風疹
風疹(ふうしん、英: Rubella)は、ウイルス感染症の一種で、風疹ウイルスによる急性熱性発疹性疾患[1]。一般に日本では三日はしかとしても知られ、英語では「German measles(ドイツはしか)」とも呼ばれている。日本では「風しん」として感染症法に基づく五類感染症に指定して届出の対象としている[1]。
伝染力は水痘(水疱瘡)、麻疹(はしか)より弱い。妊娠初期に妊婦が感染した場合の先天性風疹症候群が大きな問題となる。効果的な治療法は無く、ワクチンによる予防が最も重要である。
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疫学[編集]
風疹にかかった人は免疫ができて二度とかからないといわれるが、経年により免疫が低下していた場合や、がん治療などで免疫力が落ちた場合など、ごくまれに再発することがある。日本ではかつて5〜9年ごと(1976、1982、1987、1992年)に大流行があったが男女幼児が定期接種の対象となって以降は大きな流行は発生していなかった[2]。2004年に推計患者数約4万人の流行があり2005年以降は急速に患者が減少していたが、2012年に入り兵庫県で最多の感染となっているのをはじめとして関西・首都圏中心に本州で感染拡大し2013年6月現在、さらに東京都・大阪府を中心に都市部で大流行中である。2013年4月、神奈川県で、黒岩祐治知事が風疹流行により非常事態を宣言、5月13日、大阪府が風疹流行緊急事態宣言[3]。
原因[編集]
感染者の鼻汁に含まれる風疹ウイルスによる飛沫感染または直接接触感染による。伝染期間は発疹の発症前1週間~発疹出現後4日間[4]。トガウイルス科ルビウイルス属、直径50~70nmの一本鎖RNAウイルス。正十二面体のカプシド構造を有する。
症状[編集]
臨床症状[編集]
- 潜伏期間は2~3週。
- 初期症状(発疹の1~5日前)は微熱、頭痛、倦怠感、鼻水、せき、痛みのないバラ色の口蓋斑点(典型的な3症状である紅色斑丘疹、発熱、頸部リンパ節腫脹が現れない場合、溶血性レンサ球菌による発疹、伝染性紅斑などとの鑑別を行う必要がある)。
- 顔、耳後部から、赤く癒合性のない点状の紅斑(発疹)が全身に広がり、多くは3~5日程度で消える(20~25%は発疹が出現しない)。
- 発症者の約25~50%に、38~39℃前後の発熱が3日程度続く。
- 耳介後部、後頭部、頚部のリンパ節の腫れ。発疹出現5~10日前から数週間にわたりみられる。
- 眼球結膜の軽度充血や、肝機能障害が見られる場合がある。
- 小児では咽頭炎のみがみられたり、無症候性感染であることも多い。
血液検査[編集]
- 白血球減少、血小板減少
- 血液中風疹IgM抗体検出
診断[編集]
- 臨床診断は不正確なことが多い。
- 発疹出現から28日以内の血液中風疹IgM特異抗体検出が確定診断になる。ペア血清を用いて、CF、HI試験、ELISA法などで4倍以上の上昇で診断する。PCR法、ウイルス培養は一般的ではない[5]。
鑑別診断[編集]
麻疹(はしか)、デング熱、突発性発疹、コクサッキー・エコー・アデノウイルス感染、伝染性紅斑、猩紅熱等
合併症[編集]
妊婦の妊娠初期の感染は胎児に先天性風疹症候群を引き起こす。また関節炎、血小板減少性紫斑病(1/3,000~5,000人)を合併する可能性があるほか、急性脳炎を起こす(1/4,000~6,000人)ことがあり、極めてまれに重篤な状態に陥る。
先天性風疹症候群[編集]
妊娠10週までに妊婦が風疹ウイルスに初感染すると、90%の胎児に様々な影響を及ぼす。この先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)の典型的な三大症状は、心奇形・難聴・白内障である。11~16週までの感染では10~20%に発生する。妊娠20週以降の感染で発生することはまれとされる[5]。診断は新生児血清IgM特異抗体検出で確定診断可能。エコー下穿刺液によるPCR法で胎内診断も可能である。
1941年にグレッグによって新生児に白内障や心奇形が発生したと初めて報告された。成人でも15%程度の無症状感染者があるので、母親が無症状であってもCRSは発生し得る[6]。また、出生前に感染した乳児は、出生後数ヶ月感染力を持ち続ける[4]とされている。
先天性症状[編集]
注意点[編集]
妊娠初期に自然感染を起こした場合、先天性風疹症候群の危険性について十分な説明を受けた上で、妊娠継続についての判断が求められる。妊娠21週以降の感染であればCRSのリスクは低く、通常は妊娠が継続される。
治療[編集]
特異的な治療法はなく、対症療法を行う。
ワクチン接種による予防[編集]
小児期に予防接種が行われている。定期接種ではあるが、風疹の予防接種をしていない人も多い。以前は中学2年生に接種が行われており、特に1979年4月2日~1987年10月1日に産まれた人は法律の変わり目の時期に中学校時代を過ごしているため、予防接種を受けていない人が多い[7][8]。但し自治体によっては移行期間を設けて、法律の変わり目に生まれた人は従来どおりの接種時期でも受けることが出来るようにしたところもある。予防接種の徹底したアメリカ等では日本人の入国に際して風疹の予防接種を行う指導がなされていたりする。なお、アメリカの医学書では日本や日本人は風疹の感染源として説明されている程である。
妊娠可能年齢の女性で風疹抗体が無い場合、ワクチン接種はCRSを予防する観点からも強く推奨されているが、妊娠中のワクチン接種は避ける。ワクチン接種後は2ヶ月間の避妊が必要。2006年4月以降、新規にワクチンを接種する1歳以上2歳未満の幼児からは麻疹・風疹混合ワクチンを接種することとなった。授乳中の母親がワクチン接種を受けた場合、乳を飲んでいる赤ちゃんに、ワクチン・ウイルスが感染し赤い発疹が出る事があるが、重い合併症は起こさない[9]。
アメリカ、韓国、オーストラリア、カナダ、欧州諸国など、麻疹・風疹の予防接種を2回行う国が少なくない[10]。
アメリカでは風疹をはじめとする指定の予防接種を受けていない事には、永住できない[11]。
2013年日本に於ける流行[編集]
2011年にアジアで大規模な風疹流行が発生し、帰国後に風疹を発症する成人男性と職場での集団発生が散発的みられた[12]。2011年以降、徐々に増加していたウイルス分離・検出報告数は、2012年に231件の風疹ウイルスの分離・検出が報告された。遺伝子型の判別まで実施された151件では、2B型が124件、1E型が26件、1a型が1件であった[13]。患者の報告数は2,353人[14]。2013年は第1~15週までに大都市を中心に21都府県から184件報告され、遺伝子型の判別まで実施された90件では、2B型が87件、1E型が3件報告されている[13]。ウイルスの分離・検出例は男性が多く、前述の予防接種制度の谷間世代の30代を中心に20~40代男性が多く、女性では15~29歳が多い。感染者数の増加に伴い2012年10月から2013年3月末までに、8人の先天性風疹症候群患者が報告されている[15]。
関連法規[編集]
脚注[編集]
- ^ a b 感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について 風しん 厚生労働省 2013年5月8日閲覧
- ^ 風疹とは(2013年05月07日改訂) 国立感染症研究所
- ^ 風疹 発生動向調査 国立感染症研究所
- ^ a b メルクマニュアル家庭版
- ^ a b 感染症学 改訂第四版 谷田憲俊 診断と治療社 2009
- ^ 先天性風疹症候群 2000年第7週
- ^ 早めに風疹ワクチン接種を 無防備な“谷間の世代” - 47NEWS
- ^ 風疹予防接種の経過措置延長等に関する質問主意書 - 衆議院
- ^ 風疹について 横浜市衛生研究所 横浜市感染症情報センター 疾患別情報(2005年7月7日増補改定)
- ^ 風疹Q&A(2012年改訂)NIID 国立感染症研究所
- ^ 移民ビザ申請のためのワクチン接種の要件
- ^ 風疹とは 国立感染症研究所
- ^ a b 風疹ウイルス分離・検出状況 風疹ウイルス分離・検出状況 2012~2013年(2013年4月18日現在) 国立感染症研究所
- ^ 止まらない風疹の流行、西日本から東日本に拡大 日経メディカルオンライン 記事:2013年1月29日 閲覧:2013年4月26日
- ^ 風しんの報告数が急増しています。~首都圏の報告数が特に多くなっています。~ 厚生労働省
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 健感発第0909001号(平成16年9月9日付け 厚生労働省健康局結核感染症課長通知) 厚生労働省「風しん対策の強化」を求める通達。
- 健感発第0409001号(平成16年4月9日付け 厚生労働省健康局結核感染症課長通知) 「先天性風しん症候群の発生防止について」
- 風疹 2001年第29週 国立感染症研究所 感染症情報センター
- 先天性風疹症候群 2000年第7週 国立感染症研究所 感染症情報センター
- 風疹 メルクマニュアル家庭版
- 乳児と小児の予防接種スケジュール メルクマニュアル家庭版
- MR(麻疹・風疹混合)ワクチン予防接種説明書 広島大学
- 風疹ウイルスIgG,IgM, rubella virus IgG,IgM 岡山大学医学部付属病院 中央検査部
- 病気とワクチン 風疹 社団法人 北里研究所 生物製剤研究所
- 風しんワクチンに関するQ&A 北里研究所