リスク

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リスク (risk) の定義にはさまざまあるが、一般的には、「ある行動に伴って(あるいは行動しないことによって)、危険に遭う可能性や損をする可能性を意味する概念」と理解されている。

日本語ではハザード (hazard) とともに"危険性"などと訳されることもあるが、ハザードは潜在的に危険の原因となりうるものすべてをいい、リスクは実際にそれが起こって現実の危険となる可能性を組み合わせた概念である。ゆえにハザードがあるとしてもそれがまず起こりえないような事象であればリスクは低く、一方確率は低いとしても起こった場合の結果が甚大であれば、リスクは高いということになる。

目次

[編集] 語義

[編集] 経済学上のリスク

経済学においては一般的に、リスクは「ある事象の変動に関する不確実性」を指し、リスク判断に結果は組み込まれない。例えば、ビルの屋上の端に立つのは危険であるが、まだ転落するか無事であるかは分からない。この状態はかなり不確実でリスクが高い。しかし、一旦転落すれば十中八九命がないとすれば、転落直後にリスクが低下することになる。

リスクの概念は、経済学の中でも金融理論においてよく用いられる。投資において、将来の収益が必ずしも確実といえない投資手段があるためである。投資におけるリスクは、分散投資を行うことによって低減させることが可能である。株式投資を例に取ると、単一銘柄に投資を行っている場合、その企業の持つ固有リスクのために、期待される収益を得るに当たっての不確実性が高い。しかし、投資先を分散することによって企業固有のリスクを和らげることができる。投資先を可能な限り分散し、固有リスクを分散することによって、投資によるリスクは市場リスクに近づけることができる。株式投資の例に戻ると、市場リスクとは、例えばTOPIXのような市場平均を指す。


利得がある不確実性アップサイドリスク、損失する不確実性をダウンサイドリスクと呼ぶ。

リスクが高いものは損失と利得の度合いが元本に対して高くなる。そのため、高い利得を得たい者は、損失する可能性を覚悟しなくてはならない。金融工学はここに目をつけ、統計学などを利用することで、ダウンサイドリスクを低減しアップサイドリスクをより高めることを目指している。

主なリスクの種類として、価格変動リスクデフォルトリスク流動性リスクインフレリスク等があげられる。

[編集] 物のリスク

物のリスクは、物(物質物品)にかかわって、その周辺物(生態有形財産)が実際に被る可能性がある悪影響の大きさを示し、必ずマイナス・イメージである。プラス・イメージについてあわせて議論するときにはベネフィットという語とともに使われる。

リスク概念は「安全」概念の定義と結びつけてはじめてその概念と背景にある思想が理解できる:

 安全とは、リスクが小さいことである。

この背景には、リスク・ゼロ追求は現実的な安全追求の姿勢でないという反省がある。 の不適切な取扱いの結果、周りに、その物固有の危険性が影響を及ぼして、悪い事象(危害、損傷、損害等)が出現した時、リスクが現実となってしまうことがありうる。ここで物質又は物品の場合がある。また、周りとして、生態有形財産の場合がある。この周りの一つとして社会を考える場合もある。ここでの危険性には、いわゆる(狭義の)危険性有害性の両方を含むため、これをはっきりさせるために危険有害性という用語が使われる場合も多くある(英語のen:hazardが元であるので、ハザードというカタカナ表記も使われる。)。

つまり、物のリスク評価(risk assessment)を実施するときには、

  • 1a 物固有の危険性を特定し、その程度を評価し(危険性評価hazard assessment)、
  • 1b その物が取り扱われている(取扱い)状態を特定し、その周り(人、生態、有形財産等)との接触(暴露等)の頻度、範囲、量等を評価し(暴露評価exposure assessment)、
  • 2 その組み合わせで実際に悪い事象の出現する可能性とその大きさを見積もり、その結果が不当に大きいかどうかを判断する(リスク判定risk characterisation

ことになる。

安全」概念を再定義すると:

 [要出典]安全とは取扱う物質の固有の危険性が低いか、取扱う周辺との接触・暴露が小さいことである。

ということになる。毒物学薬学の父であるパラケルススの「すべての物質は毒である。毒でないものない。量によって毒と薬に区別される」との言はまさにこれを示している。


物固有の危険性

  1. 機械危険性: 物品の持つ機械的特性に基づく危険性。鋭利な刃先(裂傷にかかわる)、回転機械(巻き込まれ事故に係わる)等。
  2. 物理危険性: 物の持つ圧力など物理現象に基づく危険性。特に、燃焼性、爆発性が問題となる。
  3. 健康危険性: 物質の持つ人の生命および健康に係わる有害性。急性毒性慢性毒性発癌性感作性アレルギー)、生殖毒性変異原性等。
  4. 環境生態)危険性: 物質の持つ地球環境や人以外の動植物に係わる危険有害性。オゾン層破壊物質温暖化物質; 水棲生物に対する急性・慢性毒性。陸棲生物に対する急性・慢性毒性等。

2から4についての多くはGHSによる分類と表示の国際的調和作業が進行中である。これにより危険性を類型的に処理することができるようになり、対策立案も容易になる。国際的にはこのGHSの原型ともいえるRTDGに基づいて航空輸送、海上輸送、陸上輸送の安全対策が立てられている(ただし、日本の陸上輸送の安全は国際基準に基づいていない)。

リスク削減-もっと安全を

このように考えることによって、リスク判定の結果「不当にリスクが大きい」、つまり、安全の程度が低すぎるとされた場合、どうやって安全を確保するかという課題を解決する(リスク軽減策を立てる)上で整理がしやすくなる。つまり、

  • 1a 物の持つ固有の危険性を低くする。たとえば、鋭利な部分を取り除く、切れにくくする/切れやすくする、不燃剤を混ぜる、粒子のサイズを大きくする(細かいものは粉塵爆発を引き起こす、肺の奥のほうにまで到達して悪影響を与えるなどのリスクがある)、危険有害性の低いものに替える等々。
  • 1b 取扱い手順を見直す、たとえば、切れにくい刃物はそのまま使用せず砥いでから使用する手順とする; 換気を行う(湯沸し器による一酸化炭素中毒); 取り扱うものに合った手袋や眼鏡や前掛け等を使用する; スプレー缶は穴を開けてから捨てる; そしてなによりも取り扱う物の特性(特に危険性)をよく理解する、あるいは、GHSの目的に挙げられているように、その理解に必要な情報をわかりやすく提供する等がある。

[編集] 工学上のリスク

工学においては、リスク (risk) とは、一般的に「ある事象生起の確からしさと、それによる負の結果の組合せ」をいう (JIS Z8115: 2000)。この場合、リスクの対象は限定されない。

一例として人体もしくは財産等に対するリスクに危害リスク (risk of harm) といった危害発生の確からしさ、危害の厳しさの1つの組合せなどのリスクがあり、リスクには事象が顕在化することから好ましくない影響ごとが発生されること、その事象がいつ顕在化するかが明らかではない発生不確定性があるという性質が含まれる。

[編集] システムにおけるリスク

システムにおけるリスクは、経済学と違いより良い結果が出ることはリスクとならない。損失の可能性があるものだけがリスクとみなされる。その意味では不確実性ではなく、確実な危険性といえる。


[編集] 用語

[編集] リスクモデル

リスクは、危害の源(ハザード)と危害が広がる経路、および発生の重大性であるため、これらを数値化し、掛け合わせたものがそのリスクの値となる。

[編集] その他

リスクを制御するための一連の行為を総称してリスク管理と呼ぶ。1995年の阪神・淡路大震災地下鉄サリン事件などにより日本のリスク管理の甘さが指摘された。

リスクに関する研究は現象論的アプローチ、政策論的アプローチ、経済学的アプローチなど、学際的にさまざまな方面から行われている。

不確実性は、対象に対する完備情報完全情報を持っていないことから生じる。

語源として、イタリア語で「リスク」は「勇気を持って試みる」ことを意味し、日本を含めたほとんどの国で使用される「リスク」とは逆の意味を持つことになる。

[編集] 関連語

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク