ダイコン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ダイコン
アオクビダイコン
アオクビダイコン
分類クロンキスト体系
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : ビワモドキ亜綱 Dilleniidae
: フウチョウソウ目 Capparales
: アブラナ科 Brassicaceae
: ダイコン属 Raphanus
: ダイコン R. sativus
学名
Raphanus sativus L. var. longipinnatus L.H.Bailey
英名
Daikon
Japanese radish
Mooli
ダイコン(Radishes, oriental, raw)
100 gあたりの栄養価
エネルギー 76 kJ (18 kcal)
4.1 g
糖分 2.5 g
食物繊維 1.6 g
0.1 g
飽和脂肪酸 0.03 g
一価不飽和脂肪酸 0.017 g
多価不飽和脂肪酸 0.045 g
0.6 g
トリプトファン 0.003 g
トレオニン 0.025 g
イソロイシン 0.026 g
ロイシン 0.031 g
リシン 0.03 g
メチオニン 0.006 g
シスチン 0.005 g
フェニルアラニン 0.02 g
チロシン 0.011 g
バリン 0.028 g
アルギニン 0.035 g
ヒスチジン 0.011 g
アラニン 0.019 g
アスパラギン酸 0.041 g
グルタミン酸 0.113 g
グリシン 0.019 g
プロリン 0.015 g
セリン 0.018 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
0 μg
(0%)
0 μg
0 μg
チアミン (B1)
(2%)
0.02 mg
リボフラビン (B2)
(2%)
0.02 mg
ナイアシン (B3)
(1%)
0.2 mg
(3%)
0.138 mg
ビタミンB6
(4%)
0.046 mg
葉酸 (B9)
(7%)
28 μg
ビタミンB12
(0%)
0 μg
コリン
(1%)
7.3 mg
ビタミンC
(27%)
22 mg
ビタミンD
(0%)
0 IU
ビタミンE
(0%)
0 mg
ビタミンK
(0%)
0.3 μg
ミネラル
カルシウム
(3%)
27 mg
鉄分
(3%)
0.4 mg
マグネシウム
(5%)
16 mg
マンガン
(2%)
0.038 mg
セレン
(1%)
0.7 μg
リン
(3%)
23 mg
カリウム
(5%)
227 mg
ナトリウム
(1%)
21 mg
亜鉛
(2%)
0.15 mg
他の成分
水分 94.62 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)
ダイコン、皮むき、生、 100g中の食物繊維[1]
項目 分量
炭水化物 4.1 g
食物繊維総量 1.3 g
水溶性食物繊維 0.5 g
不溶性食物繊維 0.8 g
ハマダイコンの花
江戸後期の大根(深川江戸資料館)
花が咲いた、畑のダイコン
大根やぐらに吊るされたダイコン

ダイコン(大根、学名:Raphanus sativus var. longipinnatus)はアブラナ科ダイコン属越年草で、野菜として広く栽培される。主に肥大したを食用とするほか種子から油を採ることもあり、緑黄色野菜でもあり淡色野菜でもある。名前の由来は、大きな根を意味する大根(おおね)から。

多くの品種があり、根の長さ・太さなどの形状が多様。また皮の色も白以外に赤・緑・紫・黄・黒などがあり、地域によっては白よりも普通である。日本ではほとんどが白い品種で、スズシロ(清白)の別名もこれに基づく。

概要[編集]

原産地は地中海地方や中東である。紀元前2200年古代エジプトで、今のハツカダイコンに近いものがピラミッド建設労働者の食料とされていたのが最古の栽培記録とされ、その後ユーラシアの各地へ伝わる。

日本には弥生時代には伝わっており、平安時代中期の『和名類聚抄』巻17菜蔬部には、園菜類として於保禰(おほね)があげられている。ちなみにハマダイコンまたはノダイコンと見られる古保禰(こほね)も栽培され、現在のカイワレダイコンとして用いられていた。江戸時代には関東江戸近郊である板橋練馬浦和三浦半島辺りが特産地となり、その中で練馬大根は特に有名であった。

ダイコンは日本においては品種・調理法とも豊富である。世界一大きくて重い桜島大根、世界一長い守口ダイコンなどの種類があり、日本人の食卓(鍋料理おでん等)には欠かすことのできない野菜となっている。葉はビタミンAを多く含み、青汁の原料として使われる。汁はビタミンCジアスターゼを多く含む。[2]

野菜としての位置づけにおいては、春の七草のひとつ「すずしろ」であり薬味煮込み料理にも使われるなど、利用の幅は広い。薬草であり、消化酵素を持ち、血栓防止作用や解毒作用がある。

特徴[編集]

根出葉羽状複葉で、頂小葉は大きい。太い主根は主軸が肥大して食用となる。収穫せず春を迎えれば、アブラナ属と似た淡紅色を帯びた白花をややまばらに付ける。果実の種子数はアブラナ属より少ない。

は、葉の付け根の低い三角錐部分で食用にされない。また、一般的にと呼ばれる食用部分のうち地上部分は、発生学的には根ではなく胚軸に由来する中間的な性質を持っている。青首ダイコンでは特に目立ち、ジャガイモ同様、光に応じて葉緑体を発達させる茎の性質を示している。

茎、胚軸、根の区別は道管の位置で区別できるが、ひげ根(二次根)でも見分けられる。根の部分は両側一列ずつ二次根が発生し、店先のダイコンではその痕跡がくぼんだ点の列として観察できる。 アブラナ属のカブでは、丸く肥大する食用部分が胚軸で、根はヒゲ根となって食用にされない。 [3]

変種[編集]

栽培種も変種 R. sativus var. longipinnatus として扱われるが、原種ははっきりしていない。染色体はn=9で、アブラナ属の多くの野菜と同様自家不和合性を持ち、交雑しやすい。 遺伝的研究から、日本のダイコンはヨーロッパ系統、ネパール系統とは差が大きく、中国南方系統に近い[4]事が確認されている。

  • ハツカダイコン(R. sativus var. sativus)
  • ハマダイコン(R. sativus var. hortensis f. raphanistroides)
日当りのよい砂浜などに自生的に生育する。野草として食用にされるほか、食用選抜も行われている。逃げ出した栽培種が野生化したと考えられていたが、遺伝的研究では日本の栽培種と差が大きく[4]、野生種の可能性が高い。
  • ノダイコン
日本の福島県会津盆地山形県米沢盆地などでみられる内陸性の自生種。遺伝的に栽培種に近く[4]、野生化したものと見られるが、中国系統と交雑する前の日本在来種とする説がある[5]
  • 黒大根(R. sativus var. niger)
根の表面が黒く内側は白。根が長くなる品種と蕪の様に丸い品種がある。丸い品種は肉質が硬くデンプンが多い。花の色は白や紫。

なお、アカザ科テンサイを形状から「サトウダイコン」と呼ぶが、ダイコンとはレベルで異なる縁遠い種である。

主な品種[編集]

品種として有名なもの以外に、各地で地ダイコン(地野菜)が栽培利用されていた。1980年の文献[6]には、全国で110品種が記録されている[7]。特に九州南部は独自性が強いとされている。

  • 青首大根 現在の主流品種で、作付面積の98%を占めるともいう。青首宮重(あうくびみやしげ)群。辛みが少なく甘みが強いこと、地上に伸びる性質が強く収穫作業が楽である事などから昭和50年代に急速に普及した。
他の品種はこれに押されて廃れ、郡大根(こおりダイコン)のように「絶滅」してしまった品種もある。現在他の品種は、品種保存や町おこしなどを志す一部の農家が少量栽培している。
  • 白首大根 胚軸が発達しないため、緑色の部分が無い。沢庵漬け用など。
  • 亀戸大根[8] 小型で肉質が緻密
  • 桜島大根 胴回りが巨大。
  • 聖護院 カブのような球形。
  • 辛味 汁気が少なく辛味が非常に強いため、主に蕎麦などの薬味に用いられる。見かけはミニサイズのダイコンで、形状から「ねずみ大根」とも呼ぶ
  • 守口大根 ゴボウのように細長く、世界最長。守口漬に使われる
  • 源助 短く太い加賀野菜。甘味が強く煮崩れしにくいことから、おでんに使われる
  • 宮重 現在主流の青首大根の片親。
  • 紅大根(長崎原産の大根)・紅しぐれ(群馬)外見は紫系の赤いダイコン。摩り下ろすと紫色の大根おろしになる。(用途:漬物千枚漬など)・大根おろしなど)
  • 大阪四十日小型種で、現在はカイワレ大根の種子として利用されている
  • 青皮紅心 中国産で、心里美(しんりび)とも。白い皮で中が紅色のダイコン。甘く水気が多いため果実のようにカービングにも利用される。
  • 葉だいこん 葉を蔬菜とするための品種で、家庭園芸向け。

生産[編集]

栽培、統計上は春だいこん夏だいこん秋冬だいこんに区分され、秋冬が全体の7割を占め、春と夏が残りを分け合う。 収穫量順(農林水産省平成22年)では千葉県北海道青森県宮崎県鹿児島県神奈川県で全国生産量の半分を占める。平成22年度生産量は全国で117万t。日本のダイコン生産量は世界一とされているが、作付面積、収穫量とも減少の傾向である。

年度 作付面積(ha) 収穫量(千t)
1998年(平成10年) 48 500 1 902
1999年(平成11年) 47 700 1 948
2000年(平成12年) 45 700 1 876
2001年(平成13年) 44 100 1 868
2002年(平成14年) 42 500 1 780
2003年(平成15年) 41 500 1 752
2004年(平成16年) 40 000 1 620
2005年(平成17年) 39 100 1 627
2006年(平成18年) 38 300 1 650
2007年(平成19年) 37 200 1 626
2008年(平成20年) 36 600 1 603
2009年(平成21年) 36 400 1 593
政府統計 平成21年産野菜生産出荷統計 より

食材[編集]

奇形三又大根(固い土や小石の多い畝で栽培した場合に多く見られる)

食材としての大根はビタミンCに富み鉄分・リン・カルシウムを含む。カロリーは少なく、ジアスターゼを多く含み[9]消化を助ける効能も有るため、ダイエット・フードとしても注目されている。 葉付き大根はそのまま置くと栄養価が下がるので、葉を切り落として二等分にし、切断面を密封して立てて保存するとよい。

[編集]

主に生食または加熱調理される。保存用に漬け物乾物とされるほか、辛みを生かして香辛料ともなる。 ダイコンはクビ(葉に近い部分)は汁が多くて甘く、サキ(地に深い先端部分)は汁が少なく辛い。このため、クビの部分は生でサラダに、サキは大根おろしなど薬味に向く。タコイカの煮込み料理に用いられるのは、ダイコンの酵素がこれらを軟らかくするため。

大根を繊切りにすることを「千六本」(せんろっぽん)という。これは中国語で大根を表す羅葡に繊切りの繊がついた「繊羅葡」(シエンルオポ)が、音訛したものである。

[編集]

畑で育っているダイコンの葉

栄養価が高く、春の七草スズシロ(清白)でもある。おひたし、みそ汁の具として用いられる。 炒め物にして食べると栄養の吸収が良いといわれる。また、カブの葉同様、刻んで飯に炊き込んだものは菜飯となる。

  • 間引き菜(まびきな) 発芽から数週間で間引きした苗
  • 大根菜(だいこんな) 一ヶ月ほど経ち10~20cm程度に根が発達した幼植物。これを野菜として利用するための品種もある。
  • 大根葉(だいこんば) 収穫期の葉でかつては広く利用されたが、現在は流通の都合や消費者の嗜好により原則として捨てられ、まれに葉付きダイコンと称して販売されている。成長した葉柄には棘状の突起があるので、生食には適さず加熱調理する。
  • 干葉(ひば) 根と同様に干して保存性を高めたもの。緑黄色野菜の少ない季節の貴重な保存食とされた。

種子[編集]

文学[編集]

成句[編集]

大根は、生でも煮ても焼いても消化が良くて食あたりしないので、何をやっても当たらない役者を「大根役者」と呼ぶ[10]。同じ理由でどうしても当たりを打てない野球打者を「大根バッター」とも呼ぶ。

脚注[編集]

  1. ^ 五訂増補日本食品標準成分表
  2. ^ 伊沢凡人・会沢民雄「カラー版 薬草図鑑」(家の光協会 ISBN 4-259-53653-2) 157ページ
  3. ^ 植物の観察~根10min.ボックス NHK
  4. ^ a b c 日本の栽培ダイコンにおける自家不和合性遺伝子と自家不和合性程度の遺伝的変異CiNii 論文
  5. ^ 辛味大根レシピ大百科|旬菜百科 味の素
  6. ^ 農林水産省 野菜試験場育種部(1980)「野菜の地方品種」野菜試験場
  7. ^ 南九州におけるアブラナ科野菜在来種の調査と収集農業生物資源ジーンバンク
  8. ^ 故郷に残したい食材農山漁村文化協会
  9. ^ http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~hokenctr/daikon.html
  10. ^ http://gogen-allguide.com/ta/daikonyakusya.html

関連項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]