加齢黄斑変性
加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい、Age-related Macular Degeneration:AMD)とは、加齢に伴い眼の網膜にある黄斑部が変性を起こす疾患である。失明の原因となりうる。以前は老人性円板状黄斑変性症と呼んでいた。またARMDと略していた頃もあった。難病情報センターのサイトにも本疾患の解説がある[1]。
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自覚症状 [編集]
初期症状としては変視症を訴える人が多く、それをきっかけに眼科受診をし、この疾患に気づく方が多い。その後病状の悪化ともにゆがみが強くなり、眼底出血などにより視力低下、中心暗点がみられ、失明に至る場合もある。
他覚所見 [編集]
眼底、特に黄斑部に病変を認める。
軟性ドルーゼン、網膜色素上皮剥離、黄斑下出血などを認め、黄斑変性にいたる。
萎縮型の場合には、ドルーゼンを伴い、徐々に黄斑変性に至るケースが多い。
疫学 [編集]
近年高齢者に増加しており、アメリカでは中途失明原因の第1位である。男性の方が女性に比べ、3倍多い。
発生要因として
などがあげられている。遺伝子の関与という点では、日本人ではcompliment factor HよりもHTRA1とLOC387715の関与が強いことも示唆されている[2]。日本人の加齢黄斑変性の原因遺伝子としてHTRA1とLOC387715を初めて報告したのは、東京医療センター感覚器センターに所属していた 現衆議院議員の吉田統彦である[3]。
分類 [編集]
滲出型 [編集]
wet typeとも称されることがある。
脈絡膜から異常な脈絡膜新生血管を生じ、網膜面に進展する。新生血管は脆弱でありそのため出血、滲出物の貯留を認め、黄斑部の機能障害をきたし、偏視、視力低下などを来す。最終的には黄斑部に不可逆的な変性を起こし著しい視力低下となる。
脈絡膜新生血管(CNV:choroidal neovasucularization)のタイプは以下のように別れる。
- Classic CNV
- Occult CNV
萎縮型 [編集]
dry typeとも称されることがある。
加齢に伴い黄斑部が変性を起こし、変性の範囲により急激な視力低下を認める。滲出型のような脈絡膜新生血管は認めない。現在のところ治療は有効なものはない。もしあえて行うのであれば、対症療法的な薬物又はサプリメントの投与がある。
検査 [編集]
- アムスラーチャート
- 変視症の自己診断、変視の評価に使用する。
- フルオレセイン蛍光眼底造影
- インドシアニングリーン蛍光眼底造影
- 造影検査により、異常血管の検出を行い、治療方針を決定する。
治療 [編集]
滲出型黄班変性には主にVEGF阻害剤投与、もしくは光線力学的療法が用いられるが、VEGF阻害剤投与のうちでも、ラニビズマブ(ルセンティス)投与の有用性が注目される[4]。欧米の多施設による試験では、光線力学的療法が視力低下を部分的にしか阻止しない一方、ラニビズマブには視力回復が期待できるという[5]。
- VEGF阻害剤
- 加齢黄斑変性の発生に際し血管新生およびVEGFが関与しており、血管新生阻害薬の投与により進行を防止・改善する可能性がある。代表的薬剤としてラニビズマブ(商品名:ルセンティス®:Lucentis®)[6]がある。投与方法は硝子体内に注射。ラニビズマブは抗VEGF抗体のFab断片であり、2009年1月、製造販売承認を取得。販売元のノバルティスファーマによるサイトに総合製品情報概要などがある[7][8]。ベバシズマブは、加齢黄斑変性に対しては厚生労働省未認可の治療薬である。
- 光線力学的療法(PDT:Photo Dynamic Therapy)
- 光感受性物質であるベルテポルフィン(Verteporfin)を静脈注射し、薬剤が脈絡膜新生血管に集積した際に、PDT専用のレーザー装置を用いて689nmのレーザー光を照射し、ベルテポルフィンが光活性化し脈絡膜新生血管を退縮させる治療。特にClassic CNVに対して有効性を示す。少なくとも初回照射時、薬剤投与後48時間は遮光目的に入院が必要である。3ヶ月に一度造影検査を行い必要と認められれば、再度行う治療である。講習を受け試験に合格した認定医が施行する必要があり、また特殊な機器が必要であるため、施行施設は限られる。保険適用されているが薬剤が高く、高額な自己負担が必要になることもある。
-
- 日本での臨床試験(JAT study[9])では48ヶ月間に平均2.8回の治療が必要であった。また視力は2割の方に視力上昇を認め、2割に視力低下を認めた。海外での臨床試験(TAP study)では少なくとも24ヶ月観察期間中の視力の低下の抑制効果があると結論づけている。
- レーザー光凝固術
- 新生血管が黄斑部に及んでいない場合に直接凝固を行う。その凝固斑により暗点が生じることがある。CNVが中心窩下に無い場合に適用になる。
- 新生血管抜去術
- 外科的に新生血管を抜去する。CNVが中心窩下に無い場合に適用になる。抜去後暗点が生じることがある。
- 中心窩移動術
- 放射線療法
- 脈絡膜新生血管を退縮させる目的で放射線を照射する。
- 経瞳孔温熱療法(TTT:Transpupillary Thermo Therapy)
- 低エネルギーのレーザーを照射することにより温熱により、新生血管の破壊を促す治療法。厚生労働省未認可の治療法である。
- ステロイド
- 徐放性ステロイド(トリアムシノロン アセトニド)をテノン嚢下又は硝子体内に投与し、新生血管の退縮を狙う。手術療法・PDT・VEGF阻害薬投与と同時に行うことがある。投与により緑内障を発症させる可能性がある。
- 糖質コルチゾール活性を有しない様に化学構造を変化させた合成ステロイド剤であるAnecortave Acetate(Retaane)をテノン嚢下投与し、新生血管の退縮を狙う。
- VEGFに結合し、効果を発揮する。投与方法は硝子体内に投与である。代表的薬剤としてpegaptanib(Macugen)があり、2008年7月、製造販売承認を取得。
- 投薬
- 止血剤
- サプリメント
類縁疾患 [編集]
- ポリープ状脈絡膜血管症
- RAP(Retinal angiomatous proliferation)
註 [編集]
- ^ [1]
- ^ Mol Vis. 2006 Mar 6;12:156-8.
- ^ Mol Vis. 2007 Apr 4;13:545-8.T.Yoshida
- ^ http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/200904/510165.html
- ^ [2]
- ^ 2006年、FDA承認済み。
- ^ [3]
- ^ [4]
- ^ Am J Ophthalmol. 2003 Dec;136(6):1049-61.Japanese Age-Related Macular Degeneration Tial(JAT) Study Group.
- ^ 加齢黄斑変性には無効であるという報告もある