たばこ

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たばこ(たばこ)は、ナス科タバコ属の栽培種の葉を嗜好品に加工した製品である。日本の法令上は「タバコ属の植物」を「たばこ」といい(たばこ事業法2条1号)、「たばこの葉」を「葉たばこ」(たばこ事業法2条2号)という。そして、「葉たばこを原料の全部又は一部とし、喫煙用、かみ用又はかぎ用に供し得る状態に製造されたもの」を「製造たばこ」と呼ぶ(たばこ事業法2条3号)。本項では、製造たばこについて記述する。

噛みたばこ[編集]

噛みたばこは直接タバコの葉を含む混合物を噛むことにより風味を楽しむものであり、タバコの楽しみ方としては最も古い方法である。北米大陸のインディアンは、ライムの葉とともに用いている。火気厳禁である場所、たとえば船倉、鉱山、森林などで用いられた。

タバコの葉と石灰などを共に口に含み使用し、唾液は飲み込まず排出する。西部劇などで見られる痰壷はこれを吐き出すためのものである。唾液を飲み込むとニコチン中毒を起こす危険性があり、唾液中のニコチンは水に溶けた状態なので吸収が早く中毒症状も重い。また、口の粘膜から直接成分を吸収する結果、口腔がん及び咽頭がんの大きな要因になるとして問題視されつつある。

現在ではタバコの葉と石灰の組み合わせのほかにさまざまなハーブなどを組み合わせたものや、子供向けの甘味料と香料を多く含んだグトゥカー、ハーブだけで構成されたパーンと呼ばれる製品もある。インド東南アジアなどが主要な産地である。

かつては世界的に噛みたばこの使用は一般的であったが、公共の場でつばを吐くという行為が不衛生であり、マナーの観点からも好ましくないことで、徐々に紙巻きたばこに需要が移った。また、昨今の禁煙の風潮と相まって、需要は減少傾向にある。

煙を吸引することによる肺活量の低下がないことで、米国メジャー・リーグの選手に噛みたばこを愛用する者が多く、試合中グラウンドやベンチ内でヤニを吐く光景がよく見られる。米国がん協会1998年2003年の調査によれば、36%の大リーガーが噛みたばこを愛用している。しかし、健康面での問題がクローズアップされるにつれ、大リーグでの噛みたばこ使用に厳しい目線が向けられるようになり、現在はマイナーリーグで徹底した禁煙教育が行われるようになっている[1]。一方、大リーグでは禁止に至っておらず、2010年には米下院の公聴会で大リーグでの使用禁止の是非が議論された。殿堂入り選手のトニー・グウィンは、2010年唾液腺ガンが判明した際に、現役時代に愛用していた噛みたばこが原因ではないかと語った[2]。日本のプロ野球においてもアメリカ出身の選手に愛用者が多かったが、今ではほとんど見られなくなった。

日本では「煙も出ない、人に迷惑をかけることがないたばこ」であるとして普及の動きがあったが、日本人の舌に合わないせいもあって定着しなかった。2000年代にはガムタイプのファイアーブレイクが発売されたが、2009年に製造が終了した。

嗅ぎたばこ(スナッフ)[編集]

スコットランド嗅ぎたばこ
北欧嗅ぎたばこ・スヌース
ゼロスタイル・ミント

嗅ぎたばことは、着火せずに香りを楽しむたばこである。タバコの粉末を鼻孔の粘膜などから摂取する。嗅ぎたばこおよびそれを摂取する行為は「スナッフ」と呼ばれる。口腔がんのリスクを高める。煙を嗜む喫煙よりもその歴史は古いが、日本においてはあまり普及していない。

大きく下記の5種類に分類される。

スコットランド嗅ぎたばこ (Scotch snuff
乾燥させてすりつぶしたタバコの粉末に香りをつけたもの。少量を鼻に吸引させ、鼻をつまみ鼻粘膜にすりこんで楽しむ。
アメリカ嗅ぎたばこ (American snuff
甘い味付けと辛い味付けの2者が主流で、香りや味は様々。湿った粉末様、若しくは細粒様(ロングカット)の物を歯茎に塗って楽しむ。また、次の北欧嗅ぎたばこと同じく上歯茎と上唇の間に置いて楽しむ。
北欧嗅ぎたばこ(スヌース)(snus
主にスウェーデンで生産されている。ルーズ(粉末)タイプとポーション(小袋入り)タイプの2種類がある。ルーズタイプは湿っており、指で口紅や玉のような形状にするか、ポーショナーと呼ばれる道具を使って上歯茎と上唇の間に置く。ポーションタイプは乾燥させたスヌースが入っている物と、少し湿らせたのが入っている物がある。使用法はルーズタイプと同じ。
ゼロスタイル・ミント (zero style mint
タバコ葉が入ったカートリッジをパイプにセットして口から吸引する。JT独自の商品。
ニコチンフリー嗅ぎたばこ (nicotine free snuff or snus
タバコ葉を使用していない。ハッカやミントの粉末が主成分。使用法は上記のスコットランド嗅ぎたばこや北欧嗅ぎたばこと同じ。

基本的に、5g - 10g程度のケースなどに入れられて販売されており、細かな粉末を鼻から吸引する。親指と人差し指で粉末をつまみ吸引する他、手の甲の親指、人差し指の付け根のくぼみに適量(一つまみほど)のスナッフを載せ、鼻から吸引するのが一般的な嗅ぎたばこの摂取法である。この三角形の窪みは解剖学の分野で「解剖学的嗅ぎ煙草入れと呼ばれている。

タバコの粉末の入った小袋を歯茎と上唇の間に挟み、歯茎からニコチンを吸収する喫煙(摂取)は「スヌース」と呼ばれる。小袋に入った状態で販売されているのが一般的だが、粉を直接歯茎と唇の間に挟む摂取法もある。いずれにせよ喫煙とは異なり手、鼻、頬などにタバコの粉末が残りやすいことに加え、「粉末を鼻から吸引する」という行為は麻薬の摂取方法としてもよく知られているために大きな誤解を受けやすい行為であるので注意が必要である。ドラマなどで、嗅ぎたばこの吸引がミステリアスさを醸し出すスパイスとして用いられることがある。

JTのゼロスタイル・ミントは、嗅ぎたばこに馴染みのない日本人に向けた商品で、口から吸い込んで、通る空気を吸い込む。上記の欠点は改善されている。

煙草のケース同様、嗅ぎたばこの粉末ケース(鼻煙壷)にも装飾が施されたものがあり、世界的にコレクターもいる。ディクスン・カーには「皇帝のかぎ煙草入れ」というミステリー小説がある。

喫煙方法と種類[編集]

「葉巻きたばこ」と「刻みたばこ」の2種に大別される。葉巻きたばこはタバコの葉を刻まずに丸めたもので、刻みたばこをタバコの葉で巻いたものも存在する。刻みたばこはその形態によって、さらにいくつかに分類される。

葉巻きたばこ[編集]

葉巻4種

葉巻きたばこはもっとも原始的なたばこの形態であり、乾燥し発酵させたタバコの葉を巻いて作られている、発祥はメソ・アメリカ文明からと言われ、元々は先住民族間の交流(回し呑み)や、土地の精霊への祖霊祭などに用いられたものを、16世紀からの大航海時代において大陸上陸した貿易商人により古くから貿易品として利用されてきた。

種類は大きく分けて、湿度管理の必要なプレミアムシガーと管理の必要のないドライシガーがある。フィラーは一枚葉を束ねたものを使用する「ロングフィラー」が主流だが、最近は刻みたばこ状にした「ショートフィラー」も出回っている。

刻みたばこ[編集]

刻んだタバコを、紙に巻くか、器具に詰めて喫煙する。

紙巻きたばこ[編集]

一般的な紙巻きたばこ

一般にたばこという場合、これを指す。シガレットとも呼ばれる。パイプ等の喫煙用具を必要とせず着火すればそのまま吸えるので、喫煙者に広く普及している。手軽な反面、必ずフィルター部分を中心に一定量の廃棄部分が発生するためポイ捨てされることも多い。1本あたりの平均的な燃焼時間は3~5分程度で、概ね半分から2/3程度吸ったら火を消して、吸殻として捨てる。火のついた先端は非常に高温で800度近くにもなるので、扱いには注意を要する。紙巻き煙草の税率が高いEUでは、あらかじめ長い煙草を作り、自分で切ってさや紙に詰める製品もある(ドイツのStax Trio Zigaretten等)。

手巻きたばこ[編集]

紙巻きたばこに対し高額な税金が課されている欧州などの国では、刻みたばことシガレットペーパーを別々に購入し、自分で手巻きして喫煙する方法も行われる。手巻き方法は、シガレットペーパーを一枚取りだし、折り目に刻みたばこを摘んで並べる。舌でシガレットペーパーの糊付け部分を湿らせて筒状に丸める。人によってはフィルターを吸引口に装着したり、添加物を加えることもある。

喫煙具[編集]

パイプ[編集]

イタリア・サビネリ社製のパイプ

ブライヤトウモロコシの軸、セピオライト(海泡石=メシャム)などを加工したものに樹脂製の吸い口を取り付け作られる。主にアメリカヨーロッパ等で使われる喫煙具。香料を加えて作られた専用の刻みたばこ(香料不使用のものもあり)をボウルに詰めて着火し吸う。欧州では19世紀ごろまでは、労働者等の大衆の喫煙方法とされていた。紙巻きに比べタバコを味わうのに向いている。火が消えやすく、快適に喫煙するにはタバコ葉の詰め方も含めて技術を要する。葉の分量はおおむね2~3グラム(紙巻きたばこ2~4本程度)。紙巻きたばこと違って、吸った煙は肺に入れず、ふかすようにして口腔粘膜からニコチンを摂取する。時間当たりのタバコ葉消費量(燃焼量)は紙巻きの数分の一になるが、フィルターを使わないことが多く、そのぶん濃くなるので紙巻よりも弱くゆっくり吸うためである。パイプを1時間程度かけて一服することにより、紙巻きたばこ10本程度をチェーンスモーキングする程の充足感が得られるとも言われる。場合によっては非常に経済的な喫煙方法であるが、喫煙具自体が高価なことが多く、数千円からハンドメイドのものは数十万円するものもある。各種のデザインのものが売られておりコレクションをする人も多く、趣味性の高い喫煙方法と言える。

水たばこ[編集]

エルサレムのバザーに陳列された水パイプ

水パイプ、水キセル、シーシャとも呼ばれ、タバコ煙を水にくぐらせた後、極めて長い煙路を経て吸引する。タール分や一酸化炭素を主に、多くの煙に含まれる成分が水に溶けて省かれ、また煙温も低下するので、煙および(不可視な)燃焼ガスに一定の成分変化があるとされている。トルコなどの中東方面で用いられる大型のものから、中国などアジアで見られる小型のものまでさまざまあり、日本でも吹きガラス製の水パイプなどが存在している。この喫煙に使った後の廃水は非常に有害である。また、吸い口が直接本体に付いているものは梵具(ぼんぐ)と呼ばれる。こちらは煙路は短い。どちらも実験器具洗気瓶と同じ構造である。

煙管[編集]

煙管(キセル)は日本朝鮮中国で見られる喫煙具。パイプをまねて作られた。雁首、羅宇(らお)、吸口から構成され、雁首の火皿に刻みたばこを詰め、着火する。本来、一息で吸いつくすもので、燻らせるものではない。日本では江戸時代の喫煙は大半がキセルによるものだった。一般的に紙巻きやパイプたばこよりも、葉の刻み方が細かい。一服あたりの平均燃焼時間は2~3分程度だが、使うタバコの葉の量は紙巻たばこの1/4程度に相当で、人によっては(本来の喫煙法ではないが)、紙巻きたばこの吸殻(俗にシケモクと呼ばれる)をこれに詰めて吸う人もいる。しかし2000年代以降、日本国内での愛用者は大幅に減少し続けている。

脚注[編集]

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  1. ^ なぜプロ野球選手は「タバコ」がやめられないのか? (4/4) Business Media 誠 2013年3月7日
  2. ^ David Brown (2010-10-09), Tony Gwynn suspects his cancer comes from chewing tobacco, Yahoo!Sports (英語), 2010年10月11日閲覧

外部リンク[編集]