SSRI離脱症候群

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SSRI離脱症候群(エスエスアールアイりだつしょうこうぐん)とは、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)およびSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬) の中断・減量・中止に伴って発生する症候。発生条件は対象薬物の減量・投与終了・消失半減期。

この症候は二重盲検プラセボ対照試験[1] ではSSRIの中止が困難であるという臨床的統計が多く存在する。

目次

インジケータ [編集]

SSRI離脱症候群の指標は以下である

  • 4週間以上続くSSRI投与治療の中断・中止・減量
  • その症状が
    • 通常の社会的・職業的・その他の機能の障害に直面している
    • 他の治療や処方薬の投与または中断によって起こったものではない
    • そのSSRIに規定された効用の再発によるものではない

歴史 [編集]

SSRI中断時の離脱症候群が初めて報告されたのは、フルボキサミン[2] (brand names Luvox [US], Faverin [UK])で1992年であった。 英国医薬品安全性委員会は、パロキセチン(パキシル)に関する離脱症状を1993年に報告し、[3] 米国精神医学会ではセルトラリン(ジェイゾロフト)について翌年同様の報告が明らかになった。[4]

1996年イーライリリー・アンド・カンパニーは、抗うつ薬の断薬に際し困難な症状のある患者の報告数の増加の対処についてのシンポジウムを後援した。

それまでは薬物服用差の数%が断薬に苦労するという、製薬会社の見積もりはあまりに小さすぎることが明らかになった。マサチューセッツ総合病院の研究者Jerrold RosenbaumとMaurizio Favaは、抗うつ薬の断薬時に20%から80%(薬物依存)が抗うつ薬離脱症候群に見舞われることが判明した。(後にこれは断薬時症候群と改名された[5]

世界保健機関は離脱症候群についての調査を続け、以下のノートを残した。

SSRIs are an example of how a conceptual confusion over terminology can affect proper reporting, interpretation and communication of adverse drug reactions related to dependence. To avoid the association with dependence, an increasing number of researchers have used a different term, discontinuation syndrome, instead of withdrawal syndrome. The number of hits for discontinuation syndrome in searches of the international medical literature began to increase, relative to the occurrence of withdrawal syndrome, in 1997 after [the Eli Lilly] symposium on antidepressant discontinuation syndrome held in 1996. In fact, dependence syndrome has been reported to the Uppsala Monitoring Centre for all SSRIs through the same postmarketing surveillance systems, although there are significantly fewer reports of dependence syndrome than of withdrawal syndrome.[6]

WHOのノートでは、抗うつ薬が引き起こす離脱症状について、パロキセチンは最も多くの離脱症状の報告があり、フルオキセチン(プロザック)は最も薬物依存のレポートが多いとランク付けしている。ノートでは『3つのSSRIは、Uppsala Monitoring Centreのデータベースに寄せられた30の薬物依存の中で最も多く報告がある。2002年6月から、269のレポートが寄せられている(フルオキセチンは109、パロキセチンは91、セルトラリンは69)[6]

SSRIとSNRIのリスト [編集]

この種の薬物は米国では一般的に流通し広告されている。 (括弧内は商品名、カナ文字は日本での商品名)

  • シタロプラム (Celexa, Cipramil, Celepram, Emocal, Sepram, Seropram)
  • エスシタロプラム (レクサプロ, Cipralex, Esertia, Esipram)
  • フルオキセチン (プロザック, Fontex, Seromex, Seronil, Sarafem, Fluctin [EUR])
  • パロキセチン (パキシル, Seroxat, Pexeva, Aropax, Deroxat, Paroxat)
  • セルトラリン (ジェイゾロフト,Zoloft , Lustral, Sertralin)
  • dapoxetine (Priligy)
  • フルボキサミン (ルボックス, デプロメール,Faverin, Favoxil)
  • ベンラファキシン (Effexor XR)(日本では開発中止)
  • デュロキセチン (サインバルタ)
  • desvenlafaxine (Pristiq)

"脳への衝撃"感覚 [編集]

症状は「脳への衝撃」「脳ショック」「脳の震え」などと表現される離脱症状を、抗うつ薬の中断・減薬中に経験すると報告されている。[7][8] この症状は、[8]めまい・電気ショック感覚・発汗吐き気不眠ふるえ・混乱・悪夢めまいなどを共通として多種多様に表現されるが、因果関係は分かっていない。[7][8]MedDRAにてこの症例の記載は薬物有害反応レポートであり、知覚異常とされている。[9][10]


1997年の調査では、一部の医療専門家はこの症状は抗うつ薬の離脱症状であると確信を持っていない。[11] 2005年の有害事象研究では、「電気ショック」症状の報告はパロキセチンが突出していると報告されている。[9]

性機能障害 [編集]

離脱症状の定義 [編集]

SSRIの離脱症状は、1996年のシンポジウムより「SSRI中断症候群」と呼ばれるようになった。以来、同等の意味として用いられている。 SSRIはその医学的定義より、依存性はないとされているが、投与の中断により身体的・精神的に症状を発生させている。[12]

評論家は、製薬業界が薬物遊びや違法ドラッグと、抗うつ薬依存とは差別化を図るために既得権益を持っていると主張している。主張によると、「離脱症状」という言葉が、顧客が医療を必要としているかどうか、患者を怯えさせ顧客を敬遠させるものであるという。[13]

メカニズム [編集]

SSRI離脱症候群の正確なメカニズムは不明であり、様々な要因に起因する場合がある。

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予防と治療 [編集]

患者には薬の半減期について告知すべきである。また患者には、もしフルオキセチンのような半減期の長い薬を短いものに変更する時は、薬を定期的に服用することが大切だと告知すべきである。 フルオキセチン服用患者はたいていは不快感を覚えずに断薬できるが、しかしvenlafaxine・パロキセチンデュロキセチン・escitalopram oxalate・セルトラリン のような(10時間作用の)半減期の短いSSRIは、この症状を発生させる可能性がある。作用時間の短いSSRIを減薬する際には、半減期の長い(フルオキセチンまたはシタロプラムなど)を選択し、それらを減薬することで、離脱症候の症状の軽減と断薬の成功率を上げることができる。[14][15]

症状はもともとのSSRIを力価の低い類似のSSRIに置換するか、またはゆっくりと数週間から数カ月かけて投与量を削減することで防ぐことができるだろう。 しかし少しずつの減薬は離脱症候群が発生しないことを保障するものではなく、突然の断薬よりも安全であるということだけである。 少しずつの減薬・断薬は錠剤を砕いたり溶液化することで実施する。または粉末形状の薬剤も削減に用いることができる。 たとえば、サインバルタ20mgのゲルカプセルは20,15,10,5,2.5mgに分割することができる。

治療は断薬時の反応の重篤度と、更に抗うつ薬治療が必要かどうかに懸かっている。 さらに抗うつ薬治療が必要な場合は、抗うつ薬の再投与だけが唯一の方法であり、これはたいてい薬物が患者に不適合だった場合である。 抗うつ薬がもはや必要ないかどうかは症状の深刻さによる。 軽度症状の場合は、励ましのみでよいだろう。 中等度の場合は、症状の管理が必要な場合がある。 ベンゾジアゼピンは不眠の対応に用いられるが、しかしながらベンゾジアゼピンの離脱は重篤で長期間に渡ることを考慮することが非常に重要である。 症状が重篤であったり、治療に効果がない場合、抗うつ薬を再服用し再度より慎重に減薬する必要がある。[16]

重篤な離脱症状を経験した人は、セロトニン作動性活動の抜本的な低下を避けるため、週5%(または月、あるいはそれ以上)の投与量削減が求められる。しかしいくつかのケースでは、少しずつの断薬であっても離脱症候群が起こっている。[17] 半減期の長いSSRIへ切り替え、それを減薬することは離脱症状の軽減につながる。フルオキセチンを参照。

長期の副作用 [編集]

性的機能不全(性欲不振・性器麻痺・勃起不全)などが、数年間投与を続けた跡に断薬した場合、非常に少ないケースで確認されている。[18][19]

SSRIの長期離脱症状については性的機能不全以外にドキュメントへの記載はない。

あるイタリアの調査で、パニック障害広場恐怖症患者において、45%が離脱症状が発生したが、その11%は1ヵ月以内で回復したことが明らかになっている。 離脱症状は、動揺、不安、アカシジア、パニック発作、短気、敵意、攻撃性、気分の悪化、神経不安、泣きまたは情緒不安定、活動過多または活動亢進、離人症、集中力の低下、思考速度の低下、混乱と記憶及び集中の困難でもあった。 一部の人々は、オメガ3魚油のサプリメントがSSRI離脱症状のいくつかが軽減されることを報告している。[20] [21]

SNRIの中止 [編集]

SNRIは、セロトニンノルアドレナリンの両方の再取り込み阻害に作用する。SNRIは主にベンラファキシン(日本では開発中止)とデュロキセチンの2つが幅広く投与されている。さらにdesvenlafaxineが加わった。

デュロキセチン [編集]

デュロキセチン(製品名サインバルタ)を製造するEli Lilly社は『急激な断薬はすべきではない。それによりめまい・ピンや針の感覚・吐気・入眠困難・激しい夢・頭痛・震え・扇動・不安を引き起こす。離脱症状は一時的なもので依存性はない』と警告している。 これらの主張は、薬について肉体的依存の可能性があり、SSRI使用者には見られない渇望・衝動的使用・長期間の再発リスクなどの薬物依存がある。

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フルオキセチンの代用 [編集]

SSRI離脱症候群の患者に、現在の薬の代用として多くの医師がフルオキセチンを使用するように助言している。

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妊娠/授乳中の注意 [編集]

2006年7月19日に米国食品医薬品局FDA)は授乳中の母親は、SSRIの服用に関して医師と相談する必要があると警告を発した。

妊娠中の女性が服用すると、SSRIが胎盤と新生児に影響を及ぼす可能性がある。SSRIは先天性奇形とは無関係であるが、新生児禁断症候群(NAS)と遷延性肺高血圧症(PPH)の新生児合併症との関係を示唆しているいくつかの証拠がある。

2003年11月の調査でSSRI離脱症候群は、SSRIの使用で新生児けいれんや離脱症候群に合計93例が関連していたと報告されていた。その後発表された研究では 、医師が慎重に回避したり精神疾患と妊娠中の女性にSSRIの処方を管理するべきであると結論付けた。

関連項目 [編集]

出典 [編集]

  1. ^ Michelson D, Fava M, Amsterdam J, et al. (April 2000). “Interruption of selective serotonin reuptake inhibitor treatment. Double-blind, placebo-controlled trial”. Br J Psychiatry 176: 363-8. doi:10.1192/bjp.176.4.363. PMID 10827885. http://bjp.rcpsych.org/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=10827885. 
  2. ^ Szabadi E (1992). “Fluvoxamine withdrawal syndrome”. Br J Psychiatry 160: 283-4. PMID 1540778. 
  3. ^ Gelenberg AJ, ed. (1993). “Postmarketing watch: paroxetine in the UK”. Biol Ther Psychiatry 16: 25-8. 
  4. ^ Louie AK, Lannon RA, Ajari LJ (1994). “Withdrawal reaction after sertraline discontinuation”. Am J Psychiatry 151 (3): 450-1. PMID 8109661. 
  5. ^ Stutz, Bruce (2007年5月6日). “Self-Nonmedication”. The New York Times. http://www.nytimes.com/2007/05/06/magazine/06antidepressant-t.html?pagewanted=5&fta=y 2010年5月24日閲覧。 
  6. ^ a b http://www.who.int/medicinedocs/en/d/Js4896e/9.html
  7. ^ a b Aronson J (8 October 2005). “Bottled lightning”. BMJ 331: 824. doi:10.1136/bmj.331.7520.824. 
  8. ^ a b c Christmas MB (2005). “'Brain shivers': from chat room to clinic”. Psychiatric Bulletin 29: 219-21. doi:10.1192/pb.29.6.219. http://pb.rcpsych.org/cgi/content/full/29/6/219. 
  9. ^ a b Medawar C, Herxheimer A (2003/2004). “A comparison of adverse drug reaction reports from professionals and users, relating to risk of dependence and suicidal behaviour with paroxetine” (PDF reprint). International Journal of Risk & Safety in Medicine 16: 5-19. http://www.socialaudit.org.uk/YELLOW%20CARD%20REVIEW.pdf. 
  10. ^ MHRA (March/April 2003). “MAIL 136”. 2009年4月18日閲覧。
  11. ^ Young AH, Currie A (1997). “Physicians' knowledge of antidepressant withdrawal effects: a survey”. J Clin Psychiatry 58 (Suppl 7): 28-30. PMID 9219491. 
  12. ^ Tamam L, Ozpoyraz N (2002). “Selective serotonin reuptake inhibitor discontinuation syndrome: a review”. Adv Ther 19 (1): 17-26. doi:10.1007/BF02850015. PMID 12008858. 
  13. ^ Shelton RC (2006). “The Nature of the Discontinuation Syndrome Associated with Antidepressant Drugs”. Journal of Clin Psychiatry 67: 3-7. PMID 16683856. 
  14. ^ Haddad, Peter M.; Anderson, Ian M. (11/01/2007). “Recognising and managing antidepressant discontinuation symptoms”. Advances in Psychiatric Treatment 13 (6): 447. doi:10.1192/apt.bp.105.001966. http://apt.rcpsych.org/cgi/content/full/13/6/447. 
  15. ^ http://www.benzo.org.uk/healy.htm
  16. ^ Haddad P (2001). “Antidepressant discontinuation syndromes”. Drug Saf 24 (3): 183-97. doi:10.2165/00002018-200124030-00003. PMID 11347722. 
  17. ^ http://www.citypages.com/2002-10-16/news/paxil-is-forever
  18. ^ Csoka AB, Bahrick A, Mehtonen OP (January 2008). “Persistent sexual dysfunction after discontinuation of selective serotonin reuptake inhibitors”. J Sex Med 5 (1): 227-33. doi:10.1111/j.1743-6109.2007.00630.x. PMID 18173768. 
  19. ^ Bolton; Sareen, J; Reiss, JP (2006). “Genital anaesthesia persisting six years after sertraline discontinuation”. J Sex Marital Ther. 4 (4): e327. doi:10.1080/00926230600666410. PMID 16709553. 
  20. ^ Paxil and Effexor - Complementary Medicine”. 2009年3月25日閲覧。
  21. ^ How Do I se Omega-3 For Antidepressant Withdrawal Symptoms?”. 2010年12月3日閲覧。