ビタミンC

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L-アスコルビン酸
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IUPAC名 2-オキソ-L-スレオ-ヘキソノ-1,4-ラクトン-2,3-エネジオール

もしくは

(R)-3,4-ジヒドロキシ-5-((S)- 1,2-ジヒドロキシエチル)フラン-2(5H)-オン
別名 ビタミンC
分子式 C6H8O6
CAS登録番号 [50-81-7]
融点 190–192 °C

ビタミンC (Vitamin C、VC) は、水溶性ビタミンの1種。生体の活動においてさまざまな局面で重要な役割を果たしている。化学的にはアスコルビン酸L体のみをさす。

目次

[編集] 機能

ビタミンCは、コラーゲンの合成に深く関与している。プロリンリジンを含めた形でコラーゲンタンパク質が合成され、タンパク鎖が形成された後で酸化酵素によりプロリン・リジンがそれぞれヒドロキシ化を受けてヒドロキシプロリンヒドロキシリジンに変化し、これらは水素結合によってタンパク鎖同士を結び、コラーゲンの3重螺旋構造を保つ働きがある。またこの反応の際にはビタミンCを補酵素として必要とするため、ビタミンCを欠いた食事を続けていると正常なコラーゲン合成ができなくなり、壊血病を引き起こすものである[1]

ビタミンCは、水溶性で強い還元能力を有し、スーパーオキシド(O2-)、ヒドロキシラジカル(・OH)、過酸化水素(H2O2)などの活性酸素類を消去する[2]。ビタミンCの過酸化水素の消去は、グルタチオン-アスコルビン酸回路によって行われる。この回路に代表されるように、ビタミンCがデヒドロアスコルビン酸に酸化されても各種酵素によりビタミンC(アスコルビン酸)に還元・再生されて触媒的に機能する[3]

ビタミンCは、ビタミンEの再生機能がある。活性酸素等のフリーラジカルはDNAタンパク質を攻撃し、また、脂質を連鎖的に酸化させる[4]。ビタミンEは、脂質中のフリーラジカルを消失させることにより自らがビタミンEラジカルとなり、フリーラジカルによる脂質の連鎖的酸化を阻止する。発生したビタミンEラジカルは、ビタミンCによりビタミンEに再生される[5][6][7]

その他のビタミンCの機能としては、生体異物を代謝するシトクロムP450の活性化、チロシンからノルアドレナリンへの代謝(ドーパミンヒドロキシラーゼ)、消化器官中で鉄イオンを2価に保つことによる鉄の吸収の促進、脂肪酸の分解に関与するカルニチンリジンから生合成される過程のヒドロキシ酵素の補酵素としての参画、コレステロールをヒドロキシ化し7α-ヒドロキシコレステロールを経た胆汁酸の合成等の様々な反応に関与している[8][9][10]

[編集] 摂取

ヒトはアスコルビン酸を体内で合成できないため、必要量をすべて食事などによって外部から摂取する必要があり、ビタミンとして扱われている。一方、多くの動物にとっては、アスコルビン酸は生体内で生合成できる物質であるため、必ずしも外界から摂取する必要は無い。体内でアスコルビン酸を合成できないのは、ヒトを含むサル目の一部やモルモットなどだけである。

[編集] 推奨量

成人の1日あたり摂取量としての厚生労働省による推奨量(RDA)は100mgである[11]。この値を下回ると、各種欠乏症状が現れる可能性がある。

[編集] 欠乏症

ビタミンCを含まない食事を約60~90日間続けた場合、体内のビタミンCの蓄積総量が300 mg以下になり、出血性の障害をもたらす壊血病を発症すると言われている[12]

動物実験では、壊血病を発症しない程度のビタミンCの欠乏で老化が進行し、これをヒトに換算すると1日に2.5mgのビタミンCしか摂取しない期間が約3年間続くと老化が速く進行し、死亡する人が出てくる可能性があると報告されている[13]

[編集] 過剰摂取

余剰のビタミンCは尿中に排出されるため、食品に含まれるビタミンCが害をもたらすことはまず考えられないが、(ビタミン剤などで)数グラムレベルで大量に摂取すると下痢を起こす可能性がある。さらに、大量のビタミンCを長期間経口摂取し続けた場合、ビタミンCは酸性であるためを痛めるおそれがある。体内でビタミンCの一部がシュウ酸に代謝されるとして、生成されたシュウ酸塩結晶により腎臓が損傷することで腎不全を発症すると考えられる[14]。また、過剰摂取は尿路結石の発生につながるとする説がある[15](ビタミンCと結石の関係については諸説あり、見解が分かれている)。 腎臓移植を受けた31歳の女性での続発性シュウ酸症の症例が報告されている[14]

[編集] サプリメント

ビタミンCを摂取するための補助食品もよく利用されている。ビタミンCは壊血病の予防の他、鉄分カルシウムなどミネラルの吸収促進(鉄過剰の原因になることもあり、注意を要する)、傷の治癒にも利用される。また、風邪インフルエンザ、その他の感染症に対してアスコルビン酸粉末などとして医薬品と併用される。その理由としては、これらのストレスや治癒に際してはアスコルビン酸の要求量が増大するからというものである。

ビタミンC錠剤を飲むよりビタミンC入りのガムを噛んだ場合、血中のビタミンCの上昇が速やかに起こり、また吸収量が多いことが分かった[16]

[編集] 含有食品

多くの食品サプリメントにおいて、「レモン何個分のビタミンC」という表現が用いられるが、このとき「レモン1個分のビタミンC」は 20mg に換算される。この表記は農林水産省によって昭和62年に制定された「ビタミンC含有菓子の品質表示ガイドライン」によるものであるが、ビタミンCが主成分であるビタミン添加菓子を対象とするものであり、それ以外の食品サプリメントに対して用いることは適当でない。また、このことから「レモンはビタミンCを豊富に含む果物である」と誤解されがちだが、実際には同じ柑橘類であるグレープフルーツやユズよりも含有量は低い。

レモン・ライムオレンジグレープフルーツなどの柑橘類のほか、アセロラキウイフルーツトマトはビタミンCの含有量が非常に多い。その他にビタミンCの多く含まれる食品としては、グァバパパイヤブロッコリー芽キャベツブラックベリーイチゴカリフラワーほうれん草マスクメロンブルーベリーパセリジャガイモサツマイモなどがある。

ビタミンCそのものは強い癖のある味であるが、食品に含まれる程度の量では食品の味にはあまり影響しない。しかしながら柑橘類でもすっぱい物のほうが含有量は多い傾向にあるため「酸味の強い果物ほどビタミンCが豊富だ」と思われがちだが、実際にはそれらの酸味の多くはクエン酸によるものである。上に挙げたように酸味がまったくないにも関わらず豊富なビタミンCを有している食品が多いのはこのためである。

[編集] 歴史

1920年ドラモンドオレンジ果汁から還元性のある抗壊血病因子を抽出し、これをビタミンCと呼ぶことを提案した。 1927年にはセント-ジェルジウシ副腎から強い還元力のある物質を単離し、「ヘキスロ酸」として発表したが、1932年にこれがビタミンCであることが判明した。1933年ハースによってビタミンCの構造式が決定されてアスコルビン酸と命名され、1933年にはライヒシュタイン有機合成によるビタミンCの合成に成功した。

[編集] ビタミンC合成能を失った動物種

L-グロノラクトンオキシダーゼ(ビタミンC合成酵素)遺伝子の活性は、いくつかの進化史のなかでそれぞれ独立に失われている。哺乳類ではテンジクネズミ直鼻猿亜目霊長類がこの遺伝子の活性を失っており、そのためにビタミンCを合成できないが、その原因となった突然変異は別のものである。どちらの系統でも、活性を失った遺伝子は多数の変異を蓄積しつつ、偽遺伝子として残っている[17]スズメ目鳥類では、活性の喪失が何度か起こっており、またおそらくは再獲得も起こったために、種によってビタミンC合成能力が異なる。他に、コウモリ類もこの遺伝子の活性を失っている[18]

霊長目でこの酵素の活性が失われたのは約6300万年前であり、直鼻猿亜目(酵素活性なし)と曲鼻猿亜目(酵素活性あり)の分岐が起こったのとほぼ同時である。ビタミンC合成能力を失った直鼻猿亜目にはメガネザル下目真猿下目サル類人猿ヒト)を含んでいる。ビタミンC合成能力を有する曲鼻猿亜目には、キツネザルなどが含まれる[19]

[編集] 参考文献

  1. ^ コラーゲン
  2. ^ http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/vitamin.htm
  3. ^ グルタチオン-アスコルビン酸回路
  4. ^ http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/bitstream/123456789/615/1/13660160.pdf
  5. ^ http://www.agr.okayama-u.ac.jp/amqs/josiki/27-9508.html
  6. ^ http://www.shc.usp.ac.jp/shibata/5-16-5.pdf
  7. ^ ビタミンE
  8. ^ http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/vitamin.htm
  9. ^ http://www.shc.usp.ac.jp/shibata/5-16-5.pdf
  10. ^ http://www.biochem.osakafu-u.ac.jp/NC/NutrChem1.pdf
  11. ^ 厚生労働省「日本人の食事摂取基準について」厚生労働省の第6次改定「日本人の栄養所要量」によると、血漿中ビタミンC濃度基準値を0.7mg/100ml以上に設定して、ビタミンCの1日あたり適正摂取量は成人で100mg(妊婦は+10mg、授乳婦は+40mg ) である。メルクマニュアル(merckmanua)によると、血漿中ビタミンC濃度の正常範囲は0.6–1.4mg/dL(34–79μmol/L)である。血漿中ビタミンC濃度基準値0.7mgは正常範囲の下限近くに設定されている。
  12. ^ http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/vitamin/vitamin-c/vc-09.html
  13. ^ http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/vitamin/vitamin-c/vc-04.html
  14. ^ a b 香港衛生署がビタミンサプリメントの過剰摂取に注意喚起 (2008/04/25)独立行政法人 国立健康・栄養研究所
  15. ^ Effect of ascorbic acid consumption on urinary stone risk factors
  16. ^ 安田和人、平岡真美、横溝和宏 「チューインガム中のビタミンCの吸収」『医療と検査機器・試薬』27 (2), 2004, pp71-74
  17. ^ Nishikimi M, Kawai T, Yagi K  (1992 October). “Guinea pigs possess a highly mutated gene for L-gulono-gamma-lactone oxidase, the key enzyme for L-ascorbic acid biosynthesis missing in this species”. J. Biol. Chem. 267 (30): 21967–72. PMID 1400507.
  18. ^ Martinez del Rio C  (1997). “Can Passerines Synthesize Vitamin C?”. The Auk 114 (3): 513-516.
  19. ^ Pollock JI, Mullin RJ  (1987 May). “Vitamin C biosynthesis in prosimians: evidence for the anthropoid affinity of Tarsius”. Am. J. Phys. Anthropol. 73 (1): 65–70. doi:10.1002/ajpa.1330730106. PMID 3113259.

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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