認知療法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

認知療法(Cognitive Therapy)とは、アーロン・ベック(認知療法、もしくは認知行動療法)やアルバート・エリス論理療法)やドナルド・マイケンバウム(自己教示訓練)によって、それぞれ独立に始められた心理療法の総称である。

ベックとエリスは、それぞれ精神分析学を学んだ精神科医心理学者であり、マイケンバウムは行動療法を行っていた心理学者である。彼等の共通点は、外的な出来事が感情や身体反応を直接引き起こすのではなく、そうした出来事をどのように認知するかによって身体反応や感情、行動が異なってくるとし、精神疾患やそれに対する心理療法における「認知」の役割を重視した点にある。

認知とは[編集]

認知療法における認知とはたいていの場合「言語化された思考」を指す。これは認知心理学認知と必ずしも一致しない臨床上の緩やかな概念である。本稿では便宜的に単に認知と書いた場合、認知療法としての認知を指すこととする。

人間は世界のありのままを観ているのではなく、その一部を抽出し、解釈し、帰属させているなど「認知」しているのであって、その認知には必ず個人差があり、客観的な世界そのものとは異なっている。それゆえ、誤解や思い込み、拡大解釈などが含まれた自らに不都合な認知をしてしまい、結果として様々な嫌な気分(怒り、悲しみ、混乱、抑うつ)が生じてくると仮定している。認知療法では不快な気分や不適切な行動の背景として「考え方」つまり「認知」に着目し、この不都合な認知⇒気分の流れを紙などに書いて把握すること、また、それらに別の観点を見つけるべく紙に書いて修正を試みる事が根幹である。そのために根拠を問うたりする。 それらの気分を生じさせる拡大解釈やなどをアーロン・ベックに学んだデビッド・D. バーンズ英語版の1989年の著作The Feeling Good Handbook[1][2]では "Cognitive distortion"(認知の歪み)いう。

認知療法[編集]

認知療法では認知の歪みに対し、反証や多面的解釈を生み出す手助けをする。このように自らが認知を修正することによって、身体反応が軽減したり、苦しみの少ない方向に情動が変化したり、より建設的な方向に行動出来るようになったりするとの説がある。

認知療法には、クライエントの「認知」に働きかける数多くの技法が存在する。ネガティブな思考の記録(いわゆるコラム法)、思考の証拠さがし、責任帰属の見直し、損得比較表(元々、フランクリンの表と呼ばれるもの)、認知的歪みの同定、誇張的表現や逆説の利用、症状や苦痛の程度についてスケール(尺度)で表現、イメージの置き換え、認知的リハーサル、自己教示法、思考中断法、気晴らしの利用、直接的な論争……。他にも、活動スケジュールを記録する等、行動療法で使われてきた多くの技法についてもベックもエリスも当初から積極的に自らの療法に取り入れていった。

一般的に鬱病の治療として薬物療法とは別のアプローチとして利用されている。但しコラム法は自動思考と分析という時間と体力、気力を多大に必要としている。それ故に鬱病の急性期としては適切な治療方法として利用しにくい。コラム式は思い込みの自己否定思考している場合は有効だが自動思考で自分の行動に正当性があり自分を責めないケースでは使えない。

種別

治療[編集]

治療は一般的に医師心理カウンセラーのもとで行われるが、最近では、認知療法を対話形式で行うことができる書籍も出版されている。書籍やメディアでもてはやされるほどには、治療者がいないのが現状である。

効果[編集]

英国国立医療技術評価機構(NICE)の2011年臨床ガイドラインでは、抑うつPSTD強迫性障害の適応にCBTを含めている[3]。特に抑うつに対しては、NICEは必ずCBT(もしくは他の心理療法・運動療法)を試みるよう勧告している[4]

アメリカの保険会社は治療効果を承認している[5]

日本の学会[編集]

資格[編集]

脚注[編集]

  1. ^ David D. Burns (1989). The Feeling Good Handbook. ASIN 0452281326. ISBN 978-0452281325. 
  2. ^ デビッド・D. バーンズ、野村総一郎, 関沢洋一(訳)、2005年(平成17年)、『フィーリングGoodハンドブック』、星和書店 ISBN 978-4791105823
  3. ^ 英国国立医療技術評価機構 2011.
  4. ^ 英国国立医療技術評価機構 (2009-08). CG90: Depression in adults (Report). http://www.nice.org.uk/CG90. 
  5. ^ 『JACT日本認知療法学会』 認知療法の最近の動き

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]