ランダム化比較試験

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ランダム化比較試験(ランダムかひかくしけん、RCT:Randomized Controlled Trial)とは、評価のバイアス(偏り)を避け、客観的に治療効果を評価することを目的とした研究試験の方法である[1]。従って根拠に基づく医療において、このランダム化比較試験を複数集め解析したメタアナリシスに次ぐ、根拠の質の高い研究手法である[1]。主に医療分野で用いられる。略称はRCTである。

概要[編集]

初のランダム化比較試験(RCT)は、イギリスにおいて、結核薬のストレプトマイシンが効くかどうかを調査するために、医学研究審議会(MRC:Medical Research Council)を代表してオースティン・ブラッドフォード・ヒル英語: Austin Bradford Hill)らによって行われた[2]。結果は1948年に、『英国医師会雑誌』(BMJ:British Medical Journal)に掲載された[3]。差を知りたい介入以外の介入が等しくなければ、因果関係が正しく分からないという[4]、統計学者のロナルド・フィッシャーによる統計理論が適用された[2]

ランダム化比較試験は、主観的あるいは恣意的な評価のバイアス(偏り)を避けるために、以下の点が揃っている[1]

  • エンドポイント:改善度に関する尺度。改善度に関する主観的評価を避ける。
  • 比較対照:治療を施した群と、偽薬あるいは比較のための治療を施した対照群。治療介入の効果を算出するため。対照群がない場合、何が要因なのかはっきりしない。
  • ランダム化:母集団からのランダムな抽出や、治療群と対照群のランダムな割り当てを行う。効果が出そうな対照を選ぶことを避ける。
  • 盲検化:研究者と被験者に、治療群と対照群がどちらであるかを分からないようにする。計測に主観が入らないようにする。

RCTによる効果検証・効果測定が一般に行われる以前では、いくつかの不合理な治療・投薬が存在していた。広く知られているのは、心筋梗塞の治療後に、予防的にリドカイン(不整脈を防ぐ効果がある)の投薬が行われていた事例である。しかし、心筋梗塞後のリドカイン投薬群、非投薬群の追跡調査の結果、両者に差異が認められなかったため、現在では症例によって使い分けられるか、ほとんどの場合投与しなくなっている[5]

臨床試験におけるバイアス[編集]

ランダム化比較試験だけでは、まだバイアスの可能性は残っている。

製薬会社は、すでに相当成功した領域で薬の承認を得るためRCTに巨額を費やすため、「模倣」薬(“Me Too” Drugs)と呼ばれている[6]。こうして行われたRCTでは、開業医が見落とすような条件、投与量が新薬では多く対照薬では不十分という条件で試験されていたりする[6]

また、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を得るためには、2つの肯定的な結果が出た試験が必要なだけで、有効性が示せないため臨床試験の数をこなし、否定的な結果が出た試験は提出されたまま公開されていないため、情報公開法に基づいてこれらのデータを結合してメタアナリシスを行うと否定的な結果が示されることもある[7]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 津谷喜一郎、正木朋也 2006, pp. 9-12.
  2. ^ a b Yoshioka 1998.
  3. ^ Medical Research Council 1948.
  4. ^ 津谷喜一郎 2011, p. 48.
  5. ^ http://www.synapse.ne.jp/mura1/acs/lidocaine.html
  6. ^ a b Randal, J. (January 1999). "Randomized Controlled Trials Mark a Golden Anniversary". JNCI Journal of the National Cancer Institute 91 (1): 10–12. doi:10.1093/jnci/91.1.10. PMID 9890163. 
  7. ^ Irving Kirsch (2010年1月29日). “Antidepressants: The Emperor's New Drugs?”. The Huffington Post. http://www.huffingtonpost.com/irving-kirsch-phd/antidepressants-the-emper_b_442205.html 2012年3月1日閲覧。 

参考文献[編集]