心不全

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心不全
分類及び外部参照情報
Heartfailure.jpg
主な心不全の兆候
ICD-10 I50
ICD-9 428.0
DiseasesDB 16209
MedlinePlus 000158
eMedicine med/3552 emerg/108 radio/189 med/1367150 ped/2636
Patient UK 心不全
MeSH D006333
プロジェクト:病気Portal:医学と医療
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心不全(しんふぜん、heart failure)は、心臓の血液拍出が不十分であり、全身が必要とするだけの循環量を保てない病態を指す。

総論[編集]

心不全の症状は、主に鬱血によるものである(鬱血性心不全)。左心と右心のどちらに異常があるかによって、体循環系肺循環系のどちらにうっ血が出現するかが変わり、これによって症状も変化する。このことから、右心不全と左心不全の区別は重要であるが、進行すると両心不全となることも多い。

また、治療内容の決定に当たっては、急性心不全慢性心不全の区別も重要である。急性心不全に当てはまるのは例えば心筋梗塞に伴う心不全であり、慢性心不全に当てはまるのは例えば心筋症弁膜症に伴う心不全である。 念のため付け加えると、急性心不全が終末期状態としての心不全を指しているわけではない(急性心不全は治療により完全に回復する可能性がある)。 最近では[いつ?]、心臓の収縮機能は正常であるが拡張期機能が低下した心不全(HF-PEF)が、高齢女性に多いことがわかって来ており[要出典]病態や治療方法の確立が急がれている。

病態[編集]

左心不全と右心不全[編集]

症状を来たす原因が、主に左心室の機能不全によるものなのか、右心室の機能不全によるものなのかによって、心不全を大きく2つに分類する方法である。厳密に区別することができない場合も多いが、病態把握や治療方針決定に有用であるため、頻繁に使用される概念であるので後述する。

収縮不全と拡張不全 
心不全の30%から50%は左心室の十分な拡張を認めず、拡張不全が占めると考えられている。拡張不全は収縮不全に比べ女性、高齢者に多いが、まだ診断基準は定まってはいない。拡張不全には高血圧や虚血性心疾患の合併が多い[要出典]
左心不全 右心不全
うっ血による所見 左房圧上昇による肺うっ血 中心静脈圧上昇による静脈うっ血
• 急性肺水腫(労作時呼吸困難や起座呼吸、湿性ラ音など)
• 左房圧上昇
• 心係数低下
• 下腿浮腫
• 静脈怒張
• 肝腫大
心拍出量低下
による所見
• 血圧低下
• 全身倦怠感
• 尿量減少
• 尿中Na排泄量減少
• 肺血流量低下による心拍出量低下
その他の所見 • 心濁音界の拡大
• III音、IV音(奔馬律)
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左心不全[編集]

左心不全(さしんふぜん、left heart failure)は、左心系の機能不全にともなう一連の病態のことである。左心系は体循環を担当することから諸臓器の血流低下が発生するほか、心拍出量低下による血圧低下、左房圧上昇による肺うっ血が生じる。肺うっ血は、肺が左心系の上流に位置することから出現するものである。

  • 血圧低下の症状
頻脈、チアノーゼ、尿量低下、血圧低下、手足の冷感、意識レベルの低下
  • 肺うっ血の症状
肺高血圧胸水労作時呼吸困難、発作性夜間呼吸困難、咳嗽チェーンストークス呼吸、湿性ラ音

胸部X線画像においては、

  • 心陰影の拡大
  • 肺うっ血
  • Kerley's B line

が見られる。

左心不全は、さらに肺血流の停滞を経由し、右心系へも負荷を与えるため、左心不全を放置したとき、右心不全を合併するリスクが高くなる。特に心不全における呼吸困難は、横になっているよりも座っているときの方が楽である、という特徴を持つ(これを起座呼吸(きざこきゅう、orthopnea)という)。

右心不全[編集]

右心不全(うしんふぜん、right heart failure)は、右心系の機能不全にともなう一連の病態のことであり、静脈系のうっ血が主体となる。この場合、液体が過剰に貯留するのは体全体、特に下肢であり、心不全徴候としての下腿浮腫は有名である。その他、腹水肝腫大静脈怒張など、循環の不良を反映した症状をきたす。

右心不全の多くは、左心不全に続発して生じるかたちとなる。左心不全で肺うっ血が進行し、肺高血圧をきたすまでに至ると、右室に圧負荷がかかり、右心不全を起こす。治療薬にコルホルシンダルパートがある。

右心不全のみを起こすのは、肺性心肺梗塞など、ごく限られた疾患のみである。

急性・慢性心不全[編集]

急性・慢性心不全の区別は、主として、治療内容の決定に使用される。

急性心不全[編集]

急性心不全においては、心機能の低下が代償可能な範囲を上回り、急激な低下を示すことから、血行動態の異常は高度となる。なお、左心不全が多い。

症状としては、呼吸困難ショック症状といった急性症状が出現する。

治療方針としては、血行動態の正常化を図る(心臓負荷を軽減し、心拍出量を増加させる)ことが優先され、迅速な処置が求められる。

慢性心不全[編集]

長期にわたって進行性に悪化するため、代償された状態が長期間持続したのちに破綻する。これによって、収縮能および拡張能は低下し、また、代償機構の破綻によって、増大した体液が貯留することとなる。

この結果、倦怠感と呼吸困難の持続が出現し、運動耐容能が低下する。

治療は、心機能の改善やQOLの向上と生命予後の改善を目的として、自覚症状の軽減を主眼とするものとなる。

診断[編集]

前述のような臨床症状から疑われ、心エコー検査によって診断される。エコーによって、心不全の原因疾患の検索がなされ、心臓の動きは十分か、拍出量がどの程度かなどを定量的に把握することができる。胸部X線写真心電図脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)などの血液生化学検査が参考になることもあるが、通常はエコーが最も多くの情報をもたらす。観血的には肺動脈カテーテルを挿入し心拍出量や肺動脈楔入圧(PCWP)、中心静脈圧(CVP)の測定を行う。

心不全の病期分類[編集]

心不全の病期分類には臨床症状から分けた分類, カテーテルによる計測値から分けた分類などさまざまな分類がある NYHA分類(ニハ分類、またはナイハ分類と発音される)は、ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association: NYHA)が定めた心不全の症状の程度の分類であり、以下のように心不全の重症度を4種類に分類するものであるが、簡便でありよく使用される。

NYHA I度 
心疾患があるが症状はなく、通常の日常生活は制限されないもの。
NYHA II度 
心疾患患者で日常生活が軽度から中等度に制限されるもの。安静時には無症状だが、普通の行動で疲労・動悸・呼吸困難・狭心痛を生じる。
NYHA III度 
心疾患患者で日常生活が高度に制限されるもの。安静時は無症状だが、平地の歩行や日常生活以下の労作によっても症状が生じる。
NYHA IV度 
心疾患患者で非常に軽度の活動でも何らかの症状を生ずる。安静時においても心不全・狭心症症状を生ずることもある。

killip分類は急性心筋梗塞での心機能障害の重症度を分類したものである.純粋な心不全の分類とは異なるかもしれない

killip分類
killip Ⅰ
 ポンプ失調(ー) 心不全なし
killip Ⅱ
背面1/2で湿性ラ音 軽症心不全(ラ音,Ⅲ音,頸静脈怒張)
killip Ⅲ
全肺野で湿性ラ音  肺水腫
killip Ⅳ
 心原性ショック     心原性ショック

Forrester分類はカテーテルによる計測値を使った分類である 治療法との相関で実際の現場ではよく使われる分類法であるが,カテーテルを挿入しないと計測できないといった不便さがある

Forrester Ⅰ
  C.I.>2.2 PAWP<18
Forrester Ⅱ
  C.I.>2.2 PAWP>18
Forrester Ⅲ
  C.I.<2.2 PAWP<18
Forrester Ⅰ
  C.I.<2.2 PAWP>18
Forrester分類
心拍出
係数
2.2以上
2.2以下
  肺動脈契入圧
18以下 18以上

Nohria分類はNohriaらが提唱した, Forrester分類のカテーテルを挿入しないと計測できないといった不便さを改善した分類である

Nohria A 
 = dry&warm 低灌流所見なし  鬱血所見なし
Nohria B 
 = wet&warm 低灌流所見なし  鬱血所見あり
Nohria L 
 = dry&cold 低灌流所見あり  鬱血所見なし
Nohria C 
 = wet&cold 低灌流所見あり  鬱血所見あり
ノーリア分類
  うっ血所見
なし あり
組織灌流
の低下
なし A
warm-dry
B
warm-wet
あり L
cold-dry
C
cold-wet

なおここで言う低灌流所見(=cold)は末梢まで血液が行きわたっていない状態,四肢が冷たいといった所見である 鬱血所見(=wet)は肺鬱血の所見,つまり夜間呼吸困難,起座呼吸,kerley B line(+)といった所見である

治療[編集]

現代医学による治療[編集]

原則として、静脈うっ滞を改善するには利尿薬が、心臓の拍出量改善のためには強心薬が使われる。 その他血管拡張薬を併用することもある。遺伝子組み換えヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)も用いられる。ただし、心不全は様々な原因によって起こるので、原疾患によって治療法も大きく異なる。

心不全の予後を改善する目的として、交感神経β受容体遮断薬アンジオテンシン変換酵素、また利尿薬の一つであるスピロノラクトンなどの抗アルドステロン薬の併用による治療が推奨されている[1][要ページ番号]

急性期[編集]

急性期治療においては、CS(Clinical Scenario)分類を用いることが提唱されている[要出典]。これは収縮期血圧(sBP)をベースにしたもので、急性心不全発症時のsBPが高いほど心予備能が高い、すなわち予後良好である、という知見に基づいている。CS分類においては、まず来院直後のsBPをもとに下記の3分類、また明らかに治療戦略の異なるものを独立させて、合計5分類を行なう。

CS1
血圧が高いタイプで、sBPは140mmHgより上である。急激な呼吸困難、肺水腫(flash)が主病態となり、胸部X線写真上、心臓は拡大していないことも多い。高血圧によるものが多く、ある日突然に息苦しくなる。
治療としては、まず血管拡張薬の投与が行なわれる。
CS2
血圧が大きく変化しないタイプで、sBPは100〜140mmHgである。症状は比較的緩徐に悪化し、末梢浮腫が主病態となる。胸部X線写真上、心拡大が認められる場合が多い。
治療としては、まずhANPや利尿薬の投与が行なわれる。
CS3
血圧が低下するタイプで、sBPは100mmHg未満となる。症状は急激な場合と緩徐に悪化する場合があり、低灌流が主病態となる。重度の慢性心不全、低心拍出量が基礎にある。
治療としては、まず強心剤投与と輸液が行なわれる。
CS4
急性冠症候群(ACS)によるものである。治療はACSのそれに準じる。
CS5
右心不全を来たしているものである。sBPが90以上で慢性全身体液貯留があれば利尿薬が考慮され、sBPが90未満では強心薬が投与される。sBPの改善が認められなければ血管収縮薬が考慮される。

入院期[編集]

入院期の治療においては、フォレスター分類(Forrester分類)が用いられてきた。これは、心臓の拍出量を表す心係数(2.2 L/min/m2を境界とする)と、静脈のうっ滞の程度を表す肺動脈楔入圧(18 mmHgを境界とする)とから、心不全の状態を4つに分類し、それぞれに適切な治療法を提案するものであった。しかし、肺動脈楔入圧の測定はかなり侵襲度が大きいこともあり、身体診察のみで分類できるノーリア分類(Nohria分類)の活用が提唱されている[要出典]

東洋医学による治療[編集]

循環器の専門医が少なかった1960年代までは、心臓病は鍼灸の適応症の一つであった。たんに症状を緩和するだけでなく、弁膜症や狭心症などの治験例もかなりある[2][要高次出典]。現在はうっ血性心不全などの治療でも、針灸を利用する人はほとんどいない。

予後[編集]

原疾患によって異なる。一般的には、心不全に対して適切な治療がなされていれば、長期生存も可能である。

その他[編集]

死因としては「心不全=心臓が止まった」としての意味でしかないため、死亡診断書の死因としては認められない。(病理学上の正式な死因が記載される)。

突然死に至ることもある病態であるため、芸能人実業家政治家などが自殺薬物過剰摂取などで急死した場合などにおいて、遺族や関係者の意向、あるいは商業的・政治的な事情などからこの事実をあえて伏せたい場合に、死因を急性心不全として公表する例もある。なお、これと同様のことは急性心筋梗塞脳出血などにもいえる。[要出典] 実際、著名人の死について、死亡当初は急性心不全として公表されながらも、実際には自殺や薬物の過剰摂取事故であったという事実が、死後一定の期間経った後に遺族や関係者などによって明らかにされた例は存在する[3] [4]。 また、急死時において最後まで死因を特定しにくい時に、検死報告書などに便宜上「急性心不全」と記載されることが時折見られ[5][6]、過去には時津風部屋力士暴行死事件の際にこれが大きな問題となったことがある。

脚注[編集]

  1. ^ 慢性心不全治療ガイドライン
  2. ^ 代田文誌:針灸治療の実際。1967年、創元社、81ページ以降の循環器疾患の章
  3. ^ 作家の鷺沢萠は、朝日新聞の訃報などで心不全とされていたが[1]、後に自殺と判明した[2]
  4. ^ 都はるみが所属する芸能事務所代表の中村一好は当初、急性心不全と報じられていたが[3]、数日後に都はるみがマスコミ各社にFAXを送り、自殺だったことを明かした[4]
  5. ^ 神戸大学の溝井泰彦教授の調査チームで、監察医制度がない地域に心不全が突出しており、原因不明の場合ほとんどが急性心不全で処理されている疑いが強いことが示された。(朝日新聞 1990年12月4日)
  6. ^ 厚生労働省の人口動態統計では、死因別死亡率で1993年から1995年にかけて心疾患に不自然な急減があり、報道発表資料には「死亡診断書の改正の影響によるものと考えられる」との注記がなされている[5]。この時期の死亡診断書の様式変更で、終末期状態としての心不全や呼吸不全を直接死因として記入しないよう説明書きに明示された。

参考文献[編集]