全般性不安障害

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全般性不安障害(ぜんぱんせいふあんしょうがい、Generalized Anxiety Disorder)は、不安障害の一種。

概要[編集]

誰もが感じる正常な不安ははっきりした理由があってその間だけ続く。しかし、全般性不安障害の場合、特殊な状況に限定されない、理由の定まらない不安が長期間続き、ついには日常生活にも支障をきたすようになる。

例)天災・不慮の事故や病気などを必要以上に、極端に不安に感じてしまう 等。

全般性不安障害の患者数はパニック障害の患者数より3~4倍多いとされ、1000人に64人くらいが経験すると報告されており、まれな病気ではないと言える。

不安障害のなかでは一般的で発症は10代半ばが多いが、精神科にはかなりの時を経て受診するケースが多い。原因はわかっていないが遺伝的要因や神経質の性格、現在のストレス状態や自律神経の障害などが発症の影響だと言われている

特徴・症状[編集]

  1. 仕事や学業、将来、天災、事故、病気などのさまざまな出来事または活動について、過剰な不安と心配がある。しかし、その原因は特定されたものではない。
  2. 不安や心配を感じている状態が6ヶ月以上続いており、不安や心配がない日よりある日のほうが多い。
  3. 不安や心配は、次の症状のうち3つ以上の症状を伴っている。
    • そわそわと落ち着かない、緊張してしまう、過敏になってしまう
    • 疲れやすい
    • 倦怠感
    • 動悸・息切れ
    • めまい・ふらつき感
    • 集中できない、心が空白になってしまう
    • 刺激に対して過敏に反応してしまう
    • 頭痛や肩こりなど筋肉が緊張している
    • 眠れない又は熟睡した感じがない

潜在的な原因[編集]

誘導物質[編集]

長期間のベンゾジアゼピン使用は不安を悪化させる[1][2]。 ベンゾジアゼピンの削減は不安症状の軽減につながるエビデンスがある[3]。 同様に、アルコールの長期使用は不安障害に関連付けられている[4]。 長期間の断酒が不安症状の改善につながるというエビデンスがある[5]

1988-90年に、英国精神病院にて精神保健サービスを受けているパニック障害社会恐怖症社交不安障害のような不安障害をもつ患者について調査を行った。その結果、半数がアルコールやベンゾジアゼピン依存であった。 これらの患者について、不安症状は最初の離脱の段階で悪化したが、ベンゾジアゼピンやアルコールの断薬・断酒によって消失した。 ベンゾジアゼピンやアルコール依存となる前の不安は、依存によって維持され、更に悪化させる方向に進んでいった。ベンゾジアゼピンからの回復はアルコールからの回復よりも時間を要する傾向にある。しかし彼らは以前の健康を取り戻すことができる。 [6]

治療[編集]

治療には薬物治療か精神療法が用いられる。抗不安剤(ベンゾジアゼピン系)は長期間服用した場合、精神的依存や眠気などの副作用がある。

具体的には、抗不安薬抗うつ薬などを用いて、不安をコントロール可能になるまで軽減、その上で精神療法により自ら不安をコントロールできるようにする。

認知行動療法[編集]

SSRI[編集]

プレガバリン[編集]

ベンゾジアゼピン[編集]

ベンゾジアゼピンは即効性の抗不安薬であり、GADやその他の不安障害に用いられている[7]。ベンゾジアゼピンはGADに用いられており、短期間では効果を示す。しかしながら、長期間の使用では副作用があるため、FDAは短期的な使用(6-12週)に限って承認した。世界不安学会では、耐性精神障害・認知記憶障害・身体的依存・ベンゾジアゼピン離脱症候群が形成されるため、ベンゾジアゼピンの長期使用を推奨していない[8][9]。 副作用には、眠気・運動能力の低下・平衡感覚問題などがある。

カナダ精神医学会(CPA)のガイドラインでは、ベンゾジアゼピンは、2種類以上の抗うつ薬治療が成功しなかった場合の第二ラインの選択としてのみ限定している。しかし第二ラインの選択としても、ベンゾジアゼピンは重度の不安や動揺を和らげるための期間を限定しての使用に限定している。[10]

スウェーデン医薬品委員会では、不安の薬物療法には薬物依存のリスクのためベンゾジアゼピンを避けるべきだとしている。[11]

デンマーク保健省の依存性薬物処方ガイドラインでは、全般性不安障害・パニック障害・不安障害の第一選択肢は抗うつ薬である。 依存性があるため、ベンゾジアゼピンの処方は非薬物療法などそれ以外全てで治療できない場合のみに限定され、処方期間は4週間が目処であり、長期間の治療は避けなければならないとしている。[12]

出典[編集]

  1. ^ Galanter, Marc (1 July 2008). The American Psychiatric Publishing Textbook of Substance Abuse Treatment (American Psychiatric Press Textbook of Substance Abuse Treatment) (4 ed.). American Psychiatric Publishing, Inc.. p. 197. ISBN 978-1-58562-276-4. http://books.google.com/?id=6wdJgejlQzYC&pg=PA197. 
  2. ^ Ashton H (2005). “The diagnosis and management of benzodiazepine dependence” (PDF). Curr Opin Psychiatry 18 (3): 249?55. doi:10.1097/01.yco.0000165594.60434.84. PMID 16639148. http://www.benzo.org.uk/amisc/ashdiag.pdf. 
  3. ^ Lindsay, S.J.E.; Powell, Graham E., eds (28 July 1998). The Handbook of Clinical Adult Psychology (2nd ed.). Routledge. p. 173. ISBN 978-0415072151. http://books.google.com/?id=a6A9AAAAIAAJ&pg=PA173. 
  4. ^ Cargiulo T (March 2007). “Understanding the health impact of alcohol dependence”. Am J Health Syst Pharm 64 (5 Suppl 3): S5?11. doi:10.2146/ajhp060647. PMID 17322182. 
  5. ^ Wetterling T; Junghanns, K (September 2000). “Psychopathology of alcoholics during withdrawal and early abstinence”. Eur Psychiatry 15 (8): 483?8. doi:10.1016/S0924-9338(00)00519-8. ISSN 0924-9338. PMID 11175926. 
  6. ^ Cohen SI (February 1995). [http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=1295099 “Alcohol and benzodiazepines generate anxiety, panic and phobias”]. J R Soc Med 88 (2): 73?7. PMC 1295099. PMID 7769598. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=1295099. 
  7. ^ "Generalized anxiety disorder", Mayo Clinic. Accessed 29 May 2007.
  8. ^ Allgulander, C.; Bandelow, B.; Hollander, E.; Montgomery, SA.; Nutt, DJ.; Okasha, A.; Pollack, MH.; Stein, DJ. et al. (Aug 2003). “WCA recommendations for the long-term treatment of generalized anxiety disorder.”. CNS Spectr 8 (8 Suppl 1): 53?61. PMID 14767398. 
  9. ^ Stewart SH, Westra HA (2002). “Benzodiazepine side-effects: from the bench to the clinic”. Curr. Pharm. Des. 8 (1): 1?3. doi:10.2174/1381612023396708. PMID 11812246. http://www.bentham-direct.org/pages/content.php?CPD/2002/00000008/00000001/0001B.SGM. 
  10. ^ Canadian Psychiatric Association (July 2006). “Clinical practice guidelines. Management of anxiety disorders” (PDF). Can J Psychiatry 51 (8 Suppl 2): 51S-55S. PMID 16933543. http://publications.cpa-apc.org/media.php?mid=440 2009年8月8日閲覧。. 
  11. ^ Läkemedelsbehandling vid ångest”. スウェーデン医薬品委員会. 2011年12月19日閲覧。
  12. ^ Indenrigs- og Sundhedsministeriet (2008-07-09). Vejledning om ordination af afhængighedsskabende lægemidler (Report). https://www.retsinformation.dk/Forms/R0710.aspx?id=117508. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]