昆虫

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昆虫綱
生息年代: 396–0 Ma
Early Devonian (but see text) – Recent
Insect collage.png
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
学名
Insecta Linnaeus1758
シノニム
英名
insect
亜綱

伝統的分類

系統分類

昆虫(こんちゅう)は、節足動物門汎甲殻類六脚亜門昆虫綱学名: Insecta)の総称である。昆虫類という言葉もあるが、多少意味が曖昧で、六脚類の意味で使うこともある。なお、かつては全ての六脚虫を昆虫綱に含めていたが、分類体系の見直しから、現在はトビムシなど原始的な群のいくつかをここから外している。この項ではこれらにも触れてある。

昆虫は、硬い外骨格をもった節足動物の中でも、特に陸上進化したグループである。ほとんどのは陸上で生活し、淡水中に棲息するものは若干、中で棲息する種は例外的である。水中で生活する昆虫は水生昆虫(水棲昆虫)とよばれる。

世界の様々な気候環境に適応しており、種多様性が非常に高い。現時点で昆虫綱全体で80万種以上が知られている。現在知られている生物種に限れば、半分以上は昆虫である。未記載種を含めると、100万種を超えるといわれている[1]

特徴[編集]

昆虫の特徴を以下にあげる。寄生性昆虫などにはこの例が全く当てはまらないものもいる。

形態[編集]

成虫の体は、頭部胸部腹部の3つに分かれている。節足動物の体は、体節と呼ばれる節(ふし)の繰り返し構造でできているが、体節がいくつかずつセットになり、機能的、構造的にまとまった部分に分かれる。昆虫以外の節足動物では、明確な部域に分かれないグループや、2つの部位(頭胸部と腹部)に分かれるものなどがある。

基本的に、胸部にのみ、が6本ある。

ほとんどの昆虫は2対のをもち、空を飛ぶことができる。空を飛んだ最初の動物は、昆虫だとされている。昆虫の翅の構造は、グループによって様々に特化し、彼らの生活の幅の広がりに対応している。飛翔する器官を標準的に備えている動物群は、のレベルでは節足動物門の昆虫綱と、脊椎動物鳥綱のみである(のレベルでは哺乳綱コウモリ目なども飛翔するための器官を標準的に備えている)。

呼吸器官として気管がある。

感覚[編集]

特別な感覚器官としては、触角があげられるが、それ以外の各部に小さな受容器を持つ。

大部分の昆虫は頭部に1対の複眼と少数の単眼を持つ。両者を有する場合、片方だけの場合、ごく一部に両方とも持たない例がある。複眼は主要な視覚器として働き、よく発達したものでは優れた視覚を持つと考えられる。また、紫外線視覚する能力を持っている。すなわち解剖学的に、昆虫の目には紫外線を感知する細胞がある。 人の目ではオスとメスの色の区別ができない昆虫(たとえば、モンシロチョウの羽根の色)でも、実際には紫外線反射率がオスとメスの羽根で大きな差がある。そのため、モンシロチョウ自身の目には、ヒトの目と違ってオスとメスの羽根は全く別の色であると認識できているものと推察される。単眼は明暗のみを感知する。

化学物質の受容、つまり味覚嗅覚は触角、口器、および歩脚の先端部である附節にある。いくつかの昆虫は個体間の誘因などの役割を担うフェロモンを出すが、その受容は触角で行われる。

聴覚に特化した器官を持つ例は多くなく、コオロギやセミなど一部に限られる。

発生[編集]

多くは卵生だが、フタバカゲロウのような卵胎生、アブラムシやツェツェバエのような胎生昆虫もいる。

昆虫の場合、幼生幼虫と呼ばれる。成虫に似た姿のものも、かなりかけ離れた姿のものもあるが、基本的には幼虫も昆虫としての姿を備えており、その意味では直接発生的である。生育過程で、幼虫が成虫に変化する変態を行う。変態の形式により、幼虫がになってから成虫になる完全変態をするグループと、幼虫が直接成虫に変わる不完全変態を行うグループ、そして形態がほとんど変化しない無変態のグループがある。成虫になるときに翅が発達するが、シミ目など翅の全くない種類も少なからずいる。

生態[編集]

昆虫の生態的な多様性は極端に大きい。陸上、土壌中、淡水中にごく普通に生息し、さらに原則としてすべて空が飛べる。分布は世界中にわたり、高山から低地までどこにでもいるが、やはり熱帯域での多様性が高い。しかし、海には潮間帯のウミユスリカなど、海水面上のウミアメンボなどごく少数の例しか生息していない。一説には、これは海洋でのニッチが昆虫の祖先である甲殻類によって占められていたためと言われる。

最小の哺乳類鳥類(1 - 2g)を越える体重を持つものは少数であり、小さいものは0.2mm、5μg以下と大型の原生動物(大型のゾウリムシなど)を下回る。食性の上でも、草食性、肉食性、雑食性など様々である。草食性では植物の種に特異性を持つ例も多く、そのため植物の種ごとに決まった昆虫がある、という状況が見られる。寄生性のものもあり、カエルキンバエラセンウジバエのように脊椎動物に寄生するものもある。昆虫に寄生するものでは、捕食寄生という独特な寄生の型を持つ例も多い。

変温動物である種が多いが、大型のものにはハナバチ類の一部など0℃の気温時に30℃以上の体温を安定して保てるような、ほぼ完全な恒温性のものも存在する。多くの昆虫は3以上の環境でないと、成長が行われず、冬眠状態となる。また、成虫の場合、一般に-3℃以下、または45℃以上の環境にさらされ続けると死滅する。卵の状態では温度耐性の範囲が大きくなる例が多い。セッケイカワゲラヒョウガユスリカのように0℃以下の低温に適応したものもあり、南極でも昆虫が生息している。

分類[編集]

種類数の多いグループとしては、以下のようなものがある。

甲虫類は実際に種類が多いとされているが、飛翔能力が他の昆虫に比較して弱く、発見、採集が容易なため、種の同定が進んでいるのだとも言える。甲虫同様、生態が多様なハエ目やハチ目の昆虫は、実際には甲虫目を上回る種が存在するのではないかとも言われている。

2002年に、ナナフシに似た外観をもつ昆虫カカトアルキが新目新科新属新種として記載され、マントファスマ目という新しいグループがつくられた。

進化[編集]

昆虫は地球歴史上、4億年前、動物の陸上進出が始まった頃に上陸した動物群の一つである[2]。なお2014年11月の学説では、陸上植物が出現して間もない4億8千万年前には原始的な昆虫が現れ、羽で飛ぶ昆虫は約4億年前、完全変態昆虫は3億5千万年前こ出現した[3]。3億6,000万年前に上陸した脊椎動物の両生類よりも早い時期であった[2]

昆虫の生活様式、形態は非常にバラエティに富んでおり、様々な環境ニッチに適応して繁殖しており、その種類も非常に多い。恐竜より前の2-3億年前には、現在のゴキブリトンボなどの祖先がすでに登場しており、大繁栄した。恐竜の時代、恐竜絶滅後の第三紀、そして第四紀の現在まで、昆虫の繁栄は続いている。昆虫は陸上で最も成功した生き物であると言えよう。

系統論は確定していない。伝統的には、多足類とともに触角類としてまとめられ、甲殻類鋏角類とともに、節足動物の三つの大きな群をなすと考えられてきた。この説では、多足類の先祖が陸上進出し、その一部から昆虫が進化したとする。

これに対して、根本的にこれを否定する説も浮上している。2010年2月の『ネイチャー』によると、遺伝子を解析して海や陸に住む昆虫を含む節足動物の進化系統をしらべたところ、まずウミグモカブトガニ、クモ、サソリなどの鋏角類、次にムカデなどの多足類が分岐・出現した。その後にウミホタル類、その次にミジンコやエビ・カニなどの甲殻類、それからムカデエビ類などが分岐・出現し、最後に昆虫などの六脚類が出現したという。

昆虫は、節足動物のなかで最も進化した生き物と言えよう。

位置づけ[編集]

昆虫綱は、単系統の汎甲殻類に含まれる。汎甲殻類には他に、甲殻類側系統)、昆虫以外の六脚類が含まれる。

昆虫綱以外の六脚類は、顎が体の中にあるなど共通の性質を持つため、内顎類と総称される。内顎類および六脚類は単系統とする説が主流だが、一部の分子系統では異論もある。

昆虫綱の大分類[編集]

昆虫綱の中では、比較的原始的な、羽のない無翅類と、羽を腹側へ畳めない旧翅類がまず分けられる。しかし、無翅類は原始形質でまとめられた側系統だという説が1960年代ごろから有力となり、それを反映した次のような分類が普及しつつある。ただし、有翅「下綱」などの修正された階級はまだ一般的ではない。

  • 昆虫綱
    • 単関節丘亜綱 : イシノミ目
    • 双関節丘亜綱
      • 無翅下綱 : シミ目
      • 有翅下綱
        • 旧翅節 : カゲロウ目、トンボ目
        • 新翅節

旧翅類の単系統性にも疑問が持たれており、カゲロウ目とトンボ目のどちらかが先に分かれた可能性がある。ただし、それを反映した分類はまだ確立していない。

代表的な昆虫のほとんどは新翅類に含まれる。

目レベルの分類[編集]

†は絶滅目。

人間とのかかわり[編集]

生物世界でもっとも種類の多い動物群であり、何等かのかかわりなしに暮すことが不可能なほどに、あらゆる局面でかかわりを生じる。直接に人間の役にたつものを益虫、人の健康、財産、家畜、農作物などに害を与えるものを害虫と言う(ただし、益虫・害虫には昆虫以外の小動物も含まれる)。

昆虫採集飼育趣味の一分野として有名である。また、季節天候を知るために昔から観察されることもあり、暦のひとつ啓蟄として残っているほか、北海道では雪虫は初雪を告げる昆虫として知られている。

ペットとしての昆虫[編集]

採集その他の手段で入手した昆虫を集めたり飼育する娯楽は古くから存在する。ダーウィンウォーレス等の泰斗を輩出している博物学の祖国イギリスで顕著であるが、広くヨーロッパにみられ、チョウの幼虫やオサムシ類が多い。現代ではナナフシの人気が高く、観葉植物感覚で飼育される。

日本においては、平安時代の貴族階級において、スズムシマツムシコオロギ等の「鳴く虫」(直翅目)の飼育、鳴き声の観賞がはじまり、江戸時代中期にはそれらを行商人が売り歩く商業も確立、江戸町民を中心に鳴く虫飼育の文化が広く普及した。元々これらの文化は、中国から伝播したとも、独自に並行発生したともいわれるが定かでない。また、中国では鳴き声の鑑賞のみならずコオロギの格闘を楽しむ娯楽「闘蟋」があり、その歴史は1200年に及ぶ。一方、児童年齢の子供がカブトムシノコギリクワガタ等に相撲を取らせる古典的遊びも、江戸時代からあり、それらの昆虫は「サイカチ」「オニガラ」「オニムシ」などと呼ばれた。

21世紀現在に日本にはサブカルチャーホビーの一つとして、クワガタムシやカブトムシなどの甲虫類は、鑑賞価値があり、飼育するファンが多く、10万人単位の愛好者がいるといわれる。これらはおもに成人によるホビーであり、先述した児童による古典的遊びとは趣が異なる。

特別な乾燥耐性を持つネムリユスリカは、教材として乾燥状態で販売される予定である。

食材としての昆虫[編集]

今日の日本においては、昆虫食はあまり一般的ではなく、どちらかと言うとゲテモノ料理や珍味として扱われる機会が多い。その中でイナゴ佃煮)は全国的に食べられていると言ってもよく、ハチセミゲンゴロウトビケラカワゲラざざむし)、カイコガカミキリムシ等も食用とされることがある。商品として売り出されたところもある。2008年現在、はちの子、イナゴの缶詰はともに1トン弱、カイコのサナギ300キロ、まゆこ(カイコのガ)100キロ、ザザムシ300キロ製造されている。[4]

長野県のハチの子の佃煮のように郷土料理や名物になっている地域もある。

世界的にはタガメアリ、甲虫などの昆虫の幼虫を食べる文化を持っているや地域、民族は多い。特に気象条件や地理的な問題で他の食材が手に入りにくい土地の場合、貴重な栄養源となっていることは当然である。

栄養価の面からみると、一般的に昆虫はタンパク質ミネラルを豊富に含むため、人口爆発砂漠化により、将来的に世界規模の食糧危機が起こった場合に、繁殖が早い昆虫は重要な食料となるとの見方もある。中国では、セミなどの昆虫およびサソリ等の食用飼育業者がある。

薬材としての昆虫[編集]

中国の生薬を集めた『本草綱目』には、多種の昆虫が記載されている。一例としてシナゴキブリは、シャチュウ(䗪虫[5])の名で、血行改善作用があるとされている。学問的に薬効は必ずしも明らかになっていない例が多いが、他にも薬酒の原料としてスズメバチ、アリ、ゴミムシダマシ冬虫夏草(昆虫の幼虫から真菌キノコが成長したもの)などが使われたり、粉末にして外用薬にされる昆虫もある。

農薬としての昆虫[編集]

日本の法律(農薬取締法)は、農作物を害する昆虫、ダニ細菌などの防除に使われる薬剤のみならず、防除に有益な天敵をも一括して農薬と整理した。このため、農薬として登録されている昆虫、クモ、ダニ、細菌、ウイルスなどがある。生物農薬とも呼ぶ。農薬のため、用法、用量、販売にも規制がある。現在日本で登録されている天敵昆虫には、オンシツツヤコバチヨコスジツヤコバチタイリクヒメハナカメムシヤマトクサカゲロウナミテントウコレマンアブラバチなどがある。

産業用の昆虫[編集]

歴史的にもっとも広範に利用されている産業用昆虫として、糸を生産するためのカイコガがある。柞蚕糸が取れるサクサンも同様に飼育されている。またミツバチ類は、蜂蜜ロイヤルゼリーの採取目的で飼育されている。カイコとミツバチは昆虫でありながら家畜になっているといえる。イボタロウムシも蝋の生産に重要。農業用としては、天敵農薬以外に、果樹野菜受粉を助けるマルハナバチ類やミツバチが使用されている。

この他、海外では染料などの原料としてのカイガラムシ類、特にシェラックを生産するためのラックカイガラムシも重要。また、釣り餌として累代飼育されているハエや爬虫類の餌として飼育販売されているコオロギなどもある。

装飾用の昆虫[編集]

タマムシチョウなど、色彩や光沢の鮮やかな昆虫は、工芸品などの装飾材料にも利用される。

モデル生物として[編集]

モデル生物として重要なものもある。ショウジョウバエカイコ遺伝学で、アズキゾウムシコクヌストモドキ個体群生態学で演じた役割は非常に大きい。昆虫は小型で扱いやすく、狭い環境でも飼育が可能で、また短い時間で複数世代が観察できる。上記のような昆虫はそのような点でモデル生物として好適であった。また、処理のしやすさについても独特である。ハワード・エヴァンズ英語版は著書『虫の惑星』で昆虫の変態ホルモンに関する実験で複数の幼虫の首を切ってつなぎ合わせてその変態を見る実験について説明した後、この実験をネコで行うことが想像できるか?と述べている。

法医昆虫学[編集]

クロバエなどが死体にたかる特性を利用して、アメリカ合衆国などでは、遺体の放置時間を推定することが行われている。

医療としての昆虫[編集]

医療、治療方法として、ハエ等の幼虫のウジに患部を食べさせるマゴットセラピーがある。

ムシ[編集]

現代の日常会話では、昆虫を単に「」(むし)と呼ぶことが多いが、ダンゴムシフナムシなどの用法でわかるとおり、ムシとは本来はもっと広い範囲の意味を持つ言葉で、獣、鳥、魚介類以外の全動物を指す言葉であった。

漢字の「虫」(キ、拼音: huǐ)は本来、毒蛇マムシ)を型取った象形文字であるが、など爬虫類の一部や、両生類環形動物など、果ては架空の動物であるまでを含めた広い範囲の生物群を指す「蟲」(チュウ、拼音: chóng)の略字として古代から使われている。

脚注[編集]

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  1. ^ ただし、線虫のようにまだまだ研究が進んでいないものの、推測で昆虫より多いだろうと言われている分類群もある。また、細菌古細菌での種の概念は真核生物とは違うので一概に比較はできない。仮に、細菌に動物の種の定義を当てはめようとしてもそれは不可能であり、(実際にはありえないことだが)逆に細菌の種の定義(DNA-DNAハイブリや、SSU-rRNAによる定義)を動物にそのまま適用すると、目レベルの分類群ですら全て同一の種に属すとの判断が下されうる。しかもこれらの分類群では培養すらできず、分類不可能な物が99%以上を占めるとされている(昆虫と違い、培養できなければ遺伝子配列すらわからない)。その意味では、昆虫が全生物でもっとも多様性の高い分類群とはかぎらないが、しかしながら、2008年現在の科学で「分類できる範囲においては」、最も種数が多いことは事実である。
  2. ^ a b 宮田研究室. “生命の進化”. 授業の資料. 山口大学メディア基盤センター. 2013年7月5日閲覧。
  3. ^ http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141108-00000018-mai-sctch
  4. ^ 野中[2008:233]
  5. ^ 『漢字源』p.1405

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]