視覚障害者

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ブラジルのショッピングセンターを盲導犬とともに歩く視覚障害者

視覚障害者(しかくしょうがいしゃ)とは視力が全くないか、あるいは弱いため、日常生活や就労などの場で、不自由を強いられる人たちのことである。

視覚障害者は、視覚をもたない「」(全盲)(blindness)と、残存視覚を有する「弱視」(low vision)に分けられる。なお、視覚障害者の対語は「睛眼者(せいがんしゃ)」であるが、睛(眼がぱっちりと開いた)の字が常用漢字表にないため、晴眼者と書かれることが多い。

目次

[編集] 概要

障害者、特に視覚障害者はどの時代や国、地域にも広く存在するマイノリティである。そのため視覚障害者の生活は時代や国により大きな制約を受ける。

日本では、徐々に各種資格の欠格事項が撤廃され、全盲の医師が誕生したこともあった。初期臨床研修義務化後、研修施設が見つからなかったため、医師免許取得をするも医師になれなかったケースが存在する。

夜盲症(鳥目)や色覚異常視野狭窄も広義の視覚障害である。ただし夜盲症や色覚異常は身体障害者福祉法における視覚障害の定義には含まれない。

明治維新までの日本では、当道座盲僧座など、視覚障害者による自治的組織がいくつかあった。中でも当道座では検校勾当座頭などの官位が与えられ、音楽家鍼灸按摩を専業としていた。一般に彼らの社会的地位は高く、当道座の最高職である「総検校」は十万石の大名に匹敵する地位と格式を有していた。

[編集] 原因と統計

視覚障害の原因で、最も多いのは糖尿病である。次いで、緑内障などが続く。交通事故労働災害などの事故もその原因となる。出生時の損傷による視覚障害は比較的少ない。また、緑内障、白内障などの各種眼疾患の他にも、脳腫瘍のような脳疾患、糖尿病ベーチェット病のような全身性疾患でも視覚異常を伴う場合がある。

2008年3月24日に厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課から発行された平成18年身体障害児・者実態調査結果[1](p.17)によると、身体障害者全体(総数 3,483,000人)、及び身体障害児(総数 93,100人)の身体障害の原因では、

  • 疾患によるもの 20.7% (障害児では 9.9%)
  • 事故によるもの 9.8% (障害児では 2.2%)
  • 加齢によるもの 4.8% (障害児では 0%)
  • 出生時の損傷によるもの 2.3% (障害児では 19.2%)
  • 不明・不詳等その他 62.4% (障害児では 68.7%)

また、視覚障害者(総数 310,000人)及び視覚障害児(総数 4,900人)における視覚障害の原因は以下のように示されている。

  • 疾患によるもの 19.7% (障害児では 12.2%)
  • 事故によるもの 8.1% (障害児では 0%)
  • 加齢によるもの 2.0% (障害児では 0%)
  • 出生時の損傷によるもの 4.5% (障害児では 12.2%)
  • 不明・不詳等その他 65.7% (障害児では 76.6%)

[編集] 視覚障害の程度区分

眼科で受診後、市町村福祉事務所に申請をすることで身体障害者手帳が交付される。身体障害者手帳は、障害の程度に応じて1級から6級まである。視覚障害は「視力障害」と「視野障害」とに区分して認定する。重複する場合、重複障害認定の原則に基づき認定する。

1級(指数18)
両眼の視力(万国式試視力表によって測ったものをいい、 屈折異常のある者については、矯正視力について測ったものをいう。以下同じ)の和が0.01以下のもの。
2級(指数11)
(1)両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの。
(2)両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が95%以上のもの。
3級(指数7)
(1)両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの。
(2)両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が90%以上のもの。
4級(指数4)
(1)両眼の視力の和が0.09以上0.12以下のもの。
(2)両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの 。
5級(指数2)
(1)両眼の視力の和が0.13以上0.2以下のもの。
(2)両眼による視野の2分の1以上がかけているもの。
6級(指数1)
一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので、両眼の視力の和が0.2を超えるもの

[編集] 重複障害認定の原則

重複する障害の合計指数に応じて認定する。

  • 18以上:1級
  • 11~17:2級
  • 7~10:3級
  • 4~6:4級
  • 2~3:5級
  • 1:6級

[編集] 視覚障害者の職業

[編集] 鍼灸マッサージ

1970年代まで、「鍼医さん」、「あん摩さん」と言えば、盲人のことと世間で思われるほどで、こうした職業の8くらいが視覚障害者だった。盲人は指先の感覚が鋭いと言われ、経穴(つぼ)を探したり、鍼や按摩の細かい手技を行うのに適している。現在も職業課程として、盲学校には鍼灸マッサージ師になるための理療科が設置されている。 戦時中は「技療士」として日本軍兵士のマッサージや、航空監視として敵機の轟音で空襲の規模を観測するために動員された者もいる。

[編集] 音楽家

中世から語り部、琵琶法師、箏曲家、三味線[2]演奏家など、音楽を生業とする盲人は多かった。現在も様々な音楽分野で活躍している視覚障害者がいる。

[編集] 金貸し

江戸時代、自ら生産活動をしない商人は士農工商の最下位に置かれていたが、ただ座っているだけで金を儲けられる高利貸しは、最も下賤な職業とされ、盲人だけに許されていた。『岩波ことわざ辞典』によると、ことわざに盲人をからかったりさげすんだりした意味のことわざが多いのは、差別の意味より、楽をして金儲けができ、生活の心配がなく、しかもやくざを使って厳しい取り立てをする盲人高利貸しに対する、恨みやねたみから出たものであろうと書いてある[3]。現在はもちろん盲人だけに貸金業が許されているわけではない。

[編集] 視覚障害者への配慮

点字ブロック
視覚障害者用の時計
牛乳パックの扇状の切欠き

[編集] 移動

歩道鉄道駅などでは視覚障害者に配慮し、突起のついた視覚障害者誘導ブロック(大概は黄色)、いわゆる点字ブロックが床に設置されている。細い溝のついたタイルは「(溝の方向に)進め」を意味し、点々のついたタイルは「止まれ」あるいは「危険」を意味する。 ブロックの色を黄色としているのには意味があり、弱視者が点字ブロックを視認しやすいようにするためである。最近は都市の美観整備の一環として地面のタイルと模様を一致させた点字ブロックが見られることがあるが、弱視者への配慮を欠いているとの批判もある。

また、手すりや券売機には点字横断歩道や駅の階段では音声・音楽による誘導もなされている。

盲導犬による補助も行われるが、2003年には「身体障害者補助犬法」が施行され、市役所などの公共機関や鉄道バスなどの公共交通機関に限らず、百貨店レストランホテルなどの不特定多数の人が利用する民間施設での、盲導犬を含む各種補助犬の受け入れが義務付けられた(施設が拒否した場合、障害者からの告発があれば処分があり得る)。

[編集] 時計 家電製品

視覚障害者用の腕時計はガラス蓋を開けて針の位置を指で確認できる。洗濯機などの家電製品にはスイッチ部分に点字を刻印してあるものがある。

[編集] 消耗品

シャンプー容器には、刻み模様を入れたりして視覚障害者への配慮がされたものがある。牛乳パックでは上部の張り合わせの部分を丸く切り取ってあるものがある。アルコール飲料の缶の上部などに点字を刻印してあるものがある。

[編集] 遊具

おもちゃの中には、「盲導犬マーク」がついているものがある。これは視覚障害の有無に関係なく利用できるおもちゃであることを示す。このようなおもちゃ類を「晴盲共遊玩具」といい、日本のおもちゃ協会がはじめた活動である。現在は国際共通マークとして認められ、徐々にその活動の輪が広がっている。

[編集] PC

視覚障害者の殆どの人はマウス等によるポインティング操作が困難なため音声によるナビゲーションにてPCを使用する。現在主なOSやアプリケーションはキーボードだけで操作が可能なように設計されており、熟練した人であれば音声読み上げソフトを使用して、殆どのアプリケーションを健常者同様に操作することが可能である。

しかし、大部分のウェブサイトは視覚障害者が利用することを前提に作られておらず、ネットから情報を引き出す際の障害となっている。

例えば、重要な情報が画像となっているページは視覚障害者には理解することが難しい。最近デザイン重視の風潮からちょっとした文章でも画像とする傾向が強い。このような表現は健常者には何の問題もなく伝わるが、画像は音声で読み上げることが出来ないので、視覚障害者には理解が難しい。

またレイアウトを工夫するあまり、文章がHTMLなどで記述されたソースファイル上では順番に並んでおらず、読み上げていくと支離滅裂な文脈となり、理解しにくい場合もある。これは表などを多用した場合に発生する。

同様に、視覚障害者は一見してそのページがどのような構成になっているのか分からないので、あまり関係のないリンクが大量に本文の前にあると(ナビゲーションとして置くものが多い)、そのページが何について書いているのか理解するのが困難になる。また、音声を順番に読み上げて行くタイプのブラウザでは本当に読みたい情報に辿りつくまで時間がかかるという問題も発生する。特にナビゲーションは全ページに置くのが殆どなので、リンクを移動するたびに毎回最初からナビゲーションが読み上げるような形となり、読み手の混乱の元となる。

これらは作り手のちょっとした配慮で解決が可能である。例えば前者は画像には必ずaltタグをつけることで解決できる。後者は、何のページなのか概要がすぐ分かるようにし、不要なナビゲーションリンクを置かないようにすればよい。やむを得ずリンクを置く場合は、本文の後に置くようにするといった配慮が望まれる(見た目左側にあってもHTMLなどではリンクを本文の後に置くことが可能。Wikipediaがその代表例)。

一方最近Flashを用いたページも増えている。Flashにおいては、クリックしないと先に進めない構成になっているものも多い。読み上げソフトはそのようなFlashコンテンツを読むことができず、また視覚障害者はどこをクリックしていいのかも分からない。一方でFlash側における配慮も行われてきており、Flash Player 6以降からは、MSAA(Microsoft Active Accessibility)への対応が施され、HTMLにおけるalt属性に相当する内容をFlashファイル内の各項目に埋め込む事が可能となった。しかしながらこれらのコンテンツに対応しない読み上げソフトも少なくないため、視覚障害者への配慮をするならば、別途、代替のHTML等で記述したWebページを作成するべきであろう。

また、最近、多くのウェブ会員サイトでは会員登録をする際に、画像認証を行っている。しかし、先に挙げた理由により、視覚障害者は画像を読むことが困難なので会員登録が難しい。視覚障害者への配慮をするならば、画像認証においては、画像とは別に音声による認証も可能にするようにサイトを設計するべきであろう。

[編集] 呼称について

通常は「目の不自由な人」と呼称されることが多い。視覚障害者の対義語として、正常な視覚を有する者を「晴眼者」(せいがんしゃ)と呼ぶ。

全盲の場合は「盲人」とも表現する。「盲」(めくら)と訓読みするとは現在では差別用語とみなされることがあるため注意が必要である。なお、の奏者を「めくら」と呼ぶのは明治以前からタブーとされていた。視覚障害者に与えられる官位である検校などの社会的地位が高かったためである。「盲」(めしい)ともいう。また地方には、隻眼(片方の目が見えないこと)または左右の目の大きさが異なることをあらわす「めっかち」ということばもある。

また、「盲」の派生語として何らかの事情で教育を受ける機会が無かったために文字を読解できない人を「文盲/明盲」と呼び、その人達のために作成されたを「盲暦」と呼んでいたが、視覚障害者への配慮より今日ではそれぞれ「非識字者」・「絵暦」と呼称されることが多い。

[編集] 「めくら」のつく慣用句

古い文芸作品などで見かけることのある語句について簡単に述べておく。

明盲(あきめくら)
目は見えているが、文字を読み書き(識字)できない人。文盲(もんもう)。
盲撃ち(めくらうち)
狙いを定めずに無闇に撃ちまくること。
盲縞(めくらじま)
濃紺で無地の織物。
盲滅法(めくらめっぽう)
無闇に物事を行うこと。
盲判(めくらばん)
書類の内容をよく吟味しないで安易に捺印すること。一説に、盲人にも分かるように、印面の上部に当たる部分にくぼみや突起をつけたもの。しかし印鑑は小篆体(篆書)と言う特殊な文字で彫られ、しかも左右逆なため普通の人でも読みにくい。盲人が自分で捺印するわけは無く、篆書が読めない人の物である。
盲経(めくらぎょう)
文字を読み書きできない人のために絵で描かれたお経。般若の面、お腹、みの、田んぼ、神鏡の絵を続けて書いて「はんにゃはらみたしんぎょう」と読ませる。同様なものに置き引き犯人の絵で“荷奪い”から「入梅」を表すなどの表記をする盲暦(めくらごよみ)がある。
ブラインドタッチ
キーボードを見ずにタイプすることを指す言葉。タッチタイピングと言い換えられることが多い。

また、視覚障害者に対して「めくら」と称するこれらの言葉を差別的だと捉えられることもあるため、マスコミ出版業界では使用しない様に言い換えが進んでいる。

[編集] 『盲目』と『盲目的』

慣用句ではないが、「盲目」あるいは「盲目的」という言葉は、「目が見えない」→「周囲が見えていない」意味から現在でも「理性や分別がない」といった意味で使用されることがある。これらの言葉も、場合によっては視覚障害者が理性に欠けているかのような印象を与えかねないため、マスコミ出版業界では避けられる傾向にある。

[編集] 生物の和名について

なお差別とは無関係な分野でも、視力が退化した生物に対して『メクラヘビ』『メクラウナギ』『メクラウオ』『メクラアブ』『ザトウクジラ』等、現在に於いても生物学上和名として使用されていることに対して、これを問題視する動きもある。

これに対し、和名の変更を考える学術的な行動は『メクラカメムシ』を『カスミカメムシ』に変更するなどの例はあるものの、和名の変更に反対する意見もあり、全ての和名が変更される事態とは至っていない。

2007年2月1日、日本魚類学会はメクラなど差別的語を含む51の標準和名を改名すべきとの勧告を発表した。その勧告によって『メクラウナギ』は『ホソヌタウナギ』と改名されている [4]。 しかし、こうした動きについて過剰な言葉狩りであるという批判もなされている。

[編集] 著名な視覚障害者

[編集] 音楽家

[編集] 文人

[編集] 発明家

[編集] スポーツ選手

[編集] その他

通称「盲(めくら)小せん」。明治後期から大正前期に活躍した落語家
通称「盲目の文三」。明治後期から大正前期に上方で活躍した落語家。

[編集] 脚注

  1. ^ http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/shintai/06/index.html 平成18年身体障害児・者実態調査結果
  2. ^ 風が吹けば桶屋が儲かるの例でわかるように、盲人が多く三味線弾きを生業としていた。
  3. ^ 金貸しを賤業とする考え方は西洋にもあり、特にユダヤ人が差別の対象となった。『ヴェニスの商人』が、その典型的な例である。
  4. ^ ポリティカル・コレクトネス

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク