インフルエンザ

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インフルエンザ
分類及び外部参照情報
EM of influenza virus.jpg
電子顕微鏡により約10万倍に拡大された陰性インフルエンザウイルス
ICD-10 J10, J11
ICD-9 487
DiseasesDB 6791
MedlinePlus 000080
eMedicine med/1170 ped/3006
Patient UK インフルエンザ
MeSH D007251
プロジェクト:病気Portal:医学と医療
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インフルエンザラテン語: influenza)はインフルエンザウイルスによって引き起こされる急性感染症略称としてインフルがある。多くは上気道炎症状・呼吸器疾患を伴うことで流行性感冒(りゅうこうせいかんぼう)、詰めて流感(りゅうかん)と言われる。

日本などの温帯では、季節性インフルエンザは冬季に毎年のように流行する。通常、11月下旬から12月上旬頃に最初の発生、12月下旬に小ピーク。学校が冬休みの間は小康状態で、翌年の1-3月頃にその数が増加しピークを迎えて4-5月には流行は収まるパターンである。

語源[編集]

「インフルエンザ」の語は16世紀イタリアで名付けられた。当時は感染症が伝染性の病原体によって起きるという概念が確立しておらず、何らかの原因で汚れた空気(瘴気ミアズマ)によって発生するという考え方が主流であった。冬季になると毎年のように流行が発生し春を迎える頃になると終息することから当時の占星術師らは天体の運行や寒気などの影響によって発生するものと考え、この流行性感冒の病名を、「影響」を意味するイタリア語influenzaと名付けた。この語が18世紀イギリスで流行した際に日常的語彙に持ち込まれ、世界的に使用されるようになった。なお、日本語となっている「インフルエンザ」はイタリア語での読みと違い、イタリア語での読みは「インフルエンツァ」である。

日本では平安時代に近畿地方でインフルエンザらしき病気が流行したと記述が残っており、江戸時代には幾度か全国的に流行し、「お七かぜ」「谷風」[1]「琉球風」「お駒風」など当時の世相を反映した名称で呼ばれた。古くから風邪、風疫とされるとおり、悪い風が吹いて人々を病気にするという認識があった。幕末にはインフルエンザの名称が蘭学者より持ち込まれ、流行性感冒(流感とも略す[2])と訳された[3]

前史[編集]

病原体[編集]

「インフルエンザ」の病原体はRNAウイルスインフルエンザウイルスである。

疫学[編集]

  • 感染経路は咳やくしゃみなどによる飛沫感染が主と言われている。一般的には経口・経鼻で呼吸器系に感染する。飛沫核感染(空気感染)や接触感染など違った形式によるものもある。予防においては、有症状患者のマスク着用が有用であり、飛沫感染防止に特に効果的であるが、形状や機能性などによっては完全に防げない場合もある。マスクのみでは飛沫核感染や接触感染を防ぐことができないため、手洗いなどの対策も必要である[4]
  • 潜伏期間は1–2日が通常であるが、最大7日までである。
  • 感染者が他人へウイルスを伝播させる時期は発症の前日から症状が軽快してのちおよそ2日後までである。症状が軽快してから2日ほど経つまでは通勤や通学は控えた方がよい[5]
  • A型インフルエンザはとりわけ感染力が強く、症状も重篤になる傾向がある。
  • まれにA型、B型の両方を併発する場合もある。

臨床像[編集]

  • 風邪(普通感冒)とは異なり、比較的急速に出現する悪寒、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛を特徴とし、咽頭痛、鼻汁、鼻閉、咳、痰などの気道炎症状を伴う。腹痛嘔吐下痢といった胃腸症状を伴う場合もある。
  • 合併症として肺炎インフルエンザ脳症がある。

感染[編集]

くしゃみによりインフルエンザがうつることがある。

感染してウイルスが体内に入ってから、2日~3日後に発症することが多いが、潜伏期は10日間に及ぶことがある[6]。子供は大人よりずっと感染を起こしやすい。ウイルスを排出するのは、症状が出る少し前から、感染後2週間後までの期間である[6][7]。インフルエンザの伝播は、数学的なモデルを用いて近似することが可能で、ウイルスが人口集団の中に広がる様子を予測する上で役に立つ[8]

インフルエンザは、主に次の3つのルートで伝播する。患者の粘液が、他人の目や鼻や口から直接に入る経路、患者の咳、くしゃみ、つば吐き出しなどにより発生した飛沫を吸い込む経路、ウイルスが付着した物や、握手のような直接的な接触により、手を通じ口からウイルスが侵入する経路である[9][10]。この3つのルートのうち、どれが主要であるかについては明らかではないが、いずれのルートもウイルスの拡散を引き起こすと考えられる[11][12]。空気感染において、人が吸い込む飛沫の直径は0.5から5マイクロメートルであるが、たった1個の飛沫でも感染を引き起こし得る[9]。1回のくしゃみにより40000個の飛沫が発生するが[13]、多くの飛沫は大きいので、空気中から速やかに取り除かれる[9]。飛沫中のウイルスが感染力を保つ期間は、湿度紫外線強度により変化する。冬では、湿度が低く日光が弱いので、この期間は長くなる[9]

インフルエンザウイルスは、いわゆる細胞内寄生体なので細胞外では短時間しか存在できない。紙幣[14]、ドアの取っ手、電灯のスイッチ、家庭のその他の物品上で短時間存在できる[15]。物の表面においてウイルスが生存可能な期間は、条件によってかなり異なる。プラスチックや金属のように、多孔質でない硬い物の表面でかつ、RNaseが完全に除去された環境つまり人が絶対に触らない無菌室内にある多孔質でない硬い物の表面では、実験的にはウイルスは1~2日間生存させたのが最長記録である。RNaseが完全に除去された環境つまり人が絶対に触らない乾燥した紙では、約15分間生存する。
しかし、手などの皮膚の表面には多量のRNaseが存在するため、RNAウイルスは速やかに断片化されるため皮膚での生存時間は5分間未満である。この点は細菌やスピロヘータとしばしば混同されている[16]

鳥インフルエンザのウイルスは、最適な細胞ごと凍結することにより、長く冷凍保存できるという論文もある[17]。インフルエンザウイルスは、RNaseがなくても56℃、60分以上の加熱により不活化する。RNaseの存在下では常温5分未満で断片化する。またpH2未満の酸によっても数分で不活化する[17]

予防[編集]

一般的な予防方法としては、日常生活上の注意とワクチンを使用した予防接種がある[18][19]

  • 免疫力の低下は感染しやすい状態を作るため、偏らない十分な栄養や睡眠休息を十分とることが大事である。これは風邪やほかのウイルス感染に関しても非常に効果が高い。
  • 石鹸による手洗いの励行や、手で目や口を触らないこと、手袋やマスクの着用といった物理的な方法でウイルスへの接触や体内への進入を減らす。ただし、間違ったマスクの使用は感染を拡大させる危険性がある[20]
    • 新型インフルエンザに対する飛沫感染防止として医療機関では防塵性の高い使い捨て型のマスクが利用されており、正しい方法で装着し顔にフィットさせなければ有効な防塵性を発揮できない。2005年のCDCガイドラインでは、一般的な季節性インフルエンザに対しては外科用マスク着用で対応可能とされている。[21]
  • 感染の可能性が考えられる場所に長時間いることを避ける必要がある。人ごみや感染者のいる場所を避けるなど。予防にマスクを用いた場合は速やかに処分する。
  • 換気をこまめに行う。空気清浄機などでも良い。部屋の湿度(50-60%)を保つ。これにより、ウイルスを追い出し飛沫感染の確率を大幅に減らすことが可能である。
  • また、予防効果としてのうがいが有効であると言われてきたが、厚生労働省が作成している予防啓発ポスターには「うがい」の文字がない[22][23]。また、首相官邸ホームページや報道によると明確な根拠や科学的に証明されていないとのこと[24][25]
    • ウイルスは口や喉の粘膜に付着してから細胞内に侵入するまで20分位しかかからないので20分毎にうがいを続けること自体が非現実的である。
    • ウイルスは鼻の奥で増殖するので、感染してしまった場合手洗いうがいはほとんど意味が無い。
  • 感染者が使用した鼻紙やマスクは水分を含ませ密封し、小まめに廃棄や洗濯をする。感染者と同じタオルを使用しない。感染者の触れた物をエチルアルコール漂白剤などで消毒する。
  • RNAウイルスは日光や消毒薬そしてRNaseに非常に弱いため、衣類に唾液・くしゃみなどが付着したものからの感染は科学的には考えられない[26]。が、一応こまめに洗濯した方がよい。
  • 2010年3月にアメリカ臨床栄養ジャーナルに発表された無作為抽出二重盲検法プラセボ(偽薬)対照試験の結果では、冬季に毎日1,200IUのビタミンD3を摂取した生徒群は、プラセボを摂取した生徒群に比較して、42%も季節性インフルエンザに罹患する率が低かったとしている[27][28]

インフルエンザワクチン[編集]

インフルエンザワクチン英語版は、不活化ワクチンである。インフルエンザ菌、特にHib(Haemophilus influenzae b型)に対するワクチンとの混同を避けるため、「インフルエンザHAワクチン」「沈降インフルエンザワクチンH5N1」と表記される。身体の免疫機構を利用しウイルスを分解・精製したHA蛋白などの成分を体内に入れることで抗体を作らせ、重症化を防ぐ目的に使用される。なお、インフルエンザワクチンに限ってはワクチンは接種を行っても個人差や流行株とワクチン株との抗原性の違い等により、必ずしも十分な感染抑制効果が得られない場合があり、100%の防御効果は無い[29]

現行の皮下接種ワクチンは感染予防より重症化の防止に重点が置かれた予防法であり、健康な成人でも感染防御レベルの免疫を獲得できる割合は70%弱(同時期に2度接種した場合は90%程度まで上昇)である。感染防御レベルの免疫を得られなかった者の中で発症しても重症化しないレベルの免疫を獲得している割合は80%程度とされる。100万接種あたり1件程度は重篤な副作用の危険性があることなども認識しなければならない。免疫が未発達な乳幼児では発症を予防できる程度の免疫を獲得できる割合は20-30%とされ、接種にかかる費用対効果の問題や数百万接種に1回程度は重篤な後遺症を残す場合があることを認識した上で接種をうける必要がある。2006年の米家族医学会では「2歳以上で健康な小児」への接種を推奨している[30]。 妊婦へ、妊娠中にインフルエンザワクチンを接種すると、産後に母子双方をインフルエンザ発症から保護することが示された[31]

インフルエンザワクチンの接種不適当な者[32]は、1.明らかな発熱を呈する者、2.重篤な急性疾患にかかっている者、3.本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあるのが明らかな者、4.上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者である(以上、インフルエンザHAワクチン「生研」の添付文書より引用)。

循環器、肝臓、腎疾患などの基礎疾患を有するものや痙攣を起こしたことのある者、気管支喘息患者、免疫不全患者などは接種に注意が必要な「要注意者」とされる。かつてはこれらのような患者には予防接種を「してはならない」という考え方が多かったが、現在ではこれらの患者こそインフルエンザ罹患時に重症化するリスクの大きい患者であり、予防接種のメリットがリスクよりも大きいと考えられている[33]。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであるため、免疫不全患者に接種してもワクチンに対して感染を起こす心配はない。しかし、効果が落ちる可能性はある。

弱毒性インフルエンザワクチン[編集]

点鼻ワクチンであり、針を介さないため針を好まない人に有用である。また、生ワクチンであるが故、抗体の定着も良好。適応は5歳以上、50歳未満。禁忌は不活化ワクチンとは対照的に慢性的な循環器・腎臓・呼吸器疾患や代謝疾患、血液疾患、易感染性の者、妊娠している女性、ギラン・バレー症候群を既往に持つ者。副作用で頻繁に起こりうるのは鼻炎や感冒症状。日本では未承認である。よって輸入ワクチン取扱い医療機関にて申込み、全額自己負担での接種となる。

ワクチン投与(接種)[編集]

投与手段は皮下注射や筋肉注射であるが、米国では鼻噴霧式のものも認可されている[34][35]

効果は免疫力に比例するため青年者にはもっとも効果が高いが、若齢者・高齢者は免疫力が低いので効果も低くなる。過労、ストレス、睡眠不足や不摂生な生活をすれば身体の免疫力そのものが低下するのでワクチンを接種したから大丈夫と過信してはいけない。効果は3カ月程度。

日本におけるワクチンの接種料金は3000~6000円程度が多い。料金は医療機関によって異なり、健康保険の法定給付の対象外である。健康保険組合や国民健康保険組合などでは保険者独自の給付として、被保険者や世帯主に対し接種費用の助成を行う場合もある。65歳以上の高齢者、60~64歳で心臓、腎臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の周りの生活を極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり日常生活がほとんど不可能な人については予防接種法上の定期接種に指定され、多くの自治体に於いて公費助成が行われている。

ワクチン製造[編集]

日本では、インフルエンザウイルスのA型及びB型株をそれぞれ個別に発育鶏卵(鶏の受精卵)で培養し、増殖したウイルスを含む尿膜腔液をゾーナル遠心機による蔗糖密度勾配遠心法により濃縮精製後、ウイルス粒子をエーテル等により処理して分解、ホルマリンで不活化したHA画分を用い、各株ウイルスのHAが規定量含まれるよう希釈調製して製造している。

鶏の受精卵を使用するワクチンの製造には6か月程度必要であるため、次の冬に流行するウイルス株を正確に予測し適合するワクチンを製造することは難しい。ウイルス株が変異していればその効果はいくぶん低下するが、アフィニティーマチュレーション(抗原結合能成熟)によりある程度の免疫効果が期待できる。これは弱毒性ワクチンよりも不活化ワクチンの方が効果がある[36]。抗原型の一致・不一致にかかわらずもともと免疫のない若齢者では弱毒性ワクチンの方が有効とされている[30]。感染歴のある成人では、交差免疫により生ワクチンウイルスが増殖する前に排除され免疫がつかないこともある。このような場合は、不活化ワクチンの方が高い効果が得られる。

副作用[編集]

インフルエンザワクチンは鶏卵アレルギーの患者にも接種の際に注意が必要である。そのため、一部の施設では接種自体行っていない。施設によっては、皮内テストなどを行った上で接種したり、2回に分割して接種する、アドレナリンおよび副腎皮質ステロイド製剤を準備した上で慎重な観察の下に接種するなどの工夫をして接種を行っている。

かつては日本でも学校で集団接種が行われていたが、同様に鶏卵アレルギーの問題のため現在は任意となっている。医療従事者向けに医療機関で実施したり、小中高校・大学などで実施する場合も、個人の意志による自発的な接種と位置づけられている[37]。2006年の報告では、インフルエンザ自体に対する集団接種の効果はある程度はある[38]ものの、費用対効果あるいはリスク対効果の点では不明である。

ギラン・バレー症候群[編集]

1976年に米国でH1N1が発生し、4300万人に予防接種を行った。約400人がギラン・バレー症候群 (GBS) となり、25人が死亡した。インフルエンザによる死亡は0のため大問題になった。 1957年にも同様な現象が見られた[39]CDCによると通常でも毎週80-160例の新規患者が発生している。因果関係は明らかだが、予防接種を中止するほどの問題とはされていない(新型では11月末現在10例)。米国ではVAERS (Vaccine Adverse Events Reporting System) によるワクチン副反応監視が行われている。


予防のための診療ガイドライン (英国)[編集]

英国国立医療技術評価機構の2008年の診療ガイドラインでは、オセルタミビル(タミフル)とザナミビル(リレンザ)の予防利用は、特定のリスク群の項をすべて満たす場合にのみ推奨している[40]。それ以外の場合には、季節的なインフルエンザ流行の予防に対して、オセルタミビルとザナミビルは推奨しないとしている[40]アマンタジンは、インフルエンザ予防に推奨しないとしている[40]

治療薬の予防目的使用(日本)[編集]

治療用の薬であるオセルタミビル(商品名「タミフルカプセル75」)、ザナミビル(商品名「リレンザ」)は、予防用としても使用認可されている。予防薬としての処方は日本では健康保険の適用外であり、原則的な利用条件が定められている。

インフルエンザ感染症を発症している患者の同居家族や共同生活者(施設などの同居者)が下記のような場合には、タミフルのカプセル製剤を1日1回、予防使用することが認められている(7–10日間、継続して服用する)。健康成人と13歳未満の小児は予防使用の対象にならない。

  1. 高齢者(65歳以上)
  2. 慢性呼吸器疾患患者、又は慢性心疾患患者
  3. 代謝性疾患患者(糖尿病など)
  4. 腎機能障害患者

リレンザの予防投与では、その対象が「原則としてインフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族または共同生活者である次の者[41]

  1. 高齢者(65歳以上)
  2. 慢性心疾患患者
  3. 代謝性疾患患者(糖尿病等)
  4. 腎機能障害患者

オセルタミビル(タミフル)の健常者への予防投与による幾つかの有害事象が、神戸市立医療センター中央市民病院呼吸器内科により報告されている[42]274人のアンケートから、報告によれば、「最も多かった症状は「疲労」で、ほかには腹痛、下痢、食欲不振、頭痛、不眠症、発熱などであった。しかし、症状の消失は服用中止後と服用中の報告があり、服用との因果関係は明かではない」としている。

検査方法[編集]

大塚薬品販売のクイックナビ・Fluによる検査。写真ではインフルエンザA型陽性。

2001年頃より迅速に診断が可能な検査キットが臨床の現場で使われ始め、現在は普及している。臨床検査技師など専門家がいなくても簡便にできる。鼻の奥の咽頭に近い部分を採取すると検出率が高いとされ、検体は基本的にその部分から採取される。時間的には15–20分で結果が分かる。A型とB型の鑑別も可能である[43]オセルタミビルは発症後48時間以内が非常に有効とされるため、迅速診断は非常に重要な検査方法となっている。 ただし、発症した直後ではウイルス量が少ないため陽性と判定されないことがある。発症後2日目が最も陽性率が高いとされ、発症後4-5日たつと陽性率は減少する。抗ウイルス薬による治療は発症後48時間以内でないと効果が期待できないため、検査で陰性と判定されても症状などから医師の判断で抗ウイルス薬を処方する場合もある(高齢者などのハイリスク患者や受験生など)。

治療[編集]

抗インフルエンザ薬「タミフル」
抗インフルエンザ薬「イナビル」

抗インフルエンザ薬[編集]

インフルエンザウイルス自体に対する治療としては以下の通りに抗ウイルス薬が存在する。多くの場合発症後早期(約48時間以内)に使用しなければ効果が無い。

アマンタジン耐性インフルエンザウイルスや、ザナミビル(オセルタミビル)耐性インフルエンザウイルスの出現も既に報告され、アマンタジン耐性は、主に連続変異によってM2タンパク質の構造が変化することによるとされる。またザナミビルとオセルタミビルの両薬剤に耐性を持つウイルスの出現もすでに報告されている。こちらの耐性機構については、まだよく分かってはいないが、ヘマグルチニンが変異して細胞との結合力が低下して、ノイラミニダーゼの働きが弱くても細胞からの放出が行われることによって耐性を獲得する場合があることが報告されている。このような薬剤耐性ウイルスの出現に対抗するため、新薬開発の取り組みも継続されている。

治療のための診療ガイドライン[編集]

英国国立医療技術評価機構(NICE)の診療ガイドラインは、発症してから48時間以内といった条件を満たしたオセルタミビルかザナミビルが選択され、アマンタジンはインフルエンザの治療に推奨していない[46]

2014年、コクラン共同計画英国医師会雑誌は共同で、出版バイアスを除外して24,000人以上からのデータを分析し、オセルタミビルとザナミビルは、当初の使用の理由である入院や合併症を減少させるという十分な証拠はなく、成人では発症時間を7日から6.3日に減少させ、小児では効果は不明であり、世界的な備蓄が必要なほどの恩恵があるかどうかの見直しの必要性を報告した[47]

漢方薬[編集]

以下のとおり一部の漢方薬には、日本においてインフルエンザ(あるいは流感)の適用を承認されているものがある。同名処方であっても薬事法に基づく製造販売承認上の効能・効果の承認内容が異なる場合がある(2008年10月現在)[48]

  • 麻黄湯 - 「悪寒、発熱、頭痛、腰痛、自然に汗の出ないものの次の諸症:感冒、インフルエンザ(初期のもの)…」との効能・効果の承認がある[49]。また、抗ウイルス薬のタミフルと同じ程度の症状軽減効果があるという研究結果が福岡大学病院の鍋島茂樹・総合診療部長らによって発表されている。
  • 竹筎温胆湯 - 「インフルエンザ、風邪、肺炎などの回復期に熱が長びいたり、平熱になっても気分がさっぱりせず、せきや痰が多くて安眠が出来ないもの」との効能・効果の承認がある[50]
  • 柴胡桂枝湯 - 「発熱汗出て、悪寒し、身体痛み、頭痛、はきけのあるものの次の諸症:感冒・流感・肺炎・肺結核などの熱性疾患…」との効能・効果の承認がある[51]

対症療法[編集]

  • 暖かい場所で安静にして、水分を十分に摂る。空気の乾燥に気をつける。特に体を冷やさないこと、マスクを着用するなどの方法で喉の湿度を保つことが重要である。
  • 外出は避ける。うつす/うつされる機会をなるべく減らすことが大切である。
  • インフルエンザウイルスは熱に弱いので、微熱はあえてとる必要はない。熱が高く苦しい場合などには適宜、解熱剤を使用する。
  • 食事が摂取できないなどの場合は補液が必要となる。

トピックス[編集]

警報・注意報[編集]

国立感染症研究所が、全国の内科小児科のある病院診療所で定点調査を行い、公表している。感染症サーベイランス事業の一環として行われる。保健所ごとに基準値を設け患者数が一定数を超えると、大流行が発生または継続しているとみなし「警報レベルに達している」と発表される。流行の発生前で今後4週間以内に大きな流行が発生する可能性がある場合や流行発生後であるがまだ流行が終わっていない可能性がある場合は「注意報レベルに達している」と発表される。都道府県で個別に発表される警報とは異なるので注意が必要である。

インフルエンザウイルスによる動物の感染症[編集]

主に動物に感染するインフルエンザ感染症であるが、インフルエンザウイルスの変異によって動物→ヒト、ヒト→ヒトへ感染することも懸念されている。「ヒト→ヒト」への伝染が確認されると新型インフルエンザと呼ばれる。

鳥インフルエンザ[編集]

原因となるインフルエンザウイルスは人畜共通感染症 (zoonosis) であり、鳥類に感染することが知られている。ヒトインフルエンザは、元は鳥インフルエンザウイルスが遺伝子変異して人間に感染するようになったと考えられている。

これらの動物と人間が密接な生活をしている中国南部の山村などでウイルス遺伝子の混合が起こり次々と変種が登場するものと推測されている。

鳥インフルエンザウイルスには20種ほどのタイプがあり、中でもH1、H2、H3、H5、H7、H9型が知られる。H1・H3型は人間に感染し、Aソ連型・A香港型として知られる。H5、H7、H9型は毒性が強いことで知られる。鳥から人への感染力は弱いと見られ、人への感染例は少ない。しかし感染者の死亡率は60–70%とSARSの10%を上回る。

2003年末から2004年初めにかけ韓国香港ベトナム東アジアで大きな被害を出した鳥インフルエンザはH5N1型である。日本でも2004年1月に山口県で感染ニワトリが見つかったのを皮切りに、各地で鳥類への感染が報告されている。

日本で1925年に同様の被害を出したものはH7型といわれている。

ウマインフルエンザ[編集]

ウマに感染する呼吸器疾患。発見されると競馬の開催が不可能になることが多い。

ネコインフルエンザ[編集]

ブタインフルエンザ[編集]

2009年4月、人が豚インフルエンザウイルスA型(H1N1型)に感染する例が確認された[52]

関連の感染症[編集]

SARS[編集]

2002年から国際的に問題となった重症急性呼吸器症候群 (SARS) と流行時期・初期症状が類似しているため、2003年冬以降はSARSとの鑑別診断が大きな問題となる。初期に確実な診断をするためにも、接種を受けることでインフルエンザを除外しやすくすることが強く求められている。

SARSの原因はSARSコロナウイルスという全く別のウイルスである。

インフルエンザ菌[編集]

インフルエンザウイルスによる感染を細菌の感染と混同し、「インフルエンザ菌」という誤った呼称で用いられることがある。

一方で、北里柴三郎らが1892年に重症のインフルエンザ患者から分離したヘモフィルス・インフルエンザエ (Haemophilus influenzae) という細菌を「インフルエンザ菌」と呼ぶ(グラム陰性桿菌であり「インフルエンザ桿菌」とも呼ばれている)。院内感染でない市中肺炎の原因菌は、肺炎球菌に次いでインフルエンザ菌であることが多い。

当時はウイルスというものの存在は広く認知されておらず、ヘモフィルス・インフルエンザエという細菌がインフルエンザ感染症を引き起こしている病原体の候補であると考えられたが、コッホの原則に基づく証明ができなかった。1933年にインフルエンザウイルスこそが真の病原体であると証明されたことで、この細菌が病原体であるという仮説が否定された。ヘモフィルス・インフルエンザエはインフルエンザウイルスに感染し免疫力が低下した人に二次感染して症状を悪化させていたことが原因であったと考えられる。

インフルエンザ桿菌B型 (Hib) の乳幼児感染症は致死率や後遺症発生率が高いが、予防接種(Hibワクチン)で感染を防ぐことが出来る。世界100か国以上でHibワクチンは定期接種プログラムに組み入れられ、公費負担による接種が行われている。日本では、2007年1月に厚生労働省の承認を取得し、2008年12月から発売されている。

注釈[編集]

  • 「H1N1=ソ連型」ではない。スペイン風邪もH1N1だが、ソ連風邪とは異なる。特に今言われている新型インフルエンザ(俗称「豚インフルエンザ」)もH1N1だが、Aソ連型ではない。ソ連型H1N1はほとんどタミフル耐性だが、新型インフルエンザH1N1ではタミフル耐性株はまだ少ない。日本で流行中のインフルエンザの98%が新型インフルエンザである。
  • マスクの着用によってインフルエンザを予防することは、欧米およびWHOでは推奨されていないし、十分な予防効果の証拠がないとされる。マスクは湿気を保つためと、感染者が感染を大きく広げないための手段として考えられている。理論的にはウイルスを含む飛沫がマスクの編み目に捉えられると考えられるが、十分な臨床結果を必要とする。

脚注[編集]

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  1. ^ 寛政7年1月9日1795年2月27日)、名横綱谷風梶之助がインフルエンザで亡くなったことから「谷風」と呼ぶ。
  2. ^ 国立国語研究所「病院の言葉」委員会 『病院の言葉を分かりやすく:工夫の提案』 勁草書房2009年、p.54。ISBN 4-326-70062-9
  3. ^ 伝染病であるため、「お染・久松」の「染」に掛けて俗に「お染風」(おそめかぜ)と言った。玄関に「久松留守」と張り紙をしたという。
  4. ^ CDC: Interim Guidance for the Use of Masks to Control Influenza Transmission
  5. ^ 日本の学校保健安全法施行規則では発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は、3日)を経過するまで(学校保健安全法施行規則19条2号)。
  6. ^ a b Carrat F, Luong J, Lao H, Sallé A, Lajaunie C, Wackernagel H (2006). [http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=1626479 “A 'small-world-like' model for comparing interventions aimed at preventing and controlling influenza pandemics”]. BMC Med 4: 26. doi:10.1186/1741-7015-4-26. PMC 1626479. PMID 17059593. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=1626479. 
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参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]