カロテノイド

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カロテノイド (carotenoid) は天然に存在する色素で、化学式 C40H56 の基本構造を持つ化合物の誘導体をいい、カロチノイドともいう。テルペノイドの一種で、テトラテルペンに分類される。炭素水素のみでできているものはカロテン類、それ以外のものを含むものはキサントフィル類という。カロテンやキサントフィルは二重結合を多く含むので抗酸化作用が大きく、植物では酸素が多く発生する場所に多く存在する。極性溶媒に溶けにくく、非極性溶媒に溶ける。したがって、脂肪とともに摂取すると効率的である。なお、カロテンは動物に吸収されるとビタミンAとなる。

生合成経路[編集]

カロテノイド生合成経路

高等植物の色素体および一部の細菌では非メバロン酸経路から供給されたイソペンテニル二リン酸(IPP)と、IPPが異性化した化合物であるDMAPPが縮合してゲラニル二リン酸が合成され、更に2つのIPPが順次付加されることでゲラニルゲラニルピロリン酸となる。さらに二量化して脱ピロリン酸でシクロプロパン誘導体を経由して、リコペルセンを生成する。その後、脱水素化により、フィトエンフィトフルエン、ζ-カロテン、ニューロスポレンリコペンが生成する。末端の環化あるいは二重結合の転位により各種カロテンができる。あるいはカロテンが酸化されたりしてキサントフィルができる。

動物はゲラニルゲラニルピロリン酸を二量化してカロテノイドを作ることができないので食物から摂取する必要がある。 たとえばフラミンゴやカニやサケの色素(アスタキサンチン類)も、食物中に含まれるカロテノイドを代謝・蓄積したものである。

主な化合物[編集]

カロテン類[編集]

αカロテン[編集]

αカロテン(あるふぁ-、α-carotene)は化学式 C40H56、分子量 536.87 のカロテン。IUPAC命名法では β,ε-カロテンとなる。CAS登録番号は 7488-99-5。融点 185.5 ℃(真空封管)の濃紫色プリズム晶。\rm \left[\alpha \right]^{18}_{643}=+385°、極大吸収 (CHCl3) 485, 454 nm。

生物内ではγカロテンによって作られ緑黄色野菜のみならず、多くの植物にみられる。水にはほとんど溶けない脂溶性の物質で、純物質は紫色をしている。体内で酸化されレチノイドとなるが、βカロテンに比べると効力が低いとされている。

α-カロテン 構造式

βカロテン[編集]

βカロテン(べーた-、β-carotene)は、化学式 C40H56植物のもつ黄色色素IUPAC命名法では β,β-カロテンと呼ばれる。CAS登録番号は 7235-40-7。融点 183 ℃(真空封管)の濃紫色六方プリズム晶。極大吸収 (CHCl3) 497, 466nm。

かつてはドイツ語を由来としたβ-カロチンという語でも言い表された。

β-カロテン 構造式

細胞膜の損傷を防ぐ働きをする。胃癌肺癌に対する予防効果が注目されていたが、その効果を否定する臨床試験の結果がでた。

人体の脂肪組織に蓄えられ、肝臓小腸の粘膜の中で、必要な時にβ-カロテンが2分子に分かれビタミンAになるため、プロビタミンAとも呼ばれる。

γカロテン[編集]

γカロテン(がんま-、γ-carotene)は化学式 C40H56、分子量 536.87 のカロテン。IUPAC命名法では β,ψ-カロテンとなる。CAS登録番号は 472-93-5。結晶多形を持ち、天然型は融点 177.5 ℃のわずかに濃い赤色プリズム晶、極大吸収 (CHCl3) 508.5, 475, 446 nm。または融点 152–153 ℃の赤色板状晶、極大吸収(エーテル)494, 462 nm。

生物内ではリコペンの異性化、βゼアカロテンの脱水素化によって作られる。水にはほとんど溶けない脂溶性の物質。αカロテンβカロテンの前駆体として人参等に存在するが微量。ビタミンA効力は低い。

γ-カロテン 構造式

δカロテン[編集]

δカロテン(でるた-、δ-carotene)は化学式 C40H56 のカロテン。IUPAC命名法では ε,ψ-カロテンとなる。CAS登録番号は 472-92-4。融点 140.5 ℃の橙赤色針状晶。\rm \left[\alpha \right]^{25}_{D}=+352°。

人参などの緑黄色野菜に含まれている。ビタミンA効力はかなり低い。脂溶性なので、有機溶媒で抽出しクロマトグラフィーで単離する。

δ-カロテン 構造式

リコペン[編集]

リコペン(Lycopene, lycopene、ドイツ語読みでリコピン)は化学式 C40H56、分子量 536.87 のカロテノイド。水にはほとんど溶けない脂溶性の赤色色素[1]。多くの植物ではβカロテンαカロテンの前駆体としてわずかに存在するのみであるが、トマト金時ニンジングミなどに多量に存在する。抗酸化作用が大きいと考えられている。

リコペン 構造式

  • ε-カロテン

ε-carotene 構造式

キサントフィル類[編集]

ルテイン[編集]

ルテイン (lutein) は分子式 C40H56O2、ジヒドロキシ-αカロテンに相当する。また、狭義にはルテインを指してキサントフィル (xanthophyll) と称することもある。CAS登録番号 127-40-2。色は黄色で、高い抗酸化作用を持ち、緑黄色野菜果物に多く含まれる。カナリアの羽毛の黄色色素でもある。極大吸収 (CO2) 445, 475, 508 nm。

人間(黄斑部、水晶体)、乳房子宮頸部にも含まれる。 目の機能強化、白内障加齢黄斑変性などの眼病予防に役立つとして、近年注目されている。

ルテイン 構造式

ゼアキサンチン[編集]

ゼアキサンチン (zeaxanthin) は分子式 C40H56O2、ジヒドロキシ-βカロテンに相当する。CAS登録番号 144-86-3。融点 215 ℃の黄色長板状晶。吸収極大 (CS2) 517, 482, 450 nm。

トウモロコシの種子、卵黄に含まれる。

構造式 ゼアキサンチン

カンタキサンチン[編集]

カンタキサンチン (canthaxanthin) は分子式 C40H52O2、beta,beta-carotene-4,4'-dioneに相当する。CAS登録番号 514-78-3。融点209℃。吸収極大470~476nm。1950年食用キノコ(Cantharellus cinnabarinus)中に含まれている事が見出され、フラミンゴ等の赤色羽毛中やサケ、マスの肉中、伊勢海老からも検出されている。色調は赤色で、高い抗酸化力があり抗腫瘍作用、免疫賦活作用等のデータが示されている。

カンタキサンチン 構造式

フコキサンチン[編集]

フコキサンチン(Fucoxanthin)は分子式 C42H58O6 で表される。褐藻やその他の不等毛藻に存在して茶色-オリーブ色を呈するとともに、葉緑体において光合成の補助色素として機能している。フコキサンチンは可視光線のうち青緑色から黄緑色(350-550nm)の波長域を吸収し、448nm 付近に吸収極大を持つ。

フコキサンチン 構造式

アスタキサンチン[編集]

アスタキサンチン(Astaxanthin, Astaxanthine)は分子式 C40H52O4 で表される。甲殻類の殻やそれらを餌とするマダイの体表、またサケ科魚類の筋肉の赤色部分などに見られる。生体内では遊離型、モノエステル型、ジエステル型の3形態が可能であるが、多くは脂肪酸エステル型であり、血漿リポタンパク質と結合した形で存在する。甲殻類ではタンパク質(オボルビン、クラスタシアニン)と結合し、カロテノプロテインとして存在している。タンパク質と結合したアスタキサンチンは黒っぽい青灰色を呈するが、加熱によりタンパク質分子が変性してアスタキサンチンが遊離すると、本来の赤色を呈する。甲殻類を茹でると赤くなるのはこの現象に由来する。

アスタキサンチン 構造式

アンテラキサンチン[編集]

アンテラキサンチン 構造式

ビオラキサンチン[編集]

ビオラキサンチン 構造式

出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]