保健所

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日本の保健所の地図記号

保健所(ほけんしょ、ほけんじょとも言う)とは地域住民の健康衛生を支える公的機関の一つであり、地域保健法に基づき都道府県政令指定都市中核市その他指定された市又は特別区が設置する。

近年では市町村保健センター福祉事務所などと統合され「保健福祉事務所」「福祉保健所」「保健福祉センター」「健康福祉センター」といった名称となっているところもあるが、保健所については地域保健法上必置義務があることから、その地方公共団体の組織規定上は○○保健所という名称を併せて付けている場合が多い(いわゆる「二枚看板」)。また、政令指定都市・中核市において保健所を一つのみ設置している場合は、本庁の保健、衛生を所掌する部局が保健所となっている場合が多い。

沿革[編集]

  • 昭和12年4月5日 : 保健所法制定
  • 昭和22年9月5日 : 保健所法改正
  • 平成6年6月30日 : 地域保健対策強化のための関係法律の整備に関する法律(保健所法の地域保健法への改正および関連法の改正を目的)制定
  • 平成9年4月1日 : 地域保健法施行

業務[編集]

さいたま市の保健所

保健所の業務を例示すると次のような多様な業務の全部又は一部を行っている。

対人保健[編集]

住民に対するもの : 一般に保健指導または保健サービスと呼ばれる分野。母子保健や老人保健など一般的なものは市町村保健センターに任せ、保健所はより専門的・広域的な業務に特化している場合が多い。ただし、中核市や政令指定都市特別区などは保健所設置主体と一致するため、保健所がかなり詳細な部分まで行っている例もある。

対物保健[編集]

地域に関するもの : 一般に生活衛生と呼ばれ、食品衛生獣医衛生環境衛生及び薬事衛生の4分野からなる(薬事衛生業務は、自治体によっては生活衛生には含まない場合もある)。これらは営業許可や立ち入り検査、違反施設に対する営業停止など、いわゆる「権力行政」としての権限を多く持っている。対応する法律により資格が規定されており、食品衛生監視員、狂犬病予防員、動物愛護担当職員、環境衛生監視員、薬事監視員がそれぞれの業務を受け持つ。

  • 食中毒の原因調査、及び食中毒予防のための普及啓発活動
    • 医師は食中毒を診察した場合、直ちに最寄の保健所長に報告する義務がある(食品衛生法第58条)
  • 食品に関する苦情相談の受付と調査
  • 食品の製造、流通、調理及び販売施設・卸売市場・集団給食施設に対する営業許可・監視指導ならびに食品や容器包装等の収去(抜き取り)検査
  • 動物の管理の相談
  • 野犬野良猫等の管理、引き取り先の募集(里親募集)
  • 全国で年間40万匹以上となる犬猫等動物の殺処分
    • 狂犬病にかかった動物を発見した場合、獣医師はただちに保健所長に報告する義務がある(狂犬病予防法第8条)
    • 保健所の統廃合に伴い、動物愛護や狂犬病予防に関する獣医衛生業務の多くは、都道府県や政令指定都市の機関である動物保護センター(自治体により名称は異なる)へ移行しつつある
  • 美容所、理容所、クリーニング所、旅館(ホテルなど宿泊施設全般)、興行場(映画館劇場)、公衆浴場の監視指導
  • 河川井戸プールなどの水質検査
  • 公害対策(大気汚染、水質汚濁、土壌汚染など)なお市では清掃業務を所管する部局で行っている場合もある。

建築物衛生法における保健所[編集]

建築物衛生法3条に規定されている。

  • 環境衛生上の正しい知識の普及に図ること。
  • 環境衛生上の相談に応じ、環境衛生上必要な指導を行うこと

地域保健法における保健所[編集]

地域保健法第6条により、保健所は、次の事項に係る企画、調整、指導などの事業を行うこととされている。

  • 地域保健に関する思想の普及及び向上に関する事項
  • 人口動態統計その他地域保健に係る統計に関する事項
  • 栄養の改善及び食品衛生に関する事項
  • 住宅水道下水道廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生に関する事項
  • 医療及び薬事に関する事項
  • 保健師に関する事項
  • 公共医療事業の向上及び増進に関する事項
  • 母性及び乳幼児並びに老人の保健に関する事項
  • 歯科保健に関する事項
  • 精神保健に関する事項
  • 治療法の確立していない疾病その他の特殊の疾病により長期に療養を必要とする者の保健に関する事項
  • エイズ、結核、性病、伝染病その他の疾病の予防に関する事項
  • 衛生上の試験及び検査に関する事項
  • その他地域住民の健康の保持および増進に関する事項

保健関係の行政機能[編集]

職員[編集]

地域保健法施行令第5条第1項により、「保健所には、医師歯科医師薬剤師獣医師保健師助産師看護師診療放射線技師臨床検査技師衛生検査技師管理栄養士栄養士歯科衛生士統計技術者その他保健所の業務を行うために必要な者のうち、当該保健所を設置する法第5条第1項に規定する地方公共団体の長が必要と認める職員を置くものとする。」とされている。

保健所の所長[編集]

地域保健法施行令第4条第1項では、保健所の所長とは保健所の医師であって、次の各号のいずれかに該当する技術吏員でなければならないとされている。

  1. 3年以上公衆衛生の実務に従事した経験がある者
  2. 厚生労働省組織令(平成12年政令第252号)第135条に規定する国立保健医療科学院の行う養成訓練の課程(現行1年、平成19年度までの例外規定で3か月コースあり)を経た者
  3. 厚生労働大臣が、第2号に掲げる者と同等以上の技術又は経験を有すると認めた者
    (健康局長通知では「外国において、養成訓練課程に準じる課程を修了し公衆衛生修士 (MPH、MSPH) の学位を取得した者」とある。国内の公衆衛生大学院は対象となっていない)

ただし、地域保健法施行令第4条第2項では「地方公共団体の長が医師をもつて保健所の所長に充てることが著しく困難であると認めるときは、2年以内の期間を限り、次の各号のいずれにも該当する医師でない技術吏員をもつて保健所の所長に充てることができる。」とも定められている。

  1. 厚生労働大臣が、公衆衛生行政に必要な医学に関する専門的知識に関し医師と同等以上の知識を有すると認めた者
  2. 5年以上公衆衛生の実務に従事した経験がある者
  3. 養成訓練課程を経た者

健康局長通知によると「厚生労働大臣が、公衆衛生行政に必要な医学に関する専門的知識に関し医師と同等以上の知識を有すると認めた者」とは、国立保健医療科学院教育訓練規程第5条第4項第1号に定める者と同等以上の学力を有すると国立保健医療科学院長が認め、「専門課程Ⅰ」の受講資格を得た者とされ、これを認めるに当たっては、国立保健医療科学院において、次に掲げる出題範囲の試験を行うとされる。

医師国家試験出題基準における
  1. 必修の基本的事項に関する事柄
  2. 医学総論に関する事柄
  3. 医学各論のうち
    • ア 健康危機管理関係業務を行う際に必要な感染症、精神疾患、中毒及び外因による疾患に関する事柄
    • イ 健康増進関係業務を行う際に必要な主要な生活習慣病(悪性新生物、脳血管疾患、心疾患及び糖尿病)及び関連疾患に関する事柄
    • ウ その他、公衆衛生行政(特定疾患、小児慢性疾患等の申請を含む)において関与する可能性の高い疾患に関する事柄

脚注[編集]

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]