風邪
提供: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
| ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。免責事項もお読みください。(現在、Wikipedia‐ノート:免責事項#免責テンプレートの廃止提案にて、このテンプレートの廃止が提案されています。意見をお持ちのかたは議論に参加してください。) |
目次 |
[編集] 定義
医学的に風邪(かぜ)は急性上気道炎と称する。いわゆる「風邪(風邪症候群)」のこと。急性上気道炎、急性鼻咽頭炎、急性咽頭蓋炎までふくめる。 [1]
[編集] 概要
主にウイルスの感染による上気道(鼻腔や咽頭等)の炎症性の病気で、咳嗽、咽頭痛、鼻汁、鼻づまりなど局部症状(カタル症状)、および発熱、倦怠感、頭痛など全身症状が出現した状態を指し、このことから上気道感染とも呼ぶ。通常鼻汁は風邪の初期はさらさらとした水様で、徐々に粘々とした膿性に変化する。だが全身症状がことに強く、時に重症化する。俗称として、消化管のウイルス感染によって嘔吐、下痢、腹痛などの腹部症状と上記全身症状を来した状態を、「お腹の風邪」(もしくは胃腸かぜ)と呼ぶこともある。
風邪の多様な症状は、様々な病因によって発生し、稀には性病として知られる淋病が、喉粘膜に発生する事によっても、風邪によく似た症状が出る。この他にも風邪と紛らわしい初期症状を示す病気は数多くあり、「風邪は万病のもと」と言われる所以である。
「風邪」の語源は中国医学にある。中国医学における風の邪気、すなわち「風邪」(ふうじゃ)によって引き起こされる、発熱や寒気等の症状を来す病気の概念が日本に伝わり、日本ではそれを一般化して「風邪」(かぜ)と呼ぶようになった。
[編集] 病因と治療法
- 以下のものは成人についてのものであり、乳幼児、高齢者、ぜんそくその他のハイリスクの病態のある者には当てはまらない。
空気は鼻前庭から鼻腔、咽頭、喉頭、器官、気管支、肺胞へと導かれる。この鼻前庭から咽頭までを上気道と称する。この時、大気中の微生物が侵入して上気道で急性感染症が発生したものを風邪(急性上気道炎)と称する。症状は、風邪症候群と表現されるように、微熱、頭痛、発熱、悪寒、鼻汁の過分泌、咽頭痛、咳、声枯、食欲不振、下痢などさまざま。
予防は、手洗いやうがい等が有効とされる。
かぜ症候群の病原は80 - 90%が複数のウイルス感染であり、そのほか10 - 20%が細菌やマイコプラズマ、クラミジアなどの感染による。複数のウイルス感染に対する抗ウイルス剤は現在の所ない。原因ウイルスに対して抗生物質は無効である(抗生物質は抗菌剤であってウイルスには無効である。抗生物質の薬理の項を参照のこと)。
但し、抗菌剤の適用について、気道粘膜のウイルス感染に続いて細菌感染が引き続いて起こる場合があり、咽頭炎の集団発生等明確な細菌感染を認める所見がある場合は抗菌剤を投与する。
いわゆる風邪薬は症状の緩和させるものである。発熱は一種の生体防御反応であり、症状が激しい場合を除いて解熱•鎮痛剤の濫用はさけるべきである。[3] 漢方薬に関しては、漢方にある程度の知識と経験をもった医師が治療として処方するのが望ましい。
[編集] 病原体(病因)
- ライノウイルス
- 鼻がくずれる、普通感冒といわれている。
- くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどが主症状で、年齢を選ばない。
- アデノウイルス
- 夏に流行。プールで感染するプール熱として知られる。
- パラインフルエンザウィルス
- インフルエンザという名称が入っているが、インフルエンザウイルスとは別のウイルスである。
- 喉頭と下気道を起こしやすい。子供がかかる場合が多い。
- RSウイルス
- 気管支炎や肺炎を起こしやすい。乳幼児は重症になる場合もある。春と夏の感染が多い。
- コロナウイルス
- 冬に感染しやすい。SARSはコロナウイルスの新種と言われる。
- エコーウイルス
- エンテロウイルス
- 下痢を起こしやすい。夏に流行する。
- マイコプラズマ
- オリンピック熱として知られる(繁殖周期が四年なため)。肺炎を起こしやすく「マイコプラズマ肺炎」とも呼ばれる。
- インフルエンザウイルスC型
- 毒性が弱いことから、インフルエンザウイルスCは風邪と判断される場合が多い(A・B型についてはインフルエンザを参照)。
他にもあらゆるウイルス、マイコプラズマ、クラミジア、細菌が風邪の原因となり、その数は200種類以上といわれる。風邪となる病原は非常に多く、またライノウイルスを例に挙げると、数百種類の型が存在するためワクチンを作ることは事実上不可能であり、どのウイルス(または細菌)が原因なのか診断するのも困難である。
[編集] 鑑別疾患
- 経過が短いもの (経過が短いものは急速に増悪し、治療が間に合わないこともある)
- 経過が長いもの (正しい診断にいたるまで時間がかかることがある)
[編集] 感染経路
病原体の感染経路には、以下の3種類がある。
- 空気感染(飛沫核感染)は結核,麻疹,水痘などの病原体が直径5µm以下の微小飛沫核となって長時間空中を浮遊し、空気の流れによって広範囲に伝播される感染様式で、空調設備のある個室への隔離や特殊なマスク(N95マスク)の着用が必須とされる。
- 飛沫感染はインフルエンザ、風疹、マイコプラズマなどの病原体が咳、くしゃみ、会話などで直径5µm以上の飛沫粒子となって飛散し、約1m の距離内で濃厚に感染を受けるもので、通常のマスク装着による飛沫予防策も有効とされている。
- 接触感染はいわゆる風邪、MRSA、O-157、赤痢、急性下痢症、A型肝炎などで見られ、感染源との接触した手・体による直接接触、或いは患者に使用した物品や環境表面との間接接触によって成立する。手洗いの励行は勿論、病原体に応じて手袋・ガウンなどの使用、聴診器など器具の共用禁止、消毒薬の使用、個室隔離など、様々な接触伝播経路における予防策が必要となる。
[編集] 風邪に対する生活上の注意
病原体に対しては、皮膚や粘膜が物理的防壁として、涙、唾液、咳、排尿、排便などが生理的排出機構として、更には免疫機構が重要な役割を演じている。根本的な風邪薬が無い現在、これら自然に備わった感染防御機構をいかに上手に働かせるか、が重要となる。
- 十分な栄養と、睡眠をとる。
- 安静にして休んでおくのは医療上も基本原則である。暴飲暴食、喫煙・飲酒も避ける。
- 外出後やトイレの後などに、手を石鹸でよく洗う。
- マスクを着用する。
- 上気道のカタル症状に気付いたらマスクを常時着用し、気道粘膜が冷えたり乾燥したりしないようにする(気道粘膜の感染防御能保護の為)。感染形態として飛沫感染をするインフルエンザも、病初期には風邪と同様の症状を呈するので、早めのマスクの着用は重要である。
冷気に身体を曝す、身体が冷えることが風邪の原因である(あるいは感染・発病を助長する)と日本の農村部では一般には信じられている。一方で、欧米圏や、日本でも東京などの都市部[要出典]では「無関係」とする見解が主流である。ただ、無関係を唱える説はいくつかあるものの、それを立証するデータが揃っていないのも、また現状である。
[編集] 民間療法
風邪に対する民間療法には様々なものがあり、中には相矛盾するものもある。一般的には免疫活動を活発化させると良いと考えられているが、必ずしもそれに繋がらないものもある。
- ネギ
- 縦に切り込みを入れ、軽く焼き、手ぬぐいなどにくるんで喉に巻く。(だが実際は外からの効果はなく、その臭いなどが鼻やのどの粘膜に少し作用し、息苦しさを和らげたりする)
- 適当な長さに切って坐薬として使用する。
- 辛味成分には発汗作用があり、食用としても効果がある。
- ニラ
- その高い栄養価と胃腸に優しいという点から、雑炊の具などによく利用される。
- しょうが湯
- お湯を注いですぐに作れるタイプも市販されている。体を温め、喉の痛みや咳に効果を発揮する。
- 葛湯
- 葛粉を水に溶いて加熱して飲む。風邪の漢方薬の代表である「葛根湯(かっこんとう)」は名前のとおり葛の根が主成分である。生薬としての葛根には発汗作用・鎮痛作用があるとされる。
- 蜂蜜大根
- さいの目に切ったダイコンを蜂蜜に一晩程度漬け、そのシロップを飲む。
- キンカンの甘露煮
- 数個を湯に漬け、飲用する。
- 卵酒
- 日本酒、卵、砂糖をかき混ぜ、湯煎にかけて卵が固まらない程度に温める。手軽にやるには燗をつけた酒に溶き卵を加えながらかき混ぜる。生姜の絞り汁を加えると体の保温効果が高まり、より有効である。海外でもワインやホットウィスキーに卵を加え、蜂蜜などを使った「エッグノック」という飲み物が風邪を引いた際に用いられている所がある。ただし、アルコールを含むため市販の風邪薬と併用してはならない。特に、多くの市販薬に含まれている解熱鎮痛成分:アセトアミノフェンはアルコールと併用すると肝臓に強い毒性を示す。長期間に渡って併用した結果死亡した事例もあるため特に注意が必要である(詳しくはアセトアミノフェンを参照)
- ミルクセーキ
- 生卵と牛乳をよくかき混ぜて作るミルクセーキは、卵の良質なタンパク質やビタミンを美味しく手軽に摂取できる。とくに解熱剤などによって胃腸が弱ったときの重要な栄養源となる。場合によって砂糖などで調味する。
- ホットレモン
- ビタミンCを摂取し、体を温める。
- 陳皮
- みかんの皮を十分に乾燥させたもので漢方薬として用いられる。自宅でもよく洗ったみかんの皮を十分に乾燥させて作ることができる。それを細かくして煎じて飲む。喉から来る症状によく効く。また、みかんの中身は水分とビタミンCが豊富なので、捨てずに食べる。薄皮は消化機能が低下している場合は、消化不良となってしまうこともあるので、注意する。
- 梅干し
- おかゆを食べるときの定番のおかずだが、風邪に対する効果も高い。
- モモ缶
- モモの果肉をシロップに漬けた缶詰を食べる。療法というよりも、見舞い品として多く用いられることから。
- 風呂に入らない(日本)
- 最新医療では、発熱が無ければ風呂に入っても良いとされる。ただし、湯冷めを避けるため、浴室及び脱衣室の十分な保温が必要である。また、長時間の入浴は体力を消耗するので、短時間にとどめるべきである。
- 体を冷やす(西洋)
- 氷を浮かべた水風呂に入ると効果的とされるが、全身を冷やすことは体力の低下に繋がる。高熱が続くようなら腋下、内股などを冷やすと効果的。ただし、頸動脈を冷やすと冷やされた血が脳に流れ込み悪影響を与える可能性があるので、注意が必要である。
- とにかく体を温める(日本)
- 実際は悪寒を感じたときに温めればよく、暑く感じているときまで温める必要はない。体感に見合った対応をするのが一番である。
- 水分を取る
- 汗をかくので水分を大量に取る。風邪をひくと体温が上がり、目に見える形での汗は減少するが、皮膚からの水分喪失の主体である不感蒸泄は増加する。電解質を補いながらの水分補給は必要である。ただし心不全や腎不全を持つ危険のある高齢者の場合は、過剰にならないように注意する必要がある。
- チキンスープ
- 欧米では鶏肉と野菜を煮込んで作ったチキンスープが風邪に効果があると信じられており、いまでも民間医療としてよく用いられる。この説は古く、12世紀にはすでにユダヤ人のモーシェ・ベン=マイモーンによって記されていた。チキンスープはまだ科学的に効果が立証されたわけではないが、温かく栄養に富んだスープは患者に体力をつけるのに役立つとされている。
- ビタミンCの摂取
- ビタミンCが風邪を予防するという説をはじめて大々的に広めたのは、ノーベル化学賞を受賞したライナス・ポーリングであった。1970年に出版されたポーリングの著書『ビタミンCと感冒 (Vitamin C and the Common Cold)』はベストセラーとなった。現在では、ビタミンCはとりわけ子供や疲労した大人の風邪の予防に一定の効果があることがわかっているが、万人に効果があるわけではないとされている。また一部の科学者からは、ビタミンCは体内でシュウ酸を生じさせるため、過剰摂取すると胆石の発生につながるという危険性が指摘されている。
[編集] 風邪はうつすと治るという迷信
病原体が感染してから発病するまでを潜伏期間と呼び、風邪がうつっても1 - 3日ほど自覚症状は殆ど現れない。また高熱など全身症状が強いインフルエンザとは異なり、いわゆる風邪は発病しても数日で治ってしまう。従ってうつした者が快方に向かう頃に、うつされた者が発病することから、いわゆる「風邪はうつすと治る」という迷信が広まったと考えられる。
予後良好の風邪でも、肺気腫など慢性呼吸器疾患患者にうつした場合、或いは肝硬変や糖尿病、エイズなど免疫力の低下した者にうつした場合、現疾患或いは風邪症状が急に増悪することがあり(参照:日和見感染)、「かぜは万病のもと」ということもあり、充分な配慮が必要である。
[編集] 脚注
- ^ ただし、インフルエンザ(流行性感冒)やマイコプラズマ肺炎等までを言う場合もある。多くの場合単に風邪と言えば急性上気道炎(普通感冒)を指し、それ以外を風邪と呼ぶことは少ない(ただしインフルエンザであるか普通感冒であるかが判明している場合のみ)。インフルエンザについては風邪と呼ばれることも多いが、急性の全身症状を問題視する人は、「インフルエンザを風邪と呼ぶべきではない」と警鐘を発している。ただし、インフルエンザであるか普通感冒であるかは、症状からは区別がつきがたい場合も多い。
- ^ かつては抗生物質を処方される場合が多かったが、多くの場合、風邪の原因はウィルスであるので、細菌を対象とした抗生物質は効果がない。実際、抗生物質を飲んでも飲まなくても、風邪をひいている期間は同じだという調査結果がある。"抗生物質が、風邪をひいている期間を短くする"などという科学的論文は存在しない。つまり、普通の風邪であれば、結局、抗生物質を飲まなくても治っているのである(ただ、プラセボ効果が生じている可能性はある)。患者は薬で風邪を直しているつもりでも、実際に風邪を治しているのは、人体が本来持っている自然治癒力なのである。米山公啓『自然治癒力のミステリー』法研、1998、 ISBN 4-87954-188-5、 p.10
- ^ 抗生物質の多用は耐性菌の発現をもたらす危険もあるので、現在は風邪程度で抗生物質を処方する例は少なくなっている。多くは解熱剤、咳止めなどの症状を緩和する薬や、あるいはブドウ糖やビタミンCなどの自然治癒力を助ける栄養補給を行う例がほとんどである。