エリク・H・エリクソン

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Erik Homburger Erikson
エリク・ホーンブルガー・エリクソン
生誕 1902年6月15日
Flag of Prussia 1892-1918.svg プロイセン王国
ヘッセン州フランクフルト
死没 1994年5月12日(満91歳没)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
マサチューセッツ州・ハリッジ
国籍 Flag of Prussia 1892-1918.svg プロイセン王国
(1902-1939)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
(1939-1994)
職業 心理学者
大学教授(心理学)
著名な実績 発達心理学
自己同一性
影響を受けたもの ジークムント・フロイト
アンナ・フロイト

エリク・ホーンブルガー・エリクソン(Erik Homburger Erikson, 1902年6月15日 - 1994年5月12日)は、アメリカの発達心理学者で、精神分析家。「アイデンティティ」の概念を提唱したことで知られる。

生い立ち[編集]

ドイツヘッセン州フランクフルトに生まれる。母のカーラ・アブラハムセン(Karla Abrahamsen)はユダヤ系デンマーク人で、生後3年間は母親と共にフランクフルトで過ごす。父親は定かではないが、デンマーク人の芸術家だったのではないかと言われている。母親は、最後まで息子にその父親の名を明かさなかった。1905年にエリクソンの主治医も務めていた小児科医のテオドール・ホーンブルガーと母親が結婚し、家族はフランクフルトからカールスルーエに引っ越す。なおミドルネームのホーンブルガー(Homburger)は母の再婚相手の苗字である。

エリクソンはその北欧系の風貌からユダヤ系社会や教会で差別を受け、またドイツ人コミュニティからはユダヤ人であるという理由で差別を受け、二重の差別を受けて育った。実父の出自や所在が分からない状態で育った事も加え、彼の出自や生育歴がその後の理論・思想形成に大きな影響を及ぼしている。

カールスルーエのギムナジウムビスマルク校を卒業後は、芸術学院に進学するものの卒業はせず、その後各地を転々とし放浪生活を送った。エリクソン自身は画家を目指していたと語り、自身の特徴的な文章が画家を目指していたことと関係があると述べている。

ウィーン時代[編集]

友人の紹介で、アンナ・フロイトウィーンの外国人の子弟を対象に始めた私立の実験学校で、教師を勤め、その経過の中でアンナの弟子となり、教育分析を受ける。エリクソンの面識のない実父に関して等、分析内容に違和感を残しつつも分析を終了する。その後、エリクソンはウィーン精神分析研究所の分析家の資格を取得する(当時のウィーン精神分析所で取得した資格は、同時に国際資格になる制度であった)。その後、ウィーンで後に結婚するカナダ人の舞踏家、ジョアン・セルソンと知り合う。

1933年、ドイツでナチスが政権を掌握すると、エリクソンはウィーンからコペンハーゲンへ、そしてアメリカへと渡り、1939年にアメリカでの国籍を取得する。当初、問題行動を起こす青年達の心理療法に従事し、他の治療機関の手に負えない難しい事例であったにも関わらず、高い治癒率を上げた為、注目を集め始めた。

アメリカ時代[編集]

エリクソンが有名な「アイデンティティ」の概念を思いついた背景には、マサチューセッツオースティン・リッグス・センターにて同一性に苦しむ、境界例のクライアントに会っていた事が契機とされている。エリクソンは「アイデンティティ」という概念を極めて多義的、動的なものとして捉えており、複数の著作を当たっても定義が困難な非常に複雑な概念である。この事は、エリクソンがidentificationとidentityを並列し、「果たしてidentityがidentificationの総体なのか」と問うている所にも見受けられる。(青年と危機)しかしその後、心理学のみならず社会科学やあらゆる学問分野でアイデンティティ概念が多用されている事態を受け、エリクソン自身が困惑を隠し切れなかったと語っている。

大学の学位を持たずして、発達心理学者として知られるに至った。その後、アメリカへと移住し、エール大学カリフォルニア大学バークレー校ハーバード大学の教員を歴任する。発達心理学者としては、幼児の心理の研究から始め、自分の年齢が上がっていくにつれて、青年期、成人期、老年期へとその関心を移していった。エゴアイデンティティ自我同一性)・基本的信頼(感)という概念を提唱したことで知られる。

ライフサイクル論[編集]

年齢 時期 導かれる要素 心理的課題 [1] 主な関係性[2] 存在しうる質問[2][出典無効] [2]
0–1 歳 乳児期 希望 基本的信頼 vs. 不信 母親 世界を信じることは出来るか? 授乳
1–3 歳 幼児前期 意思 自律性 vs. 恥、疑惑 両親 私は私でよいのか? トイレトレーニング、更衣の自律
3–6 歳 幼児後期 目的 積極性 vs. 罪悪感 家族 動き、移動し、行為を行ってよいか? 探検、道具の使用、芸術表現
6–11 歳 児童期 有能感 勤勉性 vs. 劣等感 地域、学校 人々とものの存在する世界で自己成就できるか? 学校、スポーツ
11–19 歳 青年期 忠誠心 同一性 vs. 同一性の拡散 仲間、ロールモデル 私は誰か? 誰でいられるか? 社会的関係
20–39 歳 初期成年期 親密性 vs. 孤独 友だち、パートナー 愛することが出来るか? 恋愛関係
40–64 歳 成年期 世話 生殖 vs. 自己吸収 家族、同僚 私は自分の人生をあてにできるか? 仕事、親の立場
65歳 - 成熟期 賢さ 自己統合 vs. 絶望 人類 私は私でいてよかったか? 人生の反響

ジェネラティヴィティ[編集]

ジェネラティヴィティ(generativity)とは、エリクソンが用いた精神分析学上の言葉。「次世代の価値を生み出す行為に積極的にかかわっていくこと」を意味する[3]

著作[編集]

  • Childhood and Society, W. W. Norton, 1950.
『幼年期と社會(前篇)性と文化の錯綜』、草野榮三良譯、日本教文社、1954年
『幼年期と社會(中篇)個性の成立』、草野榮三良譯、日本教文社、1955年
『幼年期と社會(後篇)英雄と精神異常の境』、草野榮三良譯、日本教文社、1956年
『幼児期と社会』、仁科弥生訳、みすず書房、1977年-1980年
  • Young man Luther: a study in psychoanalysis and history, Faber & Faber Ltd, 1958.
『青年ルター――精神分析的・歴史的研究』、大沼隆訳、教文館、1974年
『青年ルター』、1-2巻、西平直訳、みすず書房、2002年-2003年
  • Identity and the life cycle, International Universities Press, 1959.
『自我同一性――アイデンティティとライフ・サイクル』、小此木啓吾訳編、誠信書房、1973年
『アイデンティティとライフサイクル』、西平直・中島由恵訳、誠信書房、2011年
  • Insight and responsibility, Norton, 1964.
『洞察と責任――精神分析の臨床と倫理』、鑪幹八郎訳、誠信書房、1971年
  • Identity: youth and crisis, Norton, 1968.
『アイデンティティ――青年と危機』、岩瀬庸理訳、北望社、1969年
  • Gandhi's truth: on the origins of militant nonviolence, Norton, 1969.
『ガンディーの真理――戦闘的非暴力の起原』、1-2巻、星野美賀子訳、みすず書房、1973年-1974年
  • Play and development, Norton, 1972.
『遊びと発達の心理学』、赤塚徳郎森楙監訳、黎明書房、1983年
  • Dimensions of a new identity: the 1973 Jefferson lectures in the humanities, Norton, 1974.
『歴史のなかのアイデンティティ――ジェファソンと現代』、五十嵐武士訳、みすず書房、1979年
  • Toys and reasons: stages in the ritualization in experience, Norton, 1977.
『玩具と理性――経験の儀式化の諸段階』、近藤邦夫訳、みすず書房、1981年
  • The life cycle completed, Norton, 1982.
『ライフサイクル、その完結』、村瀬孝雄・近藤邦夫訳、みすず書房、1989年

共著[編集]

  • Vital involvement in old age, with Joan M. Erikson, Helen Q. Kivnick, Norton, 1986.
『老年期――生き生きしたかかわりあい』、朝長正徳朝長梨枝子訳、みすず書房、1990年

編著[編集]

  • Youth: change and challenge, Basic Books, 1963.
『青年の挑戦』、栗原彬監訳、北望社、1971年
『自我の冒険――脱工業社会の青年たち』、栗原彬監訳、金沢文庫、 1973年

参考文献[編集]

  • ローレンス・J・フリードマン『エリクソンの人生』新曜社

参照[編集]

  1. ^ http://web.cortland.edu/andersmd/ERIK/welcome.HTML
  2. ^ a b c PSY 345 Lecture Notes - Ego Psychologists, Erik Erikson”. 2009年8月11日閲覧。
  3. ^ 清水書院『用語集 現代社会+政治・経済'12-'13年版』6ページ

関連項目[編集]

外部リンク[編集]