超音波検査

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

超音波検査(ちょうおんぱけんさ)・エコー検査(エコーけんさ)は、超音波を対象物に当ててその反響を映像化することで、対象物の内部の状態を非破壊的に調査することのできる画像検査法の一種である。主に建設・材料・医療分野で頻繁に利用されている。近年、特に金属材料などを対象として、レーザーを用いて超音波を励起・計測するレーザー超音波計測が行われている。レーザー超音波計測により非接触での検査が可能となった。

目次

[編集] 原理

超音波検査装置は、大きく分けて、超音波を発生させ反射した超音波(エコー)を受信する仕組みを持つプローブ(探触子)と、受信したデータを処理する部分と、画像を表示するディスプレイからなる。 プローブを検査の対象物に当て超音波を発生させると、ごく短い時間のうちに、その音は対象物の中を進んでいき、固いものに当たると反射する。プローブでその反射音波を測定し、反射音が返ってくるまでの時間から距離を計算、内部の様子を可視化する。

開発当初のエコー検査では、音波を一方向のみに発射するだけのものであったが、その後改良され、扇状に音波を発生することで、対象物の断面画像がリアルタイムに見られるようになっている。

[編集] 医療におけるエコー検査

医療用超音波検査装置の一例(TOSHIBA SSA-270A)
新生児をエコー検査する様子
エコーによる胎児の画像
29週の胎児頭部を3D化した画像

エコー検査は体外からプローブを当てるだけで検査できる上、非常に安全でこれといった副作用もないことから、医療現場で最も頻繁に行われる検査のひとつである。日本の医療現場で単に「エコー」または「超音波」という場合は、通常この超音波検査のことを指すほか、書く場合には超音波検査の英訳であるultrasonographyの頭文字をとり、「US」と書かれることがある。

[編集] 分類 - 部位から

固い骨に囲まれている頭蓋のような部分を除けば、事実上体のほとんどの部分がエコー検査の適応となると言ってよい。代表的なものとしては以下のようなものがある。

  • 心臓超音波検査(echocardiography)では心臓の評価を行う。
  • 腹部エコーでは、肝臓胆嚢腎臓膵臓脾臓、大血管等の様子を観察することができる。胆石等はまずこれで発見を試みる。腹水の貯留も検査する。
  • 四肢では、筋肉などの軟部組織の腫瘤の検査に使われる。
  • 乳腺でも同様に、腫瘍や炎症の評価にエコーが使われる。最近ではエラストグラフィーという、いわゆる「硬さ」をエコーで判断して悪性かどうかを判断の1つにする方法もある。
  • 甲状腺では、甲状腺機能亢進症甲状腺腫の診断や評価に用いられる。体表に近く高解像度の画像が得られるため、基本的に超音波検査が第一選択となる。
  • 生殖器では、経エコーは卵巣・子宮病変の評価に利用される他、放射線被曝を避けたい妊娠時の胎児の診断で重要である。男性でも前立腺の検査や治療時の補助として経直腸エコーを用いることがある。
  • 体表から心臓の間には肋骨があるために、心エコー[1]では完全に評価出来ないことがある。特に心房内の血栓の有無の評価は難しいため、プローブを胃内視鏡検査のように飲み込ませて、食道内から検査を行う経食道エコーや、ファイバー状の細いプローブを下腿部より静脈に挿入し、心房近辺まで到達させて検査を行う経血管エコーなどが用いられることがある。
    • 上部消化管壁自体や膵臓・肝外胆管の観察のためにも、プローブを飲み込ませることがあるが、この場合は「超音波内視鏡検査」と呼ぶ。
  • 乳児に限り、脳血流の検査にエコーが用いられる(乳児の頭蓋骨には隙間があるため、エコーを通す)。

[編集] 分類 - 測定方法のバリエーション

最も頻繁に用いられる超音波検査は、超音波断層検査と呼ばれるものであり、これは体の断面図をリアルタイムに表示するものである。

[編集] Aモード

受信したエコーを表現するための方法はいくつかあるが、A(amplitude:振幅)モードとB(brightness:輝度)モードが基本となっている。 超音波は直進性に優れており、音響インピーダンスの異なった物質間の境界面で反射がおこる。 受信するまでの時間を元に物質までの位置を計算することが出来る。 物質までの距離を横軸にとり、反射したエコーの振幅を縦軸にとったグラフがAモード像である。 原理としては重要であるが、Aモードは実際の検査には、あまり用いられない。

[編集] Bモード

Aモードではエコーの振幅と位置を表示していたが、この振幅を点の明るさ(輝度)として表示したものがBモードである。1本の超音波ビームでは、一次元像しか得られないが、複数の超音波ビームを発生させると二次元像を作成することが出来る。 単に超音波断層検査と言った場合にはBモードを指すことが多い。

[編集] ドップラーエコー

ドップラー効果によって、反射した音波の周波数が変化することを利用して、物体がプローブに近づいているのか遠ざかっているのかを判定できる。

ドップラーエコーには、特定位置の超音波ビームの周波数変化を流速に変換しグラフ化するドップラーモードと、Bモード画像上に指定した領域での流速変化を色で表現するカラードップラーモードがある。

特に心エコー[1]で、心臓の血流を評価する際に有用である。

[編集] Mモード

M(Motion:動き)モードとは、断面上のさらにある一直線上に注目し、そこでの音波反射の経時変化を画像化する検査である。心臓の弁や心筋の動きなど、動きのある部位を時系列で観察できるため、ドップラーエコーと同様心エコー[1]での有用性が高い。

[編集] 超音波の限界

  • 気体を介すると描出の性能が極端に落ちる。そのため、含気の多いの描出には向かない。
  • 腸管のなかのガスのため、小腸大腸も常時描出できるわけではない。しかしイレウス虫垂炎胃癌の壁肥厚例など一部の疾患では有用である。
  • を貫通できない。
  • 正しくプローブを当てられるようになるまでやや訓練を要する。

[編集] 超音波検査の実際

[編集] 緊急超音波検査

FAST
外傷患者の場合、臓器傷害の有無を評価するためにFASTという方法がとられる。これは心嚢、左右肋間モリソン窩ダグラス窩、脾臓周囲の6か所をすばやく超音波検査を行い、腹腔内出血がないことを確認することである。出血所見により点数化し開腹手術の必要性を評価できる。

[編集] 腹部超音波検査

詳細は「腹部超音波検査」を参照

胆道系疾患をはじめ、腹部腫瘤の評価に超音波検査はよく用いられる。特に胆道系に関してはゴールドスタンダードになっている。CTと比べて血流との関係などの情報は多く、経時性も分かりやすいが、術者の技量が影響する検査である。

[編集] 心臓超音波検査

詳細は「心臓超音波検査」を参照

弁膜症の診断のほか、心機能や心筋壊死の評価を行うことができる。

[編集] 頸部超音波検査

頸動脈の動脈硬化を評価できる。

[編集] 乳腺超音波検査

乳がんの評価を行うことができる。


[編集] 医療以外での超音波検査

主に金属の溶接部分の欠陥を検出するものと、材料そのものの健全性を評価する目的に使用される。製作時と経年変化をチェックする場合があり、たとえば建設物の欠陥や老朽化を測定したり、材料や部品の内部検査を行ったりする目的で、超音波検査は実用化されている。日本国内では社団法人非破壊検査協会が認定技術者の資格を発効している。鉄骨に関しては通称「全鋼連」の資格が求められることが多い。

[編集] 脚注

  1. ^ a b c 心臓の超音波検査のこと。

[編集] 外部リンク