心理療法

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グループセラピーを行う米国の臨床心理士
ポジティブ心理療法

心理療法(しんりりょうほう、: psychotherapy)、精神療法(せいしんりょほう)、心理セラピーサイコセラピーとは、物理的・化学的手段に拠らず[1]、教示・対話・訓練を通して認知情緒行動などに変容をもたらすことで、精神疾患心身症の治療、精神心理的問題・不適応行動などの解決に寄与し、人々の精神的健康の回復・保持・増進を図ろうとする理論と技法の体系のことである。

心理療法を行う者を心理療法士、心理療法家、精神療法家、心理セラピスト、サイコセラピスト(psychotherapist)などと呼び、当該専門家が立脚する学派により精神分析家行動療法家などと呼び分けることもある。また、心理療法を受ける者をクライエント(client)、来談者、患者などと呼ぶ。

なお、臨床心理学においては「心理療法」、精神医学においては「精神療法」の呼称が通常用いられるが、両者の指すものは事実上同じものである。このような呼称の相違は、明治期以降に西洋学問を輸入した際、「psyche」という外国語に「心理」と「精神」という2通りの訳語が当てられ、それが心理学界と医学界に別々に定着したことに由来する。

概要[編集]

OECD各国の心理療法の位置付け[2]
認知行動療法
プライマリケア
受けられるか?
心理療法は
保険適応か?
オーストラリア はい 全面
オーストリー はい 一部
ベルギー はい 一部
カナダ 全面
チリ 全面
チェコ 全面
フィンランド 一部
ドイツ 全面
アイスランド はい 一部
アイルランド 一部
イスラエル 一部
イタリア 全面
日本 一部
韓国 はい 一部
ルクセンブルク はい 一部
メキシコ はい 一部
オランダ 一部
ニュージーランド はい 一部
ノルウェー はい 全面
ポーランド 全面
ポルトガル 一部
スロバキア 一部
スロベニア 全面
スウェーデン はい 一部
スイス 一部
トルコ 全面
英国 はい 全面
米国 はい 全面

心理療法は、主に「対話」を用い、精神疾患心身症に罹患している人、精神心理的問題や不適応に陥っている人、病気けがを始めとした種々の困難を抱えている人などの認知情緒行動などに働きかけ、そこに適応的な変容を図ることを目的とする。特に、人間関係に起因するストレスなどの影響が認められる心因性の精神疾患の治療においては、心理療法はストレスそのものの分析・考察を行うため、表面的な症状を抑える薬物療法などの対症療法とは区別される。

各国の規制[編集]

ドイツにおいては、Psychotherapy Act (PsychThG, 1998)によって、成人への心理療法は5年の心理学専門過程を修めた者でなければならないとされている。児童へは大学卒業後に5年の経験を経た社会教育師およびソーシャルワーカーが行うことができる[3]

イタリアではOssicini Act (no. 56/1989, art. 3)により、心理学部または医学部を卒業後、各州の教育病院で4年間の心理療法研修を経た者でなければならないとされている[4]

フランスでは、psychotherapistを名乗ることができるのは、国家登録の心理療法士のみであり、それには臨床心理学の教育を経た後に、医師もしくは心理学・精神分析学の修士号を持つ者の下で研修を受ける必要がある[5]

スウェーデンでは、psychotherapistを名乗ることができるのは、大学にて心理療法の教育を修めた後に、スウェーデン国家保健福祉委員会英語版に登録された者である[6]

日本においては、民間認証資格として臨床心理士が存在する。

主な心理療法[編集]

心理療法が立脚する学派は、深層心理学系、行動理論系、人間性心理学系が現代心理学における三大潮流とされているが、それぞれ手段は違えど、認知情緒行動などに適応的な変容を図る目的は共有している。また、性格傾向・病理水準・発達水準などにより向き不向きがあるため、主訴や各水準の臨床心理査定と照らし合わせ、クライエントとの共通理解のもとで、当該事例に適した根拠に基づいた心理療法が選択・折衷され用いられる[7][8]

日本における状況[編集]

欧米諸国に比べ日本においては制度面の遅れがあり[2]、それゆえこれまでは心理療法が日常的なものとして位置づけられてきづらかった[9]ユニバーサルヘルスケアの下で、薬や注射などの現物には公定の報酬が支払われたもののこのような「目に見えない技術」に対しては非常に低い報酬しか設定されなかった。このことが日本における精神医療の質の低下を招いた[10]

OECDは日本に対し、軽中程度の患者に対して心理療法を提供できるよう、根拠に基づいた治療プログラムの整備をすすめるよう勧告している[11]

脚注[編集]

  1. ^ Cambridge Dictonary
  2. ^ a b OECD 2014, p. 77.
  3. ^ Gesetz über die Berufe des Psychologischen Psychotherapeuten und des Kinder- und Jugendlichenpsychotherapeuten” (de). 2010年7月21日閲覧。
  4. ^ Ordinamento della professione di psicologo: Esercizio dell'attività psicoterapeutica” (it). 2010年7月22日閲覧。
  5. ^ Arrêté du 9 juin 2010 relatif aux demandes d'inscription au registre national des psychothérapeutes” (fr). 2010年7月21日閲覧。
  6. ^ Application for licence to practise as a psychotherapist”. Socialstyrelsen (National Board of Health and Welfare (Sweden)). 2013年3月31日閲覧。
  7. ^ 日本臨床心理士資格認定協会 (2009年). “臨床心理士の専門業務”. 2010年2月2日閲覧。
  8. ^ 日本臨床心理士会 (2010年). “臨床心理士とは - 援助の方法”. 2010年10月16日閲覧。
  9. ^ 全国保健・医療・福祉心理職能協会 (2005年). “国家資格化の必要性”. 2010年2月15日閲覧。
  10. ^ 精神医学の歴史 小俣和一郎 第三文明社 2005年 ISBN 9784476012521 p226
  11. ^ OECD 2014, Country press releases - Japan.

参考文献[編集]

  • Making Mental Health Count The Social and Economic Costs of Neglecting Mental Health Care (Report). OECD. (2014-07). doi:10.1787/9789264208445-en. 
  • 『カウンセリングの実際問題』 河合隼雄(著) 誠信書房 1970
  • 『カウンセリングの技法』 國分康孝(著) 誠信書房 1979
  • 『カウンセリングの理論』 國分康孝(著) 誠信書房 1980
  • 『心理臨床大辞典 氏原寛亀口憲治成田善弘東山紘久山中康裕(共編) 培風館 2004
  • 『心理療法序説』 河合隼雄(著)岩波書店 1992 ISBN 4-00-002690-9  
  • 『家族の心理療法 : 子どもの心の傷を癒す家族の力』 福田俊一・増井昌美(共著) 朱鷺書房 1998 ISBN 4-88602-517-X
  • 『生きる心理療法と教育 : 臨床教育学の視座から』 皆藤章著 誠信書 1998 ISBN 4-414-40341-3
  • 『心理療法の展開』 河合隼雄(著)岩波書店 2002 ISBN 4-00-092492-3
  • 『心理療法ハンドブック』 乾吉佑(他)/編 創元社 2005 ISBN 4-422-11326-7
  • 『カウンセリングの展望 : 今,カウンセリングの専門性を問う』 下司昌一編集代表 井上孝代,田所摂寿(編) ブレーン出版 2005 ISBN 4-89242-812-4
  • 『PTSDとトラウマの心理療法 : 心身統合アプローチの理論と実践』 バベット・ロスチャイルド(著) 久保隆司(訳) 創元社 2009 ISBN 978-4-422-11416-3

関連項目[編集]

外部リンク[編集]