慢性骨髄性白血病

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慢性骨髄性白血病(まんせいこつずいせいはっけつびょう Chronic myelogenous leukemia ,CML)とは、骨髄における造血幹細胞の無秩序な分裂によって特徴づけられる慢性白血病の一形態である。フィラデルフィア染色体と呼ばれる部分における特徴的な染色体転座と関連した造血幹細胞の無制限な増殖を伴う病気である。歴史的にインターフェロンなどを使用した化学療法や骨髄移植などが行われてきたが、21世紀初頭に効果的な治療薬Imatinib(イマチニブ、イマチニブメシル酸塩)が登場してからはその扱いは根本的に一変した。

目次

[編集] 発生率と疫学

慢性骨髄性白血病はすべての年齢層において患者が見られるが、中でも最も好発する年齢層は中年以降である。毎年10万人に1人か2人の割合で発生し、わずかではあるが女性より男性のほうが発生割合が高い。ヨーロッパの成人における白血病罹患者の15%から20%は慢性骨髄性白血病であるといわれている。よく知られている発症のリスクファクターは、電離放射線にさらされること、具体的には例えば、広島長崎において原子爆弾の被爆を受けた人が多い地域では、白血病の患者の割合が高いことが知られている。

[編集] 兆候

しばしば患者は診断段階で無症状であることが多い。定期健康診断においてたまたま、白血球数の増加が示されたという場合である。この時点では、慢性骨髄性白血病は類似の血液的症状を示す病気と明確に峻別されなければならない。 症状としては、易疲労感、微熱、感染症にかかりやすくなる、貧血血小板数の増加などがある。

[編集] 病態生理

この病気は、フィラデルフィア染色体として知られる染色体の転座による遺伝的異常と明白に関連すると 捉えられた最初の病気であった。フィラデルフィア染色体という名前の由来は、1960年代ペンシルベニア州フィラデルフィアの2人の研究者によって発見されたことによる。この染色体転座によって、2つの染色体(9番染色体22番染色体)の位置が入れ替わる。その結果、22番染色体における Bcr(breakpoint cluster region)遺伝子の一部は、9番染色体のAbl遺伝子と融合してしまう。この正常ではない融合遺伝子は、p210、時にはp185(pは細胞蛋白質の重さの基準)蛋白を生み出す。これはAbl遺伝子が、リン酸基 をチロシン残基に加えることが出来る領域をもたらすためで、Bcr-Abl融合遺伝子がもたらすものはチロシンキナーゼでもある。この融合タンパクは、インターロイキン3beta受容体サブユニットと相互作用をおこす。そのコピーは常に活性で、他の細胞のメッセージ蛋白の活性化を必要としない。次に、細胞周期をコントロールする多量の蛋白を活性化し、細胞分裂を促進させる。さらに、この融合タンパクはDNA修復を禁止するので、ゲノムが不安定となり、細胞は更なる遺伝子的異常を引き起こしやすくなる。

これら一連のBcr-Abl融合タンパクの振舞が、慢性骨髄性白血病の病態生理学的な要因である。この融合タンパクの本質やチロシンキナーゼとしての振舞についての改善されてきた理解に基づいて、目標をBcr-Ablタンパクに絞り、特にその活動を抑制することに主眼を置いた治療法が開発されている。それらのチロシンキナーゼ抑制剤は、慢性骨髄性白血病の完全寛解を誘起し、また、この病気の発生原因としてBcr-Ablタンパクが非常に重要であることを確証している。

[編集] 診断

慢性骨髄性白血病はしばしば、完全血球測定において、あらゆるタイプの顆粒白血球、典型的には未熟な骨髄細胞を含む結果であったことに基づいて判断される。好塩基球好酸球はほぼ確実に増加している。このことは類似の白血病性反応とこの病気とを区別するのに役立つ。骨髄生体組織検査(生検)はこの病気を評価する参考とするためにしばしば行われる。しかし、骨髄形態学のみでは判断に不十分である。 最終的にはフィラデルフィア染色体の有無によって診断される。この特徴的な染色体異常はごくありふれた細胞遺伝学的手法である、FISH法蛍光原位置ハイブリダイゼーション)やPCR法ポリメラーゼ連鎖反応)によって検出される。

[編集] 段階

本症はしばしば臨床的特徴と検査所見に基づいて3つの段階に分けられる。外部の影響がない場合、一般的に慢性期に始まり、数年間をかけて移行期へと移行し、最終的には急性転化期に陥る。最終段階は臨床的には急性白血病と同等の振舞を示す。

[編集] 慢性期(Chronic Phase:CP)

患者のおよそ85パーセントが診断時にこの段階である。この時期は、患者はほとんど無症状であるか、あっても軽度の疲労感や満腹感程度である。この段階がどれだけ継続するかは、治療が施されるのと同様にいかに早く発見されるかということによりさまざまである。最終的に、治療薬による有効な治療がなされない場合は移行期、急性転化期に移行する。

[編集] 移行期(Accelerated Phase:AP)

移行期に変化したとの判断の基準は幾分多様である。最も広く使用されている診断基準はWHOの提案したものであろう。以下にその内容を簡単に示す。

  • 10~19パーセントの血中または骨髄中の骨髄芽球
  • 20パーセント以上の血中または骨髄中の好塩基球
  • 血小板数が10万未満(治療とは無関係)
  • 血小板数が100万より多い(治療の効果が薄い)
  • フィラデルフィア染色体に加えて新たな染色体異常
  • 脾腫、白血球数の増加(治療に反応がない)

上記のいずれかの所見が見られれば、患者は移行期と診断される。この段階は次の急性転化期への変化が切迫しているという意味において重要である。

[編集] 急性転化期(Blast Crisis:BC)

この段階は慢性骨髄性白血病の最後の段階である。症状は急性白血病と同様であり、慢性期と同じような化学療法(抗がん剤治療)では白血球数のコントロールは困難で、進行が早く生存の望みは低くなる。以下のいずれかの所見によって判断される。

  • 血液または骨髄における骨髄芽球またはリンパ芽球が20パーセント以上
  • 生検の骨髄標本における巨大なblastのかたまり[要出典]
  • 肉腫の発生(骨髄外における固形病巣)

[編集] 治療

[編集] 慢性期

慢性骨髄性白血病への治療として、Imatinib Mesilate(商品名:グリベック、以下imatinibと略す)を服用することが第一選択肢である。以前は代謝拮抗物質(シタラビン水酸化尿素)、アルキル化薬、インターフェロンα2b、ステロイドが使用されていたが、これらはimatinibに取って代わられるようになる。imatinibは2001年に米国FDAの承認を受けた新しい薬剤で、特にBcr-Ablタンパク(上述)を標的にしている。その治療は以前の方法に比べて劇的に効果的であると評価されている。

骨髄移植も年齢の若い患者に対して、imatinibに無反応となった場合の治療として行われているが、それはしばしば有効でありはするものの、移植に関連した死亡率は高い。

新薬としてimatinibに抵抗性または不耐容の症例に対し、nilotinib(ニロチニブ、商品名:タシグナ) がある。 慢性骨髄性白血病の原因である、フィラデルフィア染色体を有する白血病細胞によってのみ産生されるBcr-Ablタンパクを、より選択的に強い阻害活性を有する。 imatinibに対して耐性を獲得した患者に効果が認められて、2007年7月にスイスで初めて承認。米国、欧州でも承認。

もうひとつの新薬、dasatinib(ダサチニブ、商品名:スプリセル)(imatinibと同等の作用機序を備えているが、より広い範囲のチロシンキナーゼの活動を抑制する)が2006年7月に米国FDAによって条件付で認可された(もはや反応がない患者あるいはimatinibを使用した治療に耐えられない患者のみ)。臨床前の研究ではdasatinibの白血病に対する治療効果はPD184352として知られる分子抑制剤の追加的使用によってさらに強化されるということが分かってきている。臨床効果はnilotinibと同等と言われている。

また異なった治療方法のさまざまな組み合わせの有効性・安全性については、目下研究途上である。

現在、bosutinib(ボスチニブ)、ceflatoninという新薬が、imatinibに対して耐性を獲得してしまった患者への臨床試験段階にある。

2009年1月「イマチニブ抵抗性の慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病」でnilotinib(タシグナ)が、「イマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病」でdasatinib(スプリセル)が本邦でも承認を取得。3月に薬価収載され処方可能となった。

[編集] 移行期・急性転化期

この段階は急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病のどちらかのすべての特徴を示すようになる。死亡率は非常に高い。多量の化学療法の後に骨髄移植をし、もっとも効果的に治療がなされる必要がある。移行段階の若い患者の場合、骨髄移植は任意である。しかし、骨髄移植後の再発率は慢性期に行った場合と比較して、移行期、急性転化期では高い。

[編集] 予後

予後はさまざまな要因によって左右される。

[編集] 外部リンク