水痘

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水痘

水痘(すいとう、varicella)とは、ウイルス感染症の一種。一般に水疱瘡(みずぼうそう)としても知られている。英語ではChicken poxと呼ばれる。水痘は感染症法の第5類感染症に指定されており、学校保健安全法による第2類学校感染症に分類されている。季節的には毎年12 - 7月に多く8 - 11月には減少し、罹患年齢の多くは9歳以下。水痘ウイルスの自然宿主はヒトのみであるが、世界中に分布している。一般に1度かかると2度とかからないと言われているが、感染しても発症にまでには至らないというだけである。抗体が消えれば再発症する可能性は高く、再発症の例もたびたび報告されている。治癒後も神経節などに水痘・帯状疱疹ウイルスは潜伏しており、免疫低下時や疲労・ストレス時に再活性化し帯状疱疹を発症することがある。

原因[編集]

ヘルペスウイルス科の水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus)の初感染によるとされる。感染経路は、主に飛沫核感染(空気感染)である。むろん水疱液の接触感染もある。非常に強い感染力を持ち病院などでは同一フロアにいるだけで軽度の接触とみなす。より専門的には、ウイルスを含有する飛沫もしくは飛沫核による空気感染、上気道、下気道がウイルスの排出、侵入、または接触のため感染するといわれる。痂皮になっていない皮膚症状からの接触感染もありえる。あるいは帯状疱疹の人からの接触感染や飛沫感染もありえる。なお、ウイルスの大きさは150から200ナノメートルである。つまり、患者が排出したウイルスは、チリやホコリや水の粒と室内を飛散し、一定以上の数を鼻やのど(上気道)から吸い込めば、患者にさわらなくても感染する。

症状[編集]

潜伏期は2週間程度(10 - 21日)で、全身に直径3 - 5mm程度の丘疹(盛り上がった紅い発疹)が出現する。成人は発疹出現以前に1 - 2日の発熱と全身倦怠感を伴うことがある。発疹は一斉にではなく、数日かけて続々と出現する。ひとつの発疹は丘疹→水疱(水ぶくれ)→膿疱(水ぶくれに膿がたまってくる)→痂皮(かさぶた)の順に変化し、治癒する。さまざまな段階の発疹が混在するのが特徴で、これらの全てが痂皮になったときに治癒したとみなす((痘瘡では発疹の段階がそろっており、水痘との鑑別に重要であったが、今は痘瘡が存在しない)。発疹の出現は発病から3日目ごろがピーク。7日程度で痂皮になって治癒する。

水痘は体があたたまるとかゆみが増すため暖房や厚着をする際には気をつける必要がある。発熱はまったくみられない場合や、39 - 40℃に達する高熱が出ることもあるなどさまざまである。

アトピー性皮膚炎患者では皮疹が重症になりやすく、ステロイド療法中の患者や妊婦、新生児など免疫系の働きが変化している患者、悪性腫瘍に対して化学療法で治療中の患者やAIDS患者など免疫不全患者では重症になりやすい。成人の患者では間質性肺炎の合併がみられることがあり、皮疹も概して重症である。

また、妊婦が妊娠初期(8 - 20週目)に感染すると2%程度の胎児に先天性水痘症候群として低体重出生、四肢の形成不全、皮膚瘢痕、部分的筋肉萎縮、脳炎、小頭症、白内障などの症状が現れる。

治療[編集]

水痘に罹患した場合は、小児科医などの専門医による早期治療が望まれる(早期治療で軽くなる)。治療として抗ウイルス薬であるアシクロビルバラシクロビルファムシクロビルなどの内服や静脈注射を行うが、妊婦には抗ウイルス薬は用いない。かゆみに対する対症療法としてフェノール亜鉛華リニメントや抗ヒスタミン薬などが処方される。発熱している場合はアスピリンの使用は避ける(市販の解熱剤にアスピリンが含まれる場合もあり、服用した際には必ず医師に伝える)。水ぶくれが壊れたら、抗生剤(無色のものが膿などと混同されなくてよい)入りの軟膏で二次感染を防ぐ。また、化膿がなければドレッシング材などで覆うことにより湿潤環境を維持することで跡が残りにくくなる場合があるので、専門医に相談する。なお化膿した部位にこの治療を行うと非常に悪化するので注意が必要である。成人になってから初感染すると脳炎や肺炎の合併が多く危険な場合があり早期治療が重要である。

美容的観点[編集]

この病気は美容上大きな問題を残す場合がある。水ぶくれを壊したり、かさぶたを無理にとったり、化膿させると傷の深さにより皮膚がうまく再生されずにアトが残る場合がある。アトが残らないようしたい場合は、発病の初期に皮膚科を受診して医師からその注意を受けることが重要である。ただし、水疱は伝染病であるため外来で訪れる場合は他の患者の迷惑にならないよう予め受診の方法などを必ず相談する。水疱瘡のあとを美容外科で修正するのは、傷跡が主観的な要素がむしろ大きいため難しい場合もある。治療法としては、再度メス等で傷跡の上を削り皮膚を湿潤療法により自然に再形成させる方法(保険外)などで、1、2か月で治癒する。しかし罹患しないためのワクチンの注射が美容的観点からも結局は安くて有効といえる。

予防[編集]

水痘・帯状疱疹ワクチン(生ワクチン)接種が予防の第一選択である。定期接種に組み込まれている国もあるが、日本では定期接種外(任意接種)とされていて、自治体による公費助成が進み、2014年10月1日から定期接種となった[1]。 1歳になったら、MR(麻しん風しん混合)ワクチンの次に できるだけ早く接種、1回目の接種後3か月たったら2回目を接種することが推奨される。

なお、定期接種の対象者とスケジュールは

  • 生後12ヶ月から生後36ヶ月にいたるまでの児(1歳から3歳の誕生日の前日まで)
    • 1回目を1歳0ヶ月 - 1歳3ヶ月の間、1回目終了から3ヶ月以上あけて、標準的には6 - 12か月までの間隔をおいて2回目。
  • 生後36ヶ月から生後60ヶ月にいたるまでの児(3歳から5歳の誕生日の前日まで)
    • 1回接種。経過措置として2014年10月 - 2013年3月31日まで限定。

ただし、既に水痘に罹患したことがある場合は対象外。任意接種として既に水痘ワクチンの接種を受けたことがある場合は、既に接種した回数分の接種を受けたものとみなす(経過措置対象者も含む)。

水痘患者と接触(空気感染が主なので直接触るという意味ではなく、同一フロアにいると言う意味)してしまった後でも、72時間以内にワクチン接種することで発症の予防または症状の軽減が期待できる[2]

家族内で水痘の患者に接触(同上)してしまった乳児や免疫不全患者、悪性腫瘍の化学療法を行う病棟での院内発症の際などには、患者と接触した者に予防的にアシクロビルを投与することがある。接触の7 - 9日後に内服を開始し、7日間継続する。

帯状疱疹との関係[編集]

宮崎県内の医療機関が1997 - 2006年に行った4万8388例(男2万181人、女2万8207人)に対する調査では、8月に多く冬は少なく、帯状疱疹と水痘の流行は逆の関係にあった。この現象は、20 - 40歳代の子育て世代に顕著なため、水痘の子供と接したことによるブースター効果(追加免疫効果)が働いたと考えられている[3]

脚注[編集]

  1. ^ 厚生労働省. “水痘ワクチンの定期接種Q&A”. 2014年8月27日閲覧。
  2. ^ 水痘・帯状疱疹とそのワクチン(IASR Vol.34 p.287-288:2013年10月号)
  3. ^ 水痘が減ると帯状疱疹が増加 日経メディカルオンライン 閲覧:2009年10月16日 記事:2009年10月13日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  • 水痘 国立感染症研究所感染症情報センター
  • 水ぼうそう メルクマニュアル家庭版