メンタルヘルス

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メンタルヘルス: mental health)とは、精神面における健康のことである。精神的健康心の健康精神保健精神衛生などと称され、主に精神的な疲労、ストレス、悩みなどの軽減や緩和とそれへのサポート、メンタルヘルス対策、あるいは精神保健医療のように精神疾患の予防と回復を目的とした場面で使われる。

世界保健機関による精神的健康の定義は、精神障害でないだけでなく、自身の可能性を実現し、共同体に実りあるよう貢献して、十全にあることだとしている[1]。精神的健康は、基本的人権であり、それを最大限に享受するという狙いから精神保健法が制定される。それら法においては、精神障害を人権に配慮して治療し、また予防し、そして社会共同体の中へと回復し、精神的健康を維持し増進していくことがその方法として宣言されている。

精神疾患は大きな社会的負担をもたらし、OECDは精神的健康に関わる直接的・間接的コストはGDPの4%以上と推定している[2]。しかし未だ多くの国の医療制度において重点が低いとOECDは述べている[2]

概要[編集]

世界保健機関(WHO)によって、障害調整生命年(DALY)のうち、精神疾患が占める割合が大きいことが報告されて以来、その対策の必要性が大きく唱えられることとなった。精神的な健康は、著しい苦痛や生活の機能において障害をもたらす段階になった場合、精神疾患であると診断されうる[3]

OECD各国のメンタルヘルス問題時の受診先調査[4]
青は総合診療医、赤は精神科医、緑は臨床心理士

各国は、精神科医臨床心理士精神保健福祉士といった精神保健専門家英語版(Mental health professional)を育成する仕組みを持ち、その対策にあたっている。例えば、世界保健機関による人権に根差したメンタルヘルスケア関する『精神保健ケア法10原則』[5]は、言い換えると精神保健福祉法は、基本的人権として精神的な健康の増進があり、そのための治療も人権に配慮すべきであるという原則をまとめたものである。

世界保健機関による『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』第10版(IDC-10)で定義される範囲は、「精神および行動の障害 (Mental and behavioural disorders)」であり、そこには、アルツハイマー型認知症のような認知機能の問題から、依存症のような薬物関連障害、または統合失調症やうつ病のような精神障害が含まれている。

つまり、精神的な健康を保ち、薬物依存症のような不適切で有害なストレス対処法に陥らず、また認知能力を維持していくことは、福祉領域における関心ごとである。ただし、精神的な変調はストレスだけを原因とするものでもないため、甲状腺機能低下症の症状や、統合失調症パーソナリティ障害、また医薬品による物質関連障害であったりもする[6]。うつ病とストレスばかりが強調され、適切な診断の鑑別がなされないまま、うつ病であるかどうかも定かではない状態に対して多剤大量処方がなされるという問題もまた、福祉領域の別の関心ごとである。

予防の面では、適切なストレスの対処法を覚え、精神面において肯定的な状態を増進していくことや、認知機能を維持していくことは、よりよい十全な健康の実現に欠かせないことである。そしてまた、理性と感情が葛藤し合うというようなまだ精神的に不健康な状態よりは、人間的成熟を目指していくということが必要であろう[7]。また、自然とのふれあいも重要であり[8]、幸福と健康の双方においては社会的なつながりも重要である[9]

定義[編集]

世界保健機関[編集]

Mental health is not just the absence of mental disorder. It is defined as a state of well-being in which every individual realizes his or her own potential, can cope with the normal stresses of life, can work productively and fruitfully, and is able to make a contribution to her or his community.
精神的健康とは、単に精神障害でないということではない。それは、一人一人が彼または彼女自らの可能性を実現し、人生における普通のストレスに対処でき、生産的にまた実り多く働くことができ、彼または彼女の共同体に貢献することができるという、十全にある状態であると定義されている。

世界保健機関、2007、引用文の出所[1]

世界保健機関の世界保健機関憲章前文には「健康」の定義があり、単に病気ではないだけでないとし、達成しうる水準の健康を共有することは基本的人権であるとしている[10]。そして平和と安全の基礎となるとしている[10]

さらに憲章には目的として、第1条において人々が可能な限りの健康水準に達することを宣言しており、第2条の機関の任務における各種の宣言において、その(m)項では、精神的健康(Mental health)、特に人間関係の調和に焦点を当てることを宣言している[10]

最良の健康に到達することが基本的人権であるため、世界保健機関の目的とするところでもあるということである。それは精神的な健康においてもである。

さらには、1999年には憲章の健康の定義に、身体、精神だけでなく、スピリチュアルにも健康であることを追加するという提案がなされ賛成過多であったが[11]、現行の憲章で適切に機能しているということで採用には至らなかった[12]

日本の精神保健福祉法[編集]

日本の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律においては、第1条に目的が示され、国民の「精神保健」を向上させるという狙いのために、精神障害者における医療と保護、生活とまた社会復帰と自立の促進に必要な支援、また発生を予防し、国民の「精神的健康」を保持し、増進すると宣言されている。さらに第3条でそれは義務だとしている。

2006年の厚生労働省による 「労働者の心の健康の保持増進のための指針」においては、労働者の心の健康の保持増進のための措置を適切かつ有効に実施するための指針が定められている。この文脈においてはこの保持増進措置を、メンタルヘルスケアと繰り返し呼んでいる。

行動的健康[編集]

Behavioral Healthcareについて、米国の雇用主団体であるNational Business Group on Health[13]は、精神障害、行動障害、あるいは嗜癖障害に関する医療サービスだと説明しており[14]、アメリカ連邦政府の「アメリカのメンタル・ヘルス・ケアの変革について。連邦行動指針」[15]においても、behavioral health を含んで mental health が語られている。対象は、ICD-10と同じような範囲である。

その他[編集]

アメリカ国立精神衛生研究所は、「The National Institute of Mental Health」である。心の健康を表現する方法には、様々な言い方がある[16]

日本では精神科という言葉を使わずに「メンタルヘルス科」[注 1]という名称を用いる病院もある。日本において、「メンタルヘルス」とあえてカタカナで呼ぶのは「精神病」「精神障害」「精神が病んでしまって」という言葉につきまとう偏見、スティグマ(烙印)を避けるための、ソフトな表現にしたいという意見もある[17]

世界の精神保健[編集]

精神保健医療は混迷の中にある。

世界の精神医療は、ここ数十年間の間に脱施設化Deinstitutionalisation、患者を施設からコミュニティケアへ)を目標政策としてきている[2]。OECDは、多くの国々(米国、英国、豪州、フランス、イタリア、ノルウェー、スウェーデン)ではほぼ脱施設化を達成したが、しかし日本と韓国のような国ではいまだ施設入院が主流であると報告している[2]

イギリスの制度は評価が高く、世界で最も「脱施設化」に取り組んでいる国の一つであり、OECDは他国が参考にすべき先進的な精神保健制度を持っていると評している[18]。人口10万あたりの病床数は54床であり(2011年)、これはOECD平均の68床よりも少ない[18]診療報酬制度でもイギリスは先進的であると評され、精神医療には成果に基づく支払制度が導入され、これにより長期入院から通院型加療へのシフトに成功した[18]。医療制度の指標であるHealth of the Nation Outcome Scales(HoNOS)も評価が高く、豪州とニュージーランドにも導入された[18]

アメリカでの障害給付は1987年の125万人から、2007年の400万人に増加した。イギリスにおける精神と行動の障害による障害給付は、2000年の74.5万人から2013年の100万人以上へと38%増加した。同様の増加傾向は他の先進国でも見られ、それは金融危機よりも先に増加している[19]

これは一端には、製薬会社による病気喧伝がもたらしてきたものである。日本におけるうつ病注意欠陥多動性障害社会不安障害双極性障害の診断の乱発もそうである[20]。2012年にも、アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)所長であるトーマス・インセルは、医薬品の売上とは反対に、うつ病、統合失調症、双極性障害といった一般的な障害を含む重篤な精神疾患を有する人々の疾患の罹患率や死亡率が減少していないことを報告している[21]

2013年には『精神障害の診断と統計マニュアル』第4版(DSM-IV)の編集委員長であるアレン・フランセスは、精神疾患の数が急増しているというよりは、粗雑な診断が増え、安易に薬が処方されているため、流行の診断名による診断と過剰診断英語版を減らすことが必要だとしている[22]

日本の精神保健[編集]

統計と疫学調査[編集]

日本の入院患者数(2011年、千人)[23]
総数 0~14歳 15~34歳 35~64歳 65歳以上
うち70歳以上 うち75歳以上
V .精神及び行動の障害 282.3 1.1 15.6 128.4 136.6 105 73.9
  統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害 174.1 0.2 9.7 97.3 66.5 44 24.2
気分[感情]障害(躁うつ病を含む) 29.1 0.1 1.9 11.5 15.5 12.5 9
神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害 5.6 0.2 1.1 1.8 2.5 2.1 1.8
その他の精神及び行動の障害 73.5 0.6 2.9 17.8 52 46.3 38.9
日本の外来患者数(2011年、千人)[24]
総数 0~14歳 15~34歳 35~64歳 65歳以上
うち70歳以上 うち75歳以上
V .精神及び行動の障害 221.2 9.2 41.7 113.0 56.4 43.3 31.7
  統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害 60.6 0.2 11.5 39.4 9.3 5.5 3.0
気分[感情]障害(躁うつ病を含む) 74.5 0.1 13.3 41.5 19.1 14.5 9.9
神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害 47.4 1.0 12.0 22.0 12.3 9.1 6.2
その他の精神及び行動の障害 38.7 7.8 5.0 10.2 15.6 14.2 12.6

日本における精神疾患の患者数で、通院患者において2011年において多いものは、うつ病統合失調症である[25]。近年の外来において著しい増加がみられるのは、うつ病と認知症(アルツハイマー型)である[25]。ただし認知症の数自体は他と比較して多くはない[25]。1996年の約218万人から2008年の約323万人へと約48%増加した[25][注 2]

疫学調査には、厚生労働省の研究事業に「こころの健康についての疫学調査に関する研究」がある。同研究における世界保健機関による世界精神保健(WMH)日本調査2002-2006における4134名からの生涯有病率/12ヶ月有病率で以下となる[注 3]

  • 気分障害で6.5%/2.3%のうち、大うつ病性障害 6.2%/2.1%、気分変調性障害 0.7%/0.3%
  • 不安障害で 9.2%/5.5%のうち、特定の恐怖症 3.4%/2.3%、全般性不安障害 1.8%/0.9%、社会恐怖 1.4%/0.7%、PTSDは1.4%/0.6%。
  • 物質関連障害は8.5%/1.5%であり、アルコール乱用が8.4%/1.4%、アルコール依存が1.2%/0.3%、薬物乱用で0.2%/0.0%、薬物依存は0.0%/0.0%である。
  • 間歇性爆発性障害は2.1%/0.7%である。

ただし、その上位分類においても欧米よりは少ない。気分障害の12ヶ月有病率は日本の2.3%に対してアメリカで9.5%、欧米で4.2%。不安障害は日本の5.5%に対しアメリカでは18.1%もあり、欧米でも13.6%である[26]

歴史[編集]

江戸時代以前には、精神的な不調は、加持祈祷や漢方によって治療された[27]。全国にいくつか治療所が存在した[27]。後に岩倉病院となった京都岩倉の岩倉大雲寺や、のちに小松沢癲狂院となった東京小松沢の小松沢狂疾治療所などいくつかが点在していた[27]

また精神に著しい問題が見られる者は、座敷牢という個人の自宅内に設置した牢屋に入監した[27]。これは明治33年に、精神病者看護法が制定され、無許可監置を禁じた[27]。当時精神科は2000床しかなかった[27]

1950年になると精神衛生法が制定され[28]、1984年には改正され精神保健法となった。1995年に、再び改正され精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)となった。

日本の精神保健医療の問題[編集]

経済協力開発機構(OECD)は「日本の精神医療制度はOECD諸国の中で、精神病床の多さと自殺率の高さなど悪い意味で突出している」と報告している[29]。しかしOECDは、日本の精神医療は近年明らかに改善の努力が行われている、とも評価している[29]

死のリンチで有名となった、宇都宮病院事件など[30]、日本の精神福祉の状況は、患者に対する人権蹂躙が存続しており、2013年にも国際連合人権委員会は、精神障害者の非常に大勢が、自らの意思に反して長期間に渡って社会的入院されていることや、身体拘束と隔離が過剰に用いられていることを警告している[31]

2010年には、厚生労働大臣が「うつ病などに対する薬漬け医療」に言及し、自殺・うつ病対策プロジェクトチームにて、大量処方過量服薬の防止について検討していることに言及した[32]。これは、薬剤師を活用するなどの閣議決定[33]も虚しく是正されることはなく、2014年(平成26年)には、上限数を超える処方せん医薬品医師処方箋に書いた場合、診療所病院に対する診療報酬を減額することが決まった[34]

OECDは日本に対し、軽中程度の患者に対して心理療法を提供できるよう、根拠に基づいた治療プログラムの整備を進めるよう、勧告している[29]

またOECD諸国において、精神疾患の治療は主に総合診療医が担っているが、日本のプライマリケア制度の整備は発展途上である[29]。OECDは日本に対し、地域医療を担う医療関係者がすべからく精神保健の技能を身につけるよう勧告している[29]

社会的入院[編集]

OECD諸国の人口あたりベット数(機能別)

日本の精神保健は他国に比べ「脱施設化」が遅れているとOECDは報告しており[2][29]社会的入院という問題を抱えている。全世界の精神科の病床数200万床のうち、日本は35万床とその6分の1をも日本が保有するため、日本だけ精神障害が流行しているということもないため、国際的に批判の的となっている[28][29]。さらに日本の平均入院日数は300日であり[35]、海外における1~2週間からは大きくかけ離れている。日本では入院するような病気を抱えていないままに、病院から出られない人々が大勢存在するということである。

2002年にもこれを解消しようとしたが[28]、病床を空けることができても病院側の収入が減るため新たな病人で埋めてしまうため、最近では病棟の一部を居住施設へと転換するという構想が持ち上がっており、新たな囲い込みであるとの批判を受けている[36]。2004年には病床数を2014年までに7万床削減するという目標が掲げられたが、その目標は達成できないでいる[28]。厚労省は、2014年に診療報酬改定という形で退院支援を促進しようとしている[29]

OECDは各国に対し、診療報酬の日数払い制度は医療機関の過剰診療をまねくため、日数制限や包括払い制度の導入など支払い制度の改革が必要だと勧告している[37]

個人における精神の充足[編集]

個人において、精神的な健康を維持し増幅させるためには、大部分には、身体における生活習慣病の予防策と同じであり、食事や運動、またストレス管理によって、心身ともに対処することが可能である。

ジャンクフードのような認知機能を低下させる食事よりも、ビタミンB群オメガ3脂肪酸に富んだ食事は、認知機能を高め維持し、気分を良く保つ影響を与える[38]。運動には、軽症から中等度のうつ病の治療として推奨されうるほどの効果があり[39]、その予防にも効果がある[40]。また運動は脳卒中後の認知機能の回復も高める[41]

呼吸法によるリラクセーションは、怒りの管理や心理療法でも用いられる[42]。睡眠や[43]、笑うことも自律神経のバランスを整えるとも言われる[44]

否定的な影響を感じる相手とは適切な距離を保つという方法もある。また心理学は、アサーションと呼ばれる自己主張の方法も重視しており、自己の理想願望が過剰であることによってそれが達成できずストレスを感じていることを是正したり、あるいはそうして相手に対する期待を無理のないお願いに是正した上で、適切な方法で主張するということである。そうしてそれが不可能である場合には、肯定的な影響を感じる人々との接触を増やすことである。重要な人々とのコミュニケーションは、ストレス解消ともなる。

対して、不適切なストレスの発散方法は、怒りを爆発させることによって問題を引き起こしたり、不適切にアルコールなどの薬物を摂取することによって、精神的健康また身体的健康にわたって悪影響をおよぼすことがある。

自然とのふれあいは、認知機能や幸福感を高める[8]

考え方のクセと呼ばれる認知的な方法も可能である。「せねばならない」という思い込みや、「黒か白か」といった二分思考は認知行動療法によって修正可能な思考のクセの焦点の一部である。否定的な思考を過剰に繰り返す状態を是正することでいくらか気分が改善されることもある[45][46]

しかしながら、精神的な変調は、更年期障害甲状腺機能低下症の症状であったり、アルコールなどの薬物、気管支喘息に対する医薬品といったことも原因となりえ、過度に個人的な努力やストレスを強調すれば、判断を誤りうる。また現在病気喧伝といった問題があり、正常に近い健康状態に対して、過剰に多剤大量処方が行われることがあり、これが原因となって逆に体調がすぐれないこともある。

職場における精神保健(日本)[編集]

厚生労働省は労働者の精神保健対策をとっている。この文脈において、メンタルヘルスという用語が多用されるようになっている。

企業における法的義務[編集]

労働衛生行政の中で、健康増進義務が法令上明示されたのは、1988年の労働安全衛生法の改正からである。そこでは「労働者の健康の保持増進のための措置」が事業者の努力義務とされた。その後、2008年に施行された労働契約法第5条において安全配慮義務が明文化されたことにより、企業側にとって安全配慮は、努力義務ではなく法的義務となった。例えば、不調な従業員に対して企業側が十分な安全配慮を怠ることによって状態がさらに悪化し、うつ病などの精神疾患を発症し、自殺するということになった場合には、企業はその責任を問われることになる[47][48]

このようなことから労働安全衛生の問題は、企業にとっての社会的責任であるだけでなく、リスクマネジメントという側面まで持ってきた[49]

産業精神保健の目的[編集]

産業精神保健の目的は、社員の心の健康を保持増進することである。一次予防として優先されることは、精神的な不調を予防、あるいは緩和するための活動である。次に、二次予防として、不調者を早期に発見し適切な対策をとったり、治療につなげて更なる悪化を防ぐということである。そして三次予防としての回復があり、不調となった者の復職時に、復職が円滑に進むよう、あるいは再発がおきないようにフォローするということである。

4つのスケア[編集]

事業所におけるメンタルヘルスケアの内容として、平成12年(2000) 8月の「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」以来、4つのケアの推進が云われている。

セルフケア
社員職員自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスを予防・軽減して心の健康を維持する。
ラインによるケア
社員職員と日常的に接するライン管理職が、心の健康に関わる職場環境の改善や社員職員に対する相談対応を行う。
企業内産業保健スタッフ等によるケア
健康管理の担当者、衛生委員会等が事業所の心の健康づくり対策の提言を行うとともにその推進を担い、社員職員及びライン管理職を支援する。
外部資源によるケア
地域産業保健センター都道府県産業保健推進センター中央労働災害防止協会労働者健康保持増進サービス機関等の外部機関、及び労働衛生コンサルタントなどの専門家を活用しその支援を受ける。

メンタルヘルスケアの具体的進め方[編集]

2006年(H18) 3月の厚生労働省 「労働者の心の健康の保持増進のための指針」は、メンタルヘルスケアの具体的な進め方について以下の4点をあげている。

メンタルヘルスケアを推進するための教育研修・情報提供
それを社員、ライン管理職、産業保健スタッフや衛生委員会メンバー等のそれぞれの段階でおこなう。
職場環境等の把握と改善
職場環境等を評価し、問題点を把握した上で、職場環境のみならず勤務形態や職場組織の見直し等の様々な観点から職場環境等の改善を行う(一次予防)
メンタルヘルス不調への気づきと対応
メンタル不調に陥る社員職員の早期発見と適切な対応のための体制や、社外産業医や医療機関などとのネットワーク整備(二次予防)
職場復帰における支援
メンタルヘルス不調による休職者の職場復帰における支援のため、職場復帰支援プログラムを策定する。そこにおいて、休業の開始から通常業務への復帰に至るまでの一連の標準的な流れを明らかにし、関係者の役割等について定める(三次予防)

それと同時にメンタルヘルスに関する個人情報の保護への配慮、具体的にはメンタルヘルスに関わる個人情報を主治医や家族から得る場合にはあらかじめその社員の同意が必要であること。 産業医等が知り得たメンタルヘルスに関する社員の個人情報を事業者等に提供する場合でも、提供する情報の範囲と提供先を企業側の対応に必要な範囲で最小限とすることなどをあげている。

周囲による気づき[編集]

ラインによるケア[編集]

厚生労働省による2006年の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、「ラインによるケア」についてこう述べている。

管理監督者は、部下である労働者の状況を日常的に把握しており、また、個々の職場における具体的なストレス要因を把握し、その改善を図ることができる立場にあることから、6(2)に掲げる職場環境等の把握と改善、6(3)に掲げる労働者からの相談対応を行うことが必要である。このため、事業者は、管理監督者に対して、6(1)イに掲げるラインによるケアに関する教育研修、情報提供を行うものとする[50]

「職場環境等の把握と改善」とは、(1)部下の実労働時間に気を配って、可能な限り負荷を分散して過労を防ぐ。(2)挨拶に始まり、ときにはたわいない雑談まで含めたコミュニケーションの円滑化はかり。(3)部下の提案に耳を傾けて、モチベーションを高める。などであるが、これらはそもそも業務の円滑な遂行、それによる会社の発展のためにも必要なこととされている。部下の側からも相談しやすく、不調を早めにキャッチできる。

「労働者からの相談対応」は、「メンタルヘルス不調への気づきと対応」の意味で、部下や同僚から相談された場合だけのことではない。そしてメンタルヘルスの専門知識は必要はない。普段から部下に目を配り、「いつもと違う」[注 4]、「最近元気がない」、「休みがち」、「作業効率が急に落ちた」などのアラームを見逃さないだけでよい。

しかしながら、このようなサインは、精神的な健康だけでなく、身体的な健康を損なっている場合にも生じうることである。

相談されたら[編集]

相談されたら、あるいは問いかけに反応した場合。

相手がどういう気持でいるのかに意識を集中する。相手が何を言いたいのかはその次ぎで良い。その後にメンタルだろうが体調だろうが区別せず、カラダの症状を聞き出す。ポイントは「眠れない」、「食欲がない」、「疲れやすい」の3つである[51]。その3つの中でも特に「眠れない」は重要とされる(#精神疾患発症と長時間残業で再度ふれる)。

しかしながら、このようなサインは、精神的な健康だけでなく、身体的な健康を損なっている場合にも生じうることであり、また夏バテのような季節的な体調不良も原因となりえるため、早ガッテンは禁物である。

そして気になる場合には、「今度産業医の先生に相談してみれば? 貴方さえ良ければ予約を入れとくけど」と産業医につなげる。あるいは上司自身が産業医や保健スタッフと面談して状況を説明し判断を仰ぐ。

これらは対応をルール化しやすい企業においてのケースであるが、本質的には家庭や友人関係の中でも共通することである。なお、企業でも50人以下の場合は産業医や衛生管理者の任命が義務付けられてはいないが、その場合は地域産業保険センターなどが利用できる。

しかし「労災認定された自殺事案における長時間残業の調査」(後述)では、調査事例の82%が会社よりも家族が先に自殺の兆候に気づいていたとある[注 5]。これは自殺を遂げてしまったケースの事後調査である。

産業精神保健を重視している企業では、社員本人だけでなく、全社員の家族に向けた情報発信に力を注いでいるところもある。

プライバシーへの配慮[編集]

企業には、同時に個人情報保護法が影響し、特にメンタルヘルスの問題はセンシティブである。命に関わるなど緊急の場合は別であるが、本人から聞いた話を他の人に伝えるのは本人の同意が必要であり、家族から事情聴取する[52]

本人の気づきの為の支援[編集]

企業のメンタルヘルス対策としても、セルフケアは4つのケアの中で一番重要視されている。 メンタルへルス不調への気づきのキーワードは「いつもと違う」という一言である。それを気のせいで終わらせずに、「疲れてるのかも」「どこか悪いところがあるのかも」「相談した方が良いかも」に結びつけるための啓蒙活動が、企業のメンタルヘルス推進者に求められ、また厚生労働省も「Selfcareこころの健康 気づきのヒント集」や、内容はほとんど同じであるが「派遣労働者のためのこころの健康気づきのヒント集」を用意している。

そうした情報提供とともに、「どこか悪いところがあるのかも」「相談した方が良いかも」というときの相談先を用意し、それを社員(出来ればその家族にも)に周知徹底させることが「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において求められている。

企業においてはそうした活動が義務づけられているものの、企業以外においては前章「周囲による気づき」における「ラインによるケア」の役割を担えるのは家族、友人、知人である。というよりも、上司であろうが、家族であろうが、友人であろうが、そうした役割を担う人がいるということが一番重要である。 厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の元となった「職場におけるメンタルヘルス対策のあり方検討委員会報告書」においても、「セルフケアを効果的に行うためには、わからないことは「相談」することが不可欠である。個々の労働者は、まず、身の回りにこうした相談相手を自力で確保しておくことが望ましい」[53] とあるが、実際に身の回りに相談相手がいる人は、重篤化前に相談できることが多いので、あまり深刻な事態にはならない。

企業以外の場面で、個人で利用できるこころの病気に関する相談先や様々な支援・サポート情報をまとめたものに厚生労働省のリーフレット「心の健康サポートガイド-困ったときに受けられる支援・サービス」がある。 また、本人だけでなく、身近に心配な人がいるという場合の相談も受け付けている。

ハラスメント[編集]

パワーハラスメントと職場のコミュニケーションは表裏一体の関係にある。

一番大切なことは、職場の一人ひとりが職場の仲間の人格を互いに尊重する意識であり、そして互いの人格の尊重は、上司と部下や同僚の間で、理解し協力し合う適切なコミュニケーションを形成する努力を通じて実現できるものであるとする。

ストレスを強調することの問題点[編集]

従業員向けの講演では、ストレスとうつ病が過剰に強調されている[54]。典型的なうつ病とは性格要因が強いものであるが、環境要因が強調されすぎている[54]。頑張りすぎる人がうつ病になりやすいという性格要因に触れ、十分な休養が必要であり、薬の服用、励まさないといった性格要因が影響する典型的なうつ病への対策が示されてるが、これは外部からもたらされる環境的なストレスが原因ではない[54]

環境要因であるストレスのみによって精神的な不調が起こるとも理解されていないし、実際に病的となった人は、ストレスに脆いといった誤解にもつながるおそれもある[54]

精神疾患発症と長時間残業[編集]

因果関係に関する研究[編集]

日本産業精神保健学会は2004年3月に「精神疾患発症と長時間残業との因果関係に関する研究」をとりまとめたが、その中で以下のような研究を紹介している。

  • 質問紙を用いた横断的研究では、長時間労働は抑うつなどの精神健康に悪影響を及ぼす。
  • 一日の労働時間が長くなるに従い、SDS得点(うつ性自己評価尺度)は上昇する。
  • 実験において4時間睡眠を1週間にわたり続けると健常者においてもコルチゾール分泌過剰状態がもたらされる。
  • 長時間労働が精神疾患の発症に関与していると判断された例では、1日の平均残業時間は4-5時間が多い。同様に発症前に睡眠時間が確保されなかった例の約4割が仕事と強い関連があると判断され、その睡眠時間は4-5時間が多い。
  • 過去の自殺の認定事例を99時間以内、100時間以上に分類した比較調査でも、6ヶ月以内の発病率は前者が71%であるに対し、後者は96%にもなっている。

以上より4-5時間睡眠が1週間以上続く場合は、精神疾患、特にうつ病発症の準備状態が形成されると考えられ、長時間残業による睡眠不足が精神疾患発症に関連があり、特に長時間残業が100時間を超えるとそれ以下の長時間残業よりも精神疾患発症が早まると結論ずけている[55]

また厚生労働省の「過重労働による健康障害を防ぐために」にあるように、月100時間、80時間に満たなくとも、月45時間以上で健康障害のリスクは徐々に高まる。そして睡眠は、メンタルヘルス悪化の原因となるとともに、メンタルヘルス悪化の結果としても現れる。睡眠障害もそうであるが、うつ病の典型的初期症状としても「眠れない」があがってくる。

労災認定基準[編集]

このため、労災の認定基準(基発1226第1号)の「業務による心理的負荷評価表」には、これに該当すればそれだけで労災認定という「特別な出来事」欄に「極度の長時間労働」(発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の、例えば3週間におおむね120時間以上の時間外労働)が上げられている。

個々にストレス判定がなされる「具体的な出来事」欄には、その16項に「1か月に80時間以上の時間外労働」が加えられた。そこでは80時間以上であっても100時間未満であれば、それ以外の心理的負荷(業務上のストレス要因)があるかが問題となるが、「発病直前の連続した3か月間に1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働」などであれば、それだけで心理的負荷は「強」、つまり労災認定となる[注 6]

事業者が講ずべき措置[編集]

労災認定の場だけでなく、平成18年(2006)3月の「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」(基発第0317008号)[56]以来、厚生労働省は企業の使用者責任として、

  1. 時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える労働者であって、申出を行ったものについては、医師による面接指導を確実に実施するものとする。
  2. 時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超える労働者であって、申出を行ったもの(1.に該当する労働者を除く。)については、面接指導等を実施するよう努めるものとする。

と定めているのも同じ流れである。 この「確実に実施」しなければならない「事業者が講ずべき措置」は「労働者(社員)が申し出た場合」であるが、メンタルヘルス対策を重視している企業においては、「申し出」によらず必須としているところもある。

メンタルヘルスを取り巻く日本の社会状況[編集]

新型うつ病と自殺[編集]

病気喧伝[編集]

軽症のうつ病を説明する「心の風邪」というキャッチコピーは、2000年ごろから特に抗うつ薬パキシルの市場を開拓するために、グラクソ・スミスクラインによる強力なマーケティングによって用いられた[57]。薬の売り上げは2000年からの8年で10倍となり、協力したアメリカ人医師は、節操などなく下衆な娼婦だった、と明かしている[58]。後に、軽症のうつ病に対する抗うつ薬の効果に疑問が呈され、安易な薬物療法は避けるよう推奨された[59]

新型うつ病[編集]

2000年以降に増えてきたと言われたものには「新型うつ病」[60]と言われるものがある。

「新型うつ病」とはマスコミ用語であるため精神医学上の定義はないが、一般に云われていることは、自己中心的で、他責的で、ストレスを回避しようとする傾向が見られ、通常のうつ病に見られる自責的な苦渋感はなく、自分の行動に対する後悔の念が語られることは稀で、言動に一貫性を欠き[61]、その振る舞いには軽やかさが感じられるとされる。仕事中には抑うつ的なのに、休日や休職中にレジャーを楽しんでいたりする。

こういう文言が並ぶので「病気」というより単なる怠け者的な偏見を持たれることもあり、そうした偏見を煽るような書籍も見受けられる。しかし医師は「本当のうつ病でもないくせに、うつ病、うつ病と騒ぎ立てて疾病利得を得ようとしている」というような冷たい目でのみ見るべきではなく、彼らにかろうじて残されているレジリエンスを最大限に引き出す機会をうかがうべきであるとされる[62]

精神医学の世界では、重症になりやすい執着気質やメランコリー親和型性格を基盤としたうつ病とは異なるものを、「逃避型抑うつ」[63]。さらに「現代型うつ病」[64]、「未熟型うつ病」[65]、「ディスチミア親和型」[66][67]などという疾患名で議論している[68]

双極性障害のひとつ、軽躁状態を伴う双極II型障害との近縁性も指摘され[69]、軽度発達障害や適応障害との識別も難しいとされており、通常のうつ病に比べて、抗うつ薬の効果が弱く、軽症ながら難治な病態とされる[68]

通常のうつ病治療の原則として知られる、1978年の笠原の七箇条[70]の中に以下のものがある。

  • 出来るだけ早く、かつできる限りの休息生活に入らせる
  • 少なくとも治療中には、絶対に自殺をしないことを誓約させる
  • 治療終了まで、人生に関わる大問題については、その決定を延期させる

これらはメランコリー親和型の患者には忠実に守られるが、ディスチミア親和型の場合にはそれが難しいとされる[71]。 そして、よく云われる「うつ病者に『頑張れ』と言ってはいけない」ということがディスチミア親和型の場合にはあまり該当しない場合がある。むしろ「大丈夫、ここががんばりどころ」という治療者の一言の方が必要な場面がある。 ディスチミア親和型を論じた樽味伸は「対応に関しての素描[72]」 をまとめたが、ポイントは以下のようなものである。

  1. ラポールの確立(精神療法では常にそうであるが、この場合特に)
  2. 心的弾力性(レジリエンス)の継続的評価と強化(褒めることによって刺激)
  3. 主役は抗うつ薬ではなく、あくまでも本人であることをしつこいぐらいに確認する

受診率[編集]

厚生労働省の「産業保健スタッフ向け自殺防止マニュアル」によれば、1997年のヨーロッパのうつ病の大規模疫学調査[73]においても「うつ病罹患者の43%が医療機関を受診しておらず、未受診者の86%は受診する必要さえないと判断していた。また、受診者のうちの57%は専門医ではなくプライマリーケア医を受診し、薬物投与を受けた者は31%で、適切な治療(抗うつ薬の投与)を処方されていたのは、わずか25%」であったという。

わが国においては更に少ない。「平成18年度疫学調査」によると、DSM-IV診断でうつ病と診断された者の内、医師の受診率は36.3%、内精神科医の受診は18.9%しかない[74]「平成16年度疫学調査」でも、精神障害全体について「わが国の精神障害の有病率は欧米に比べて低かったが、約9%が何らかの精神障害を過去12ヶ月間に経験し、うち6人に 1人 (全体の1.5%)が重症の疾患を、約半数(全体の4.1%)が中等症の疾患を経験していた。・・・しかし重症あるいは中等症の疾患の経験者のうち19%しか医師を受診していなかった」と報告している[75]

このあと見てゆく「自殺事案における長時間残業の調査」においても、同様の受診率が報告されている。以上のことから「産業保健スタッフとしては、まずはうつ病・うつ状態に気づく知識・技術を身につけることが望まれ、さらにそれに対して適切な対応をしていくことが求められる」[76]とある。

なお、受診率が低い理由のひとつとして、「心の変調」が現れたときにどの医療機関を受診すれば良いのか分からない場合や、「精神科」と聞いて名前から来る恐いイメージが先行して、受診をためらってしまうケースが少なくない[77]。 自治体の保健所精神保健福祉センターでは、無料かつ匿名でメンタルヘルスの相談を受け付け、医療機関を紹介してもらえる(電話でも良い)[注 7]

自殺[編集]

自殺の背景にある精神疾患・WHOの統計[編集]

労働科学研究所の鈴木安名は「うつ病における認識の歪みの一つに『過度の自己関連化』がある」[78]という。これは精神医学上の定説となった知見である。

厚生労働省「産業保健スタッフ向け自殺防止マニュアル」の「簡便な構造化面接法による大うつ病エピソードの評価」にある5問のひとつは「毎日のように、自分に価値がないと感じたり、または罪の意識を感じたりしましたか?」(pp.26-27) である。

世界保健機関(WHO)が精神科入院歴の無い自殺既遂者 8,205例について調査した資料[注 8]によると、自殺者の大多数(95%)は最期の行動に及ぶ前に、何らかの精神疾患の診断に該当する状態にあり、該当しなかったのは、診断なし2.0%と適応障害2.3%に過ぎないとしている。物質関連障害(アルコール依存症や麻薬)の比率については日本の状況と大きくことなるものの[注 9]、 それ以外については国内調査と多く共通する。そしてWHO は自殺と密接に関連しているうつ病など、3種の精神障害を早期に治療に結びつけることによって、自殺予防の余地は十分に残されていると強調している。 また、その調査の10年後である2012年10月9日には世界で少なくとも3億5千万人が精神疾患であるうつ病の患者とみられ、毎年100万人近くの自殺者のうち、うつ病患者の占める割合は半数を超えるとの統計を発表した[79]

日本での調査と見解[編集]

厚生労働省・自殺防止対策有識者懇談会の「自殺予防に向けての提言」(2002年)においても、「生命的危険性の高い手段により自殺を図ったものの、幸い救命された者について、うつ病、統合失調症(精神分裂病)及び近縁疾患、アルコールや薬物による精神や行動の障害等の精神疾患を有する者の割合が75%で、中でもうつ病の割合が高いと報告されており、自殺は、精神疾患と強い相関関係があることが示唆されている」とする。そして「自殺を自由意思の現れや個人の選択として捉える見方もある。しかし、自殺した者の心理を分析していくと、・・・うつ病を発症し、正常な判断ができなくなることも多い。自殺は、自由意思に基づく行為というよりは、いわば『追い込まれての死』であると考えられる[80]。」とも云っている。

その後の調査と見解には2004年の「労災認定された自殺事案における長時間残業の調査」[81][注 10]や、2006年の日本産業精神保健学会の 「過労自殺」を巡る精神医学上の問題に係る見解[注 11]がある。 以上、メンタルヘルス・精神医学の世界では、「自殺」が「自決」[82]と言われるような「覚悟の自殺」であることはほとんど無いという認識である。

自殺調査から見える問題点[編集]

労災認定は強いストレスが認められたものであるが、しかし既に発病しているものにとっての増悪要因[注 12]は必ずしも大きなストレスが加わった場合だけに限らない[注 13]

もうひとつ、自殺だけがメンタルヘルスの問題ではないのは勿論であるが、虐待死と同様に、自殺に関する調査統計からメンタルヘルスの隠れた問題も表面化するという点である。 問題は労災認定、あるいは企業の責任如何にに関わらず、過労自殺、あるいは自殺そのものを防ぐことにあるので、それを防止するためには、「強いストレス」を防止することは勿論ながら、同時にうつ病などの精神障害における精神状態、本人が、自分を苦しめている症状をどのように認識しているかをきちんと理解して、早期に介入することが必要であるとされる。

自分を苦しめている症状をどのように認識しているかということが重要なのは、事後的な調査[83]では、自殺者のほとんどにうつ病エピソードが明らかになったというのに、過労自殺で労災認定がおりたものでもほとんどが精神科を受診していない。

「職場におけるメンタルヘルス対策のあり方検討委員会報告書」別添に「精神科・心療内科の医療機関とそれ以外の医療機関の連携体制がより一層整備されることが望まれる」、「産業医と主治医の連携推進のため、産業医にはメンタルヘルスの問題に関して精神科・心療内科の医師との連携に際して必要な知識、技術等が必要となる。」[84]とあるのはこのためもある。

精神疾患の増加[編集]

精神疾患により医療機関にかかっている患者数は、近年大幅に増加しており、1996年,1999年頃には200万人程度だったものが、2008年には323万人にのぼった。著しい増加がみられるのはうつ病であり、1996年比で2002年には1.6倍強、2008年には2.4倍にまで増加した[25]

これは主に製薬会社が新しい薬を販売することによって、病気喧伝がなされ、発売以前の2倍にも診断が下されるようになるという現象が各国にて起きている[85]

「自殺の背景にある精神疾患・WHOの統計」でも見た通り、自殺の背景には精神疾患があるとされている。

高い自殺率[編集]

OECD各国の人口10万人あたり自殺率

日本の自殺率は2000年から2013年の間に6.3%減少したが、しかしOECD平均と比べ高い状況にあるため、未だ要注意国であるとOECDは指摘している[86][29]

1995年以降、産業構造の変化とバブル崩壊、そして経済成長の低迷と世界的な不況が始まっているが、こうした背景もメンタルヘルスの悪化につながっているとも言われている[87]

戦後の日本の自殺者数[88]には3回の大きなピークがある。1回目のピークは1957年。2回目のピークは1984年から1986年頃まで、そして3回目が一番長く1998年以降現在までである。

日本においては、自殺者の増減は景気と密接に関連している[89]。第1回目の自殺者のピークは1957年のなべ底不況と重なり、岩戸景気(1959-1961年)の到来、更にオリンピック景気(1963-1964年)といざなぎ景気(1965-1970年)という相次ぐ好景気の時期には、ピーク時の約3分の2まで減少している。 第2回目のピークは、1973年のオイルショック以降10年を超える不況の後半に発生している。 その後、バブルの時代には第2回目ピーク時の約4分の3まで減少するが、バブル崩壊(1991-1993年)後徐々に増加し、1998年に急増して以来、3万人超(交通事故死者数の約5倍)が2011年まで続いている。更に詳細に見ると、被雇用者の内管理職の自殺件数は1995年を境に増加を初めている[90]

自殺の年齢層を見ると、1回目の自殺者のピークまで日本における自殺は青年期型で、総数の40-50%強が20代に集中し、30%前後が壮年期から初老期に相当する50-60代に広く分布していた。しかし、それ以後は男性の場合、青年期から次第に高齢側に裾野を広げていき、40代後半に自殺者数が多くなりる。第1回目のピークにおいて自殺の中心となった年齢層は21-23歳だったが、第2回目のピークでは自殺の中心は51-53歳。1998年からの第3回目のピークでは、1923-1970年生まれの全ての世代で自殺率が増加傾向を示し、特に50代で著明だった[91]

2012年3月9日内閣府自殺対策推進室発表の「平成23年(2011)中における自殺の概況」[92]によれば、2011年の自殺者数の年計は30,651人で、対前年比1,039人(約3.3%)減であり、2013年1月17日の「警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等」[93]では、2012年の累計自殺者数速報値は27,766人(前年比9.4%減)で、1998年に3万人を突破してから14年目にしてやっと3万人以下に下がった。

企業におけるメンタルヘルスの状況[編集]

企業におけるメンタルヘルス全般を見ると、(財)社会経済生産性本部メンタル・ヘルス研究所の 2008年報告は「企業における「心の病」は依然として増加傾向」としていたが、2010年報告(同調査は2年毎に行われる)において、同時期の自殺者統計と同様にやっと「企業における"心の病"増加傾向に歯止め〜取り組みの成果に手ごたえを感じつつある企業も増加〜」とした。

しかし「増加傾向に歯止め」という内容は、最近3年間で「"心の病"は"増加傾向" 44.6% "横ばい" 45.4%で"横ばい" が"増加傾向"を上回った」という程度であり、2012年11月8日の報告においても「前回よりも"横ばい" が"増加傾向" を上回り、いっそう増加傾向に歯止めがかかった」ものの「但し、減少傾向は微増にとどまっている」という程度で、まだ「増加傾向」にあるとの回答は36.7%も残っている。下げ止まりつつはある、がまだ回復には至っていないという状況である。

脚注[編集]

  1. ^ 例えば東京医科大学病院サイトのメンタルヘルス科のページでは、病院でのメンタルケアは、社会復帰につながるよう患者と医師とが協力して頑張る作業であると説明している。
  2. ^ 2011年度は福島の数が除外されている
  3. ^ H18年度疫学調査, pp.4,12. 表2。数値は性別、年齢分布による重み付け補正後を使用した。 なお、「こころの健康についての疫学調査に関する研究」の3年間にわたる調査は統合失調症を対象外としている。調査に用いたWHO-CIDIが統合失調症等に対しては低い妥当性しか持たないためとしている(H16年度疫学調査 p.4)。WHO-CIDIとは、WHO統合国際診断面接:WHO-CIDI2000であり、非専門家(正規の診断を下せる精神科医以外の意味であり、保健師、看護師等の医療関係者が担当)による構造化面接方法である。
  4. ^ 「職場における心の健康づくり」(p.14)には「いつもと違う」具体例を、「○遅刻、早退、欠勤が増える、、○休みの連絡がない(無断欠勤がある)、○残業、休日出勤が不釣合いに増える、○仕事の能率が悪くなる。思考力・判断力が低下する、○業務の結果がなかなかでてこない、○報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆)、○表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆)、○不自然な言動が目立つ、○ミスや事故が目立つ、○服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする」と、10項目あげている。
  5. ^ 気づいた言動は、やはり食欲不振、体重減少、倦怠感、頭痛などの身体症状、睡眠の悪化などが多い。次に「元気がない、冗談を言わなくなった、笑いがない、無表情、口数が少なくなった」等である。
  6. ^ これに先立つ平成11年(1999)の「判断指針」(基発第544号)においても事実上同様の判断が下されていたが、2011年の改訂はその判断をより迅速に、かつ判りやすく改めたものである( 厚生労働省「精神障害の労災認定」 冒頭における説明)。なおここではポイントだけを記しているので、詳細は「精神障害の労災認定」を参照されたい。
  7. ^ なお、保健所の業務の6割は精神保健関連であるという。うつ・不安啓発委員会 p.129
  8. ^ 自殺の予防と対応2010 「図1:自殺と精神疾患」p.53 。本図は、世界保健機関(WHO)が精神科入院歴の無い自殺既遂者 8,205例について調査したもので、複数診断の総数(12,292)に対する割合を示している。Bertolote JM,Fleischmann A:Suicide and psychiatric diagnosis: a worldwide perspective.World Psychiatry 1(3):181-185,2002 より作成。
  9. ^ 日本では薬物乱用、依存が少ないが、欧米ではこれが高く、特にアメリカ、オーストラリアでは日本の数十倍の有症率を示している。(平成16年度疫学調査 分担研究「こころの健康に関する地域疫学調査の国際比較に関する研究」(分担研究者:川上憲人)
  10. ^ 同調査によれば、労災認定された51例の過労自殺事例のうちうつ病エピソード(症状が発現している状態のこと)が92%を占めていたが、医療機関を受診していない者が67%もあり、精神科を受診した事例は15.7%(8例)にすぎなかった。また全事例の82%が会社よりも家族が先に自殺の兆候に気づいていたが、精神科受診を家族が考えているうちに自殺に至っていた。このことは家族が病的な言動に気づいていたとしても、うつ病に罹患した労働者を精神科医療へ繋ぐことが、いかに難しいかを物語っているとされる。(日本産業精神保健学会・こころの健康シリーズIV(職場のメンタルヘルス)No.2 長時間の時間外労働と自殺・過労自殺について
  11. ^ 「精神障害を既に発病した者における具体的出来事の受け止め方については、臨床事例等から正常人の場合とは異なる。既に精神障害を発病した者にとって、些細なストレスであってもそれに過大に反応することはむしろ一般的である。これは、発病すると、病的状態に起因した思考により、自責・自罰的となり、客観的思考を失うからとされている。すなわち、個体の脆弱性が増大するためと理解されている(日本産業精神保健学会 2006, 「過労自殺」を巡る精神医学上の問題に係る見解見解]] p.16) 」とある。
  12. ^ ここでは「増悪」を、ICD-10「うつ病エピソード」の症状の程度、(1)軽症、(2)中等症、(3)重症の分類のことではなく、一般用語として用いている。
  13. ^ 黒木宣夫らの先の調査「労災認定された自殺事案における長時間残業の調査」では、労災認定された過労自殺事例以外に、医療機関へ入院した自殺未遂患者で、その原因が職場問題と回答した事例49例も分析しており、厚生労働省の「判断指針」に示されたストレス強度に当てはめたところ、ストレス強度I 46%、ストレス強度II 43%、ストレス強度III 10.8%であり、企図前6ヶ月において1ヶ月の残業時間が80時間以上の長時間残業を行った事例の記載が2例しかみられず、多くは強いストレスが認められない状態で自殺未遂に至っていることが示唆されている。

出典[編集]

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参考文献[編集]

国際機関

政府資料

その他

産業精神保健関連[編集]

厚生労働省資料

厚生労働省リーフレット

厚生労働省・主な指針、報告書等

厚生労働科学研究費補助金研究

労働政策研究・研修機構

生産性本部メンタル・ヘルス研究所

その他研究機関

関連項目[編集]

外部リンク[編集]