると考えられたために成人病(せいじんびょう)と呼ばれたが、長年の生活習慣が深く関与していることが判明してきた。このため、1997年頃から予防できるという認識を醸成することを目的として導入されるようになった[1]。しかし、現在でも呼称として成人病センターや保険の成人病特約などのように広く残っている。 成人病という概念は、昭和30年代に「主として、脳卒中、がん、心臓病などの40歳前後から死亡率が高くなり、しかも全死因の中でも上位を占め、40~60歳くらいの働き盛りに多い疾病」として行政的に提唱されたものといわれる。がん、脳卒中、心臓病は「3大成人病」とされ、集団検診による早期発見、早期治療の体制が進められた。

しかし、生活習慣の激変により、成人していない子どもが糖尿病を発症するというようなケースが増えている。

目次

[編集] 現状

2006年(平成18年)の死因の割合を見ると、がん、心臓病、脳血管疾患の3大死因で58.2%を占めている[2]

10大死因 (平成18年 人口動態統計)
死因 割合
悪性新生物(がん) 30.4%
心疾患 16.0%
脳血管疾患 11.8%
肺炎 9.9%
不慮の事故 3.5%
自殺 2.8%
老衰 2.6%
腎不全 2.0%
肝疾患 1.5%
慢性閉塞性肺疾患 1.3%

心臓病と脳血管疾患のような主要な死因の下地になる病気は、糖尿病・脂質異常症・高血圧・高尿酸血症である。また、喫煙は上位4死因すべての危険因子であり、「予防可能な最大の死因」とされている。

生活習慣病の推定有病者数(平成14年)
高血圧症 約3,100万人
高脂血症 約3,000万人
糖尿病 約740万人

2002年(平成14年)の調査では、人口のほぼ半分に相当する47%がこの三つのいずれかに該当するとされる[3]

痛風は男性に集中しており、患者数は推定30~60万人、その予備軍である高尿酸血症は成人男性の20%とも言われる[4]。発症年齢もかつては50代だったのが30代へと若年化している。

肥満は中年以降に多く、2006年には40~70代の男性で30%以上、女性では若干少なく20~30%が肥満である[5]。肥満は3大死因を含めたこれらの疾患のリスクを上げる。

[編集] 対策

生活習慣病は、日本で発生している重大な病気である。 かつて成人病と呼ばれたように20代から30代の人々の間で多い 総じて、いわゆる「食生活の欧米化[6]」や、運動不足、タバコの煙が強く関連している。

食生活を見ると、炭水化物の摂取量が減少し、それを埋め合わせるための動物性食品や脂っこく甘い菓子や甘い飲料の消費量の増加が原因とされる。また塩分の摂取過剰、野菜の摂取不足なども原因とされ、このような食生活の状況を改善することを目的として「食生活指針」や「食事バランスガイド」などが策定されている。

食生活はがん発生原因の30%に関わっているとする報告もあり、食の欧米化との関連性が強いのは乳房や前立腺や大腸のがんであると考えられている[7]。タバコもがん発生原因の30%に関わっているとされ、もっぱら肺がんに関連しているが口腔や尿路のがんの主要な原因でもある[8]財務省日本たばこ産業の株の半数以上を保有しているため、喫煙規制や禁煙に関する動きが進みにくかった[9]

健康日本21」では、食生活、運動、タバコなどの項目について一次予防に重点に置いて目標値を定め実行を推進している。

2003年には、アメリカとカナダの栄養士会は合同で、牛乳や卵も摂取しない完全な菜食においても栄養が摂取でき、また菜食者はがん、糖尿病、肥満、高血圧、心臓病といった主要な死因に関わるような生活習慣病のリスクが減る、認知症のリスクも減ると報告している[10]

生活習慣病予防週間
厚生労働省主催で、特に脳卒中が多発する時期である寒冷期の2月1日から2月7日に実施される。

[編集] 死亡のリスク

スウェーデンにおける32年の追跡調査[11]によれば、生活習慣(病)による全死亡リスクは:

  1. 喫煙 : 1.92倍
  2. 糖尿病 : 1.64倍
  3. 高血圧 : 1.55倍
  4. メタボリック症候群 : 1.36倍
  5. 高コレステロール血症 : 1.10倍 

このように喫煙が最大のリスクとなるため、生活習慣病対策は禁煙を最優先とするべきだとの医療界からの意見[12]がある。

[編集] 脚注

  1. ^ 生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について(意見具申) (厚生省)(現・厚生労働省)
  2. ^ 平成18年 人口動態統計(確定数)の概況 (厚生労働省)
  3. ^ 生活習慣病健診・保健指導の在り方に関する検討会 第1回資料 (厚生労働省)
  4. ^高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン ダイジェスト版』日本痛風・核酸代謝学会、2002年9月。ISBN ISBN 4-901935-02-X
  5. ^ 平成17年 国民健康・栄養調査結果の概要について (厚生労働省)
  6. ^ 図録▽生活の変化(1910年代以降の品目別純食料・たんぱく質供給量) (社会実情データ図録)
  7. ^ 食生活とがん:がん情報サービス (国立がんセンター)
  8. ^ 喫煙とがん:がん情報サービス(国立がんセンター)
  9. ^ 渡邊昌『食事でがんは防げる』 光文社、2004年4月23日。ISBN 978-4334974411。198-199頁。
  10. ^ Position of the American Dietetic Association and Dietitians of Canada "Vegetarian diets" Journal of the American Dietetic Association Vol.103 Issue.6, June 2003, pp748-765.
  11. ^ Sundström J, Risérus U, Byberg L, Zethelius B, Lithell H, Lind L. Clinical value of the metabolic syndrome for long term prediction of total and cardiovascular mortality: prospective, population based cohort study. BMJ. 2006 Apr 15;332(7546):878-82. Epub 2006 Mar 1.
  12. ^ 作田學杏林大学神経内科学教授「健康日本21中間評価報告書(案)に対する意見」2006年9月1日

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク