ビタミンC

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ビタミンC
IUPAC命名法による物質名
2-Oxo-L-threo-hexono-1,4-lactone-2,3-enediol
or
(R)-3,4-dihydroxy-5-((S)- 1,2-dihydroxyethyl)furan-2(5H)-one
臨床データ
AHFS/Drugs.com Multum Consumer Information
胎児危険度分類 A
法的規制 OTC (US) general public availability
投与方法 oral
薬物動態的データ
生物学的利用能 rapid & complete
血漿タンパク結合 negligible
半減期 varies according to plasma concentration
排泄 renal
識別
CAS登録番号 50-81-7 チェック
ATCコード A11G
PubChem CID 5785
DrugBank DB00126
ChemSpider 10189562 チェック
UNII PQ6CK8PD0R チェック
KEGG D00018 チェック
ChEBI CHEBI:29073 チェック
ChEMBL CHEMBL196 チェック
NIAID ChemDB AIDSNO:002072
別名 L-ascorbic acid
化学的データ
化学式 C6H8O6 
分子量 176.12 g/mol
物理的データ
密度 1.694 g/cm3
融点 190 °C (374 °F)
沸点 553 °C (1027 °F)

ビタミンC (Vitamin C、VC) は、水溶性ビタミンの1種。生体の活動においてさまざまな局面で重要な役割を果たしている。化学的にはアスコルビン酸L体のみをさす。

機能[編集]

ビタミンCは、コラーゲンの合成に深く関与している。プロリンリジン残基を含めた形でコラーゲンタンパク質が合成され、タンパク質鎖が形成された後で酸化酵素によりプロリン・リジン残基がそれぞれヒドロキシ化を受けてヒドロキシプロリンヒドロキシリジンに変化し、これらは水素結合によってタンパク質鎖同士を結び、コラーゲンの3重螺旋構造を保つ働きがある。またこの反応の際にはビタミンCを補酵素として必要とするため、ビタミンCを欠いた食事を続けていると正常なコラーゲン合成ができなくなり、壊血病を引き起こすものである。

ビタミンCは、水溶性で強い還元能力を有し、スーパーオキシド(O2-)、ヒドロキシラジカル(・OH)、過酸化水素(H2O2)などの活性酸素類を消去する[1]。ビタミンCの過酸化水素の消去は、グルタチオン-アスコルビン酸回路によって行われる。この回路に代表されるように、ビタミンCがデヒドロアスコルビン酸に酸化されても各種酵素によりビタミンC(アスコルビン酸)に還元・再生されて触媒的に機能する。

ビタミンCは、ビタミンEの再生機能がある。活性酸素等のフリーラジカルはDNAタンパク質を攻撃し、また、脂質を連鎖的に酸化させる[2]。ビタミンEは、脂質中のフリーラジカルを消失させることにより自らがビタミンEラジカルとなり、フリーラジカルによる脂質の連鎖的酸化を阻止する。発生したビタミンEラジカルは、ビタミンCによりビタミンEに再生される[3]

その他のビタミンCの機能としては、生体異物を代謝するシトクロムP450の活性化、チロシンからノルアドレナリンへの代謝(ドーパミンヒドロキシラーゼ)、消化器官中で鉄イオンを2価に保つことによる鉄の吸収の促進、脂肪酸の分解に関与するカルニチンリジンから生合成される過程のヒドロキシ酵素の補酵素としての参画、コレステロールをヒドロキシ化し7α-ヒドロキシコレステロールを経た胆汁酸の合成等の様々な反応に関与している[1][4][5]

摂取[編集]

ヒトはアスコルビン酸を体内で合成できないため、必要量をすべて食事などによって外部から摂取する必要があり、ビタミンとして扱われている。一方、多くの動物にとっては、アスコルビン酸は生体内で生合成できる物質であるため、必ずしも外界から摂取する必要は無い。体内でアスコルビン酸を合成できないのは、ヒトを含むサル目の一部やモルモットなどだけである。

推奨量[編集]

成人の1日あたり摂取量としての厚生労働省による推奨量(RDA)は100mgである[6]。この値を下回ると、各種欠乏症状が現れる可能性がある。

血中濃度[編集]

ビタミンCの血液検査の参考基準値は以下のとおりである。なお、ヒトの母乳のビタミンC濃度は0.5mg/100gとの報告がある。

項目 被験者の
タイプ
標準範囲 単位 最適範囲
下限値 上限値 下限値 上限値
ビタミンC
(アスコルビン酸)
0.4[7] 1.5[7] mg/dL 0.9[8]
23[9] 85[9] μmol/L 50[8]

欠乏症[編集]

ビタミンCを含まない食事を約60 - 90日間続けた場合、体内のビタミンCの蓄積総量が300 mg以下になり、出血性の障害をもたらす壊血病を発症すると言われている[10]

動物実験では、壊血病を発症しない程度のビタミンCの欠乏で老化が進行し、これをヒトに換算すると1日に2.5mgのビタミンCしか摂取しない期間が約3年間続くと老化が速く進行し、死亡する人が出てくる可能性があると報告されている[11]

大量摂取[編集]

体内で吸収されなかった余剰のビタミンCは尿中に排出されるが、数グラムレベルで一度に大量摂取し、腸管耐容量を超えると下痢を起こす可能性がある。体内でビタミンCの一部がシュウ酸に代謝されるとして、生成されたシュウ酸塩結晶により腎臓が損傷することで腎不全を発症すると報告[12]されたことがあるが、ビタミンC摂取と腎不全の因果関係は立証されておらず、現在では否定されている。また、大量摂取は尿路結石の発生につながるとする説もあるが、これについても医学的な根拠は無い。逆にビタミンCの大量摂取によって、結石の発生が抑制されるという説もある。 腎臓移植を受けた31歳の女性での続発性シュウ酸症の症例が報告されている[12]として、高度の腎不全患者のビタミンC大量摂取については、注意が必要であるとする考え方もある。

一方、近年ではグラム単位のビタミンCの大量摂取による健康への効能やウイルス性疾患に対する予防・治療効果が注目されている。風邪やインフルエンザへの治療効果については医学界においても賛否諸説があるが、激しい運動を行う人においては一定の効果があることが実証されている(wikipedia英語ページ参照)。なお、癌の代替療法としてビタミンC高濃度点滴を採用する医療機関も増えつつある。

サプリメント[編集]

ビタミンCを摂取するための補助食品もよく利用されている。ビタミンCは壊血病の予防の他、鉄分カルシウムなどミネラルの吸収促進(鉄過剰症の原因になることもあり、注意を要する)、傷の治癒にも利用される。また、風邪インフルエンザ、その他の感染症に対してアスコルビン酸粉末などとして医薬品と併用される。その理由としては、これらのストレスや治癒に際してはアスコルビン酸の要求量が増大するからというものである。喫煙等のストレスによってもアスコルビン酸の要求量が増大する[13]

ビタミンC錠剤を飲むよりビタミンC入りのガムを噛んだ場合、血中のビタミンCの上昇が速やかに起こり、また吸収量が多いことが分かった[14]。 サプリメントや野菜ジュースは、野菜サラダを直接摂取した場合と比較して、排出速度が非常に速い[15]

含有食品[編集]

多くの食品サプリメントにおいて、「レモン何個分のビタミンC」という表現が用いられるが、このとき「レモン1個分のビタミンC」は 20mg に換算される。この表記は農林水産省によって昭和62年に制定された「ビタミンC含有菓子の品質表示ガイドライン」によるものであるが、ビタミンCが主成分であるビタミン添加菓子を対象とするものであり、それ以外の食品サプリメントに対して用いることは適当でない。また、このことから「レモンはビタミンCを豊富に含む果物である」と誤解されがちだが、実際には同じ柑橘類であるグレープフルーツユズよりも含有量は低い。

レモン・ライムオレンジ・グレープフルーツなどの柑橘類のほか、カムカムアセロラキウイフルーツトマトはビタミンCの含有量が非常に多い。その他にビタミンCの多く含まれる食品としては、グァバパパイヤブロッコリー芽キャベツブラックベリーイチゴカリフラワーほうれん草マスクメロンブルーベリーパセリジャガイモサツマイモなどがある。

ビタミンCそのものは強い癖のある味であるが、食品に含まれる程度の量では食品の味にはあまり影響しない。しかしながら柑橘類でもすっぱい物のほうが含有量は多い傾向にあるため「酸味の強い果物ほどビタミンCが豊富だ」と思われがちだが、実際にはそれらの酸味の多くはクエン酸によるものである。上に挙げたように酸味がまったくないにも関わらず豊富なビタミンCを有している食品が多いのはこのためである。

乳酸菌発酵の際、ビタミンCも生成し、発酵前の生乳等のビタミンCよりも濃度が高くなる[16]牛乳にはビタミンCがほとんど含まれていない。その理由は、子牛が自らビタミンCを合成できるので牛乳から摂取する必要がないためである。牛乳を発酵して作ったヨーグルトでは若干ながらビタミンCが含まれている。牛乳のみならず肉にもビタミンCは含まれていないので、野菜や果物を摂取できないモンゴル遊牧民は、大人のみならず子供を含め馬乳乳酸発酵させ微量のビタミンCを生成した馬乳酒を大量に飲むことでビタミンCを補っている[16]。アフリカの遊牧民族であるマサイ族も日常的に発酵乳を飲む。

加熱に弱い[編集]

ビタミンCは、加熱すると空気中の酸素や水分との反応が促進され、酸化されてデヒドロアスコルビン酸となり、さらに加水分解されたジゲトグロン酸へ分解しやすくなる[17]。 デヒドロアスコルビン酸は人体内でアスコルビン酸に還元され利用されるが、ジゲトグロン酸にはビタミンCのような生理活性はないとされる。 ジャガイモに含まれるビタミンCのように、デンプンに保護されて酸素に接触しない場合には、加熱してもビタミンCは壊れにくい[18]。このことから酸素と接する加熱過程を有する果汁100%の加熱型濃縮還元ジュースのビタミンCの大半は壊れてしまうことになる。しかし、現在は超音波による果汁濃縮が主流である。これは、超音波加湿器の原理で、果汁液の水分のみを飛ばすことによって果汁を濃縮するシステムである。加熱式にくらべ、エネルギー効率が良く、工場の冷房費用もかからないため、現在は超音波式濃縮が主流である。加熱型濃縮還元はほぼ絶滅しており、探すことが困難である。 しかし加熱殺菌を行うため、やはりビタミンCは壊れてしまう。そのため高栄養価を謳う野菜ジュースは別途ビタミン類が添加されている。

歴史[編集]

16世紀から18世紀大航海時代には、壊血病の原因が分からなかったため、海賊以上に恐れられた。ヴァスコ・ダ・ガマのインド航路発見の航海においては、180人の船員のうち100人がこの病気にかかって死亡している。

1753年イギリス海軍省のジェームズ・リンドは、食事環境が比較的良好な高級船員の発症者が少ないことに着目し、新鮮な野菜果物、特にミカンレモンを摂ることによってこの病気の予防が出来ることを見出した。その成果を受けて、キャプテン・クック南太平洋探検の第一回航海(1768年 - 1771年)で、ザワークラウトや果物の摂取に努めたことにより、史上初めて壊血病による死者を出さずに世界周航が成し遂げられた。

しかし、当時の航海では新鮮な柑橘類を常に入手することが困難だったことから、イギリス海軍省の傷病委員会は、抗壊血病薬として麦汁ポータブルスープ、濃縮オレンジジュースなどをクックに支給していた。これらのほとんどは、今日ではまったく効果がないことが明らかになっている(濃縮オレンジジュースは加熱されていて、ビタミンCは失われている)。結局、おもにザワークラウトのおかげだったことは当時は不明で、あげく帰還後にクックは麦汁を推薦したりしたもので、長期航海における壊血病の根絶はその後もなかなか進まなかった。

1920年ドラモンドオレンジ果汁から還元性のある抗壊血病因子を抽出し、これをビタミンCと呼ぶことを提案した。 1927年にはセント-ジェルジウシ副腎から強い還元力のある物質を単離し、「ヘキスロ酸」として発表したが、1932年にこれがビタミンCであることが判明した。1933年ハースによってビタミンCの構造式が決定されてアスコルビン酸と命名され、1933年にはライヒシュタイン有機合成によるビタミンCの合成に成功した。

ビタミンC合成能を失った動物種[編集]

L-グロノラクトンオキシダーゼ(ビタミンC合成酵素)遺伝子の活性は、いくつかの進化史のなかでそれぞれ独立に失われている。哺乳類ではテンジクネズミ直鼻猿亜目霊長類がこの遺伝子の活性を失っており、そのためにビタミンCを合成できないが、その原因となった突然変異は別のものである。どちらの系統でも、活性を失った遺伝子は多数の変異を蓄積しつつ、偽遺伝子として残っている[19]スズメ目鳥類では、活性の喪失が何度か起こっており、またおそらくは再獲得も起こったために、種によってビタミンC合成能力が異なる。他に、コウモリ類もこの遺伝子の活性を失っている[20]。これらの動物が遺伝子変異によるビタミンC合成能力を失ったにもかかわらず継続的に生存し得た最大の理由は、これらの動物が果物、野菜等のビタミンCを豊富に含む食餌を日常的に得られる環境にあったためである。

霊長目でこの酵素の活性が失われたのは約6300万年前であり、直鼻猿亜目(酵素活性なし)と曲鼻猿亜目(酵素活性あり)の分岐が起こったのとほぼ同時である。ビタミンC合成能力を失った直鼻猿亜目にはメガネザル下目真猿下目サル類人猿ヒト)を含んでいる。ビタミンC合成能力を有する曲鼻猿亜目には、キツネザルなどが含まれる[21]

霊長類狭鼻下目であるヒト上科オナガザル上科から分岐したのは、2800万年から2400万年前頃であると推定されている[22][23]。ヒト上科の共通の祖先が旧世界のサルから分枝した際に、尿酸オキシダーゼ活性が消失したものと推定されている[24]。尿酸オキシダーゼ活性の消失の意味付けは、尿酸が抗酸化物質として部分的にビタミンCの代用となるためである[25]

参考文献[編集]

  1. ^ a b ビタミン 講義資料のページ
  2. ^ 大橋英雄「クェルセチンを中心とするフラボノイドのラジカル補捉反応とその反応機構-平成13年度-平成14年度年度科学研究費補助金 (基盤研究(C)(2) 課題番号13660160) 研究成果報告書」2002年。
  3. ^ ビタミンEと抗酸化性国立健康・栄養研究所 平原文子、栄養学雑誌 Vol.52 No.4 205 - 206(1994)
  4. ^ 重岡成、武田徹、村上恵 ビタミンC-多様な働きから所要量まで 第4回「日本人の水溶性ビタミン必要量に関する基礎的研究」講演会 元気なカラダとビタミン摂取―水溶性ビタミンの必要量について―(近畿大学 農学部 食品栄養学科)
  5. ^ http://www.biochem.osakafu-u.ac.jp/NC/NutrChem1.pdf [リンク切れ]
  6. ^ 厚生労働省「日本人の食事摂取基準について」厚生労働省の第6次改定「日本人の栄養所要量」によると、血漿中ビタミンC濃度基準値を0.7mg/100ml以上に設定して、ビタミンCの1日あたり適正摂取量は成人で100mg(妊婦は+10mg、授乳婦は+40mg ) である。メルクマニュアル(merckmanua)によると、血漿中ビタミンC濃度の正常範囲は0.6 – 1.4mg/dL(34 – 79μmol/L)である。血漿中ビタミンC濃度基準値0.7mgは正常範囲の下限近くに設定されている。
  7. ^ a b Blood Test Results - Normal Ranges Bloodbook.Com
  8. ^ a b Adëeva Nutritionals Canada > Optimal blood test values Retrieved on July 9, 2009
  9. ^ a b Derived from mass values using molar mass of 176 grams per mol
  10. ^ ビタミンCの真実|バーチャルラボラトリ [リンク切れ]
  11. ^ ビタミンCの真実|バーチャルラボラトリ [リンク切れ]
  12. ^ a b 香港衛生署がビタミンサプリメントの過剰摂取に注意喚起 (2008/04/25)独立行政法人 国立健康・栄養研究所
  13. ^ US Recommended Dietary Allowance (RDA)”. 2008年5月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年2月19日閲覧。
  14. ^ 安田和人、平岡真美、横溝和宏 「チューインガム中のビタミンCの吸収」『医療と検査機器・試薬』27 (2), 2004, pp71-74
  15. ^ 【薬学部生化学教室・石神昭人准教授】食の健康学 ビタミンC サプリよりサラダ|東邦大学キャンパスポータル
  16. ^ a b 石井智美「内陸アジアの遊牧民の製造する乳酒に関する微生物学的研究」『国立民族学博物館地域研』JCAS連携研究成果報告4、2002、pp103-123 
  17. ^ げのむトーク(11-20)
  18. ^ ジャガイモ KNU ダイエット 食材百科事典
  19. ^ Nishikimi M, Kawai T, Yagi K (October 1992). “Guinea pigs possess a highly mutated gene for L-gulono-gamma-lactone oxidase, the key enzyme for L-ascorbic acid biosynthesis missing in this species”. J. Biol. Chem. 267 (30): 21967–72. PMID 1400507. 
  20. ^ Martinez del Rio C (1997). “Can Passerines Synthesize Vitamin C?”. The Auk 114 (3): 513-516. http://elibrary.unm.edu/sora/Auk/v114n03/p0513-p0516.pdf. 
  21. ^ Pollock JI, Mullin RJ (May 1987). “Vitamin C biosynthesis in prosimians: evidence for the anthropoid affinity of Tarsius”. Am. J. Phys. Anthropol. 73 (1): 65–70. doi:10.1002/ajpa.1330730106. PMID 3113259. 
  22. ^ サルとヒトとの進化の分岐、定説より最近か ミシガン大 AFPBB News 2010年7月16日
  23. ^ Nature2010年7月15日号
  24. ^ Friedman TB, Polanco GE, Appold JC, Mayle JE (1985). “On the loss of uricolytic activity during primate evolution--I. Silencing of urate oxidase in a hominoid ancestor”. Comp. Biochem. Physiol., B 81 (3): 653?9. PMID 3928241. 
  25. ^ Peter Proctor Similar Functions of Uric Acid and Ascorbate in ManSimilar Functions of Uric Acid and Ascorbate in Man Nature vol 228, 1970, p868.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]